盤屋さんの技術講座

電路・負荷保護(1)

 

PAGE 9

 

株式会社ホクト

 

update 2006.4.25

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

81.電線路の保護(電線路:電線、ケーブルなど)

 

 

 

 

 

電気を供給する電路は電気的な事故から保護する必要がある。保護が不充分であれば電線が焼損し火災や人身事故が発生する。

 

@短絡に対する保護

 

 

 

 

 

・短絡とは異なった極性の導体が接触した状態を言う。

※高圧で十数kA、低圧で変圧器二次電流の30倍ぐらいの電流が流れ火災や機器の破損が発生する。

※アーク(電弧)を伴った場合は電流が小さくても火災の危険が高い(アーク短絡)

・保護には遮断器、ヒューズを用いる(短絡電流を遮断できるもの)Copyright HOKUTO

・高圧回路では、限流ヒューズや過電流継電器と遮断器を組み合わせて用いる。

   (アーク:電気の火花)

 

 

 

 

A地絡

 

 

 

 

 

・地絡とは電位のある導体が大地に対し接触した状態を言う。

 

 

 

 

 

 

例)電線が傷つき、筐体と接触した。 例) 絶縁物が劣化し、やがて絶縁が破壊され火災が発生した。

※制御回路が誤動作する場合もある。

※電源の接地方式や金属構造物の接地状態で異なるが、最大では短絡並みの電流が流れる。

※アークを伴う場合は電流が小さくても火災の危険が高い(アーク地絡:400V以上の回路に多い)

 (住宅の200V回路と300Vを超える回路ではELBの設置が必要:内線規定1375-1

 

 

 

 

 

・低圧電路の保護には漏電ブレーカーが用いられる。

・非常用や消防用で遮断すると大きな危険を招くような電源では漏電警報器を用いる場合もある。

・高圧では地絡継電器と遮断器を組み合わせて用いる。

 

 

 

 

B過負荷

 

 

 

 

 

・モーターなどに負荷が掛かりすぎ、通常の数倍の電流が流れる状態を言う。

 

 

 

 

C過電流

 

 

 

 

 

・定格を超える電流

※上記@〜Bを言う場合とBだけを言う場合がある。

 

 

 

 

82.モーター保護(交流誘導電動機)

 

 

 

 

 

モーターは負荷の状態やモーターそのものの故障で加熱し場合によっては焼損するため保護が必要である。

 

@過負荷保護

 

 

 

 

 

・モーターの特性に合わせた保護装置を用いる。

※モーターブレーカー、サーマルリレー+電磁接触器、静止形保護継電器など。

◎機械自体を保護するために瞬時過負荷を検出するショックリレーもある。

 

 

 

 

A欠相保護(単相運転保護)

 

 

 

 

 

・欠相とは3相で給電すべき回路が、単相で給電する状態になることを言う。

                      →通常の数倍の電流が継続して流れ、電路、モーターともに焼損する。

・欠相検出機器 → 欠相保護付きサーマルリレー、欠相保護機能を持つ保護継電器

・上記と電磁接触器または遮断器を組み合わせて用いる。

 

 

 

 

B逆相保護

 

 

 

 

 

・モーターが逆回転するような相の接続状態を言う。→ 機械の破損、モーターの焼損

・逆相が検出可能な継電器と電磁接触器を組み合わせて保護する。

 

 

 

 

83.漏電保護 (詳細は内線規定1375-1を参照:詳しい規定がある)

 

 

 

 

 

絶縁物の劣化や導体に樹木、動物などが接触し大地に対して電流が流れる事がある。

これを漏電と言い火災や感電事故が発生するため保護が必要である。Copyright HOKUTO

※地絡も漏電も意味は同じであるが高圧以上では地絡、低圧では漏電と言う場合が多い。

 

@漏電による火災を防止する。

 

 

 

 

 

1)漏電警報器

・回路を遮断すると危険な場合は漏電火災警報器を取り付ける。

 (非常用照明、非常用エレベーター、消防用設備、鉄道用信号機など)

・通常の漏電検出方式のものと、絶縁状態を監視する方法(少ない)がある。

2)漏電ブレーカー(ELB

50mA以上のELBを用いる場合は、ほとんどが漏電火災を防止する目的である。

   ◎400V回路ではほとんどの場合ELBを設置しなければならない400Vはアーク地絡の可能性が高く火災の危険が大きい)

 

 

 

 

A感電防止

 

 

 

 

 

・漏電ブレーカーを用いる。

・家庭用を除き、分岐回路に施設する場合が多い。高速、高感度型を用いる。

高速型   :0.1秒以下で動作するもの。

高感度型 30A以下(5,10,15,30A)で動作するもの。

・二次配線の長さが長い場合は洩れ電流が多くなり、誤動作する可能性が高くなる。

 

