・『MIND GAME マインド・ゲーム (2004)』


 製作国:日本
 販売元:レントラックジャパン
 初公開年月:2004/08/07
 発売日: 2004/12/22
 時間: 103 分
 
 字幕:英語
 音声:日本語
 Dolby Digital 2.0 stereo、5.1 Surround

 【特典】
  ・Special Interview (23分)
  ・劇場予告編 (1分30秒)
  ・GALLERY - character design (18)
  ・Event & Talks(舞台挨拶(24分))
 
  ポストカード (3枚)

 ・マンガ家になる夢はあるもののボンヤリと日々を過ごしていた大学生・西(二十歳)。ひょん
 な事から初恋の相手・みょんと再会するものの、みょんの父を追う借金取りにアッサリ撃ち
 殺されてしまう。一旦はあの世(?)に行ってしまった西だったがそこで神様(?)と出会い、
 もう一度人生をやり直す為に現世に戻るのだが…

  っというストーリーを書いてみるとありきたり、っか『ピノキオ』をベースにしたようなものだと
 思うんですけども、兎に角まぁこのアニメは凄いんですよ。実写、CG、セル、っと違う素材を
 自在に操り、「生きてゆく、ということ」をテーマに展開もテンションも速い上に奔放、それで
 いてテクニックや技術に溺れも流されも自慢もせずストーリーを絵とアニメーション(の動き)
 で最後まで見せきってしまうんですもの。

  実はコレ、CATVで放送された時にさして期待もせずに観たんですよ。
 正直言って冒頭の実写、CG、セルを交えた構成ってのは今は格段珍しいものでもなし…
 手法としては切り絵アニメの延長線上でもあるんで… ワリと冷めた感じで
 「あぁ、でも綺麗な絵やね」
  って思ってたんですな、酒を飲みながら。
 しかし、西君が殺されて神様(?)と出会うトコロでもぅ意識がもってかれてました。中学生の
 時に初めて『イエロー・サブマリン (1968)』を観た時と同じような衝撃って言うんですかね…
 情況にしろ心理にしろ、その描写におけるイメージの展開、飛翔の仕方が素晴らしかったん
 ですよね。確かに手法と言うかデザイン的には『イエロー・サブマリン (1968)』からの発想は
 あるんでしょうし類似性もありますが、かの作品が音楽に乗ったイメージシーンがあまりにも
 美しいのに比べると語るべきストーリーやテーマが世界は広く未来は未知の希望の国だった
 60年代そのものだったからこそあまりにも退屈で、その上架空の世界での御伽噺って形で
 しか展開出来なかったのと比べると本作は違いまして、デジタルとネットワークで【個】の空間
 も距離も狭くなり閉塞し、未来は今日の延長線上でしかないという冷淡さを抱かねばならぬ
 現代、リアルが物語ありつつも「生きてゆく、ということ」を真っ当に、力強く、語る為に出演者
 に吉本を中心にしたネィティブの大阪人に演じさせる事で猥雑に、下世話に、明るく、そして
 楽しい作品にしているんですもんね… 特にラスト、OPで大胆に戦後から現在までの時間を
 一気に見せたのをああいう形で、その上で未来という可能性、広がりを示した凄さって点で
 本家越えをしてますよ! 現在(設定上は02年)の大阪を舞台のスタートとした寓話にして
 あそこまでやっちまうわ、それでいて照れたりヒヨったり気取ったりもせずにいつつミニマム
 じゃぁないなんて、これは生半な才ではありませんって。
 
  それぞれが意志をもってやり直した結果、彼ら彼女らは出会わない未来になり… そして
 選択肢、可能性の結果としての「今」が必ずしも幸福とは限らない充実しているものではない
 が… しかし、意志を持ち
 「生きてゆく、ということ」をしてゆく事でしか【世界】は広がらない…
  ってのは、シンドイよなぁ… っと妻とも話してましたけどね、だけどそれでいてその語り口
 は悲壮でもなけりゃぁ説教でもねぇんですよ。04年と言えば『千と千尋の神隠し』をはじめと
 した劇場用大作アニメ作品は色々あったものの、絵がツールとリアルに追われるあまりに
 作品という『世界』は閉塞し矮小化してしまったと私は感じてて、それが凄く嫌だったんです。
 語るべき『物語』までも汲々として台詞で語る事でどうにかこうにかで、キャラはますます記号
 化し畸形化していき… っという業界全体の傾向の中で、宮崎駿や押井守が出来なかった
 アニメーション本来の「動く」という事であそこまで力強く、そして切なく、厳しく、そして優しい
 『物語』を示してみせてくれた今作にゃぁ私、惚れましたよ。
 
