氷 河 の 忘 れ 物 Jäätikön jälki

 スカンジナビア半島全体は花崗岩(御影石)で出来ています。近年日本へはスウェーデンなどから黒御影石や赤御影石の墓石や外壁材が輸入されているのでこれを見た人も多いことでしょう。この岩はとても硬く,ノーベルがダイナマイトを研究するきっかけになった岩であることでも頷けます。
 地球誕生から長期に亘って,またその間たびたび氷河がスカンジナビア(と言うより南北両極)を覆い、高地から低地へ(フィンランドの場合,北西から南東へ)向かって流れ,その間にいくつもの自然現象を残しました。フィンランドでの氷河の忘れ物を見てみましょう。

(1) 湖や海,畑や森の中に顔を出した岩の形は,丸くのっぺりとしています。これは氷河によって長期にわたって削られたため丸くなったものです。このような岩はヘルシンキ市内でもあちこちで見ることができます。
 岩の教会(Temppeliaukion kirkko)に行ったら裏に回って岩山に登ってみてください。これが観察できます。
 右の写真はヘルシンキ市内,オリンピックスタジアム横の岩山です。

kuva:Jussih

(2) 岩をよく見ると細い筋があるのがわかります。岩盤と氷河との間に挟まれた小石が岩盤を削り,線条痕を残しました。これもヘルシンキ市内どこでも観察できます。
 右の写真では左から右下に筋が流れているのがわかります。

kuva:Kenzi Rinno

(3) フィンランドでは森の中に大きな丸い岩がゴロゴロと転がっているのを目にします。
 岩盤の割れ目にしみ込んだ水が凍り,岩盤から大小の岩を生み出します。これらの岩を氷河が転がして丸い岩の団子を作ります。氷河期が去った今,森のいたるところに置き去りにされた丸い岩を見ることができます。
 右の写真は Lappeenranta 近郊 Taipalsaari で撮ったものです。

kuva:Jussih

(4) ハルユ( harju )その1
 地球誕生以来何度も氷河期と温暖期が繰り返されました。氷河の先端は前回削った岩,小石,砂利,砂を削りながらブルトーザのように前に押し出しながら流れます。温暖化するとそこには砂礫の帯が残ります。寒冷化,温暖化を繰り返すうちに砂礫の帯は次第に成長し,最後に残った砂礫が氷河の先端部のそのままの形の細長い丘を残します。これをフィンランド語でハルユ( harju ,英:eskar)と言います。
 フィンランドでは各地でハルユを見ることができます。中でも Punkaharju(右の写真)のハルユは観光地として有名です。

kuva:Punkaharjun kunta

(4') ハルユ( harju )その2
 右の4枚の写真は,サイマー地方で写した高さ20〜30メートルの harju の写真です(1)。
馬の背のような harju の頂に道が出来ています(2)。左右両側は,斜面で谷になり,水はけの悪いところは湖になり,谷の向うにはまた harju がある,というように幾重にも続きます(3)。
 harju 全体は,細かな砂や小石が堆積したものです。(4)

kuva:jussih
kuva:jussih
kuva:jussih
kuva:jussih


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