ドラゴンボールZ
神と神

□冒頭

 破壊神ビルスの目覚めが界王神から北の界王に告げられます。そういえば亀仙人やサタンだけではなく老界王神を演じた方も鬼籍に入られていたのですよね・・・。

□「ビルス様は次元が違う。あの界王神様だってびびってしまうんだぞ」

 界王神はダーブラ程度にも心底震え上がっていましたが・・・。

□「(超サイヤ人)ゴッドとは大袈裟な名前ですねぇ。却って安っぽい」

 皆の気持ちを代弁してくれてありがとう(ぉ

□「お前もいい歳なんだからちゃんと挨拶をせんか!」

 ビルスに「オッス、オラ悟空!」と言い放った悟空を叱った界王の言葉ですが、悟空は亀仙人から一通りの礼儀を学んでいる筈なのですがね・・・。

□超サイヤ人2

 悟空が超サイヤ人、2、3と順番に変身してビルスに見せますが、2なのにスパークが起きていませんでした。それでは2ではありません。

□孫悟空

 『改』でもそうでしたが悟空の声が激しく劣化していて聞くに堪えません。悟空が喋るだけで苛立ちますわ。
 最初の挨拶に始まり全体的に悟空が年齢とは裏腹な子供染みた行動ばかり取るのが気になりました。フリーザと罪に関する問答をし、セルを斃す為に悟飯を鍛え、これからを考えて悟天とトランクスの次世代に未来を託した悟空とは思えません。
 既にその場に来ていながら参戦していなかった事を批難されましたが、これに関してはあの状況で加勢しても役に立ちませんし、誰かに命の危機が訪れたのではありませんから、敵の動きを観察して作戦を練ろうとしたのは妥当な判断でしょう。悟空はそういう冷静な計算が出来ます。

□孫悟飯

 悟飯が主人公として活躍するのは期待するだけ無駄だろうとは思っていましたが、予想以上に酷い有様でした。酔っているとは言え頭がおかしいとしか思えない奇行を繰り広げた挙句に、それが原因であろう事かビーデルに怪我をさせてしまいます。これは決して許される行為ではないでしょう。悪ふざけにも程がありますよ。でもビルスにも弾丸が飛んでいた場面は笑いました。
 ビルスが地球の破壊を目論んだ時には止めようと飛び込んでいくのですが全く善戦せず一瞬でやられました。戦闘センスや経験では悟空やベジータに劣りますが、それを問題にしないくらい圧倒的な戦闘力を持っているのに、です。劇中の描写では悟空やベジータは疎か、ピッコロよりも弱い様に見えます。
 ドラゴンボールの新作映画が見たいと何度か思った事はありました。そして同時にそれは原作で頓挫した悟飯が主人公として活躍する作品を望んでいたのです。他の誰よりも強くなった悟飯が強敵と戦い斃す、そんな映画が見たかったです。

□ベジータ

 本作で最も厚遇されていたのがベジータではないでしょうか。地球を守る為に影で必死に頑張り、ブルマの危機には悟空を超えたと自他共に認める力を発揮しました。ベジータがこれまでに無く報われた作品です。
 個人的な好みで言えば最大の力を発揮した時に、どうせなら超サイヤ人3に変身させて欲しかったところです。
 全体的には素晴らしい扱いだったベジータですが、ビンゴダンスだけは寒くて見ていられませんでした。勿論作中でもそう扱われる演出なのですが、それにしたってあんな姿は見たくないと言うのが本音です。
 ビルスが去り全てが解決した後に悟空とベジータが話している場面は良かったです。ブウ編の掛け合いが好きだったのでそれに近いものを感じました。

□トランクス

 声が幼すぎませんか? 必要以上に幼く見えて違和感がありました。

□ピッコロ

 ブルマが自身の誕生パーティーに悟空が来ていない事に憤慨していましたが、ピッコロが混ざっている方がよっぽど驚きでした。ピッコロはそんなのに参加する性格ではないでしょう? それに基本的に今後は交わらないつもりの天津飯まで居るのも度し難いです。