 

 

 

 84.制御回路の保護

 

 

 

 

 

制御回路は過電流遮断器(ヒューズ、MCCBCPなど)で保護する。  ※CP:サーキットプロテクタ

ただし、次の場合はこの過電流遮断器を省略できる特例がある。

@分岐MCCB(モーター保護など)で制御回路の電線が保護できる時(下記の条件が一般的)

1.25SqMCCBが15A以下の場合  (公共建築工事標準仕様書:一般的でもある)

2SqMCCB30A以下の場合    (内線規定3302-5Aa)

A制御回路が短く、短絡などが発生しにくいと認められる時

・制御回路の「こう長」が3m以内のとき  (内線規定3302-5Ad)

 

 

 

 

85.開閉と遮断

 

 

 

 

 

※遮断とは短絡や地絡などの異常電流を切るもので、開閉とは異なる。

※盤の分岐MCCBなどでは主幹MCCBと同時に遮断する(カスケード遮断)ように組み合わせを選定すれば少容量でもよい。

 また、カスケードでMCCB1回だけの遮断能力はカタログ値より大きいため、回路ごと交換可能なコントロールセンタなどでは、さらに小さい遮断容量のMCCBを選択できる場合もある。(T種カスケード遮断容量:メーカーに確認を要す)

  ・開閉とは定格(または過負荷程度)以下の電流を開閉(入切)することを言う。

・開閉容量を決定する場合は、次の点に留意する必要がある。

 

 

 

 

 

 

電源

回路電圧

負荷の力率

負荷の性質

開閉の頻繁度

制御方法

 

ACDC (DCのほうが困難)

電圧が高いほど困難Copyright HOKUTO

力率が低い(悪い)ほど困難

突入電流がある場合は投入容量が問題になる

頻繁に開閉するほど接点が消耗する(寿命)

正転、逆転を繰り返すような場合は大きな開閉容量が必要

 

 

 

 

※それぞれの機器の定格値や寿命曲線を見て決定する。

※これらは、スイッチ、リレーなど、接点全般に適用される。

 

 

 

 

 86.接地

 

 

 

 

 

接地とは導体または機械器具を大地に対して電気的に接続することを言う。

・接地は大きく分けて次の様な目的で行われる。

 

 

 

 

 

 

 

@絶縁破壊や誘導による異常電圧の防止

A雷からの保護

B保護装置の動作を確実にするための接地

Cノイズによる機器の誤動作防止

D大地を電気回路の一部として使用する場合

E静電気による危害を防止するため

Fその他(電波の送受信に関するもの等)

 

 

 

 

 

・盤の接地はほとんどが@〜Cである。

・接地の種類を下記に示す(電気設備技術基準の解釈、内線規定JISを参照)。ただし、一次電圧が特別高圧の場合を除く。

 

 

 

 

 

種類

旧規格名称

目的

接地線の最小太さ

(銅線の場合)

適用区分

備考

 

 

 

 

 

A

1

感電防止

2.6φ(5.5sq)以上

高圧の筐体鉄台等

 

 

 

 

 

 

B

2

混触時の二次

電圧上昇防止

2.6φ(5.5sq)以上

変圧器容量で異なる

高圧から低圧に変換する変圧器の低圧側中性点又は

混触防止板 ※1

200V級は中性点以外の線でもよい(二次電圧が

 300V以下)

 

 

 

 

 

C

特別

3

感電防止

1.6φ(2Sq)以上

過電流保護器の容量で異なる

低圧300V超過回路の

機器筐体

例)400V回路の筐体

 

 

 

 

 

 

D

3

感電防止

1.6φ(2Sq)以上

過電流保護器の容量で異なる

@高圧回路の変成器二次

A低圧300V以下の筐体等

@VTCTZCT

など

A例)200V回路

 

 

 

 

 

A

避雷器用

1

雷害防止

14Sq以上

高圧避雷器二次

(特別な規定がある)

盤内では端子台までは他の接地や筐体と分離

 

 

 

 

 

 

◆ sqとはスケア(スクェア:Square:平方:mm2)

 

0.混触とは、低圧電路と高圧(特高)電路の接触又は変圧器内における低圧巻線と高圧(特高)巻線の接触を言う。

1.混触防止板付き変圧器では混触防止板を接地し、二次側を非接地とする場合もある。(高低圧電路の混触が無いとき)