  この映画には漫画の原作があるんだそうですが、私は正直言って見る気になれませぬ。
 映画がフレームという枠を越えられないのに対して漫画におけるページはコマというフレーム
 の集合体である、という凄さも、漫画ならではの間や味といった面白さもあるのは解っている
 し、多くの原作付き映画が原作を超えられなかった事も解ってはいるんですけど、少なくとも
 主人公の西君の日常という「枠」からの脱出、ってだけのお話ならばいらんのですよ私は。
 この映画は、その他の登場人物だけでなく製作者も観ている者達までもその「枠」からはみ
 出させるパッションの塊で、そんな映画でありながらも説教ではなく笑わせ手に汗握らせしん
 みりさせるって事を100分にギッチギッチに詰め込みまくった、そんなエンターテイメント作品
 だからこそ好きなんですよ。

  ただまぁ、猥雑さに満ちた作品ですから好き嫌いも出てくるでしょうし苦手、駄目な人もいる
 でしょうが、そもそも命、生きていくって事は下世話だらけで猥雑なもんじゃぁないんでしょう
 かと。綺麗事の夢、幻だけではない、現実に立っていながらも高く、遠く、遠く、実に刺激的
 でスリリングでお茶目で素敵な映画だと私は思いましたよ…

  そう、
 海外でこの映画が公開された時、映像の美しさを褒めつつも物語に対してはあまりいい評が
 得られなかった本作、DVDにはおそらく海外公開時と同じであろう英語字幕が収録されてる
 のですが、その字幕の出来がどれほど良くても日本人ならば持っている大阪という街、人、
 そして大阪弁ってのに対するイメージが無い外国の人にはこの作品ってピンとこないものだ
 と思うんですよ。そういう意味ではまさに日本ならではの日本映画、としてもこの映画は素晴
 らしい作品だと思うんですよ…

 ・ …って、いつになく長く書いてしまった私の感想は兎も角として、
 DVDソフトとしては良いんじゃないんでしょうか? 画質、音質共に非常にクリアーですし、
 特典も劇場予告がついているんでいいでしょ、コレで。
  っかね、
 いつもなら「観たくなる、気になるから… 」っと特典ディスク付きのなんちゃらエディション版
 を購入する事が多い私ではありますが、今作に関しては本編でもぅ満足っか打ちのめされた
 んでメイキングとかどうでもいい気分だったのに加えて調べてみるとこのDVDには

 「絵コンテ集」「ポストカード +5枚(計8枚)」「特典ディスク」「(サントラCDに)未収録音源CD
 『Extra Sound Track』」を加えた『スペシャルBOX』¥12,800 (税込)

 か

 「絵コンテ集」「ポストカード +5枚(計8枚)」「湯浅監督によるイメージボード」「原作本」「(上記
 エディション以外のメイキング等の)特典ディスク3枚」「サントラCD」「未収録音源CD 『Extra
  Sound Track』」を加えた『パーフェクトコレクターズBOX』価格: ¥22,320 (税込)

  ってのしか無いんですよ。まぁ『妖怪大戦争 (2005)』とかのようにコレクターズ・ボックスで
 ないとディレクターズカット版(劇場版?)が観られない仕様に比べればこのDVD、本編が
 っちゃんと収録されているって事を満たしているんでそれ以外はさして興味も無いし場所くう
 しアフォみたいに高いって時点で他のエディションなんてパスでしたワ…


 
【参考URL】
  
マインド・ゲーム公式サイト
  http://www.mindgame.jp/(←クリックで新しいウィンドゥを開きます)

  劇場公開時の時に作成されたものです。この作品が気になる人&好きな人は監督インタ
 ビューなども豊富ですから、このレビューを読んで興味を持った方はサイトがまだあるウチ
 に見ておくといいかと思いますよ。


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