どこまでがフライフィッシング?
日記より転載
2005年11月、フライロッダーズに続き、ついにフライフィッシャー誌にまで、ハエウキを改造したインジケーター(通称プレザントストライカー)が数ページの紙面を割いて掲載されました。
おちゃらけた雰囲気のフライロッダーズとは違い、やや保守的で最低限の品位を保っていたフライフィッシャーが、あの記事を載せたことに少々ショックを受けました。
断っておくが、自分は杉○研○氏を嫌いな訳ではない。
最近、やや低迷気味のフライ業界において、間違いなく最も勢いのあるプロのフライフィッシャーであるし、キャスティング技術は言うに及ばず、スルーウィングやTP77・88フック等の新製品開発力、オリジナルロッドの開発、果ては管理釣り場の運営まで、常人では考えられない行動力を発揮しているし、結果も出している。
その点は敬意を表するに値するし、これからも頑張っていってほしいと思う。
だが、何故あのようなインジケーターを、わざわざ紙面で発表するのか。身内で楽しんでいたらいいだけのモノではないのか?
どこまでがフライフィッシングで、どこからが邪道なのか、これは誰にも分からない。
スチロールや繊維を使ったインジケーターはOKで、日本古来の棒ウキを改造したインジケーターがダメなんてのは、見る人の既成概念に大きく左右されるし、極端な人ならインジケーターそのものがダメ、ドライフライはスタンダードしかダメ、ロッドはバンブー以外は認めないって人もいるだろう。
創意工夫、釣るための探求心、もっとフライを楽しくするために・・・言い方を少し変えれば、どうとでもそれらしく聞こえるが、あのインジケーターをOKにしてしまったら、フライフィッシングがどんどんフライフィッシングではなくなっていく気がしてならない。
面白ければ、釣れたら何でもいいというならば、わざわざフライロッドにフライラインを通してリーダー結んぶなんて面倒くさい方法で釣る必要は無い。
フライロッドに海釣り用のリールでもつけて、アジやサバ釣りの要領で釣ればさらに釣果は上がるでしょう。飛ばしウキを改造すれば、大遠投も可能です。ついでに、フライも1本なんてケチくさい事を言わず、5〜6本結べばトリプルヒットも夢じゃない。
さらに「工夫」を重ねて、フライも匂いをつけたりイクラやミミズでも乾燥させて「新マテリアル」とか言ってフックに巻きつけてタイイングすれば、100匹釣りもたやすいでしょう。
それはフライじゃない?それは餌釣りだ?
何を言ってるんですか、これは釣るための、より釣りを楽しむための創意工夫です。
鳥の羽根はOK?ウサギの毛もOK?ウサギの皮が少し付いたラビットスキンもOK?じゃあ日本古来のサビキ釣りに使われてるサバ皮もOKだよな?だったらイカの皮も大差ないだろ?それならスルメでもいいじゃないか・・・・。
誰がどこで線を引くか。
スポーツや趣味の世界では、ある一定のルールとファンの自制心、言い換えれば「かっこ良さ」があるから面白いんじゃないだろうか。
例えば長良川の解禁直後のミッジングなら、遠くのライズを狙って寒さに震えながら何度もキャスティングを繰り返し、捕食物や川の状態をよく観察し、細いティペット、小さなフライで釣るからこそ面白いのだと思う。
苦労して釣るからこそ、1匹釣れた喜びが倍増し、多くのフライフィッシャーが魚や川を大切にしたいと思うきっかけになり得るのではないだろうか。
それがいきなり隣の奴が「もっと釣るために」とか言ってゴムボートでライズまで近づいて釣り始めたら、「それはフライフィッシングじゃない」と言いたくなりません?
「ライズに届かないから」という理由で、橋の上からフライラインを垂らすフライフィッシャーを見て、どう思います?
「釣るための工夫」とか言って、イクラばら撒いてエッグフライで釣り始めたら、一言ぐらい言いたくなりません?「それは止めたほがいい」と。
やってる本人は「沢山釣るため」の「釣り方の工夫」でしょうが、傍から見たらそれはフライフィッシングではなくなっています。上記インジケーターも、そんなギリギリの線を超えてしまっているモノにしか見えません。
もう一度言います。身内で楽しんでいる分には何も言うことはありません。
しかし、それらしい理由を付けて大々的に公表するのはいかがなものかと思う。日本のフライフィッシングを、どうしたいのかと疑問に感じる。
かっこ悪すぎです。