劇場版
仮面ライダーディケイド
オールライダー対大ショッカー

□パンフレット

 表紙をじっくり眺めると、全ライダーが載っている様に見えてZO、J、アギトの三人が映っていません。ZOとJの二人は(納得するかはともかくとして)理解が出来ますが、平成シリーズの中でアギトだけ省かれるのが度し難いです。何かアギトが悪い事をしましたか?

□ディケイド対アマゾン

 最強の仮面ライダーを決める戦いで最初に行われた一戦です。ディケイドが響音に変身し鬼火を使ったり見所が多かったのですが、アマゾンの大切断で火花が散るだけだったのが不満でした。大切断はもっと派手に鮮血が飛び散ってこそでしょう。
 アマゾンが技名の発声を行ったのに違和感があったのですが、何とこれは声を担当した関さんのアドリブで、それらしい動きをしていたから勝手に言ったそうです。これには驚きましたが道理でと得心がいきました(十六日追記)。

□ディケイド対ブラックRX

 RXの剣技やロボライダーの銃撃に苦戦するディケイドですが、ファイズに変身しアクセルフォームでロボライダーの銃撃を躱し、バイオライダーの液状攻撃もものともせずクリムゾンスマッシュを華麗に決めました。

□クウガ対X

 ライドルに対抗してドラゴンフォームに超変身するクウガが見物でした。

□ブレイド対ストロンガー

 甲虫対決ですね。

□イクサ対スカイライダー

 何でこの二人なのだろう、と関連性の無さに首を傾げました。一瞬、イクサがサイガに見えて空を飛べるライダー同士の対決なのかと思いましたよ。

□龍騎対ZX

 赤いライダー対決ですね。ミラーワールドに逃げ込む龍騎に、衝撃集中爆弾を投げ付けるZXと、双方の魅力が発揮されていました。

□ディケイド&ディエンド&クウガ対V3&スーパー1&ブラック

 最強のライダーを決めるトーナメントの決勝戦は三対三のティーム戦です。最強のライダーを決めるのにティームを組んでどうするの、という疑問はありますが盛り上がらないわけではありません。しかしディケイドとディエンドが並ぶとクウガが浮いていますなぁ。対する昭和ライダー組ですが、V3はともかく、スーパー1とブラックは良い人選ですね。実にミオさん好みです。そして開始された戦闘では、勝手に参加しておいて直ぐに退場したディエンドの行動が理解を超えていますが、面白かったです。特にスーパー1が赤心少林拳を駆使して活躍していたのが印象的でした。最後にイリュージョンで分身して三人のディケイドが同時に必殺技を使うのはずるいですね(笑)。

□大ショッカー

 TVシリーズでも登場しましたが何度聞いても大ショッカーと言うのが格好悪いですなぁ。しかも平成ライダーの怪人もかなりの数が傘下に入っているのですよ。其其異なる怪人がショッカー如きに従っていると言うのが嫌です。

□ショッカー戦闘員

 大ショッカーが格好悪いのと同様にショッカー戦闘員も受け入れ難いです。しかもそれがロケットの様に飛んでいく描写とかギャグかと思いましたよ。でもその破壊力が予想以上で被害が凄かったのには驚かされました。

□光栄次郎/死神博士

 栄次郎がいきなり死神博士に変身する場面は、何も知らなければそれは驚いたのでしょうが、散散ネタバレされていましたからなぁ。それにしても死神博士と地獄大使の格好が安っぽいコスプレ衣装に見えて格好悪い事この上ありません。しかも最後の最後に何事も無かったかの様に何時もの栄次郎として合流しているのが理解不能です。一体どういう事なのですか?

□門矢士

 記憶喪失だった彼が実は大ショッカーの大首領だった事が明かされました。しかし組織に裏切られた彼は絶望を乗り越えてから「大ショッカーは、俺が潰す!」と宣言します。見ている時は気にならなかったのですが、冷静に考えるととてもではありませんが士は評価出来ません。てっきり世界が滅ぶのを止める為に仕方なく世界征服と言う手段を選んだとか、そういう已むに已む得ない理由があるのかと思いきやその辺の補足は皆無でした。つまり士は元元悪人で、単に裏切られたから私怨で復讐しているに過ぎません。好感の持てるヒーローではありませんよね。

□「皆私の事を大神官ビシュムと呼ぶわ」

 呼ばねー! こんな小娘にビシュムを名乗られたくありません!

