仮面ライダーディケイド
完結編

□冒頭

 高速で空中を飛行するスカイライダーが格好良かったです。スカイライダーは現在の技術でこそ輝きますね。そのスカイライダーがディケイドに斃され、今度はカブトとスーパー1がディケイドとの戦いに移行しましたが、クロックアップの前にスーパー1が成す術も無くやられてしまいました。スーパー1はとても好きなライダーなので、スカイライダーやカブトと違って一切の見せ場が無くて哀しかったです。しかし最後まで見てみると、今作は前作『オールライダー対大ショッカー』と異なり全てのライダーが登場する訳ではありませんから、出られただけでも恵まれていた方なのかも知れません。それでも無残に残ったスーパーハンドが哀愁を誘いますがね。腕を犠牲にして躱したのかと思いきや腕だけ残っただけでした。それにしてもスーパー1は何時見ても格好良いなぁ。

□仮面ライダーJ

 もうすっかり巨大化して登場するのがJの定番になっていますね。実は巨大化がJ自身の能力ではないと言うのが忘れ去られています。
 それはさて置き巨大Jの描写ですが、合成は流石に優れていますが、矢張り迫力はオリジナル版が一番ですね。

□岬ユリコ/電波人間タックル

 今の時代にあのデザインのままはきついものがあります。タックルはもう少し洗練したデザインにして欲しいものですが、考えたらライダー連中もそのままで出ているのですから不思議は無いのでしょうか。ライダーだと気にならないのにタックルだと不自然ですなぁ。

□ディケイドVS龍騎&ブレイド

 戦闘相手のブレイドをファイナルフォームライドさせて自らの武器と化し、それで龍騎を切り裂くのが実に反則です。いきなり味方だったものに斬られた龍騎や、味方を斬ってしまった事になるブレイドは呆然とするより無いでしょう。

□仮面ライダーディケイド激情態

 空中飛行するスカイライダーを追撃後撃破、スーパー1とカブトを纏めて撃破、巨大なJにはギガントとサイドバッシャーのミサイルを立て続けに浴びせて撃破、ブレイドと龍騎も撃破と、まさに鬼神の如き強さを発揮していました。特に最初のスカイライダー、カブト、スーパー1戦はその恐ろしさが顕著に表れており、空を飛んでいたらいきなりディメンションキックの照準を兼ねたカードが迫ってくるスカイライダーの、高速移動されて何が起こっているのか認識すら出来ないスーパー1の、クロックアップにクロックアップで対抗したのにインビジブルで姿を消されて相手が見えないカブトの、其其の恐怖が伝わってくるようでした。激情態はカメンライドしなくても各ライダーのアタックライドが使用できると言う設定で、それが如何に脅威なのかと言うのをまざまざと見せ付けられた気分です。そしてこの“強さ”の表現が非常に上手でした。一目見て単純にディケイドが強いのだと思わされます。小生がこれまで見てきた特撮ヒーロー作品に於ける圧倒的に強い存在の描写で最も納得の出来るものかもしれません。単純にボコボコ殴ったり爆発を起こして相手を吹き飛ばすだけではこうは行きませんよ。

□クウガVSディケイド

 やっと、やっと、アルティメットフォームの本格的な戦闘を拝む事が出来ました。これを十年も待ち望んでいたのですよ。やっぱりライジングアルティメットフォームよりもずっと格好良いです。しかし単純な殴り合いのみだったのが残念でした。もっと究極の戦士らしい派手な描写が見たかったです。

□「お前を一人では逝かせない!」

 友である士と戦わざるを得ないユウスケが放った言葉は格好良いのですが、もう一つ説得力に欠けました。もっと積み重ねてここぞと言う場面なら盛り上がったでしょう。しかも結果がユウスケが一人で死亡して士が生き残っているのですからギャグですよ。

□仮面ライダーキバーラ

 士を抹殺する為にキバーラが夏蜜柑を変身させます。此処は良いのですが何故かゾル大佐(つまり鳴滝)と戦う時にも力を貸してくれるのです。これはどういうことでしょう。キバーラは鳴滝の指示で動いているのではありませんか?

