2014年3月1日 三重県
安濃川発眼卵放流 ボックス回収
放流直後にすぐ上流で災害復旧工事が始まり、卵が延々と泥濁りの水に晒されることから始まった2013〜2014年の発眼卵放流。
これが今の安濃川の状況。
生物多様性だとか、アマゴの遺伝的特性だとか、後世に残すべき自然とか、そんなことが悠長に議論できたのは過去の話。もはや、魚や生物が棲める環境、いや、川そのものが消えてなくなるかの瀬戸際となっている。
只でさえ水量が乏しく、水深も浅い安濃川。このまま毎年土砂が排出されると、全ての水が伏流し、水無川になるかもしれない。
これは安濃川に限った話ではなく、例えば三重県最大の支流である宮川でも、2004年の豪雨災害によって、ダムより上流にあるいくつかの川(沢)で、それ自体が土砂に呑み込まれ、完全に消えた谷がある。
ここ10年で、日本の気候は確実に急激な変化が起きている。
100年?1000年?10000年?長い年月をかけて、水と山と森によって形作られた川が、たった1日の雨で姿を消す。これは恐ろしい事だ。
発眼卵放流ポイントまでの道路は、何カ所かアスファルトが剥ぎ取られており、護岸の工事と共に道路の修復工事も行われているが、重機が入るとすぐ痛むためだろうか、道路工事は必要最低限の場所でしか行われていない。
また、一見無事に見える護岸も所々に亀裂が入っており、また大きな台風が来るとさらに被害が発生する可能性がある。
泥に埋もれた保護用のカゴを浅場に移動し、ボックスを取り出す。
正直、この時点では「全滅」という言葉が頭にあった。2006年に季節外れの大雨でボックス下部が泥に埋まり、卵が全て死んだことがあったからだ。
緊張の一瞬。ちなみに、石を1個どけるだけで、周囲がコーヒー牛乳のように濁る。
うようようよ・・・
「よく頑張った!!」素で、思わず声が出た。
実は、バイバードボックスを使った発眼卵放流は、通常は川底に埋めて使う。カゴは別にいらないのでは?という疑問が出る事もあるが、やはり劣悪な渓流では必須でしょう。
ところで、管理人は今のこの川の状況に絶望しているかと言うと、そうでもない。おそらく、5年程度である程度は回復し、放流を行わなくてもアマゴの再生産が始まると思う。
むしろ心配なのは、今の気候だと5年から10年に1度やってくるであろう、川の形を変えるほどの大雨にどう対処するかということ。
堰堤やダムでは全く防げないのは、もはや語るまでもない。
流されては治し、崩れたら補強する。前回流されたものと同じ手法・構造で。これはさすがに考えを改めた方がいいだろう。
「川から水は溢れる」ということを前提にし、災害対策を考えた方が良いと思う。