USA−P in 大阪 2
・ 7月20日 − 後編


○ なんばグランド花月 金曜レイトショー。

開演前。上演中の録音、録画はイカンとは思うが写真撮影くらい認めてくれてもいいと思うんだけどなぁ…

 みるみるうちに客席が埋まっていくが、若い子もいれば親子連れ、お爺さんお婆さんと様々な客層は
なんだかとても気分がいい。多分、昼間だと団体旅行客が多いであろう事を思うとアットホームと言う
か地元の人達というノンビリした感じがまたよろしいが、ただ劇場が古いからか身長181ちょっとの私
にはやや椅子が小さく、前との距離がキツキツ。その分段差はあるんで普段ライブだと自分より後ろ
の席の事が気になる私らにはまずまず安心、といったトコロか。

 場内アナウンスと共に暗転し、幕が上がるとそこにスクリーンがあり、吉本関係のCMがこってりと、
もぅええでしょって思うくらいに流される。おまけに液晶のドットが荒いのか、それとも2階席からの視聴
にピントを合わせてなのかボケ気味でイライラしはじめたトコロでやっとCMから開放されてさて? と
思ってるいと、今度は紹介PVが流されて登場してきたのは

○ 麒麟
 田村君の側だったんで余計にそう見えたのかもしれませんが、田村君が客席の反応は見ているが
あまり客、小屋内の客席の温度差・ムラにあまり意識は無いように見えたのに対して川島君は客席は
見ているんだけどあまり客の反応そのもの、それ自体が主には見えない、っという印象を受けまして。

 特にこのレイトショーの回、何故か一番最初の登場でまだ席につこうとしていないお客さんやらをイジ
ったりするんですが、舞台側に集中させようとするんだけどそれもあくまでも自分達の「場」を演じる為
のもので技術的でありネタに対する時と比べると「ある程度そういう形になればいい」って感じで割と
ルーズっか緩いんですね。「俺達に集中しろ! 見ろ!」ってんじゃぁなくて、「自分達がネタをやっても
いいくらいの雰囲気、場にしましょうかね」って感じ。

 で、

 今回は「休日のバイク」「だるまさんが転んだ」「プロ野球」で、特に最後の「プロ野球」は同じ日の夜
に放送された『たけしの誰でもピカソ』でも演じたものなんですけど、それと比べると間の取り方とか
ほぼ一緒。細かい部分では川島君のボケネタの有無はあるんだけどタイミングやテンションのつけ方
が見事なくらいにほぼ一緒。TVでの客層とライブの客層は全く違うのに。で、それでも面白いし笑って
しまうんですが…
 田村君をコントロールする為なのか川島君は本島によく田村君を見ているし、田村君はタイミング等
の事もあるからか本島に川島君をよく見てるんですよね、お客じゃなくて。別に観客を無視、軽視して
いるワケじゃないんだけど、あまりそれに重きを置いているようには見えない。手を抜いているんじゃぁ
なくて、彼らにとって演じる事の方に重きがあり、その結果としての反応も大事ではあるが…
 ってトコでしょうか。だからこそ自分達の舞台に対しての真摯さと真剣さはあるんだけど、それを客に
強要しないってなっているのが個人的には好印象でしたな… それは自分達のスタイルへの責任感
と自信(その自身の根拠となる練習の積み重ね)があるからこそ、ですもの。 

 彼ら麒麟というコンビでしか出来ない非常に演劇的、舞台的で多分、麒麟としては本当はコメディ、
コント、スケッチ的なものが彼らにとっての姿で、漫才は便宜的にそのやりたい事をお客さんに解り易く
伝える為のフォーマット、翻訳なんじゃぁないかなぁ? って思ったんですが… ファンの方だと既知の、
周知の事実なんでしょうが、そういう見方をしてなかったもんで凄くこの生での体験ってのは刺激的で
面白かったんですよね…
「あぁ、こういう形式もあるんだ… 」
 って。

○ 西川のりお・上方よしお
 で、次がこんなベテランって。
意識してなのか淡々とした進行なんだけどフォーマットはもぅガチガチの漫才。かつてのテンション芸、
キレ芸を思うとシレーっとおかしな事を堂々と語るタイプで時代を感じるなぁ… と思ったら暴走するネタ
で天丼をやられて、そんなのりお氏と巧く合わせるよしお氏の漫才はベタで次が読めるんだけど笑って
しまうんでもぅ流石はベテランだなぁ… っと言う他は無し。麒麟の後だけに見てないようでちゃんと観
客を見ているのもよく解るし、それでいて客席に阿らないし引っ張られない様ったらね。
 漫才を終えて引き上げる際の淡々とした、特にこれという感情も気分も見えないお二人のお仕事ぶり
はプロ、それもベテランのお仕事だなぁ… っと感心。

