USA−P in 
 ・ 2004/03/15 (後編)


● ダークマッチ〜Heat

 コンチネンタル・エアライン・アリーナ、外見同様に建物内部も綺麗なんだが、なんかこぅ
寒い。またもキャップを外されたミネラルウォーターのボトルを手に案内された座席につくが
足元からじんわりと寒さが染み込んでくるようで、例えて言うなら
「飲み物を、飲んだ分だけ、ションベンに」
 ってトコロか。身震いする程ではないが昨日のMSGが観客の熱気もあったにせよ随分と
暖かかったのと比べると空調設備の差かこの会場はかなり冷えると思う。
 今日の席は昨日より後ろのヒナ段Bってところだが、観やすいし何より正面が左斜め前、
って事でタイタントロンも一度に視界に収められる。ただ、観やすい分だけ階段が急で、
「ここでコケたら『銀ちゃぁ〜ん!』とでも言ぉうかなぁ?」
 と思うが、昨日の朝食の時に『アイ・アム・サム』のサムの真似をして
「ピンクはブルーのとなり。ブルーはホワイトのとなり。」
 と砂糖を並べ替えてみたものの妻にスルーされたからな… 『蒲田行進曲』でも駄目かも
なぁ…って以前にレディファーストで妻が先を歩いてるしなぁ… とボンヤリ思える開演前。

 今日はスクリーン無し。

 相変わらずSOLD OUTの表示のワリに席についている人は少ないが、昨日MSGで
私達が座っていた席のあたりに黄色のジャンパーを着た集団が座っていてオーストラリアだか
ニュージーランドの国旗を振っている。

 団体様御一行

 昨夜の私達、ツアー客もこんな感じに見えていたのかなぁ? と思っているとフィンケル登場。

 前説中

 そしてダークマッチが始まったが、名も知らぬ選手達でもエントランスプロモが無いにせよ
一応入場時に曲をかけるので、日本のプロレス興業的でこれはこれで悪くない。全く知らない
選手達だがさながら【ど真ん中】のようにロックアップからの関節技の応酬ってのにますます
アメプロを観ている気になれないが、一軍選手と比べれば体は細いがそれなりにあるし、技の
技術はあるので退屈はしない。と言うか、このレベルって新日本ならミドルカードクラスじゃ
ないのかなぁ? 途中、緊張してバテたのかダレると観客から一斉に「Borling!」コールが
起きたが、その後はハイスパートな展開でラストが変形垂直落下式ブレーンバスターでピン、
ってのには観客から拍手が起きていたけど、これは御座なりとかお約束では無いと思う。溜め
が無い分だけより危険に見えた最後の技だけでなく、1つ1つのレスリング技術は流石はプロ
レスの御本家だけあるなぁ… と思ったらもぅ1試合あるようで楽しみにしていると無名の新人
の登場の後に出てきたのがランス・ストームだったので個人的に驚く。 
 エントランスプロモと共に出てきたランスは相変わらず丁寧なレスリングと受けで試合を進め
ていくのを観ていて何だか胸が熱くなってきた。
 レスリングの技術もあり、身体能力もあり、なによりビジネスに真面目でなのに、それが
人気に繋がらない、ってレスラーは一杯いる。その理由は色々あって、会社のプッシュや対戦
相手、ギミック等もあるが、体があまり大きくない、存在感や華といったカリスマが足りない…
というレスラーに私が好感を抱くのは判官贔屓の部分もあるが、しっかりとした彼らがいる
からこそ『試合』が成り立っている、というリスペクトも多分にあって、ランスは本ッッ当に
地味だとは思うんだけど、RR03でのリーガルとのタッグ等を観ていると巧いが故に気に
なるレスラーだったのだが…
 実は前記の条件に当てはまるレスラーの中から「ECW」「WCW」ってのでエディが、
そして「カナダ人」ってのでジェリコやベノワも実はランスと同じ括りなんだが、現状から言えば
ランスのポジションはあまりにも低い。確かにゴールドダストとの奇妙なコンビが折角ノりかけた
矢先に退団、という不運もあったとは思うがクリスチャンもトリッシュのヒールターンとのセットで
あってもストーリーラインに関われているのを思うと寂しく思うのだが…

 ズーム使うの忘れてた(涙)

 でも、わりと早い時期からベビー的な人気がついていたジェリコは別にしても、一度プッシュ
にノり損ねた揚句、怪我で1年もの休場のあったベノワや、アルコールと痛み止め中毒でクビ
になったエディが、会場の支持さえあればあそこまでのポジションになる事を思えばいつの日
にかランスも… と思いながら観てるうちに試合はランスの勝利で終わった。最後まで緊張感
を欠かす事なく、新人のミスもカバーしてちゃんとした試合にしたランスに会場からの拍手や
歓声があったのを観ていると、いつかランスだって… と、あらためて思う。
 WMがSUPER STARによる夢の競演の場であったように、それがWWE的か? って言えば
また別の話だとは思うが、RAW、SD組ともに職人的レスラーがチャンピオンとして団体の『顔』
になった今ならば… 腐らないでいてくれ、と思う。

