劇場版
とある魔術の禁書目録(インデックス)
エンデュミオンの奇蹟

□「ちんぷんかんぷんなんだよ」

 初めて目にする巨大宇宙エレベーターエンデュミオンが、これまでもずっとあったと言われる月島さん現象に目を白黒させるインデックスです。視聴者も全く同じ気持ちです(ぉ

□ステイル=マグヌス

 他の誰よりも輝いていたのはステイルでしょう。ビュンビュン走り回り炎の魔術で戦う、最高に格好良かったです。ステイルの出番が多く活躍していたのが予想外の収穫でした。映画にステイルが出ると知って喜びつつも、それほど厚遇されないだろうと思っていたのでこれは本当に嬉しかったです。主人公の当麻とヒロインのインデックスを除けば、レギュラー陣で最も扱いが良かったのはステイルでした。
 この映画でステイルの弟子が初めて顔見世しましたが、ステイルの活躍は流石は師匠と納得出来ます。弟子からはかなり慕われていましたし戦闘では明らかに弟子よりも格上に描写されていました。弟子を抱えたまま走り回る姿は体力が無い様には見えません。ただ魔女狩りの王(イノケンティウス)に関しては不満が無いとは言えません。この映画では二度ほど使うのですが、一度目のトンネルで弟子のアシストを受けて発動させ猛威を揮うのは良かったものの、二度目のボルト破壊は一瞬で物足りないです。もっとじっくりと魔女狩りの王の威容を見せて欲しかったです。また、それに関連がありますが総じてあれだけ目立っていたステイルなのですが、最後の役割がボルト破壊で終わるのが不満でした。一人くらいまともに敵を斃して欲しかったです。女性の自動人形が立ちはだかったので期待したのですがボルトと一緒に消し飛んで終わりでした。

□ステイルの弟子

 マリーベート=ブラックボール、メアリエ=スピアヘッド、ジェーン=エルブスの三人が登場しました。ステイル本人も未だ十四歳と若いのに弟子が三人も居たのかと驚きですね。前述したステイルの凄さを見せるのに繋がりましたが、これまで本編でステイルに弟子が居るなんて話が全く出ていなかったので、ある意味ではエンデュミオンよりも酷い後付設定です。
 この三人はとにかく師匠であるステイルに懐いていて、事ある毎に「師匠!」「ししょー!」とそれはもう嬉しそうに言っているのが印象的でした。ステイルは面倒見が良いのですね。ただ尺が限られているので個個の外見と性格は結び付きませんでした。この映画だけではステイルの弟子と言うだけの存在感しかありません。本編に登場させるのが難しくないでしょうから今後に期待です。

□シャットアウラ=セクウェンツィア

 飛行機事故で自分も含む大半の乗客や乗員が助かりながら、機長であった父親だけが死に、しかもそれが世に知られないと言う境遇は悲惨で、彼女の行動原理は分かり易かったです。能力と科学を組み合わせた戦闘も見応えがありました。
 事故の際に彼女は自分の大切なものを何でもあげるから奇跡が起こる事を望んでいるのですが、そう願ったからこそ大切なもの=父親が死んでしまったのではと、少し残酷な想像をしてしまいました。もしもそうなら、望んだ結果とは言えやり切れません。

□鳴護アリサ

 実は奇蹟を願ったシャットアウラから生まれた存在と言うのは予想だにしませんでした。シャットアウラとアリサがそれを知り、二人で手を取り合う場面はとても気持ちが良かったです。

□レディリー=タングルロード

 この映画に於ける騒動を引き起こした黒幕でした。何をやっても死なない不死の身を持つ故に、自らが死ねる手段を模索していました。その目的の為に多くの人物を傷付けたやり方は例えどんな理由があっても決して認められるものではありませんが、本人が不死身である事に苦しんでいた事には憐憫の情が湧かないでもありません。宇宙エレベーターとアリサを利用した強大な魔術を発動しても望みは叶わないとインデックスに断言され、当麻やシャットアウラの妨害によりその望みは果たされませんでした。そしてそればかりか最後には実験材料として捕らわれている状態で終わります。他はともかくレディリーに限ってはかなり後味が悪い終わり方でした。
 この映画ではレディリーは単に不死身の存在であるとだけ語られ、不死身になった経緯やどういった理由、力でそうなっているのかは一切合財が明かされません。てっきり入場者プレゼントとして配布された前日譚小説『ロード トゥ エンデュミオン』で触れられているのかと想像したのですがそれも全くありませんでした。わたし、気になります!