○ ダイアン
 全ッ然知らない若手のコンビなんだが… 技術があるのはよく解るんだが、左のアフロの子が淡々と
したボケと整然としたネタ進行役で、右のツッコミ役のテンション系って噛み合わせが私にはどうにも
イマイチ。客席の熱も下がったと言うか空気が沈むと言うか… 漫才のフォーマットでこの噛み合わせ
の「味」ってのが狙いなのはよく解るけれども、どうもお互いの個性も見えないし彼らにしか出来ない
笑い、漫才だとも見れないんでは仕方ないかなぁ… と思わなくもなし。一生懸命なのも解るんだけど
その一生懸命さが笑いになるタイプ、コンビでもないし、なまじ麒麟、のりお・よしお、って各々のコンビ
の世界観がカッチリあるものが続いていただけに余計に観ていて辛いと言うか退屈と言うか… 落語
で言えばそろそろ真打昇進か?の二つ目と真打の後に前座から昇進したばかりの二つ目が出て来る
なんてのは無いのと一緒でこの順番がどういう都合でなったのかは知らんがちょっと可哀相な気にも
なりましたが、まぁそれでも出た以上は結果ってのがプロですしねぃ。

○ 中田なおき
 澱んだ空気の場内で、さてピンの漫談芸人がどうするのか? と、いささか意地悪な目で観る観客の
気分を察してか抑え目のトーンでの自虐ネタから入ってきて。個人的にあまり自虐系ネタは好みでは
なく… 結果としてウケないのは客のせいってパターンになるのも少なくないですしね… と思っていた
のもネタに入るまで、「一人十人芝居 悪徳商法の手口」というネタは要するに一人で十役をするという
ネタでそれ自体はベタベタなものなんですけどその進行、自虐ネタと客イジリの具合、テンションのつけ
方が非常に細かく、また悪ノリする客や変にツボに入ってしまってタイミング以外で笑ってしまうのが
止まらない客まで利用して笑いのネタにして尚、ちゃんと最後のオチまでやられたらねぇ… 多少クドさ
を感じなくもなかったけれど技術と個性… 『エンタの神様』に出るタレント達のような、会社から与え
られたギミックではなく芸人としての個性… には楽しませてもらいましたわ。

○ ジョニー広瀬
 で、このオッサンでまた空気が沈む沈む。狙っとんのかこの構成は。
やってるマジックそのものは手馴れた感じがして温泉場の宴会とかスーパーのイベントで観る分には
悪くないんだろうけど照明と音響の演出があまりにもオーバーな上に結構長い時間を無言で見せる
スタイルなのに芯、核となるコンセプトも世界観もストーリーも無いままに次々と手品をやられても散漫
な印象しか残らないっての。いや当人にはあるのかもしれんが全ッ然伝わらなかったし、せめて小道具
等の美術方面のデザインだけでも統一してくれりゃぁいいものを…
「なんか全部東急ハンズにありそなのばっかりだよね」
「だけどそれをネタにするマギー審司はどこかで見せる、引っくり返すんだよねぁ… 」
 っと妻共々ダウナー。ベテランなのかもしれんけれども、これではなぁ…

○ 河北省雑疑団
 可愛らしい3人組で行われる雑技は観た事のあるものばかりだが舞台が近いのもあって迫力がある
んだけどジョニー広瀬並みの演出をしてくれても良かったような気がしなくもなし。全体としては緩めで
一番小さい女の子が一番難易度の高い雑技を、真ん中ん子が雑用、一番大きい子が土台担当、って
のが最後まで続いたり、乗せる道具のワイヤーが見えたりするのもまぁご愛嬌かね? っと終了後に
妻に感想を尋ねてみると
「いやぁ凄いんだけど、もし失敗したら裏で親方にぶたれるんだろうなぁ… ご飯抜きとかされるんだろ
うなぁ… って思うと気が気じゃぁなくてあんまり楽しめなかった」
 いつの時代じゃそりゃ(笑)。

