仮面ライダー555
パラダイス・ロスト

□そう遠くない未来、どこかの国、世界は人類の進化系“オルフェノク”によって支配されていた――

 変な文章(ぉ) これではまるで世界がどこかの国の中にあるみたいではないですか。

□乾巧

 今回巧は、時間軸上では映画で描かれるよりも前、ファイズとして戦い、一万人ものライオトルーパー部隊に敗れ、消息不明となったと言う所から始まります。無論巧は生きており、記憶を失い“隆”としてミナと共に靴屋を営んでおりました。しかし途中で記憶を取り戻し、真理達と合流、彼女達を助ける為に変身します。そしてオーガとの戦闘中、彼はオルフェノクへと変化します。これはかなり驚愕しました。ウルフオルフェノクとなりましたが、これがまた格好よく、俊敏さを生かした戦闘も良かったです。

□菊池啓太郎

 第一印象として、彼はTVシリーズよりも逞しくなっていましたね。更に、一度きりとは言えカイザに変身し、オルフェノクを斃すという快挙まで成し遂げていました。既に雅人の本性を知っている為か、雅人への態度が素っ気無かったのも良かったです。普段の活躍を思えば、大活躍と言っても差し支えないのではないでしょうか。最後に巧に置いて行かれてしまったのは少々可哀想ではありますが。

□草加雅人

 雅人はカイザへと変身しオルフェノクと戦っていますが、それは全て真理の為でした。周囲から反感を買うような横暴な態度をとっていますが、実際普通の人間何人分もの働きをしているのもまた事実の為、危ういものの認められているようです。そんな雅人ですが、カイザとしてサイガと戦い、変身が解けそのまま殺されてしまいます。合掌。

□木場勇治/ホースオルフェノク

 勇治の変化するホースオルフェノクは、『激情態』なる新たな姿での登場でした。これが通常の姿よりも格段に格好よかったのが印象的でした。更に勇治は、オーガへと変身します。一度はスマートブレインの姦計に嵌まり人間とオルフェノクの共存と言う理想を捨て人間を見限った勇治ですが、巧と真理の姿に人間とオルフェノクの未来を見たのか、スマートブレインに騙されている事に気付いたのか、真相は理解りませんが真理を庇い絶命、巧に理想を託しました。

□長田結花/クレインオルフェノク

 クレインオルフェノクもホース同様、『激情態』での登場でした。此方も非常に格好良かったです。更には現時点ではTVシリーズ未登場である、半獣人としての姿も披露しています。彼女も勇治と共に理想を信じていますが、エラスモテリウムオルフェノクの攻撃から直也を庇い死んでしまいます。死の直前直也が結花の事が好きだったと告白をするのですが、それに対し『知ってたわ』と余裕の態度。時間の流れを感じました。

□海堂直也/スネークオルフェノク

 三人の中で彼のみ『激情態』が与えられずTVシリーズと同じ姿での登場でした。個人的には寧ろ彼こそパワーアップをして欲しかったのですが。更には半獣人形態も披露していませんでした。他の二人と扱いに差があるなぁ、と思いましたがこれがオリジナルとの差なのでしょうか。少々残念と言えば残念ですが、そのような設定があるのでしたら取り敢えず納得します。直也は結花の死を前にし、激昂、エラスモテリウムオルフェノクに勇ましく向かっていくも、巨大な牙に噛み砕かれてしまいました。

□村上峡児

 村上社長は何故か首だけの姿で登場。これが如何にも悪の組織の首領、と言った趣で個人的には好印象でした。しかしそんな彼でさえも、度重なる失態の末、彼の更に上に存在する黒幕によって始末されてしまいました。他の面々が戦いの中での死んだ(ある意味、死ぬかもしれないと言う覚悟や考慮が既にされている)のに対し、彼だけは予測のつかない突然の死、可哀想なものがありました。

□仮面ライダーファイズアクセルフォーム 仮面ライダーファイズブラスターフォーム

 本作でアクセルフォームの活躍は二度。一度目はライオトルーパーとの戦闘で、凄まじい速さで連続して十数発のクリムゾンスマッシュを放ちました。二度目は飛行するサイガを追撃、壁に天井にと駆け抜けフライングアタッカーにダメージを与え飛行不能にしています。どちらもアクセルフォームならではの演出、スピード感で非常に格好よかったです。
 ブラスターフォームは初めて披露される新フォームです。ですが個人的にはあまり格好良くないと思います。『PFF(フォトン・フィールド・フローター)ユニット』や『ファイズブラスター』は格好良いのですが、如何せん基本デザインが。正直アクセルフォームの方が数倍格好良いと思います。唯、スーツそのものにフォトンブラッドを蓄積していて、全身が赤くなっている、と言う設定は良いと思いますし見た目の説得力もあると思いますけどね。

□オートバジン サイドバッシャー

 巧が記憶を取り戻しファイズへと変身すると、心なしか嬉しそうにオートバジンも現れます。オートバジンも巧が帰ってきて嬉しいのだなぁ、と感慨に耽っていたのですが、巧がすぐにとった行動はビークルモードへと戻してしまう事。それはあんまりですよ(哀) エラスモテリウムオルフェノクとの戦闘にはオートバジンも参戦、空中からの射撃で奮闘するのですが無念、破壊されてしまいます。しかしファイズは全く意に介しません。酷い扱いでした。少しはバトルホッパーを破壊された時の光太郎さんを見習って欲しいと思います。
 サイドバッシャーはカイザがサイガと戦闘を行う際バトルモードへと変形させておりました。また、雅人の死後、矢張りサイガ戦で直也も使用しています。どちらも大活躍とは言い難いのですが、そこそこの扱いがされていて良かったです。あと、ライオトルーパー部隊がファイズを包囲した際、崖の上に二、三機サイドバッシャーもあったような・・・