□御坂美琴

 悪い意味で原作に忠実な美琴らしい扱いでした。映画のメインヒロインであるアリサと顔見知りと重要な位置付けでありながら徹底して本筋には絡まず雑兵退治に終始しています。もう少し巧い描写があったでしょうと思ってしまいます。
 美琴とアリサが知り合った理由も前日譚小説で語られるのかと思ったらありませんでした。

□神裂火織

 ステイルに比べると出番そのものは少ないながら、ステイルの危機を颯爽と救ったりここぞと言う見せ場が用意されていました。圧巻だったのは生身で宇宙空間に出てミサイルを迎撃した事でしょう。原作ではもっと上位の存在がわんさか出て来るので霞んでいましたが、聖人と言うのが如何に凄いのかと思い知らされた気分です。何らかの霊装や術式を使っているのでしょうが、聖人は宇宙でも生身で活動出来るのですかいな。

□宇宙エレベーターエンデュミオン

 これまで言及されなかったのに唐突に学園都市にある事になった宇宙エレベーターです。余りにも大きな存在なので残すのは難しいだろうとは思ったのですがやっぱり劇中で破壊されてしまいました。映画がそのまま独立して終わらない様に残して欲しかったですなぁ。それで原作で多少なりとも触れられれば映画との繋がりが感じられます。

一方通行(アクセラレータ)

 打ち止め(ラストオーダー)にせがまれてふらりと現れ、ステイルや美琴に次いでエンデュミオンのボルトを破壊しました。これだけなら無理に出す必要も無いのではと思いましたが劇場版はお祭りですからね。可能な限り多くの人物を出そうとしたら鈴科百合子ちゃんは外せないでしょう。

□総評

 劇場映画ならではの派手なアクションが楽しめる快作でした。ステイルを筆頭に画面狭しと動き回るアクションは音響効果と相俟って迫力満点でした。流石は劇場版と思える納得の出来です。それに何と言ってもステイルがこれだけ活躍している時点で大満足でした。
 ストーリーは、助けるべきヒロインが居て、何かしら事情を持った悪役が居て、当麻が熱い言葉で戦う、まさに初期の禁書を思わせるオーソドックスな内容でした。素直に楽しめる面白さです。ただ途中から稍 焦点がぼやけてしまったかなと思いました。序盤はアリサを狙うステイル、アリサを守るシャットアウラ、そして上条当麻とインデックスの思惑が分かり易くこれがどういう物語を生むのかと期待させられましたが、やがてステイルが流れ作業の様に協力していたりして全体的に誰が何をしたかったのかがぶれてしまった感があります。また戦える敵が少ない為にステイル、美琴、一方通行を揃えながら挙ってやる事がボルトの破壊と言うのは勿体無いなんてものではないでしょう。これは数少ないはっきりとした不満です。
 最後に当麻やインデックスにちゃんと役割と活躍があり、シャットアウラとアリサがお互いを受け入れて、綺麗に清清しく決着しましたが、その後は簡単に流す様な感じで終わってしまったのは物足りない点です。アリサと一つになったシャットアウラの描写とか終章をもっとじっくりと見せて欲しかったです。余韻が足りないですね。
 アクションと同様に目を引いたのは美麗な背景です。実に精緻で目を奪われました。夕焼けの残る美しい夜景はこんな写真を撮ってみたいと思わされます。
 アリサが唄う楽曲も映画の見所ですがどれも素晴らしい曲ですね。
 アニメの禁書は手放しで賞賛出来る出来ではなかったので素直に楽しみには出来なかったのですが、いざ見てみれば名作とは言わないまでも見て良かったと満足のいく映画でした。正直に言うと入場者プレゼントが目的の大半を占めていたのですがこれは素直に見て良かったと思えます。最近の禁書としては原作を含めても上位に入るほど気に入りました。まさか禁書のアニメがこれほど面白いと思える時が来るとは思いませんでしたわ。公開が終了する前にもう一度くらい劇場で見ておきたいですね。
 密かに喫茶店女が出しゃばっているのではないかと言うのが懸念していましたが無駄に目立ったりしていなかったので許容範囲です。

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(13.02.28)