□小野寺ユウスケ/仮面ライダークウガライジングアルティメットフォーム

 ビシュムに洗脳されてライジングアルティメットフォームなる形態に変身したのですが、これは別に単なるアルティメットフォームで良かったのではないかと思いました。アルティメットフォームなら敵として立ちはだかるのに相応しいですし、何よりもそろそろアルティメットフォームの本格的な戦闘が見たいのですよ。そしてこんな新しい姿が用意されていながら扱いの悪さがTVシリーズと同等なのが泣けます。敵として凄く強いところを見せてくれるのかと思えば、やった事と言えば生身の士を甚振っただけです。しかもスペックを考えれば生身の相手は一撃で殺せそうなのにそうならないのですから微塵も強そうに見えません。また極め付けはクウガを通して小夜が士と会話するのですよ。これで余計にクウガの印象が薄まりました。酷い扱いです。

□「例え孤独でも、命ある限り戦う、それが仮面ライダーだろうが!」

 結城丈二が絶望している士に放った言葉で、仮面ライダーの本質を表現している良い台詞です。良い台詞なのですが、あの状況でこれが出て来る流れが理解出来ません。結城丈二にとって士は仇ですし、しかも士は大首領なのですから、其処で仮面ライダーのあり方を説いても仕方が無いでしょう。

□「メロンじゃありません!夏蜜柑です!って言うか夏美です!」

 大樹の「夏メロン」と言う呼びかけに対する夏蜜柑の反応が良かったです。

□ジャーク将軍

 死神博士、地獄大使とショッカー由来の幹部で占められた中で唯一異なるのがジャーク将軍でした。ジャーク将軍は好きなのでこれは嬉しかったですね。でもジャークミドラにもならず簡単に死んでしまったのが残念です。此処で美味しかったのはディエンドでしょう。ちゃっかり止めを刺したのは言うまでも無いとして、ディメンションシュートが放たれた時に怪人がジャーク将軍を庇ったのでジャーク将軍は斃せないのかと思いましたが、そんな事はお構い無しに葬る威力でした。

□鳴滝

 TVシリーズではすっかりディケイドの悪口を言うだけの存在となった感のある鳴滝ですが、今回の映画で彼の言う事が正しかった事が証明されました。彼の言っていた事は何も間違っていなかったのです。頼もしい事に夏蜜柑を助けてくれました。

□海東大樹/仮面ライダーディエンド

 TVシリーズでもどんどん魅力を発揮しつつある彼ですが、映画でも存分に活躍してくれましたね。相変わらずの自由な振る舞いで、それでいて美味しい場面を抑えていきます。そういう意味では良かったのですが、問題がありました。大樹がディエンドライバーを持っている理由が明かされたのですが、それが何と大ショッカーから盗んだと言うのです。・・・え、それだけ? 記憶喪失になる前の士を知っている素振りでしたが、それだけなのですか? 組織の首領とその組織から宝を盗んだ泥棒では、嫌いな食べ物を知っている様な旧知の仲にはならないと思うのですよ。厳密に言えばこれは映画ではなくTVシリーズへの不満になりますが、大樹と士の関係性を楽しみにしていたのでもしもこれで終わったら期待外れ甚だしいです。

□シャドームーン

 『仮面ライダーワールド』に続いての登場で、すっかりSD戦国伝で言う魔殺駆の様な便利悪役と化した感があります(笑)。でもキンタロスの声じゃなかったのが残念でした。シャドームーンと言えばあの声でしょう。
 何でも変身前の月影ノブヒコを演じた方は、シャドームーンの登場する映像作品を全て視聴して研究してから役に臨まれたそうです。しかしそれだけの意気込みをかけるに相応しい役柄ではありませんでしたね。

□オールライダー

 本作に於ける目玉であるオールライダーの登場です。最終決戦に唐突に現れると言うのは予想の範疇なので不満はありませんが、肝心の戦闘描写がその辺の怪人と何の工夫も無く格闘しているだけの一瞬と言うのがつまらないです。もっと其其の個性を生かした戦闘が見たかったですし、強そうな怪人を其其に宛がって欲しかったです。特に真、ZO、アギトの三人は印象に全く残りませんでした(真とZOは特徴ある戦い方ではないので個性を見せるのも難しいかも知れませんが)。

□一号、二号、RX、カブト対ガラガランダ

 ガラガランダの触手攻撃で一号と二号が吹き飛びますがRXがリボルケインで薙ぎ払い、カブトが素早い動きで躱して接近、二人で相手の動きを止めたところに一号と二号のライダーダブルキックが直撃! 何だかんだ言いながらもこの流れには興奮しました。やっぱり一号と二号と言えばライダーダブルキックでしょう。

□ディケイド、ディエンド、キバ、電王、ブレイド、ファイズ対イカデビル

 キバ、電王、ブレイド、ファイズをファイナルフォームライドし、ディケイドがファイズブラスターを、ディエンドがブレイドブレードを、モモタロスがキバアローを一斉に放ってイカデビルを撃破しました。しかしこれはTVシリーズでもやろうと思えば出来る場面なので特に盛り上がりませんでした。またモモタロスを出すと言うのがその人気に肖っているみたいでちょっと嫌です。

