劇場版
仮面ライダーキバ
魔界城の王

□レジェンドルガ

 今回の映画で登場する敵が、レジェンドルガ。ファンガイアの他にも様様なモンスターが存在する世界ですから、劇場版だけのファンガイアではないモンスターが敵として登場すると言うのは面白い要素です。しかしファンガイアを上回るとされ、ガルルやドッガが慌てていましたが、後半では割合簡単に撃退されていてそんなに強力な魔族とは思えませんでした。

□「青春なんてくだらなーい。貴方はキバなんだから戦ってれば良いのよ」

 高校に入学した渡に恵が言い放った一言です。とても酷い言葉なのですが、それ以上に渡がキバである事が周囲の人間に知られているのに驚きました。

□人質が居ても構わずに殴りかかる名護さん格好良い!

 渡が通う高校に逃げ込んだ杉村がなつきを人質に取るのですが、我らが名護さんがそんな事で怯む筈がありません。迷わずに杉村を殴るのです。名護さんは最高です!

□キバとイクサの共闘

 レジェンドルガとの戦いの最中、キバとイクサが共に並ぶ場面がありました。共闘と呼べるほど時間はありませんでしたが、キバとイクサが協力して並んでいる姿に興奮します。普段は見られないからこその感動がありますね。

□ガルル、バッシャー、ドッガを使役するキバ

 三匹のモンスターを従えるキバと言う非常に燃える図です。TVシリーズでもこういう場面が見たかったですなぁ。また三匹と協力して戦うだけではなく、流れる様な動きでフォームチェンジを繰り返しました。短い場面なので一つひとつをじっくりと見る余裕はありませんでしたが格好良いです。

□ブロンブースター

 TVシリーズでは一度しか出て来ていないブロンブースターで逃走するマンドレイクレジェンドルガを追走、そのまま撃破しました。ブロンブースターとは貴重なものが見られました。

□マンドレイクレジェンドルガ

 四人のレジェンドルガで最初に死亡したので活躍した印象がありません。抑抑、劇場で見ただけでは何がモティーフなのかも理解りませんでした。マンドレイクらしい要素が見当たらないです。

□ガーゴイルレジェンドルガ

 ガーゴイルがモティーフだとは気付かなかったです。悪魔を思わせる邪悪な姿が格好良いのですが、哀れにも仲間であるレイの攻撃に巻き込まれてしまいます。怒って抗議しますが聞き入られる事は無く、そのままレイに逆襲され死んでしまいました。

□紅父子

 面白い間柄でした。序盤は渡が一方的に音也を父親と慕うのですが、それを信じない音也の反応は冷たいです。それに不満を持ったり、「実の息子を見捨てるなんて酷い」と言ったりする渡が新鮮でした。しかし渡を息子と認識してからの音也は、打って変わって父親らしく振舞います。父親の愛情を感じられる場面も多くて強い親子の絆が確かにありました。本作のドラマ部分に於ける骨子でしょう。
 でも渡が「父さん、親孝行させて下さい」と言うなり音也に強烈な一発を浴びせて気絶させたのには笑いそうになりました。渡のあんな強い態度も珍しいですし、それだけ音也への愛情が強いのでしょう。

□机母子

 不要だったのでは、と言う想いが拭えません。親子のドラマは既に紅と麻生の二組があるのですから、なつきととわは削ってその分を他に回して欲しかったです。

□魔界城でのゆりと恵の会話

 閉ざされた扉を突破しようと、扉に体当たりを仕掛ける二人が交わした会話です。
ゆり「貴女体重何キロ?!」
恵「四十五キロ!」
ゆり「二人合わせて八十キロ・・・行けるわね!」
恵「・・・ん? と言う事はお母さん三十五キロ? 嘘吐き!!」
 この流れに笑いました。嘘吐きと言われたゆりがてへっと笑うのも愉快です。

□麻生母子がイクサに変身

 恵が変身したイクサと、ゆりが変身したイクサが並び立つ、劇場版でしか見られない燃える場面でしょう。イクサへの変身を熱望する二人が、抜群のコンビネーションを見せてくれました。

□白峰天斗/仮面ライダーレイ

 何の為に登場したのか存在意義が不明瞭でしたが、最後に啓介が変身したイクサとの一騎打ちに敗れたのを見て理解しました。名護啓介の物語を盛り上げる為に必要な存在だったのですね。
 ただ、描写が少なかったのでどうしても淡白な感は否めません。啓介が以前所属していた組織の先輩であり、啓介の事を莫迦にしていて、実際に会うまでは音也の事を尊敬していて、力を求めてレジェンドルガに心も躰も売り渡した、本編で描写されるのはこれだけであり、そしてこれ以上の事は理解りません。もっと天斗と啓介のドラマが掘り下げられれば、最後の一騎打ちもより盛り上がったのではないでしょうか。

