<大河ドラマ 編>  2009年9月22日 日記より


久しぶりに10本感想物。 
昔、時代劇枠に入れなかったのであらためて。 

オイラのNHK大河ドラマベスト10本。 



<獅子の時代>(1980年) 

大政奉還〜明治中期まで。 
一人の会津藩士の負け、負け、負け続きの人生を描く。 

大河でお馴染みの所謂「便利屋」ポジションを 
そのまま主役級にアレンジした架空主人公物という異色作。 
完全オリジナル主人公は珍しい。 

この男が実に良い。 
菅原文太の怖さと、ユーモアたっぷりの気取らない演技が 
見事に両立している魅力。 
本当にドン底の人生を強いられるにもかかわらず、 
このセンジさんは、 
いつだって強くて、いつだって優しくて、いつだって前向きで…… 
決して筋を曲げないで、それ故にまた事態は悪化して、 
それでも、前に進んで自身を貫く。 
大河屈指の永遠の偶像ヒーロー。 

子供のように憧れてしまう。 

明治初期の有名人、有名事件に微妙に関わり続けるわけだから、 
基本的にどの話も、まぁ禄なもんじゃないんだけど、 
主人公のパワーが何とか視聴者を引っ張ってくれる。 
見ていて元気をもらえる大河ドラマ。 

一応、W主人公扱いになっている 
薩摩のエリートコース藩士の加藤剛との奇妙な友情関係もよし。 
恵まれた立場でありながら理想を抱きすぎるため上手くいかない男と、 
どんな立場でも、現実と向き合い何とか生きてゆくセンジ。 

怒涛の展開の連続で、 
とにかく飽きさせない一品。 






<黄金の日日>(1978年) 
獅子の時代と同プロデューサーの作品。 
時代も物語も違うが、上記作品と極めて近い雰囲気のため、 
短期間で視聴するなら、どちらか一つでよいかもw 

実在したのやら、してないやらの 
安土桃山時代の怪しげな豪商、呂宋助左衛門の出世話。 

全般を通しては、"自治都市"としての堺がキーワード。 
信長〜秀吉までの時代にかけての激動の中、 
如何に独立した堺の商人としての誇りを貫けるかという 
どちらかと言うと痛快物。 
男の意地と意地の物語ですね。 

架空主人公である事を利用して、 
戦国時代のメジャーエピソードがドンドン導入されるため、 
非常に見やすい作品に仕上がっている。 
クオリティがゲロ高なので、 
信長〜秀吉期の普通の戦国物としてみても優秀。 

高橋幸治の信長、緒形拳の秀吉、近藤正臣の三成・・・ 
どれも素晴らしいです。 
また、堺の豪商からなる集団、 
会合衆の面子が良い。 
言うまでもなく、その筆頭は、千利休(鶴田浩二)と、今井宗久(丹波哲郎)。 
この二人と、信長/秀吉との関係性は格別。 
安っぽい表現だけど、 
「カッケー」の一言に尽きますよ。 

また「スケザに関わると不幸になる」の鉄則に基づき、 
あらゆる有名人と惜しげも無く親交を持ち、 
ドンドン結果的に、彼らを落としていくのが実に面白い。 
「歴史の影にスケザあり」です。 

まぁ、自由な作品です。 
やりたい放題っぷりを楽しんで下さい。 




<花の乱>(1994年) 
似たような作りが続きます。 

日野富子を主役として、 
室町幕府の権威低下〜応仁の乱への突入を描くが、 
基本的には、ほぼオリジナルのストーリー。 

オリジナルである分、連続ドラマとしての完成度が高く、 
伏線の張り方、消化までの贅沢さが見事の一言。 
所々に配置された様々な仕掛けが実に美しく機能している。 

本物の"悪女"とは如何なるものか。 

決して狡猾なだけの小悪党では有り得なく、 
むしろ逆に非常に魅力的な女性として描く事により、 
細川勝元、山名宗全・・・・・とあらゆる有名人を 
総なめにする人たらし。 
この魅力があればこそ、これだけの大物達が振り回されるわけですよ。 

冷静に彼女を見れているのは、 
夫である足利義政のみというのが面白い。 
非常に英邁な男であり、全て収められる能力がありつつも、 
現世と距離を置き、仏教の教えのみに逃げる駄目インテリ。 
そこで、富子の暴走が止まらない歯がゆさ。 