□仮面ライダーダブル対シャドームーン

 ディケイドとクウガがシャドームーンに苦戦していると颯爽と駆けつける仮面ライダーダブル。圧倒的な強さでシャドームーンを叩き伏せました。この登場自体は新ヒーローの理想的な扱いでとても好きなのですが、如何せん全てに於いて時間が不足しています。先ずはシャドームーンがディケイド、クウガと戦う時間が短いので彼の強さが伝わりません。すると必然的にダブルの強さも伝わり辛いのです。ダブルの攻撃でシャドームーンが豪快に吹き飛ぶのはギャグすれすれながらその強さを見せ付けてくれて良かったのですが、もう少し時間を割いて頂きたかったです。
 それにしても相手が相手だけに、助けに来るとしたらブラックかRXだろうと思っていたので意表を衝かれました。

□オールライダーキック

 「皆、行くぜ!」「おー!」って。シャドームーン一人に全員のライダーキックとか、鬼ですかあんたらは。

□キングダーク

 最後の最後に用意されたキングダークですが、体格が貧相で弱そうに見えました。オリジナルのキングダークも立ち上がると大概でしたが、今回のキングダークもあれから時間が経った割に大差がありません。そしてキングダークの登場にライダーが手も足も出ませんでしたが、キャッスルドランが出現して対抗するとか見たかったですなぁ。

□仮面ライダーJ

 キングダークに対抗すべく巨大化した状態で仮面ライダーJが現れました。しかしこのJはディエンドが召喚したライダーで、彼だけが本物ではないのですね。そういう意味では最も扱いが悪いとも言えます。しかもキングダークにちょっと殴られただけで負けると言う弱さでした。足元のライダーを気にせず踏み潰さんと言う勢いだったのはディエンドの召喚と言う事で納得です(笑)。

□仮面ライダーディケイドコンプリートフォーム

 Jが負けたのを見てディエンドがディケイドをファイナルフォームライド刺せて、巨大なディケイドライバーに変形させます。その巨大なディケイドライバーがJに装着されて巨大なコンプリートフォームに変身しました。最後の最後までディエンドが美味しいところを持っていきますねぇ(笑)。

□「ディエンド、トモダチ」

 最後に帰る前にディエンドがギギの腕輪を返した事でアマゾンがこう言ったのですが、元はディエンドが奪ったのを返しただけなのですがアマゾンはそれで良いのですか? と言うかアマゾンはギギの腕輪が無くなったら死ぬ筈ではありませんか? そして今から思えばギギの腕輪を戦利品として持ってきたディエンドは何ともブラックです。
 実はこの台詞は関さんのアドリブだったそうです。それならば違和感があるのも宜なるかな、しかし関さんの意志とあれば許せるから不思議なものです(十六日追記)

□「士、君の本当の旅はこれからだ」

 戦いが終わってライダーが帰って行く時に、突如振り返ったアギトの素顔が見えて上記の台詞を言います。顔を見ただけでは理解らなかったのですが声を聞いて興奮しました。翔一だー! 思わず身を乗り出しましたよ! これは嬉しいです、今回の映画で一番興奮した場面になりましたよ。

□声優

 一号の声が稲田徹なのは直ぐに理解ったのですが、イカデビルやアマゾンを関(智一)さんが演じていたのには気付けずスタッフロールを見て驚きました。くそぅ、何か悔しいぞぉ。既に知った今なら見て確信出来るのでしょうなぁ。

□総評

 良くも悪くもお祭りと言う事で疑問ばかりが残る内容でした。そして完全にお祭りに徹しているかと言うとそうでもないので余計に気になります。
 士の出自が明かされましたが、それにより士の好感度が大幅に減退すると言う有様です。描写だけ見れば彼は間違い無く大ショッカーの大首領であり、世界征服を企んでいた事になります。そして簡単に裏切られ、自ら裏切った夏蜜柑に泣きつくと言う醜態を晒しました。果たしてこんな彼の何処に魅力がありましょうか?
 そしてオールライダーと言う最大の見せ場も、左右描写が少なく時間が短いので物足りない事この上ありません。単に殴り合っているだけではそのライダーである必然性がありませんし何の喜びも無いですよ。単なるお祭り作品ならそれはそれで大好きなのですが、これではそのお祭り作品にすらなっていません。オールライダー登場の盛り上がりが皆無なのです。とても残念でした。
 最初から期待はしておりませんでしたが、実際はそれを下回る作品でした。平成ライダーの劇場版では確実に最下位の評価となります。どうしてこんな風になってしまったのでしょう。しかしながら内容はともかく、これは紛れも無い『ディケイド』の最終回でした。『龍騎』の時は看板に偽りありと言う感じだった『劇場版が先行最終回』ですが、これは見事にそれを果たした感があります。

(09.08.13)

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