(2006.1.21)
オッリペッカ・ヘイノネン,佐藤学著 「NHK 未来への提言 オッリペッカ・ヘイノネン『学力世界一』がもたらすもの」 日本放送出版協会 2007年7月25日の中に,誤記があります。
p.66 コラム4 教育の優秀性−私の見聞に基づいて− わたしの3度にわたる訪問調査に基づいてフィンランドの教育の優秀性を列挙しておこう。その第一は,学校と学級の規模である。フィンランドでは子どもの居住地から5キロ以内に学校を建設することを法律で定めている。3キロ以内の子どもはスクールバス,3キロ以上5キロ以内の子どもはタクシー(公費負担)で通学している。 (佐藤学氏)
|
日本の学校教育法に当たるフィンランドの「基礎教育法」の第32条によれば,「学習者の通学距離が5Km以上ある場合は,学習者は無償の交通機関を得る権利がある」と規定されていて,5キロ圏内に学校を建築しろとは言っていない。そんなことをしたら伝統的にフィンランドは散村文化であるから森中いたるところに学校が出来てしまう。
そうではなくて,第32条では,学校まで片道5キロ未満で,所要時間が往復2時間30分以内は徒歩で通学しなさい,それを超える場合に交通機関を無償で用意すると言っています。7歳の1年生でもマイナス20℃〜25℃にもなる暗く寒い極夜の道をこのぐらいの距離は歩くのが普通です。
交通機関も,アメリカのようなスクールバスというのはなく,一般公共交通機関を第一に利用し,それもないところはタクシー(屋根に三角の通学マークを付け,時速80キロ以内で走行する《ちなみに一般車は120キロ》)を利用します。
また,前条の規定を超えて毎日の通学が困難な地域(多島海の島やラップランド地方など)では,宿泊施設が提供されます(同第33条)。このことからも半径5キロ以内に学校を設立すると言う説明は眉唾物と言わざるを得ません。
【参照】 http://www9.plala.or.jp/Jussih/opetus/POlaki.htm