USA−P in 
 ・ 2004/03/14 (後編) … ネタバレにつき注意!


● WM20

  まだ花火の煙が漂う中、エントランスミュージックが流れて登場してくるのはシナ!
 何て無駄の無い進行なんだろう! 嫌でもリングの上へと意識が集中出来る。

 1・シナ vs. ビッグショウ (US王者戦)

 っか、タズじゃぁないが本当にビッグショウってデカイよ! よ、どよめく会場の一部に
なっている私。いや、それより物凄く火薬臭くて、余計に気分がノってくる。

 会場人気もさる事ながら、双方技術があるだけに安心して観られるオープナー。無理に
Heat枠が無くて本当に良かったと思う。シナ、入場時の気合の入れ型には疑問もあった
が、いざ試合となるとビッグショウ相手のゆっくりと大きく動いて試合を進め、スポットを
積み上げていくのにワクワクしてくる。
 1発目のFUの後、スニーカーに空気注入してからのフィストではなくエディばりの凶器
使用からの2発目のFUでのピンでシナが新王者、ってのに素直にノれたいい試合。

 フラッシュ焚いて大失敗(涙)

「最初っからこんなのやられたらこの後、どうなっちゃうんだ私!?」
 と思ったのだが

 2・ケイド&ジントラック vs.ラ・レジスタンス vs. ダッドリーズ vs. RVD&ブッカー T
(World Tag Team Titles)

 結局ババが仕切るしかない組み合わせだと思っていたが実際その通りでさっきの試合の
余韻がみるみる減ってゆく。流石にダッドリーズとRVDの絡みはいいんだけど、タッグ戦
でコーナーにいるかと言ってボーッとしていてもいいわけでないのだが、どこか観客との
ズレがあって会場までも冷えてゆく。RVDが意外にいい体格をしているのは驚きだったが、
彼氏が会場やリングの上を見ていないマイペースっぷりにガッカリもしたりする。若手2組
は悪くは無いが良くも無く、ベビーの肝の筈のブック様が他とリズムというか「間」が合わ
ない印象とか、ネガティヴな気分ばかりが残って王者組の防衛にもなんとなく冷めた気分に
なるが、次がもぅ

 3・ジェリコvsクリスチャン

 トリッシュとの鞘当… ってストーリーラインはどうでも良くて、1年以上続けた二人の
友情物語の決算として、どんな試合になるのか? って期待を思いっきり膨らませてきた
のは二人が共に巧者で同じRAW組。これなら鉄板、安心して楽しんで観るぞ… と思って
いたのだが、いざ試合が始まってみると、なんとなくノリきれない。巧いし、ハイスポット
も織り交ぜてく匙加減はさっきのタッグ戦とは比べ物にならないんだけど、なんかこぅ…

 露出設定ミス(こんなのばっかり)

 私が【二人のプロとしての意地の張り合い】ってのを期待し過ぎていたから余計にそう
見えるのかなぁ… まぁ二人の仲の良さ、信頼はよく見えた気がしたけどその分、試合や
レスリングってのとは違うような気がしてしまっていて。
 ラストのトリッシュのヒールターンはいい事だとは思うが1年の総決算、特別な大会の
試合のフィニッシュとしてどうか? と聞かれたら「私的には微妙」としか言えない。逆に
カード順とそのフィニッシュの為の… として観ればいい試合だった、とは思うけれども…
 だけどトリッシュのストーリーの為に二人がかりでジョブ、って観られなくもないのが…
会社的にそれで吊り合いが取れるのかもしれないが、それはなんだかなぁ… と、退場して
いく姿を見つつ微妙な気分。
「ジェリコ、どうやっていくんだろうね… 」
「でもクリスチャンがやっとこさジョブ役から昇進出来たし良かったかな?」
 と妻と話しているとスクリーンにはロック様!
「FINALY... The Rock has come back in
 
NewYork city!
 を共にコール出来る幸せ。WM19の時のようになったらどうしようかと思っていたが
今夜は会場の皆がコール。が、まるで巻きでも入っているかのような喋りに笑える一方で
疑問も感じていたら、

