シン・ゴジラ

□ゴジラ第二形態

 ぎょろりとした虚ろな目と不気味な動きでこれがゴジラとは理解りませんでした。観客にゴジラを出すと期待させて実は違う、と言う落ちなのかと思いました。パチモノと言うか、それこそ建造物を破壊していなかったら作り物に見えて酷く現実感の無い、不協和音を奏でています。

□ゴジラ第四形態

 事前にも公開されていた言わば基本のゴジラですね。不規則に生えた牙とか放射能で不自然に発達した歪さが出ており、生理的な不快感があるのが苦手で懸念でもあったのですが、映画本編ではあまりアップになったり強調されなくて良かったです。
 着包みではなくCGで表現されているのは残念ですが、とても長い尻尾や踵を地面に着けていないところはCGだからこそ出来る姿でそういう使い方には好感が持てます。GMKゴジラも今だったらあんな不格好にはならなかったのでしょうなぁ。CGの質は違和感が少なく巧く馴染んでいるところもありましたが、あからさまにCGにしか見えないところも同じくらいあり、未だ手放しで称賛出来る域には達していませんなぁ。
 お馴染みの放射火炎に加えて背鰭から対空レーザーの様な攻撃を発したり、極め付けには尻尾の先端からも放射火炎を吐いたのには驚かされました。
 映画を通してゴジラが齎した被害は大きかったのですが、ただ活躍の度合いには物足りない気持ちが強いです。もっとビルを派手に破壊するところを見たかったですし、放射火炎を吐いただけで眠りについたのには落胆しました。目立ったランドマークを破壊する事もありませんでしたなぁ。スカイツリーを破壊して欲しかったです。

□音楽

 この映画で一番 酷かった点を挙げるなら間違い無く音楽です。その軽い音楽は見ていて醒めました。もっと重厚な音楽にして欲しいです。ゴジラが放射火炎を吐く場面で神秘的な音楽が流れますが、「何か違う」と言う印象が先行します。
 定番の伊福部音楽が流れる個所もあるのですが、其処だけ落ち着くと言いますか、ゴジラを見ている気分になれました。音楽は佐橋俊彦に担当して欲しかったですなぁ。器用にゴジラらしい音楽を作れそうです。

□内閣総理大臣

 凡才ですが国民を思う気持ちは嘘には見えず好印象です。

□結末

 矢口プランが成功しゴジラを凍結させて終わったのですが、盛り上がりに欠け「え、終わり?」と拍子抜けでした。でもゴジラと共に生きて行かなければならない、と言うのはこれまでに無い印象深い終わり方でした。

□総評

 これは映画ではありません。退屈せずに見られどうなるのか気になった事は否定しませんし、低く見積もっていた当初の予想より楽しめた事は事実です。ただこれはゴジラが現れたらどうなるか、そのシミュレーションを見せられているだけです。勿論 結果的に面白ければエンターテイメントとして、興行として、商売として誤りではなくその点を批判は出来ません。
 ゴジラを中心とする特撮場面の表現は流石です。漫然と聴衆が逃げ惑うだけではなく工夫が凝らされていましたし、頭上をゴジラの尻尾が通り過ぎるところとか面白いです。
 それに比べて人間パートのお粗末さは実に対照的でした。これは最初から期待出来なかった部分ですが案の定と言う感じです。主人公が官僚と言う事で描写が政府に終始していて、その他の視点が一切合切 排除されています。世界が其処だけで完結していてドラマが広がりません。あと人の見分けがつかなくて誰が誰だか理解らないです(ぉ
 ゴジラが呆気無く凍結されたのと相俟ってか、見終えた時に映画を一本 見たと言う感慨や満足感がありませんでした。つまらなくなかったし想像していたよりは楽しめましたが、それでも矢張りこのスタッフではもうやって欲しくない、そんな感想です。本作も面白かったのですが、一度 見て展開を見てしまうと、二度三度と見たくはなりません。特撮パートだけはまた見たいのですが。
 余談になりますがパンフレットの情報量が不足しているのも残念です。ゴジラの各形態が写真で紹介されていませんし、インタビューも少ないです。

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(16.07.31)