□仮面ライダーイクサ

 この映画で一番活躍した仮面ライダーは、或いはイクサだったのかも知れません。啓介、音也、恵、ゆりと四人もの人間が変身して、多くの場面で存分に活躍していました。

□仮面ライダーアーク

 映画だけの仮面ライダーが敵として登場するのは毎年の事なので、特にこれと言った第一印象はありませんでした。しかし映画本編を見てそれは一変します。戦闘の質が良くその大きさが上手に表現されていたので、とても強いと言うのがストレートに伝わります。強いと言い張る映画のライダーはこれまでにも多く居りましたが、これほど“強い“と言う事に説得力があったのは他にありません。仮面ライダーアークは本当に強い仮面ライダーでした。
 ところで、パンフレットにキバとの大きさ比較が載っていましたが、絶対に映像ではもっと大きかったと思います。設定ではこんなに小さいのか、と驚きました。

□仮面ライダーキバVS仮面ライダーアーク

 三メートルの巨体を誇るアークですが映像に迫力があってとても良かったです。キバとアークの格闘戦は当然ながら合成が駆使されましたが、驚くべき事に見ていて全く違和感がありません。実際にその場で戦っている様に見えます。これには驚愕させられました。キングダークから数十年・・・とうとう此処まで来たのだと感慨深いです。

□仮面ライダーキバ飛翔態VSレジェンドアーク

 飛竜を思わせる姿で飛行するキバと巨大な翼を生やしたアークが、空中で派手な激闘を繰り広げます。幾度かの激突の後にキャッスルドランが出現、ドランの力と一体化したキバが必殺のライダーキックを決め、月にキバの紋章が刻まれる、この一連の流れがスピーディで迫力もあって最高でした。圧倒されます。最後の月に到達して紋章を刻み込むと言うのが、それだけの破壊力を持っているのを感じさせる説得力があります。言葉ではなく映像でその凄さを示してくれました。最高潮に相応しい盛り上がる戦闘です。
 惜しむらくは大半がCGで表現されている事でしょうか。日本のCG技術ではどうしても不満が残ってしまいます。意味の無い過程なので言っても詮無き事ですが、もしもこれがCGには見えない、実写としか思えない質であったらもっと良くなっていた事でしょう。

□キバットとタツロット

 最後に「やっぱりタッちゃんが居ないと駄目だわ〜」、「やっぱりぃ〜?」と言う会話がありましたが、目立った台詞がそれだけだったのが寂しいです。もっとドラマにも絡んでリアクションが欲しいですなぁ。レイキバットやアークキバットを見て何か思う事は無かったのでしょうか?

□総評

 正直に申しまして、話の運びは強引でしたし無理がありました。手軽に時間を移動し周囲が簡単に受け入れているのも些か不自然に思えます。また観賞後にパンフレットや関連書籍のインタビューを拝見していますと、どうやら結構な量がカットされている事が読み取れます。展開が性急だった原因でしょう。この辺は素直に褒める事は出来ません。ディレクターズカット版の存在は知っていましたが、それが見たいと思ったのは本作が初めてです。
 それでは、小生はこの映画をつまらないと感じたのか? 答えは否です。上記の様な問題点を抱えた作品ではありますが、率直に言いましてとても面白かったです。これまではMISSING ACEが一番でしたが、それを上回る作品となりました。
 何がそんなに良かったのか、答えは単純にして明快、仮面ライダーに於いて最も大切な要素が充実していたからです。それはアクション、仮面ライダーや怪人の戦闘です。GSLが最たる例なのですが、一番重要な此処が軽視されている事がありました。そうすると他が良くてもどうしても大きな不満として残ってしまいます。その点本作は文句無しと言えましょう。随所に挿入される戦闘は工夫が凝らしてあり決して単調にはなりません。どれも見ていて引き込まれるものです。最近のTVシリーズには欠けていたものが大いに感じられました。これでこそ仮面ライダー、これでこそ特撮ヒーローです。
 レジェンドルガも仮面ライダーレイも、全体的に敵の描写が薄いのは難点ですが、大満足で最高の仮面ライダーでした。

(08.08.17)

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