 4・ロック&ソックコネクション vs. エヴォリューション

 でカメラを構える余裕も何もかもふっ飛ぶ。

 この試合、兎に角、フレアーに尽きる。
ロック、ミックの観客観とコントロールは見事だったが、フレアーのそれらはケタ違い。
バティスタは一生懸命やっていたからまだいいとして、オートンはこの試合から学ばない
とレスリングの基本技能や身体能力だけでは駄目だよホントに。入場時からして決して
大きくも立派な体格でも若くもないフレアーが、あのガウンすら霞む存在感と色気に私は
初めてモータヘッドのエントランス・ソングがカッコ良く観えたくらいに、フレアーにシビレた。
 しかし、それだけでは済まないのがロック様。1年相当のブランクがある筈なのに、
決して負けてないし、試合が進むにつれて二人で創りあげていく様にシビれてくるが、
一方で気になったのはミックとフレアー。
 ミックが攻めるにしろ攻められるシーンにしても、ミックが観客を引っ張る箇所で観客
を引っ張りきるずっと前に必ずフレアーが絡んでもっていってしまう。ロック様の時には
そういう事は無くて、何故かミックの時にかなり早い所で入ってきた印象が妙に残って
気になったが… ミックの自伝でよく書かれていないレスラーの一人がフレアーだが、
今もそういう負の感情が残っていそうな気がしたのは、絡みの少なさだけではないと思える
ものだった。タイプではなく方法論が似ているのかなぁ?

 フィニッシュの唐突さが残念ならくらい、もうちょっと観ていたかった試合で、二人の
退場も惜しくて。その余韻を味わっていると昨夜の「Hall of Fame」の模様が流れ、殿堂入り
のレスラーが次々と登場。 よく知らない人もいるし、知っていても思い入れの無い人達
ばかりなんだけど、さっきの試合の余韻もあって幸福感みたいなのが持続していていい気分
だったが、それでも次の試合が

 5・セイブル&トーリー vs. ステイシー&ジャッキー

 だと知ってトイレ行っていたんで内容はよく知りません。
トーリーにレスリングを望めない以前に、イブニングガウンって要は下着姿の披露くらいだけ
の形式ってのに付き合うよりも尿意の方が上。青少年ならドキドキもんなのかもしれんが…
トイレから戻ってきてもまだ何やらやってるんで、友人がトーリーのファンなのを思い出して
一枚撮ってみるが

 ピント合わせ失敗(こんなのばっかり)

「早く終われよ… 」
 と本気で思ったものの、この次がもぅ… 

 エディとベノワとスキットだったのだが、はじめは陽気にベノワにお互いのキャリアと
今夜を語っていたエディがベノワと共に情熱的に、苦労してきたお互いがお互いを、
「俺は、俺は、俺は、自分を信じる! 今夜は勝つ!」
 と互いに語るのに観客も大歓声となって涙腺が緩む。うっかりグッズ売り場に行かず、
このスキットに間に合ってよかったと本気で思う。
「それにしても盛り上げたり盛り下げたり忙しいなぁ… 」
 と思っていたら、わりと期待していた

 6・クルーザー級王者バトルロイヤル戦

 入場でコケるわエントランスプロモが他のレスラーよりも遥かに短いわ、リングインでも
ヨロついたドラゴン校長の行く末、見せ場は色々と作ってもらえたようだが余計に不安を
感じさせる。皆、ハイスパート的だったし、1つ1つのスポットだけでなく全体的に悪くは
無いんだけど、さっきのエディとベノワのスキットの方がよっぽど熱くかったのと、キッド
マンの場外へのSSP披露が早かった事など、SD組にしては巻きの入った、取り急いだ
ような試合展開にノるとか以前に終わってしまって今夜の先行きがボンヤリと不安になるが、

 7・レスナー vs. ごーばー

 のプロモの段階からレスナーに対してのブーイングがハンパじゃないのに切なくなる。
ここまでの罵声をされる、と言う事は本当に今日で退団なのかも… という寂しさ以上に
何故にそこまで… と思う。そのくせSCSAの登場には大歓声なのには腹が立つ。
 GBの入場の歓声や「ご〜ば〜」コールよりも、レスナーへのブーイングの方が凄い、
ってのはある意味で人気の現れなのかもしれないが、かつてdvdで観てきたどの試合
より激しいブーイングに、スクリーンに映るレスナーの顔も戸惑い気味で更に切なくなる。
 試合の方も何をしても、しなくても
「Lesnar SUCK!」
「YOU SOLD OUT!」

 など阿鼻叫喚のような会場には寒気すら感じる。だが、GBの攻める番には「Boring!」
コールがあったり、少ないんだけど「Let's go LEASNER!」コールもあったのを思うと
これも愛されている故なのかもしれないが… と、悲しいやら切ないやら。
 決して噛みあった試合ではなく… それこそ去年のSDで名勝負をみせてきてくれた
レスナーであっても状況以前にGBの大根っぷり&やる気の無さが見え見えでは手の施し
様が無く、キチンと勝たせたレスナーにはもぅ拍手してやりたいのだが会場は
「ナナナーナ、ナナナーナ、ヘイヘイヘイ、グッバイ〜」
 の大合唱で冷たい怒りを感じるが、それ以上にその後でのSCSA劇場にはもっと腹が
立った。そりゃぁ二人ともいなくなるからこういうオチでいくしかなかったのだろうけど
SCSAでなら何でもいいのか!? こんなのも喜んでる観客って馬鹿ばっかりだッ!
と、凄く腹が立ったた(←八つ当たり)と、切なさで一気に気持ちが抜けてしまい…

