3/6 三重県
宮川
釣行記&宮川の現況レポート
記憶にも新しい、2004年9月に三重県宮川村を襲った豪雨災害。
初めに、この災害で亡くなられた方達へ、心よりご冥福をお祈りいたします。
ニュースで現地の様子は幾度となく放映されていたが、実際この目で確かめるのはこの日が初めて。あれほどの被害がありながら、今年の解禁を迎える事が出来たのは、関係者の並々ならぬ努力と強い信念の賜物であり、奇跡といっても過言ではない。
この川の漁協では、放流するアマゴは全て宮川産のアマゴというこだわりがある。他県や県内の養殖業者から大量に魚を仕入れるような事は出来ない。
しかし、豪雨によって主要な養殖場に多大な被害が出たため、今年の解禁は絶望視されていたが、地元養殖業の重鎮Nさんが松阪市に宮川産アマゴの一部を移していたため、なんとか放流・解禁にこぎつけたようだ。
その強い意志と、宮川のアマゴに対する愛情に、心より敬意を表します。
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国道42号線を宮川へ向けて車を走らせ、(昨年)アマゴが釣れた地区へ近づくほど、豪雨災害の規模の大きさが肌で感じられるようになってきた。
至る所で土砂崩れが発生したようで、あちこちで通行止めがある。また、道路の地盤が水で削り取られ、迂回しなければ上流へ行けない場所も数箇所あり。
ごつごつした岩がむき出しだった川は、大量の小石と砂礫で埋まってしまい、直感的には全体的に川底が3〜5m程高くなった感じ。変化に富んでいた流れは、一本の「筋」のようになった場所が多数。
鮎釣りに向いたポイントがほとんど消えてしまっている。
ナチュラルウォーター「森の番人」でも有名な春日谷。
魚影が濃く、釣り易い谷で、以前は魚が付きやすそうな岩が点在する谷だったが幅1m程の細流と化していた。
また、写真左のように、谷へ入る道の橋が流されてしまっているので、車では奥へ行く事も出来ない。写真右は流された橋の残骸。
清涼な流れは、赤茶けた流れに変わっていた。
濁っているのではなく、恐らく上流部で、鉄分を多く含む地層や岩石が川へ流れ落ちた事による酸化鉄の色か、土砂崩れによって水が富栄養化し、珪藻類が繁殖したかのどちらかだと思う。
春日谷と本流の合流地点。下流側。昨年とは一変している。この付近は特に川が埋まっていて、橋から川までの距離が随分近くなってしまった。
上流側の様子。覚えている方も多いと思いますが、ここには沈み橋か堰堤か分かりませんが川を横切るコンクリートの人工物がありました。
解禁直後は一級のライズポイントでしたが、完全に埋まってます。画面中央やや左側に、僅かに頭が見えてるのが、おそらくその一部分。
暗い話ばかりしていても仕方ないので、明るい話題も一つ。橋の真下では、僅かながらライズを発見!そして、水が恐るべき透明度をしています。
日本一の清流の底力は、少しずつ川を回復していっています。正直、泥濁りで釣りとか魚なんて論外かと思っていましたが、これには驚いた。
漁協前のポイント。この日見た各ポイントの中では水量が多く、他と比べて昔の面影が残っていた唯一のポイント。
しかし、夏場行楽客で賑わう川原へ続く道は、崩落していた。
その他有名な谷入口付近。他と同様、水量がかなり減っていて、夏場などに渇水したら、流れが消えてしまうのではないかと思われる。
実際、いくつかの谷では水が伏流してしまい、流れが寸断されているのが何箇所も見られた。以前の姿に戻るのは、一体何年後だろうか?