□門矢士/仮面ライダーディケイド

 創造は破壊からしか生まれない。ライダーの物語を紡ぐ為には一度全てを破壊しなければならない。その為に全てのライダーを斃し、そして最後は夏蜜柑に殺される事を選ぶと言う行動理念は分かり易く、前作よりもずっとすっきり受け入れられました。ちゃんとヒーローらしいです。
 見ていて全く気が付かずパンフレットで知りましたが、本作のディケイドは少しデザインの変化した激情態だったそうです。それにしてもこのディケイドは強かった! 今作こそ大ショッカーの大首領と言われてしっくり来ます。スカイライダーを追尾している時は恐怖すら感じさせます。これまでに見て来た特撮ヒーロー作品の中でも、屈指の魅力的な“強い”描写でした。

□タックルVS蜂女

 自分の事を唯一見てくれた士を助ける為に、一度死んだタックルが因縁の相手である蜂女にウルトラサイクロンを決めて二度目の死を迎える・・・。言葉で表現するととても良い場面なのですが、如何せん描写が少な過ぎて感情が乗りません。もっと積み重ねた上でなら感動した事でしょう。

□鳴滝/ゾル大佐

 いきなり鳴滝がこれまでの流れを無視してスーパーショッカーの一員であるゾル大佐に変身したのには唖然としました。鳴滝の正体や思惑に期待していたのにこれでは納得できよう筈もありません。しかもドラスが出て来た時に何時もの様にこれもディケイドの所為だと言い出した時は本気でどうしようかと思いましたよ。嬉嬉としてネオ生命体を作り出していた張本人ではありませんか! TVシリーズ最終回直後の予告編で、「正体を明かす時が来たな、ディケイド!」と言っていたのは何だったのでしょう。あれ、凄く楽しみにしていたのになぁ。

□復活怪人

 スーパーショッカー配下として歴代の作品から何体か登場しています。最も目立っていたのはザンジオーでしょう。矢張り映画と来たらこの人ですね。他にゴオマが居たのも確認出来ました。しかし何れも背景として登場しライダーにやられる戦闘員の扱いでしかありません。

□ネオ生命体/ドラス

 ドラスは好きな怪人ですがこれがラスボスと言うのは頂けません。ラスボスはちゃんと全く新しい怪人を出して欲しかったですよ。

□最終決戦

 ドラスと戦うディケイド、ディエンド、クウガ、キバーラに加勢する為に別の世界から、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド、響鬼、カブト、電王、キバが駆けつけてくれます。しかしこの場面はどうせなら、変身前も出して変身する場面から見せて欲しかったです。本作にはアスムとワタルが登場しているのですが、この二人だけなのが中途半端でした。
 ディケイドがクライマックスフォームに変身し、応援に駆けつけた各ライダーをシャイニングフォーム、サバイブ、ブラスターフォーム、キングフォーム、装甲響鬼、ハイパーフォーム、超クライマックスフォーム、エンペラーフォームに変身させました。ですがこの後の戦いは早すぎて碌に視認も出来ず、全く盛り上がりません。最強形態に変身した意味も無いのです。全く面白くない戦闘でした。

□マンモスメカ

 唐突に出て来ました。どういう出自なのかも分からず反応に困ります。しかも本格的な戦闘が始まる瞬間、TVシリーズの各話が終わる画面になって終了しました。一瞬、「またか!」と怒りとも呆れともつかぬ想いに捉われましたが、直ぐにカラクリが分かって一先ずは落ち着きました。しかしそれでも中途半端な終了です。

□総評

 大味で大雑把な映画でした。しかも盛り上がるわけでもなく、やっつけ仕事のまま最後まで走りました。
 一番の問題点は完結編を謳いながらそれに足る内容ではなかった事でしょう。TVシリーズの最終回はいきなりディエンドがディケイドを撃つと言う衝撃的な場面で終わりましたが、その後、どうなったのでしょうか? その経緯が全く語られる事も無く、士が一人仮面ライダーと対立している状況から始まりました。全く繋がっていません。そしてディケイドについて重大な秘密を握っていると思われた鳴滝が、何故かゾル大佐としてスーパーショッカーを率いていると言う理解不能な展開になっています。
 では他の点はどうだったでしょう。ヒーロー作品の見所が格好良いヒーローと凶悪な敵との血湧き肉躍る戦いである事は論を持たないでしょう。しかし本作はそれも著しく欠如しています。戦闘そのものは何度もありますが力が入っていたのは序盤のみで、後半になるにつれ無味乾燥に殴り合うだけのぞんざいなものになりました。最終決戦で登場した歴代平成ライダーの最強形態、その活躍に一つでも印象に残るものがあったでしょうか? 歴代の主役が登場して最強形態に変身する、それだけでもっと盛り上がって然るべきではありませんか。
 総括して大変に残念な出来であると言わざるを得ません。前作である『オールライダー対大ショッカー』よりは良いと思えましたが、それでも及第点にすら遠く及んでいません。TVシリーズがあんな終わり方をして、それから待たされた挙句がこれなのでしょうか。言いたくはありませんが『仮面ライダーディケイド』と言う作品にほとほと愛想が尽きました。

(09.12.13)

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