 8・バシャムズ vs. the APA vs.WGTT vs. リキシ&スコッティ

 レスナーの試合での会場の空気が私には異常過ぎたせいで殆ど覚えていない。
なんか集中出来ないんで今までデジカメで撮った画像の確認をするが、あまりにメチャクチャで
「もぅカートとエディの試合とか、カメラ構えてるのが勿体無い。観るのに徹しよう」
 と思ってるウチにリシキ組が勝ったのと試合後のダンスを観ていて
「WORMは試合でやれよ」
 と思ったくらいにしか記憶に無いです。
それくらいにさっきの試合のブーイングがすざまじく、第4試合までの幸せな気分が全部
ふっ飛んで虚脱感というか何と言うか、リングに集中しにくくなってしまっていた。

 同じ「タッグで4way」って試合形式としてはRAW組よりいい試合だったような気が
しなくも無いんだが、なんとなくそんな気分を払拭するものではなかったように見えていて。
 兎に角ボーッとしてしまっていて、

 9・モーリーvs.ヴィクトリア (女子王座戦・負けたら丸坊主)

 も、なんだか気分がノらない。
大体、エントランスプロモが相変わらず掌に浮かび上がる眼を握り締めて… ってサイコ
チックなまんまでスティーブン・リチャーズがいないからってヴィクトリアがベビー、って言われ
てもノれないっての… と、思ってたら終わってた。尾崎が自分からバリカンをあてていたのと
比べると体格の小さいモーリーが拘束されての丸坊主は痛々しく見えてならないのは多分に
私の贔屓もあるんだろうけど、そんなにヒートかえる程の試合でも無かったと思う。

 どうでもいい(←失礼)試合が2試合続き、さっきの試合の途中でピザを買って来て喰い
終わった妻、昼間の歩き疲れが出てかウツラウツラしてるし、私にしても観戦のテンションが
どんどん下がってきいるんだけがどうにもならない。あと残り3試合なのに、自分が期待して
いる試合が1つだけでメインじゃぁない、って時点でテンションが上がる筈も無いんだが…
 と思っていたら

 10・エディ vs. カート (WWE王者戦)

 その一番期待していた試合がイキナリ来てワケわかんなくなりつつも再びテンションが
急上昇して
「YOU SUCK!」
 とチャントしてる自分がいた(笑)。
丁寧でしっかりとしたレスリングからお互いの見せ場を織り重ねてゆき、間をとるかと思えば
スピードをつけてゆく展開に文句なんか無いし、さっきまでの呆けていた気分が締まるのと
同時に安心して、集中して観ていられる。スカし、ヒネった末のオチにも大爆笑で、ここで自分の
気力も何も燃え尽きてしまえと歓声を送りながら退場する姿を観つつ余韻を噛み締めながら
「あぁ、まだ2試合もあんのかよ… ここで終わりでも… なぁ… 」
 と冷めた気分で

 11・テイカー vs. ケイン

 の因縁プロモを観ていたが、ケインの入場の炎の圧力と熱気、そしてテイカーの新しい
エントランスプロモに鳥肌が立ち、旧テーマと共に骨壷を手にしたポール・ベアラーが松明の
行列を引き連れ、そして現れたテイカーのカッコ良さと歓声の爆発に思わず立ち上がってた。
いつか観た、そして今日のOPプロモでも使われた冥界版テイカーのまんまな姿なんだけど、
それが兎に角、カッコいい!