 続いてHeatの収録になるが、まぁリコとスティーブン・リチャーズのはお互いに巧いし、先程の
新人らには薄かった観客観もあるから楽しめたのだが、続くハリケーン&ロージー組と誰かの
タッグ戦が眠いったらありゃしない。ハリケーンのみが観客をキチンと見ていてダレ場を出来る
だけ減らそうと煽ったり動いたり叫んだりしているが、図体のデカイ分だけ目立つロージーや
対戦相手がグダグダ過ぎて盛り上がらない。スポット自体は悪くないんだが、それまでの間が
モタついているんで冴えない… ってのは別にHeatに限らないが、新鮮味とか新発見が無い分
だけ眠い。あと、これだけ録画、ってのもあるのかなぁ…

 CMの為の間やらが結構入るし、会場観戦では実況が聴けない、ってのもあるが、そんなに
退屈しないのは進行のスムーズさもあるし、例えばHeat枠のOPの火炎や花火の炸裂も
あるせいかメリハリがついているからか。おまけに長い休止の間にはTシャツプレゼント大会が
行われて極力観客がダレないような配慮がしてあるのも楽しい。

 Tシャツプレゼント大会中

 コレ、WM19でショーンが入場する時に使っていたのと同じモノだと思うが、圧縮空気による
射出は自在の飛距離でアリーナ最上段付近までTシャツが飛んでゆく様は結構見物。また
フィンケルと射出係が会場を煽るのが巧いので皆、
「こっちじゃぁー!」
「そっちはええじゃろー!」
 とノリノリで楽しい。昨夜も開場前、待っているファンが
「開けろ〜!(Open the gate! open the gate!)」
 とチャントしてると警備員がもっともっとと煽ったりして盛り上がっていたが、こういう雰囲気って
日本では難しいなぁ… とは思う。いや、是非、学んで欲しい事だと思うけど。


● RAW

 リリアンが登場、アメリカ国家斉唱に浸ろうとするが合間の『What?』チャントが五月
蝿かったが、流石に最後のくだりの伸びに会場が空気が締まる。と、イキナリ冒頭で昨夜の
クライマックスが流れて鳥肌立ちまくったままになる。
「そうか… こういう実況がついて、こういう映像になったのか… 」
 昨夜はタイタントロンでなくリングの上に魂をもっていかれていたから新鮮ではあるが、
その映像に収録されている歓声とその映像を観て盛り上がってゆく今夜の観客の歓声とか
シンクロしていく以上に、自分が昨日あの場所にいた事に感動しているとHHHが登場!
 WM18のdvdの映像特典に収録されていた翌日のRAWでのホーガンさながらの会場の
ような… と言っても今日は大ブーイングなのだが(笑)… に暫くHHHはマイクを持たな
で、動きで観客を煽る煽る。こんなにHHHって巧かったっけ? と思うほどに、四方の観客
をノせてブーイングを引っ張り、左腕の包帯を目立つような仕草で「YOU TAP OUT!」チャント
を引き出し、盛り上げるだけ盛り上げてゆき、やっと喋り始めてもいちいち嫌味なヒール味で
自分を称えてベノワを貶す『間』も絶妙で、ライブ会場にいるからこその面白さを味わえた。
正直言って今日のRAW観戦、昨日の余韻がまだ残っているだけにお掃除●ェ●的っか
後戯的だとばかり思っていて… 次のPPVへと向かう為のスタートでもある、ってのは承知
していても… なんとなくノらない気分ではあったが、これには本当に満足した。

 モーリー、突っ込んで下さいと言わんばかりの金髪のカツラをつけてジャズと組んでリタ&
ヴィクトリア組との対戦がRAW第一試合だったが、やはり痛々しく見えてならない。お約束
のカツラ剥ぎ後のリアクションのお約束っぷりの堂々さはいいけれど、対戦相手がデカ女達と
あってのはどうもなぁ… プロ根性は認めてもノりきれなかったモーリー贔屓の私。
 続くマット先生とY2J、ヴァル・ビーナスとケインの実に呆気ない、いかにもストーリー
ライン繋ぎっぽいジョブはOPが伸びた影響があるのかもしれんけど、近くの席の子供が
「V1ダー!」
 って叫んでいたりして微笑ましく思えたのがブチ壊されたようでなんかいい気がしない。っか、
こんな扱いしかされてないのマットって? そりゃぁ勿体無いよ… と思ってたら次がステイシー
とミス・ジャッキーの試合と知って、とりあえずの用心としてトイレに行く事にしたが、同様の
御仁が結構いて笑える。とりあえず会場の外のモニターでも映像と音声が来ているし
「どうせトリッシュのいないDIVAのなんかじゃぁなぁ… グダグダで終わりだろ?」
 と用を済ませて小腹ふさぎのホットドッグでも買おうと思っていたら

 NO CHANCE!