□ライオトルーパー

 量産型ライダーと言う役割を担っているライオトルーパーですが、そのデザインは独特の弱さが漂っていて非常に素晴らしいと思います。回想シーンにてジャイロアタッカーを駆り、一斉にファイズに襲い来る場面はショッカーライダー部隊、或いはショッカーバイク部隊を彷彿としました。

□仮面ライダーサイガ

 “帝王のベルト”の一つである天のベルトで、レオが変身したライダーです。スペック自体ファイズやカイザを上回るようで、非常に強い活躍をしていました。何と言ってもサイガの特徴はマルチウェポン『フライングアタッカー』でしょうか。ファイズやカイザと異なりツールはこれしか所有していないのですが、ところがどっこい、これ一つで十二分に思える多機能ツールでした。先ず空を飛びます。それによりパンチ技『スカイインパクト』や、キック技『コバルトスマッシュ』を特定のツールを使用することなく発動できるらしいです(残念ながら双方とも劇中未登場ですが)。更にフライングアタッカーは『ブースターライフルモード』、『トンファーエッジモード』としても使用できます。前者は強力な射撃武器として、後者はファイズエッジに相当する接近戦用の武器として活躍します。この様を見るに、ファイズやカイザと違いより兵器然としたライダーと言った印象を受けます。

□仮面ライダーオーガ

 “帝王のベルト”の一つである地のベルトで、勇治の変身した最強のライダー。その設定や、漆黒の闇で彩られたボディ、風に靡くマント、金色のフォトンブラッドはかなりミオさん好みです。ツールが一つしか存在せず、その活躍も十二分に満足できるもので無かったのは若干不満です。TVシリーズにも登場してくれるとありがたいのですが、無いでしょうなぁ。

□エラスモテリウムオルフェノク他

 CFでも多大なるインパクトを誇っている巨大なオルフェノク、それがエラスモテリウムオルフェノクです。人間の心を無くしている為、激情態を常に維持しているそうですが、今一つその意味が分からなかったり。別段勇治も結花も通常のボディに戻る描写は無かったと思いますが、もしかして人間の姿に戻らない、と言う意味なのでしょうか。そうでしたら合点は行くのですが。しかしまさかラスボスとは思わなんだ。
 ライオトルーパー部隊長が変化したライオンオルフェノクは、そのモティーフの選択と相俟って実に格好よかったですね。啓太郎の変身したカイザに敗れてしまった事自体は構いませんが、もう少し活躍して欲しかったなぁ、とは思います。胸の口から吐かれる三千度の高熱火炎はとても見てみたかったです。
 バタフライオルフェノクは、正直蝶と言うよりザインを思い出します。と言うかそっくりじゃありません? しかし多くの種類のオルフェノクが登場したのは単純に嬉しかったですね。『アギト』、『龍騎』では同一種類の怪人が多数登場した(それはそれで、戦闘員の登場しなくなった昨今に於いては非常に嬉しいのですが)だけでしたから。

□スマートレディ スマートブレイン社の黒幕

 ある意味今回一番美味しい思いをしたのは、スマートレディではないでしょうか。冒頭のスマートブレイン襲撃のシーンでは、堂々と現れオルフェノクに庇われています。その後も色々やりたい放題した挙句、村上社長より更に上の存在からの指示も受けているようで、村上社用を死に追いやります。最後まで謎の存在でした。
 映画を鑑賞し終え、スタッフクレジットを見ていると、納谷悟朗、飯塚昭三、加藤清三と見慣れた文字が。正直見ている時は誰の事か気付かなかったのですが、黒幕がそうだったのですね。そう考えると大首領と言った感じで実にマッチしていたと思います。あと『アギト』の河野さん、『龍騎』の編集長、おばさんも出ていたのですね。おばさんは気付いたのですが、他の二人は気付きませんでした。

□総評

 今回も文句無しに面白い映画だったと思います。唯、レギュラーキャラも多く死んでしまったのは残念でした。昨年の場合は最初から『最終回』と謳われていた為に気になりませんが、このようなのが二年も続いてしまうは個人的には好みではありません。『アギト』の様な極々オーソドックスで最後にはハッピーエンドで終わる安心して見れる作品が観たかったのもまた事実です(今作が面白かったと言うのは変わらない事実なのですが)。それとオーガにサイガ、エラスモテリウムオルフェノクにライオトルーパーと素晴らしい要素が沢山あったのは嬉しいですが、その為一つ一つがあっさり気味だったのも残念です。オーガやサイガは是非ともTVシリーズでも見たいキャラですからねぇ。いや、しつこいようですけど、凄く面白かったのですよ。もしかしたら平成ライダーの映画では一番好きかも知れません(尤も、それは単に一番最近見ただけで強く印象に残っているだけ、と言う可能性も無きにしも非ずですが)。

(03.08.23)

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