反対に、異様なほど澄んだ本流の流れ。岩石や砂礫が川を埋め尽くしているので、川全体が一種の浄化装置のようになっているのだろうか。
しばらく進むと、ダムに続く道(右岸側)は崩落によって道が無くなっていた。
野又谷。最も様子が一変していた川。川は完全に一本の筋となり、至る所で崩落。ちょっと釣りどころの話ではない状況だった。
予想どおり村の状況はかなり酷い。しかし、復興のための作業は着実に始まっており、一日でも早く村に活力が戻る事を願っています。
一通り有名ポイントを見てまわり(※注 他にも色々行ってますが、全て紹介すると写真だけで60枚を軽く超えるので省略)せっかく来たので釣りを開始する事にした。
いつもの店に游漁証を買うために立ち寄る。
このとき既に時刻は午後2時。本当は釣りをせずに帰ろうかと思ったが、今年の游漁証の売り上げ=来年の漁協の活動に直結するわけであり、寄付の意味も込めて券を買う事にした。日券だけど(←ビンボーでごめんなさい)。
「すいません。日券ください」「はいはい・・・。あら、ゴメンちょっときらしてるわ」ってえーーっ!アカンやん・・。
ちなみにこの店、店の左半分が流されてるんです。流されて無くなった部分にはトタンが貼り付けてある。しかし、そんな店の中で囲炉裏を囲んでごろんと寝てる常連客(?)の方達が数名。うーん、たくましい。
「そこのカーブ曲がったところに他の店あるから、悪いけどそこで買ってー」毎度の事ながら、なんとものんびりした雰囲気。
で、少し離れた店で日券を購入し、良さそうなポイントを探しながら下流へ向かう。
途中、水深が少し深い良い感じの瀬があったので、車を降りて様子を見るがライズも魚影も無く、車へ戻る。
しばらく車を走らせて、異変に気が付いた。なんかポケットが軽い。
・・・・・財布が無い(マジ泣)
お・・お・おお落とした!?車をくまなく探す・・無い。最後に財布を使ったのは当然さっきの店。その時は持ってた。
てことは、さっきのポイントだ!車をすっ飛ばして戻り、車を停めた近辺を探す・・・無い。
自分が車を降りて、川へ降りて戻ってきたルートをくまなく探す・・・。無い。ついでに2往復・・・。やっぱり無い。
「来るんじゃなかった!日券なんて買うんじゃなかった!」ブツブツ呟きながら車へ戻る。
さっきの店で車に乗るとき落としたかも、という最後の望みに全てを賭けて、引き返す。
すると、店の前で日券を売ってくれたおっちゃんが立っていた。
「おう!あんた、財布置いてったらアカンで!」ぐはぁっ!(吐血)
すいませんでしたー(泣) ご迷惑をお掛けしました!もう本当に生まれてきてゴメンなさい!
店の中に入ると、オバチャンが財布を渡してくれたので、お礼にと1000円差し出すと(財布の中身は5000円ぐらいだった。)「いらんいらん!そんなんええわ!」「いや、でもしかしですな・・・」「いらんいらん!そんな気使わんといて!これは落ちてたんやなくて置いてあったんやから!」と、なんか凄まじいマシンガントークで断られたので丁寧にお礼を言って店を後にした。
唯一ライズを見た春日谷と本流の合流ポイントへ向かい、橋の上からライズを再度確認。ポツポツと安定したライズを発見!幸いにも入川用の階段は残っていたので、そこから川へ。
周囲は#24ぐらいのミッジがチラホラ。コカゲロウも数匹確認できた。石を何ヶ所かひっくり返してみたが、水生昆虫はほとんど確認できず。今年羽化する予定だった虫も、ほとんど流されたのだろう。
手始めに#18のパラダンで様子見。ティペットは8X。
一投目・・・パシッ!出た!俄然テンションが上がる。数投するが見にくるもののくわえず、結構スレてる。
フライを#16のフローティングピューパに変更。
慎重にライズ1m上流へ・・・・パシャッ!ヒット!