○ 月亭八方
 するすると舞台が動いてアッという間に落語の高座のセットとなって出てきた八方氏、マクラっか漫談
だけで噺は無し、ってので巧さは垣間見られるもののそれ以上のものでもなし。気を張らずにサラっと
したこの感じでの落語を聴いてみたかったんだが… まぁこれは仕方ない、か。

○ 中田カウス・ボタン
 この人達の漫才ってこんなんだったっけ!? と思うくらいに多彩な技術を絡み合わせたもので観て
いて圧倒されてしまう。漫才という芸のフォーマットならではのものな上に、観客のコントロール技術と
いい休憩前のシメとしては本当に上手く、ボケ役とツッコミ役がくるくると入れ替わる面白い構成なんだ
けどそれをひけらかすなりウリにするでもなし、表現としてはクドイんだけど重くなく、ペース配分も客に
合わせてややスローなものが段々とテンポアップするも急ぎ過ぎず上げ過ぎずでお見事としか言い様
のないプロのお仕事っぷりで。だけど引き上げる際のお二人共にサバサバした表情で、余計に印象的
でしたね… 手を抜いている訳でもなく客を舐めている訳でもなく、余裕があるけど緩くもダレもせず。
 こういうのを観るとベテランの怖さってのがよく解りますよな。

吉本新喜劇
 昔は土曜日に学校から帰ってきて観ていた時期もあったけれども、そのうちに持ちギャグや人情話
でええ形にまとめるトコといいそのうちにちゃんと観なくなってしまって既に十数年、妻はちゃんと一本
通しで観た事が無いというのでそれにお付き合いする、って気分でしたが、いい意味で期待が裏切ら
れましたな。
『恋のバタバタ大作戦』というお話、家出息子を巡っての題名どおりのドタバタなんですが私がこの芝居
に出演されている方々ん中では未知やすえ、井上竜夫、辻本茂雄氏くらいしか知らなかったせいも
あるんですが全体的に各々の持ちギャグも控え目の芝居はTVでのクドさも殆どないものなのに加えて
舞台役者として必ずしも巧いとは言い難いものの、兎に角全員が舞台に慣れている、こなれているって
のもあって素直に最後まで楽しんでしまいましたわ…



 以上で公演は終了。
素直な気持ちで笑って明るい気分で出た小屋の外は土砂降りで気分がちょっと醒めなくもなし。とりあ
えず真っ直ぐホテルに戻るのも何となく勿体無いので道具屋街や道頓堀川周辺を妻に案内しながら
晩御飯を何処かで… っとしてみるも、特にホテルのある心斎橋近辺はただでさえ道が広くないのに
この雨のせいで傘をさす人達と車と金曜日夜の賑わいでゆっくり店を見るというワケにもいかぬままに
ズブ濡れになっていくばかりで。
 丁度ホテルの近所にたこ焼屋があったのでそこで二人前を購入しホテル一階にあるコンビニにて
買ったビールやらで酒盛りをする事にして部屋に辿り着き開けたタコ焼きは会津屋とは違ってソースも
青ノリもカツブシもかかった、大阪以外の観光客には見慣れたタコ焼きではあったものの甘めではある
もののクドくはないソースと大量にトッピングされていた刻みネギのおかげでアッサリと食べられるもの
だったのだが…
「大阪、と言うとコテコテとかクドイってのが一般的なイメージだし大阪の人がネタとして使うのも珍しい
事ではないんだけど、実際んトコ、それって本当なんだろうか?」
 とタコ焼きを食べながら思う。
蓬莱の肉まんにしたってアッサリ目だし、会津屋のたこ焼き&ラヂオ焼き、関西の饂飩や蕎麦にしても
出汁の味わい、風味はあってもアッサリとしたツユだし、観光客向けのわざと強調した大阪らしさを売り
にしている吉本新喜劇にしても今日の舞台はサッパリとしたものだったし。
 考えてみれば登場人物の心情や心理とその描写が重要な噺が多いように(私には)思われる江戸
落語に比べると、上方落語の場合は状況や噺そのものの描写に重きを置かれている噺が多いように
思うのだが… 一般的には歌舞伎にしろ上方物は人情話が多いとされてはいるものの、しかしそれが
本当にそうなのか? ってなるといささか疑問に思うのと同じように、大阪の「イメージ」について自分の
中での印象や思い込みやらが揺らぐのを感じていた。

 まぁタコ焼きからとかから考えるにはちょっと無理筋だし大層な事だと思わないでもなかったけれど。



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