□ビーデル

 サタン役の方が亡くなられた際にもうビーデルは演じないと言っていましたし、確か留学していたので皆口裕子が出演していたのが驚愕でした。

□「あいつら殺すとか言ってるぞ。ちょっと注意してやろう」

 神と言うだけあってビルスに良識があって良かったと思った台詞です。

□「何でカカロットが(超サイヤ人ゴッドになる)メインなんだ」

 そうですよね、潜在能力の高さから考えて悟飯ですよね。

□超サイヤ人ゴッド

 さっぱり望んでいない変身です。これまでの映画だって別に特別な変身をしないで勝って来たのですから、こんな変身は要らないと見る前から思っていました。しかも変身に到る経緯が酷いですね。悟空が神龍に頼んで連れて来て貰う考えも大概ですし、その次は神龍に超サイヤ人ゴッドに変身する方法を聞くのですから安直極まりないです。でも考えたら原作でアルティメット悟飯になる時もこれに負けないくらいに安直でしたな(笑)。
 そんな歓迎していない変身でしたから、何時の間にか変身が解けていたのは好印象でした。やっぱり超サイヤ人と言えば金髪が落ち着きます。

□悟空VSビルス

 鳥山明を肇として関係者が見せ場として強調しているバトルですが、言うほど凄いとは思いませんでしたなぁ。CGの安っぽい背景で単にびゅんびゅん動いているだけです。でも瞬間移動を巧に駆使して戦うのは悟空らしいと思いました。
 それと悟空が地球を守る為に必死にビルスの攻撃を受け止めている間、他の仲間がピンピンしているのにボーっと突っ立っているのは酷くありませんか。ベジータ、悟飯、ピッコロは助けに行ってくださいよ。確かに悟空は一対一に拘泥しますが、それと仲間の命や地球の存亡を天秤にかけたりしませんよ。魔人ブウとの最後の戦いでも(結果的に見誤っていましたが)勝てると踏んだから一対一で戦ったのです。

□「飛び道具なんて汚ねぇぞ!」

 え、そ、そうなの・・・? ビルスはこれはスポーツではないと返していましたが、それ以前の問題として悟空の感覚では戦闘に気功波を持ち込むのはいけないのですか?

□破壊神ビルス

 強大な力を持ちながら気紛れな神様と言うのはそれはそれで面白かったのですが、最後までこの姿だったのは物足りないですなぁ。過去の映画に登場した敵の様に、もっと強そうな姿に変身して欲しかったです。

□ウイス

 実に良い味を出していました。ビルスの付き人でありながら唯唯諾諾と従うのではなく、言いたい事は言いますし、ビルスが戦っている間も一人で食事を続けているのですから良い性格をしています。実はビルスの師匠であり彼より強いと言うのは意表をつかれ意外性がありましたが、ビルスにあんな態度を取れたのもそれが理由と分かり少し残念に思いました。戦闘力では及ばないのにああいう態度を取っていると言う方が面白かったなぁ、と思います。

□総評

 過去のドラゴンボールZ映画の様な内容を期待していたのでそれとは掛け離れていて残念だったと言うのが第一印象です。目も当てられないほど酷かったとは言いませんが、過去の映画に比べて数段落ちます。
 悟空が興味本位で戦ったのに端を発したので、その後で急に真剣になっても緊迫感に欠けると言うか白白しいのですよね。作品全体でギャグからシリアスへの切り替えが巧く出来ていない印象でした。話もビルスが地球に現れて撃退する、と言うだけなのでメリハリが全くありません。
 多くの登場人物を出していますが殆どにまともな台詞が与えられておらず何の為に出したのか理解りません。もっと人数を絞って欲しかったです。過去の映画と違い敵が一人だけなので、戦闘の見せ場も無いのですよね。複数の敵を出して悟空以外の仲間にも戦闘の描写が欲しかったです。
 今回はドラゴンボールの映画では初めて鳥山明が本格的に関わったのですが、実は密かにそれが不安要素でして案の定と言える結果となりました。鳥山明が描いたドラゴンボールは間違い無く面白く凄い漫画家だとは思いますが、ドラゴンボールZの映画が持っていた良さは鳥山明の持ち味とは方向性が全く違います。
 主題歌が影山ヒロノブではなくFLOWによるカバー曲だったのも見過ごせません。こんな偽物を聞かされても腹が立つばかりで嬉しくありませんわ。それに主題歌のみならず音楽も別人の担当なのですよね。タイトルに『Z』と入っているのにこれでは『Z』ではありませんよ。何処が『Z』だったのですか。『改』で落胆した悪夢が再びです。
 悪い箇所ばかりが目に付きましたが、ギャグ描写は全体的に面白かったです。何度か笑いましたし劇場でも笑いが起きていました。
 もっと満足のいく新作映画が見たい様な、これではもう期待が持てない様な、そんな複雑な気持ちです。

観賞日の日記へ

(13.03.30)