実に密度の高い作品ですが、 
弱点は、馴染みがなさすぎる時代である事と、 
とにかく雰囲気が暗い事。 
一般的に、見難い作品になってしまっているのかな〜 



<太平記>(1991年) 
日本史上、最も節操がなく、 
その分、最も面白い時代。 
吉川英治原作の『私本太平記』を相応に忠実にドラマ化。 

前半が如何に北条幕府を潰すかというお話。 
高氏はこの幕府の御家人ですから、 
この時点で既に謀反以外の何者でもないわけでw 

後半はグッダグダな建武期〜〜離反、 
京都を奪って、奪われて、奪って、奪われて・・・の繰り返し。 
な〜〜にも解決せずに高氏が死んで終わる様は圧巻。 

この大河の魅力は何か。 
"朝廷"ですよ。 
これを抜きには日本史は語れまいよ。 
戦国物では決してありえないほどの密度。 

日野俊基、北畠親房、大塔の宮………活き活きとした公家連中、 
そして、最強のカリスマである後醍醐 帝ですよ。 
これらに、北条幕府から初出の珍妙な言葉である 
「天皇御謀反」に代表される武家と朝廷との絶妙な時代感。 

後の時代と比べて、"家"と"血"の影響が濃い時代ですから、 
基本、感覚が違います。 
何より、根強く残る朝廷の権威ですね。 
これに全てが振り回されてこその日本の歴史よw 

どんな負け方をしても、ゾンビのように復活する 
懲りないの連中のしぶとさが爽快。 
特に高氏はすげーよ。 
北朝、南朝の降参合戦w 

そして、この作品の印象の半分を一人で持っていく、 
婆娑羅大名、佐々木道誉の強烈なキャラクター。 
とにかく、登場人物の魅力が他とは桁違い。 
三の線である武田鉄矢という妙役が光る楠正成、 
くら〜〜い雰囲気が見事にマッチしている新田義貞・・・ 
挙げればきりがない。 

馴染みのない時代でしょうが、 
キャラの魅力だけで十分に見られる一作です。 

日本においての代表的な伝統芸能の芽生えの時期でもあり、 
このあたり、他の時代ではみられない 
美術部分の目新しさにも注目でっせ。 



<翔ぶが如く>(1990年) 
原作は大政奉還〜の話がメインだが、 
このドラマは、幕末から丁寧に丁寧に時代の流れを拾っていく親切な構成。 
斉彬時代の江戸での働きから、篤姫エピソードまでじっくりと。 
司馬遼原作の幕末物エピソードオールスターは、大河の基本。 
無論、竜馬も出るし、容堂公も出るぜ、大村益次郎も出るし、高杉晋作も当然ね。 

全く背景を知らない人が見ても十分に楽しめる設計で、 
マニアックな仕掛けも非常に多く飽きさせない。 

とにかく主役二人のハマリっぷりが全て。 
話が進むにつれ、どんどん似てきて、 
最後にはもう、本人にしか見えないw 

基本、幕末時代からの西郷と大久保との友情物のため、 
西南戦争〜大久保暗殺までの怒涛の展開における 
重みが違う。 
本当に重く圧し掛かってきます。 

前半は幕府方の視点も十分に取り入れられているため、 
幕末物入門はこれ一本でOKかな。 




<独眼竜 政宗>(1987年) 
大河の大功労者でありながら、戦犯でもある問題作。 

一人の人物の 
子役時代〜青年期〜中年、壮年〜晩年までを 
じっくり丁寧に生涯を通して描くタイプの基本形。 

現代物になっていた大河を戦国に戻して大ヒットさせた一方、 
特定の戦国ローカル武将を一年かけて描く事が、 
一種の安パイであると成立させた事が、 
後の大河の幅を狭めた気がします。 
所謂、ご当地大河の元祖でしょ。 

ただ、さすがにクオリティは高いです。 
誰にでも勧められる安心感はさすが。 
どう見ても、狂人の話だけどな! 