「マジっすか!?」
 とダッシュして戻る御仁多数(笑)。お前らみんな男だよ!(謎)
無論、私もダッシュして戻るとヴィンスが昨夜の事に触れつつ、ドラフトを宣言した。しかし
この人の存在感ってホント、並じゃないわ。

 ビッグマック・ダディ

その声、立ち居振る舞いの堂々さ。何よりシンプルだがかなり高いスーツと豪華なセットに
負けない品格と体格には圧倒される。DIVA戦での乱入だったらしいが観客の意識がリング
に集まっているのがよく解る。ヴィンスはやはり妖怪だと思う。

 威風堂々の退場

 いつもの「ASSHOLE!」ではなく歓声と拍手に送られたのは昨日がそれだけ素晴らしかった
からだし、このドラフト宣言の揺ぎ無い自信と力強さからだろう。これに比べると、相当感心した
筈のOPのHHHが本当に子供に思える。格が違う、としか言い様が無い。あれは努力とか
才能とかで語るもんじゃぁない。それは人と人とを比べる時の話であって、人ならぬものを比する
事は無意味だ。しかし、【興行会社】において社長があんな妖怪じゃぁ社員は本当に堪った
もんじゃぁないよなぁ… と余韻に浸る。
「あぁ、間に合ってよかった。ホットドッグでも買おうかと思ってたんだけどさ… 」
「ホント、いきなりの登場だったからビックリした。でも夫も間に合ってよかったね」
 と話してたらダッドリーズ対RVD&ブック様の試合になったので
「じゃぁ妻がホットドッグ買ってきてあげるね〜 夫はマスタードいらないんだったよね〜 」
 と中座する妻。

 ちっ。

 昨日よりもグダグダした試合に眠気を誘われつつホットドッグを食ったが他の客も「Borling!」
コールしてたくらいに退屈だったせいか、CM待機中にリリアン司会のTシャツプレゼント大会が
2回あったので気分が何とか盛り返すが、あるCM待機中にニュージーランドだかオーストラリア
だかの団体様が退屈したのか騒いでいると他の観客らから猛烈なブーイングを食らう。あまりに
酷いブーイングに国歌だかを歌ってみせるも今度は
「ナナナ〜ナ、ナナナ〜ナ、ヘイヘイ〜 グッバイ〜!」
 の大合唱に私達だけでなくツアーの日本人達は凍りついたようになる。面白がって、ってカンジ
にはとてもとれないものだったし、多分にそれが昨夜のレスナー対GBの事を思い出させたのかも
しれないが、正直いい気分はしなかったし、私はこれでかなり気分が冷めてしまった。放送途中、
タイタントロンに彼ら団体客が映されて実況で
「今日はニュージーランド(? オーストラリア?)からも観戦に来ている人がいます」
 とかJRが言ってそうな場面でも会場は一斉に大ブーイングしてたが、それがいつ自分らにも…
って思うっての。お陰でトリッシュとクリスチャンの過剰なディープキスもその他のスキットにしても
なんかこぅノれなくなってしまって。

 そんなこんなでやっとこさのメイン、HHH抜きのエヴォリューション対ベノワ&HBKの試合だった
のだが、観ていてフレアーやHBKへの歓声と比べるとベノワさんへの歓声は明らかに一段落ちる
量だったのが観ていてとても気になった… と言うか、やっぱりフレアーやHBKは別格だわなぁ…
終盤、ベノワさんも歓声を大きくもらえるようになって試合は終了したが、帰り道のバスの中、
近づいてくるマンハッタンの夜景を見ながらOPでのHHHのマイクを思い出していた。
「確かにベノワは素晴らしいレスラーだ。昨日は俺をタップさせてベルトを獲った。だが、ベノワは
一度ベルトを獲ったに過ぎない。そんなヤツがチャンピオンだと? 1年以上王者でい続けた
俺こそ、チャンピオンと呼ばれるのに相応しい」
 ってな事を言っていたが、HHHの長期政権への評価はどうであれ、この言葉はかなり重いもの
だと思う。それに対してベノワが
「何度でもお前をタップタップタップタップさせてやるぜ!」
 と言ったのをカッコイイと思いつつも、どこか物足りなく
「それでいいのか?」
 と、思えたのも事実だった。

Next >


USA(0403) TOP >

Jourey TOP>

Index >