2.盤内では種類の違う接地線は「接地用TB又は接地母線」以外の場所では接続しないのが原則

3.上表は盤に対するもので、盤外や移動電線は含まない。

4.避雷針は別の規定があり、一緒に接地できない。

51997/6以降は第1種、第2種、特別第3種、第3種接地工事がABCD種に改正された。

6.接地線は、地絡などの異常時に流れる電流に耐える事が必要であるため変圧器、過電流保護器の容量によってサイズが異なる。

地絡電流値は、接地方式で大きく異なる。(共用接地では短絡と同様になる場合もある)

7.参考:変圧器の一次電圧が15,000Vを超える場合のB種接地線は4φ以上

 

 

 

 

87.耐電圧、雷インパルス耐電圧、絶縁抵抗

 

 

 

 

 

@耐電圧(耐電圧試験)

 

 

 

 

 

製品の過電圧に対する強さを試験する電圧を言う。時間は数サイクルから数分まで。

また、器具、材料によって試験方法が異なる。

◆空気中(普通の耐電圧:一般試験)

導体相互間、又は導体と大地間に試験電圧を加える。

JISC8480キャビネット形分電盤の商用周波耐電圧試験                   単位(V

 

 

 

 

 

主回路の定格電圧

試験電圧(交流)

制御回路の電圧

試験電圧(交流)

 

 

 

 

 

 

60以下

1000

12以下

250

 

 

 

 

 

 

60を超え250以下*

1500

12を超え60以下

500

 

 

 

 

 

 

60を超え300以下

2000

60超過

2U+1000 最低1,500

 

 

 

 

 

 

250を超え600以下*

 

 

 

 

 

 

注)Uは制御回路の電圧 

*印はJISC4620キュービクル式高圧受電設備の値

※制御回路は主回路と分離しているもの。電子回路などの機器は取り外して試験してよい。

※参考:試験方法

◆水中(主にピンホールの有無を調べる:電線類)

導体と周囲の水の間に電圧を加える。Copyright HOKUTO

◆スパーク(高い電圧の電線が触れた状態に耐えるか:電線など)

空中に吊るした金属の数珠球を絶縁被覆に触れさせ導体の間に電圧を加える。

◆沿面耐電圧

            絶縁物の表面に電極を接触させ、電極間に電圧を加え発煙、燃焼、またはフラッシュオーバー

(絶縁破壊によって電流が流れる事)が発生しないかを試験する。

 

 

 

 

A雷インパルス

 

 

 

 

 

・主に、雷のような瞬間的で高い電圧に耐えうるか否かを試験する。

 右の図はインパルスの波形である。

 

 

 

 

 

 

B絶縁抵抗

 

 

 

 

 

・絶縁抵抗計(通称メガー)を用いて導体間または導体と大地間の抵抗を測定する。測定電圧は器具定格電圧で変化する。

・温度を上げた状態で測定する場合もある(電線など)

 

◎ 下表に絶縁抵抗の例を示す。 盤の場合はJISの規定以上であることが必要。

 

 

 

 

 

内線規定(低圧電路の絶縁抵抗値:1345-2

JISC0704制御器具の・・絶縁抵抗

 

 

 

 

 

 

使用電圧の区分

絶縁抵抗値

定格絶縁電圧

絶縁抵抗

抵抗計電圧

 

 

 

 

 

 

300 V

以下

対地150 V以下

0.1 MΩ以上

30 V以下

5MΩ

以上

100 V

 

 

 

 

 

 

対地150 V超過

0.2 MΩ以上

30 V超過60 V以下

250 V

 

 

 

 

 

 

300 V超過

0.4 MΩ以上

60 V超過660 V以下

500 V

 

 

 

 

 

 

 

 

660 V超過

1,000 V

 

 

 

 

 

 

◎耐電圧や絶縁抵抗は機器の種類や場所、適用される規格、仕様によって異なるので注意が必要。

 

 

 

 

 

 

※絶縁体に電流が流れないわけではない。電圧を上げていくと絶縁が破壊されて、電流が流れる。

一旦破壊された絶縁体の絶縁性は元に戻らない。一定時間の間、何ボルトの電圧まで耐えられるかを絶縁耐力と言う。

             →絶縁が破壊されると火災が発生する場合がある。

※絶縁破壊は絶縁性の最も弱い部分が破壊される。

             →傷、薄い部分、ピンホール、汚れ、鋭角な金属部分、水分などが原因

※電圧の上昇速度が速い(いきなり電圧をかける)と、多少低い電圧でも絶縁破壊が発生することがある。

※電圧を加える電極が尖ったものほど絶縁破壊しやすい(電位傾度)

※耐えられる電圧はそれぞれの絶縁物によって異なる。