蒼穹のファフナー
HEAVEN AND EARTH

□冒頭

 フェストゥムの群れが人類軍に襲撃され、多くの個体が消滅します。その中に他の個体を庇う個体も居り、フェストゥムに同情してしまいました。

□真壁一騎

 同化の後遺症で目が殆ど見えていないのですが、溝口さんの喫茶店で料理を作っています。総士からの使者である操には頻りに自分で決めろと繰り返しますが、これはTVシリーズでカノンに言っていた事と同じなのですよね。一騎のスタンスが変わっていない事が窺えます。
 戦闘ではマークザインに搭乗して相変わらず圧倒的な強さを誇りました。

□真壁史彦

 戦闘の指揮中に喀血したり、弓子に銃撃されたり、史彦が死んでしまうのではないかと心配しました。私はファフナーでは一騎よりも総士よりも甲洋よりも、他の誰よりも史彦が一番好きです。不器用な父親であり、優秀ながら甘過ぎる軍人であり、自分に向けられる好意に鈍い男である史彦が大好きです。この映画では最後まで司令官としての使命を全うしました。フェストゥムが人類を真似た作戦を取って来た際に発した「それならば戦いようは幾らでもある」は、彼が同じ人間とも戦ってきた過去を想像させますね。同時にフェストゥムは正体不明だから恐ろしいのであり、人間の行動を真似たら優れた指揮官には容易に行動が読めると言うものです。

□来主操

 人間のレプリカと評されたフェストゥムで、総士の意志を伝える為に竜宮島に姿を現しました。争い事を嫌っていますが単に痛みから逃げている事を一騎に指摘され、マークニヒトで交戦します。しかし総士を大切に思っているのは事実で、実は冒頭にあったフェストゥムがフェストゥムを庇う描写は、操が総士を庇ったものだと明かされました。最後は人類軍の核攻撃から竜宮島を守り散ります。

□遠見真矢

 喫茶店では一騎を手伝っていましたが、彼の傍には総士が居るべきなのでお邪魔ですね(ぉ 舌足らずでたどたどしい喋り方が変わっておらず奇妙な安心感がありました。
 戦闘ではマークジーベンに搭乗し、卓越した狙撃力をこの映画でも遺憾無く発揮しております。TVシリーズではファフナーに搭乗するとぞっとするほど冷静になりましたが、この映画では幾分か和らいでおりました。

□遠見千鶴

 見た目が孫が居るとは思えない若さでした。誰一人助ける事が出来ないと己の無力さを嘆いていましたが、最後まで犠牲を出していません。

□遠見弓子

 娘が生まれたからかアルヴィスからは退いています。しかしその娘が駆り出されると知って、史彦に銃を向けます。道生を失った弓子に残された一人娘ですからこれ以上は誰も奪われたくないと言うのは自然でしょう。またTVシリーズの頃から真矢のデータを改竄して戦わせない様にしたり、家族に対する思い入れは人一倍強いのです。

□遠見美羽

 島で初めて自然受胎で生まれた子供と言う事で、この映画に於いて非常に重要な役割を担いました。ところでこの映画はTVシリーズから二年後と言う設定なのですが、TVシリーズ当時は生まれていなかった彼女を見る限りそれは信じられません。外見年齢は四五歳に見えますよ。

□羽佐間カノン

 正式に羽佐間家の養子となったらしく苗字が変わっています。生徒会副会長にもなり完全に馴染んでいる様子でした。後輩が剣司を軽んじる発言をした際に「帰ったら私が叱ってやる!」と言っていたのが印象深いです。
 序盤ではマークドライに搭乗しましたが咲良のパイロット復帰に伴い、新たに専用機として開発されたマークドライツェンを操縦しました。最初の戦闘で凶暴化し吼えている様が少し恐かったです。

□羽佐間容子

 母親としてカノンを優しく見守ります。パンフレットによると翔子を失った経験から過保護に守るだけの姿勢を改めたとあり、それがカノンにマークドライツェンを開発するに到ったのですね。

□近藤剣司

 TVシリーズから通して初めて格好良いと思いました。先輩として後輩を立派に率いる姿に見直しましたし見違えましたよ。衛を死なせてしまった事に責任を感じ保の面倒を見、咲良の同化に責任を感じと、責任感の強さが前面に出ています。生徒会長に立候補したのも異性にモテたいからと言う理由でしょうが、この面倒見の良い性格が根底にあるからこそなのでしょう。不在の総士、一人で行動しがちな一騎に変わってパイロットを束ねるリーダーとしての役割をこなしていました。
 戦闘ではマークアハトに搭乗、目立った戦果こそ上げていませんが指揮官として周囲を的確にフォローしていました。二年前と違ってファフナーに搭乗しても弱気になる事がありません。

□小楯保

 息子、妻、弟子と大切な人を失った経験から半ば自暴自棄になっていますが、それでも自らの仕事は最初から最後までやり抜きました。この島では身近な人を失ったのは少なくありませんが、就中保は辛いでしょう。

□要咲良

 未だ完治していませんが日常生活が送られるくらいには回復が進んでいます。恋人である剣司の負担を減らそうと再びファフナーを操縦する事を決意し、澄美を哀しませてしまいます。
 戦闘ではマークドライに搭乗しリンドブルムユニットを使用しマークジーベンと連携を取る姿が目立ちました。折り合いの良い方ではなかった咲良と真矢が並ぶ姿に不思議な感覚でした。以前はファフナー搭乗時はフェストゥムへの憎悪を露わにしましたが、現在はそれが無くなっています。