常に主役を喰うくらいの大物(劇中でも役者的にも)が配置され、 
政宗の一歩上をいくインパクトを与えるのが特徴。 
序盤がお東の方(岩下志麻)、中盤は秀吉(勝新太郎)かね。 
最後、家康のターンに来て、初めて政宗が活き活きとしてくるのが面白い。 
急に展開がドライになります。 

政宗は晩年エピソードの方が圧倒的に面白いのだが、 
ちょっと、前半に尺を割きすぎた感はあるかな。 
忠輝を抱き込んで、幕府と化かし化かされの 
天下を諦めない老獪な爺時代こそが政宗の本領発揮ではなかろか。 

退屈な話の連続もありながら、上手くまとまった大作、良作。 



<元禄繚乱>(1999年) 
ただ一点。 
石坂浩二の吉良上野介があまりにも良い。 
コレだけで見られる一本。 

吉良側の視点を多分に取り入れた忠臣蔵なのだが、 
石坂吉良と、東山内匠頭の絡みでは、 
さすがに格が違うと言うか、 
人間的な魅力で、足元にも及ばない事が画面から現てきて、 
このマジックに一杯食わされる大河。 

嫌味ったらしくて、説教ばかりしてて、、、、 
でも、それだけに実に人間臭い。 
清濁合わせもった人間としての吉良上野介に感情移入しまくりです。 

色部又四郎の活躍も含めて、 
基本、内部劇、屋内劇になっているので地味だけど、 
今更、大河で忠臣蔵をやるなら、このくらいの捻りはいるよねというお手本。 



<草燃える>(1979年) 
VTRが現存しない(と言われていた)大河なので、 
あくまで、総集編(120分x5本)の感想。 

同じく石坂浩二の魅力にまず惹かれる作品。 
前半は頼朝挙兵〜平家打倒の話。 
非常に感情に素直な頼朝公の人物像が見事。 
義経を恐れて非情な判断を下すのも素だし、 
殺した後にその戦地跡を前にして涙を流すのまた素の感情。 
悪人でもなければ、善人でもないという裏表の無さが 
この人になら付いて行けるというカリスマに繋がっている。 

実際、彼が死ぬまでは、そこまで酷い話にはならないw 
問題は後半、北条義時のターンから。 
若い頃は好青年だった義時が、ドンドン権謀術数に優れた 
黒幕に変貌していく様は圧巻。 
ひったすらに、有力御家人との騙し騙されの潰しあいの繰り返し。 
本当に最後までw 
だが、それが心地よい。 
ホンッッットウに!! ドン暗いぜ。 

ところが、最終回には不思議な充実っぷりに襲われる。 
変化に次ぐ変化、怒涛の時代を描ききった満足感だろか。 
狂言回しの見事さだろか。 

人間の暗さを垣間見つつ、最後にしんみりできる一品だね。 




<春日局>(1989年) 
これまた一点。 
大原麗子 主演の大河だぜぃ!! 
それだけ。 
基本的に売りはないかな〜〜 

橋田壽賀子の脚本で描く女性視点からの大河・・・といのは、 
「おんな太閤記」の焼き直し。 
むしろ、その視点は当時は斬新でも、 
今ではむしろ多すぎて食傷気味。 
(脚本の質は比べ物にならんけどな) 
唯一、江戸初期〜家光の代までという時代は面白いが、 
その方向ならば、後の「葵 徳川三代」の方が芯が通っていて見やすい。 
後半の屋内劇としての面白さもポイントだけど、 
それはそれで、やっぱ「八代将軍 吉宗」の方が質が高いw 

後付けではありますが、 
同時代の異色作が続いた他の大河と比べると 
器用貧乏で、微妙に半端な題材となってしまった感のある一作です。 

ただし、質が低いわけではないので、 
見始めれば割と面白く、一気にいけるでしょう。 
2011年予定「江〜姫たちの戦国〜?」の予習として見とくのも良いかもな。 



<武蔵 MUSASHI>(2003年) 

好きで悪いか!! 

この作品の魅力は記号化だね。 
宮本武蔵は武蔵でしなかく、 
小次郎は小次郎でしかない。 
元々、吉川英治のファンであるオイラとしては、 
それが長編の大河で見られるというだけで大満足です。 
(意外かもしれんが"初"ですよ) 

絶対に負けない武蔵もそうだし、 
大阪から江戸まで旅して、白い着物に汚れ一つ付けない小次郎もそう。 
とにかく、記号だけでなりたっている作品。 
役者のバランスが微妙で、 
堤真一が一人で上手すぎるというのが強いて言うなら問題かw 

後半の柳生、キリシタン編は、 
まぁ、オマケとして。 
柳生家との確執を描くなら、ついでに触れても良い気はする。 
ただ、原作エピソードを省いてまで 
やる事だったかな〜という話が多いのが難点か。

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