グリグリ回転するローリングファイトを何とか耐え、慎重に寄せてくる。
祝・解禁
ようやく、2月の解禁から自然河川で1匹釣れました。長かった。この1匹を釣るまでの道のりは本当に長かった。
このまま一生ボーズが続くのかと思っていた。
ほんの少し上流側のポイントへ移動すると、そこでもポツポツとライズ。かなり浅いところまでアマゴが泳いできて、目の前でもライズ。
見事な保護色
フライをライズの1m程上流へ落とすが、見には来るがなかなかフライをくわえない。相当いじめられたのだろう。
ティペット9Xを50pほど足して、再びキャスト。
バシッと2匹目。「いやー、本当に来て良かった!宮川最高!」財布を落とした(置き忘れた)事は、これで帳消しだろう。
しかし、さすがに解禁1週間が経ち、学習したアマゴは手強くフライに反応しなくなった。
水面には#20〜#24ぐらいのミッジが流れていたので、オナシカワゲラ兼ミッジピューパ&アダルトのなんだかよく分からないオリジナルフライに交換。
先程までフライを無視していた魚が、反転して追い食いする反応の良さ。
2匹ばらした後、3匹目を釣り上げる。3匹釣れるとかなり余裕が出てきて、周囲を観察。
上の2枚の写真だけ見ると、ここが大災害のあった川だと忘れそうだ。
ライズは相変わらず続いており、やめときゃいいのに管理人は無謀な行動に出た。
ライズしてる魚を、ドライでバシッとヒットさせる動画を撮影しよう!
ヤベーよこれ!そんな映像を公開したら、仕事サボってここ見てる人達が会社休んで宮川へ押しかけちゃうよー。とか余計な心配をしつつコチラをどうぞ。
管理人VS宮川ライズアマゴ
【配信終了しました】
へたくそでゴメンなさい_| ̄|○
あーもう、分かってる!言われなくても分かってる!
あわせが早すぎるとか強すぎるとか、そんな事は自分が一番分かってる!
ついでによく見えませんが、2度アタックしてきてるんです。分かってますって!釣れなきゃ何の自慢にもならん事ぐらい!
その後、ライズが少し減ってきたので、ポイントを休ませると下流の様子を見るため移動。
砂地には動物(イノシシ?)の足跡が多数。山が荒れ、食べ物を探しに川まで降りてきたのだろうか?春日谷の出会いから300mぐらい下流を探索したが、魚影は見られなかった。
表面の滑らかな石が多い川だが、川全体に積もったこれらの石が西日に照らされ、キラキラと光っている。
歩きながら「ダムが無ければ、山に広葉樹がもっと多ければ、この災害は防げたのだろうか?」などと考える。
元々川は氾濫を繰り返すものであり、それによって下流域に土砂が運ばれ、肥沃な大地や平野を形成する。コンクリートで無理矢理抑え込んでいた力が、たまたま2004年に溢れ出たのだろうか?
先程のポイントへ戻ると、再びライズが始まっていた。
川の氾濫に耐え、今の時代まで生き残ってきた「天然」と呼ばれる魚は、素直にスゴイと思う。そして、養殖魚とはいえ、その遺伝子を受け継ぐアマゴはたくましいものだ。
再びライズと悪戦苦闘し、流し方を変えたりフライのCDCをむしったりしながら、2匹ばらしつつもさらに2匹を追加。
最初の2匹以外、使用したフライは全て右の写真のフライ。#20。
アブドメンはフレックスボディレース黒。ソラックスとテイルはコック・ド・レオン。テールに使用した残りを、指で団子状に丸めてからダビングし、ニードルで適当にピックアップ。テイルをカットすれば、ミッジアダルト〜ピューパになる。シーズンを通じてかなり釣れます!
最後に、三重県のフライフィッシャーの方達へ。
昨年までと比べ、川の状況はとても酷いのは事実です。特に谷は埋まってしまったところが多く、ダム上の谷は道が無くなって入れなくなった所もあるようです。
しかし、釣れなくなったという理由で、三重県宮川を見捨てないでください。
岐阜県や長野県の川へ行く事は簡単ですし、私もおそらく、今年は他県への釣行が増えるとは思います。しかし、今まで三重県の渓流の代名詞、宮川にお世話になった方は多いはず。ささやかな寄付の意味も込めて、宮川漁協への恩返しをお願い致します。
財布ごと置いてくる必要はありませんので。