 が、それだけだった試合。

 悪くは無いんだが、入場も試合も暗黒テイカーなのにコスチュームはバイカーなまま、
ってのもあったのかもしれないが、テイカーが試合を久しぶりなせいか、やや「間」が
ケインだけでなく観客とも噛み合ってないようなトコロがあったし、試合内容にしても
良くも悪くもこれ迄のテイカーだったのもあろう。が、それだけに余計に
「これ、次のどう繋げていくの?」
 と余計な心配をしてしまったし、
「あぁ、もぅこれではメインも駄目だな」
 と思い、明日のRAWの事を考えるといささかウンザリした気分になってきた。
とにかくスタートから既に4時間以上経過していたし、時差や昼間のNY市内観光で歩き
回っていた疲れもある。まして出発直前に観たRR04でのHHH vs. HBKが無駄に長い
試合としか思えなかったうえ、善悪2つに分かれない3WAYって試合形式の難しさもあって
正直期待していなかったが、だからと言ってこのまま帰るのも勿体無い気分。とは言えもぅ
かなり投げやりというかカッタルイ気分で。
「やっぱり長いのかなぁ… 」
 妻も同様らしい。
「これじゃぁ12時越えるかもね… この3人だと30分くらいやりたがるだろうし… 」
「御飯、どうしよっか? ¢99ショップで買ったポテチくらいしか無いけど、こんなに
夜遅くなってるんじゃぁどっかで食べに行くってのも時間がねぇ… ちょっと恐いしね… 」
「そうだね… まぁホテルで済ますかね?」
 と、

 12・HHH vs. HBK vs. ベノワ (世界ヘビー級王者戦)

 の因縁プロモを観ながら妻と話していた。

 しかし。

 入場してきた選手を観た瞬間、自分の中でそんな気分が拭い去られていた。
それまでの選手の入場シーンとは違った、大きなオーラとしか言えないものがどの選手か
らも伝わってくる。それは錯覚かもしれないし何か予感、勘違いにも思えたのだが、いざ
試合が始まった瞬間に根拠が無いのに確信になった。

 この試合が終わるまでの間、自分の事をよく覚えていない。
私の魂の一部も溶けて混ざったままになってゆく喪失感と、ぐんぐんと登りつめてゆく
高揚感とか興奮とかって言葉では全っ然足りないんだけど、そうとしか言えない感情で
一杯になってゆく。観客の熱気が選手を煽り、選手のムーブが観客を煽る。さっきまで
うざったいが一応気にはしていた
「見えないから座れーッ!」
 と叫んでいる後ろの席の親子連れなんか知った事じゃない。座ってなんかいられない。
勝て! と願う。狡い! 汚い! とブーイングしてる。足を踏み鳴らし、キックアウトに本気
で喜び、ガッカリする。我を忘れる… とは言うが、30を過ぎてなかなかにそういう状態には
なれないものらしいが、そもそも私はそんな心境になった事が無かった。
 だが、今、眼の前の、リングの上しか眼に入らない。頭の中が真っ白に焼けつきそうに
なっている。ベノワがHHHをクロスフェイスに捕らえた瞬間、叫んでいる。
「TAP! TAP! TAP! TAP! TAP! TAP! TAP! TAP!」
 息が続かなくなるまで叫ぶ。息を継ぐ間も惜しい程に再び吸い込む空気までが熱い。
観客の祷りが叫びとなってMSGを震わせる。拳を握り締め、もぅ自分がぶっ壊れても
構わない。この一瞬に全てを。どうなってもいい。余計な乱入者などいらない。ただこの
リングの上のものだけでいい。HHHがロープに逃げようとしてみせて回転し脱しようと
する。血の気が引く。が、それでも再びクロスフェイスの体勢になる。リングのど真ん中
で締め上げられる姿に震えが走るのを振り切るように叫ぶ。
「TAP! TAP! TAP!」
 そして、HHHの手がマットを叩いた瞬間、会場が爆発した。
 
  ベノワの汗まみれで泣きそうなのだが、やり遂げた満足感と達成感で満ちた男の顔に
満場の拍手の嵐。そして現れたエディとベノワの上に舞い降りる紙吹雪が会場全体を包む
中、我に返って妻を見ると、汗まみれになっていた妻はとても素敵な顔をしていた。
「なんだか… 観ていて妻も泣きそうになっちゃう… 」
 妻の声は枯れて、しゃがれていた。
「そうだね… 」
 と言った時、自分の喉が枯れ果てているのがわかった。
一体どれくらい叫んでいたのかもわからない程に我を忘れていて、やっと見た時計は既に
12時を過ぎていた。





 会場を出ても頭がボーッとしていて、歩いていてもどこか雲の上を歩いているようなふわふわ
とした気分で外気の冷たさが心地いい。色々な人種の、色々な年齢層の人達が皆、にこにこと
笑顔で帰路についている。喪失感は無い。虚脱感でも無い。宴が終わった寂寥感でもない。
あるのは、この胸にあるのは多幸感。だから暖かくて、皆、にこにことしている。

 来月末に出るWM20のdvd、私は何度も観るだろう。
あの日、あの夜、MSGにいた事の幸福を思い返し、何度も、何度でも噛み締める為に。 

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