□要澄美

 史彦の異変に逸早く気付いていました。咲良がファフナーへの搭乗を志願した事に泣き崩れています。

□堂馬広登

 衛に憧れ、衛から託されたゴウバインヘルメットを被り、衛の機体であったマークフュンフで戦います。当初は自分勝手な戦い方をする面が目立ちましたが、最後はザインの助けを借り見事に敵の攻撃を防ぎ仲間を守りました。

□立上芹

 誰よりも乙姫に近付き、乙姫を理解した彼女は、今でも新たなコアに会う為に足繁く通っている様子です。その経験から敵であるフェストゥムが発した断末魔を聞き取り、死んだフェストゥムの墓を作ると言う他の誰もが思い浮かばない行為に出ました。しかし史彦はそれを否定しません。そしてそんな芹だから出来る役割としてコアの負担を肩代わりし、乙姫と仮初の再会を果たします。何気に山の上で史彦と会話する場面が多い印象です。乙姫の件があるからですが同級生の間では史彦と会話した場面が最も多いでしょう。
 戦闘ではマークツヴォルフに搭乗、最初の模擬戦でいきなり頭突きをかまして度肝を抜いてくれました。作中でも驚かれていましたが、見ている此方も驚きましたよ。また剣司を莫迦にする傾向のある後輩組の中で彼女だけは模擬戦で彼がやられ役を務めてくれた事を見抜いています。

□西尾里奈

 何時までも乙姫を想い続ける芹、口を開こうとしない暉、子供っぽさが抜けない広登に囲まれ気を張っていますが、暉が斃れた際に弱音を吐き、真情を吐露します。精一杯、後輩組を引っ張ろうと努力していたのですよね。
 戦闘ではマークノインに搭乗し、火炎放射器で周囲を焼き払っているのが印象的でした。第二次蒼穹作戦では暉と共に両親を死なせた機体であるゼロファフナーに搭乗します。

□西尾暉

 最初は誰なのか理解りませんでした。メディカルルームでの会話を聞いて初めて里奈と姉弟である事を知りましたよ。姉弟揃って真矢が好きなのですね。
 戦闘ではマークツェーンに搭乗し狙撃を担当しました。両親を失ってから口を閉ざし言葉を無くしていましたがファフナーに搭乗した事を機に喋り出します。しかし行き過ぎた自信が敵を斃す事に喜びを見出し、その姿勢を真矢に窘められました。一度はフェンリルの自爆を試みますが救出され、里奈と共にゼロファフナーを操縦し第二次蒼穹作戦に挑んでいます。

□イアン・カンプ、ジェレミー・リー・マーシー

 元人類軍に所属する二人で、現在はアルヴィスの会議席に連ねています。彩乃の殉職、弓子の引退があるので人数は釣り合いが取れているのですよね。この二人は元人類軍兵士による決死戦を提案し、「人類軍に見捨てられた命、拾ってくれた島を守る為に失うのなら惜しくない!」と凄く格好良かったです。出て来る大人全てが格好良い映画でした。

□溝口恭介

 やっと溝口さんが指揮する姿が見られましたよ。それにしても溝口さんは絶対に制服を着ないのですね。史彦が初めて制服を着た時に似合っていなかった事を思い出しました。

□春日井甲洋

 危機にある仲間を救う為に自らをファフナーのコアとして復活しました。最初は誰なのか理解らなかったのですが、咲良の「マーク・・・フィアー・・・? 甲・・・洋・・・?」、史彦の「春日井甲洋が・・・戻ってきた・・・」で甲洋と判明して感動しましたよ。TVシリーズで同化された時に、「甲洋! 甲洋ぉぉぉぉぉ!」となりましたし、復活した際も「甲洋! 甲洋ぉぉぉぉぉ!」となりましたが、劇場版でも「甲洋! 甲洋ぉぉぉぉぉ!」でしたよ。戦場では最後まで大いに活躍しました。残念だったのは台詞が一言も無かった事です。一言で良いから声を聞かせて欲しかったです。

□皆城総士

 最後に戻って来て一騎の前に姿を現しました。ただこれは、正直思ったほどの感動では無かったです。ただ、良かった、と。

□総評

 ファフナーの劇場版が作られただけでも歓喜なのですが、これが最高に素晴らしい映画で大満足でした。劇場で見て良かったと心から思いましたよ。全ての登場人物にちゃんとした役割があり、全員が最大限に力を発揮した、名作です。そして戦闘も力が入っていて見応えがありました。本当に幸せです。
 意外だったのが誰も死ななかった事ですね。乙姫とかミョルニアとか操が居るので厳密には誰もではないかも知れませんが、ファフナーと言う作品は人が良く死ぬ印象があるのでパイロットやその家族に犠牲者が出なかったのが意外でした。暉や史彦は死ぬのではないかと本気で思っていたくらいです。ではそれに問題があるかと言えばそんな事は無く、誰も死なずにこれだけ面白いのですから素晴らしいです。
 TVシリーズ、TVスペシャルと来て、最後に映画まで用意されて本当に幸福な作品です。どれも素晴らしい完成度で、ファフナーが好きで良かったです。

(11.01.02)

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