・『DRUMLINE』 − 2004/05/16
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アメリカでの公開は2002年12月13日。
大学のとは言えアメリカン・フトボールの季節でもある冬に合わせての公開、
とも言えるがクリスマス・シーズンの大作ラッシュ、と言う激戦期での公開って
のはこの映画がそれなりの出来でなければまず無理な話。
そして、dvdソフトの発売が2003年9月30日。
公開から9ヶ月以上経ってソフト化… つまり、その間ソフト化をしなくてもいい
くらいに観客を動員し続けた映画、と言える。
日本公開は2004年4月末頃だったと思う。日本の興行成績は振るわないよう
だが以前紹介したジャック・ブラックの『The School of Rock』同様に私はこの映画、
結構好きに なってしまった。
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お話は
「ハイスクールのマーチング・バンドの優等生だったデヴォン。カレッジ・フットボール
マーチング・バンドAT&Tに入るものの、そこは実に厳しい生活。だが、持ち前の
才能とセンスの良さで頭角を現してゆき、恋もし、新人としては異例の抜擢もされる
が天狗になる為、指導のリー教授らと折り合いを欠き、さらに【楽譜】が【読め】ない
為に挫折もするが、周囲の仲間達とリー教授らの支援で復活。そして全米マーチング
・バンド選手権に挑む… 」
というもの。
「実話を元にしている」と言っても特にこのお話と構造自体に目新しさは無い。
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では何故、この映画が好きになったか?
1つは「ウェットな情に流されすぎないストーリー配分と展開のテンポ」。
とかく青春モノと言うと「色恋」と「挫折」に焦点を置きがちだが、全てはクライマックスの
全米選手権に向けての為なので、必要以上にウジャラウジャと引っ張らないし小難しく
しない。また、練習シーン等、必要充分の程度に収めてあって(DVDの映像特典でカット
されている場面が本当に多い)、そこもいい。
まぁ、あの世界がハイスクールまでに相当の腕前のある人間でないと入れない世界で
ある以上、「選ばれた者」に過剰な練習シーンはあり得ないんだけどね。
2つ目は「出演者の雰囲気がいい」。
ほぼ全員、無名に近い若者と役者ばかりなのだが、決して浮ついた… そう、日本のアイ
ドル映画のような学芸会的な印象が全く無い。特に時として対立もする父親的役割のリー
教授、それほど歳をとっていないが落ち着きと色気の両立が出来ていて好感が持てる…
ってのはまぁ、こういう映画にしては… という話だけども。
そして3つ目。「パフォーマンスが素晴らしく、絵が美しい」。
最大時350人で行うパフォーマンスは圧巻だが、それもその筈。役者達は9ヶ月にも及ぶ
トレーニングを積んでからだし、ライバル役などには現役のカレッジ・マーチング・バンドの
人間等も揃えていて且つ、アメリカではメジャーだけに音と映像が合ってない等の嘘が無い。
加えて映像の大きさがいい。
クライマックスは4〜5万人クラスのアリーナで行われるのだが、その観客席をCGやダミー
でない本物のエキストラで埋めてみせるなど、ウリのパフォーマンスシーンでの画面の大きさ
がとてもよく栄える。
更に色が美しい。
コートの緑色。夜空の暗さ。そしてスポットライトに映えるコスチュームカラー。やや強調した
きらいもあるが、それがあざとくなく、実にいい。
それらを見事に調和させ、1つの作品に纏め上げた監督の手腕がいい。
MTV出身監督作品、なんてのはハリウッドでは珍しくない昨今であるが変なカメラワークや
CGに頼る事無く、小さくもなっていないで約2時間という長さを退屈させない編集も巧い。選手
権からエンディングまでの約30分、ほぼマーチング・バンドのパフォーマンスだけで見せ…
って、普通ならアクシデントとかを入れてスリルなど盛り上げをさせるものを、小細工無しの
真っ向勝負にしちゃって、尚且つそれで魅せる!
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大学での小ネタ(クラブとか市民大学制度、等)をチョイと知らないと解らないネタも多少は
ありますし、映画のテンポがスゥイングでなくビート寄りなのは好みが分かれるやも。
パフォーマンスだけを観たいのならば『ブラス!』や『STOMP』を観た方がいいのかもしれ
ません。でも私にはこういうジメジメしてない、カラッとしたテンポいい映画って好きなんです。
で、それだけでも無いし。
個人的には『大』はつけないけど満足の一品、ですね。