・『The School of Rock』 − 2004/03/31
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昨年10月第1週に全米公開されるや当月興業収入1位を獲得、12月の
大作ラッシュになる頃まで全米週間興業収入ベスト10入りを続け、その人気
にTVドラマ化、米ニューズウィーク紙の03年度全米公開作品ベスト10にも
選出… ってのに日本で公開された主演作で『愛しのローズマリー』くらいしか
知られていない、と言うか出演映画も日本未公開、一部劇場での公開が大半
って主演のジャック・ブラックのせいか、年を越えても日本での公開予定がナカ
ナカ立たなかった映画が『The School of Rock』。
とても気になっていた映画だったが、NY旅行からの帰りの機内で観る事が
出来て、その楽しさに堪らず帰国当夜にAmazonに注文してしまったくらい素敵
な映画だが、PG−13(13歳以下の子供の観賞には保護者同伴を推奨)だけ
あって侮れない出来と内容を「キッズ映画でしょ」と見逃すのは勿体無いですぞ。
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ロックへの情熱も何かも過剰故に自己中を理由に自分が結成したバンドから
クビを言われた主人公ネッド(ジャック・ブラック)。間借りの家賃も滞納しっぱなし
で何もかも行き詰まりだったが、ひょんな事から学校の教師になる事になり…
というお話自体にヒネリとか新鮮味とか人生訓とかは特に無い。が、
それがどうした?
んな辛気臭いモンは「The Man」の側にいる人間とその奴隷が気にすればいい。
始めもデタラメだったけど(笑)、主人公は聖人君子ではないただのロック馬鹿。
企みもあった筈なんだけど、いつの間にかロックが全ての彼が、企みを忘れて熱中
しちゃうのが無理ねぇと思えるくらいにこの映画はハッピーで、それは主人公を演じる
ジャック・ブラックだけでなく、登場人物のキャラの立ちの良さもあって、これをお話的
だのお約束だのと言うのはもぅ馬鹿、どこ見てんのっての!
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ってのだけではアレなんで、この映画を気に入った理由なんてのを書いてみると
「テンポの良さ」
「脚本の無駄の無さ」
「映画作りを楽しんでいる雰囲気」
ってのもあるんだけど、やはり私が一番惹かれた理由は
「本物(リアル)」
ですかね。
日本のドラマや映画でも楽器の演奏シーンはあって嘘臭いのは、楽器が手に
馴染んでいないのが見えたり音と動きが合っていなかったりそもそも演奏する
事が楽しくなかったりするからだが、それは『映画』における『記号』だし… と、
諦めていたんだけどこの映画の場合、主役のジャック・ブラックも実際のバンド・
プレイヤーなら、準主役の子供達の選考基準の最優先項目が
「実際に楽器が演奏できる事」
で、それをクリアーしている子供らとのクライマックスのライブハウスのシーンに
は映画の演出はあっても楽器は記号ではないんだよ。だからいい!
加えて、
この映画ではクラス全員が平等に楽器演奏をするのではなく、あくまで巧い子供ら
が楽器担当ってなるんだけど、それでも子供ながらも色々な悩みを抱えてたりする
のをジャックが解消してやるシーンをはじめとして、巧いからその場面が白けたり
嘘っぽくなったり偽善っぽくなったりしないのね。
例えば、いよいよライブを迎えるという時、バックコーラスのメインの女の子がいざ
舞台となった時の事、(以下、乱暴な意訳)
「どうした? ナーバスになってんのか?」
「うん… 」
「なんでなるんだ?」
「 … みんなが私を見て笑うから」
「はぁ? 何で? 何でお前を見て笑うんだよ」
「 … 解ってるの。私が… 太ってるから」
「あぁ? そんなの歌と何の関係があるんだよ? いいか? お前には凄い才能がある。
それはその声だ。その声とお前の外見と一体何の関係があるんだ?
… アレサ・フランクリンを知ってるか?」
「(頷く)」
「彼女はデッカイ女だったが、誰かステージでの彼女を笑ってるヤツがいたか? いない。
何故なら、彼女が歌い始めたら、その声がとても素敵で、セクシーで、素晴らしいものだった
からだ。お前は素晴らしいシンガーで、みんなが認めている。だからお前がここにいる。
なぁ頼むぜ… つまんない事言うのは止めにしようぜ」
ってなシーンで、この女の子にリズム感や音感、そして声に説得力が無かったら
あまりにもこのシーンは作り物過ぎてるんだろうが、既に巧いってのを見せてるから
この子の笑顔にホッと出来るんよね。ここで変に平等とか努力とか根性とか言われて
みたってしょうがねぇじゃん? って、そんな素敵なシーンがいくらでもある。
実際、dvdメイキングに収録されているリハーサル風景でも本番同様に皆がフリー
っぽく演奏をして楽しんでいるけど、それだけの事が出来るだけの技量があるからこそ、
他のシーンでの説得力がある。そして、皆が… 出演者だけではなく、監督らのスタッフ
らも皆、楽しんでいるからこそ、この映画は底抜けに陽気で楽しいものになっている。
もぅそれだけで充分じゃん。ハッピーな気分になれる以外に何がいるっての。
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主演のジャック・ブラック、アメリカでは体型も含めて(笑)
「ジョン・ベルーシの後継者」
って言われていて、当人もそれを意識している部分はあってもベルーシのように自己愛
に溺れない冷静さに情熱を持ち合わせている御仁だと思う。本国の評価は上がるばかり
で既に05年公開予定作品にまで名前が上がっている人だがコレを観て納得。何をするに
しても隙や抜きはしないで本気で取り組んでいる姿はこれからも彼の出演作をチェックして
いきたいと思わせるくらいに、この映画の中でコメディアンとしての自分を観客がもぅ笑うしか
ない過剰さで全部ブチ込んでぶつけてくる今作で本年度ゴールデン・グローブ賞主演男優賞
にノミネートされたのは伊達じゃぁねぇですよ!
日本公開は4月29日から!
○ オフィシャルサイト(英語)
http://www.schoolofrockmovie.com/