ドラゴンボール(スーパー)
スーパーヒーロー

□過去の振り返り

 レッドリボン軍と悟空の関わりが手描き作画のアニメで振り返るところから始まります。やっぱり手描きは良いですなぁ。それに16:9のワイド画面ではなく4:3なのが好みです。
 そしてこのパートでセルがフィーチャーされました! 本作にセルが登場する事を期待していましたが、これはもう間違い無いでしょう! まさに期待値は最大に達します。

□フルCG

 先の振り返りが終わり本編に突入するとCGに切り替わります。本作が全編CGである事は事前に把握していましたが、手描きパートを見ている内にそれをすっかり忘却していたので「あ、CGだった・・・」と稍落胆しました。しかしそれは最初だけでした。背景の見栄えこそあまり良くありませんが、人物に関してはCGの出来が非常に良いです。勿論手描きの方が好きである事は絶対的な事実で不変ですが、見ている最中は気にならないくらい自然なCGです。日本のセルルックCGは此処までの出来になったのかと感心しました。

□「三か月お待ちください」「お茶をか?」

 此処でくすっと笑いました。良いですね! 本作のギャグセンスは信じて良さそうです。

□カプセルコーポレーションを取り巻く噂

 宇宙人が出入りしているとか大体当たっているのが凄いです。でもホイポイカプセルとかは宇宙人が関係無く純粋にカプセルコーポレーションの技術なのがもっと凄いです。

□孫悟飯/孫悟飯ビースト

 この時をどれほど待ったでしょうか。原作で新たな主人公になりながら終盤でその座から降ろされ、爾来、不遇を託っていた悟飯がとうとう名実ともに最強の座へと返り咲きました! これが見たかったのですよ!
 髪形は青年悟飯がベースですが無造作に伸ばして毛量が増しています。元元悟飯は髪の毛に無頓着で乱雑に放置しており、切るのはチチか悟空主導でしたから短く切り揃えているよりこの方がしっくり来ますね。戦闘では超サイヤ人を経て、嘗て魔人ブウを圧倒した時を彷彿とさせる黒髪で勇猛な戦いぶりを見せます。感動すら覚えましたよ。そして最後の最後には新たな姿へと変身しました。少年時代の超サイヤ人2を思わせるシルエットは、やっとスタッフもどの悟飯が人気なのか分かったのかと納得なのですが、CGモデルだとやたらと太くて大きい前髪と、後ろに大きく突き出た髪の毛が滑稽ですなぁ。角度を限定した一枚絵なら格好良いのですが、立体には不向きに見えます。もうちょっとバランスが何とかなりませんでしたかねぇ。
 最後の決め手は魔貫光殺法! かめはめ波か魔閃光が予想されていたところで、一点を貫くと言う状況にも適していましたしナイスな選択です。

□研究者としての悟飯

 新種のアリについて嬉しそうに語る悟飯を見て良かったなぁ、と思いました。悟飯は幼い頃から将来の夢は学者さんと宣言していましたが、学者と言うのは好きな事を突き詰めた結果であり、漠然と学者とだけ言う悟飯が何を好きなのかは見えませんでした。だから母親のチチに言われた事をそのまま自身の夢と錯覚している様だったのです。ですからそうではなく、ちゃんと自分が好きな事を勉強していたのだと理解って嬉しかったです。
 また具体的に悟飯がどの分野を研究する学者になったのか長らく不明でしたが、昆虫や生物の方面だと判明しましたね。これはセルの抜け殻を見てこんな蝉は居ないと看破した事からファンの間で予想されていた説の一つでしたが、小生はあんな莫迦でかい蝉が居ない事くらい誰でも理解るとそれには懐疑的でした。しかしその説が的中しましたか。

□悟飯が飾っている写真

 悟飯が仕事机の上に、幼い自分を抱きかかえた悟空の写真が飾られています。自分の子供の写真なら理解りますが、これは結構変わっている気がします。でも今でも父親の悟空を尊敬しているのが理解って良いですね。

□ピッコロ

 物語面で実質的な主役を務めたのはピッコロでした。暗躍を察知してから敵の計画を阻止する為に東奔西走八面六臂の大活躍です。変にキャラを崩されていたら嫌でしたがそういう事も無くバランス感覚が絶妙でした。スタッフのドラゴンボールに対する理解度が高いのが窺えます。
 神龍に潜在能力を解放してもらい体色が黄緑に変化し腕の皺が無くなった形態になったのですが、これは色が薄くなったのと腕がツルツルになったのが格好悪いです。ピッコロは原作で外見が変化する事は無かったのですから要りませんでしたなぁ。そして更に神龍によるおまけで屈強な体格へと変化します(本人曰くオレンジピッコロ)。顎骨が突き出て顔の輪郭まで変わっており更に格好悪いです。ピッコロにはそのままの姿で居て欲しかったです。

□ドクター・ヘド

 スーパーヒーローに憧れている事や、ヘドを騙して利用しようとしたマゼンタとの対比で善人の様に思われますが、自身で告白している様にマゼンタの真意に勘付いていながら研究費目的で見て見ない振りをしていたし、抑抑刑務所では他の囚人をあっさり殺している訳で、決して善人ではありません。善人でも悪人でもない、俗っぽい普通の人間です。そのバランス感覚が絶妙でした。

□入野自由/神谷浩史/宮野真守

 何か滅茶苦茶狙ったトリオですね。

□孫悟天/トランクス/ゴテンクス

 これまでより成長した姿で登場しフュージョンを試みますが合体が失敗しました。フュージョンでお約束の様に失敗をやるのはしつこいです。しかも最後までそのままで、ちゃんと成功したゴテンクスは登場しませんでした。これはゴテンクスが好きな人は期待させられた分落胆した事でしょう。また悟天、トランクス単体の出番は少ないですし、こんな扱いなら出してほしくありませんでした。

□クリリン

 怯えてセルマックスとの戦闘に最初は参加せず、その事をブルマとパンの護衛だと言い張っていました。この性格が昔の映画みたいで不満と違和感があります。クリリンはナメック星で悟飯やデンデを逃がす為に自分の命を捨てる事を当然の様に決断出来ますし、もし怯えて動けなかったとしてもそれを恥じます。お為ごかしを言ったりはしないのです。終盤では奮起して参戦、的確なサポートを見せましたが、どうしてもその前が気になりました。悟天、トランクスと同様、この様な扱いなら出さないでいただきとうございました。

□セルマックス

 ドクター・ヘドが新たに作り出したのがこのセルマックスです。オリジナルセルの第二形態をベースに赤を加えたカラーリングで外見は悪くないのですが、理性を持たない怪物と化していました。途中で完全体に変身するだろうと思っていたのですが、豈図らんや、最後までそれがありませんでした! それならきっと最後の最後、実は生きていたセルマックスが再生して次回作を匂わせるのかと望みを持っていたのですがそれもありません。本当に終わりです。何よりもセルの登場を期待していましたのでこれには激しく落胆させられました。
 さてそのセルマックスですが、オリジナルセルの事をさて置いても魅力がありません。巨大な敵に複数の味方が攻撃を加えるだけの戦闘が全く面白くないのです。セルマックスが強いとすら思えません。ピッコロの見立てではガンマ1号と2号は悟空とベジータに匹敵する強さであり、悟飯に言わせればセルマックスが相手だと悟空とベジータが居ても勝つのは厳しかったとの事ですが、言葉で説明するだけで何の説得力も無いのです。ゴテンクスやクリリンではなく悟空とベジータを参戦させそれでも勝てないセルマックスの強さを見せ付け、そしてそのセルマックスを悟飯が斃す事で強さに関する具体的な描写として成立するのでしょう。褒められたものではありません。

□「カカロットに勝ったぞ・・・!」

 こんなギャグみたいな扱いでベジータの悲願を達成させてほしくなかったです。もう悟空とベジータの出番全てが蛇足でしょう。

□総評

 極めて評価が難しいです。
 先ずドラゴンボールの映画としては、ドラゴンボールの世界が忠実に再現されており、とても優れております。途中までは本作こそ歴代のドラゴンボール映画で最高傑作に違いないと確信していました。
 また期待していた悟飯の活躍としては満点でした。最後まで強くて格好良い悟飯が見られた事は大満足です。
 フルCGの出来が良かった事も、もう場合によっては今後はずっとそれでも良いかも知れないと思える収穫でした。
 では何が不満なのか? 言うまでもありませんがセルマックスです。セルは手描き作画で出すには全身の斑点が手間でした。それが今回フルCGになると言う事でセルを出すお膳立てが整いました。それでいてレッドリボン軍が敵で、セルを斃した悟飯が主役と言う事で、もうこの機会にセルが復活しなかったら二度とそれは無いだろうと思っていたのです。だからセルマックスの登場に喜んだものの、それが往時のセルとはかけ離れたものであった事は先に触れたとおりです。これが本当に残念で残念で、とても評価が下がります。もしもセルの存在を匂わせずセルとは関係の無い敵であったなら、それならセルが登場しなかった事に落胆はしても此処までの不満は抱かなかったでしょう。セルマックスとの戦闘がつまらなかった事と合わせて、本作の不満はセル周りに集中するのです。
 他に台詞や描写に原作のオマージュが多多見られたのが鼻につきました。安っぽいパロディはまるでとよたろうで印象が悪いです。

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(22.6.25)