<龍馬伝>  2010年12月01日 日記より


結局、全部見ました。 
近年は、途中で投げる事が多かったのですが、 
昨年の『天地人』でふっきれまして、 
仮にどんなにツマラなくとも、一年付き合おうと決めとります。 

「大河ドラマだし、いつか見るだろう」はダメ。 
45分x50話なんて、何年分もそう見られるもんじゃないです。 
つまり、毎週一話づつ付き合うのが一番賢いのさ。 

今回。 
面白かったですよ。 
ただ、昨年があまりにアレだったので、 
リバウンド感想かもしれず、正当な評価かどーかはわからん。 

ま、単純に脚本が酷い点、 
クドくて冗長な演出が多かった点、 
この二点を除けば、 
割と満足できる内容でした。 

特に、撮影組はスゲー頑張ってたと思います。 
まず全般、半ビデオ、半フィルムみたいな映像の質感が綺麗だった。 
フィルムだと、グレインっていうんでしょか? 
ああいう情報量に近い雰囲気は、時代劇にはマッチすると思います。 
美術もよかたよ。 
セットが、すげー気合入ってた。 
汚れ一つとっても細かい個所までこだわってて、 
とにかく、違和感を全く感じさせなかった。 
また、あの圧倒的なオブジェクトの量。 
よく用意したもんです。 

並々ならぬ意気込みだったという事が伺えます。 

近年の大河では、 
かなりの大作だった事は間違いないと思います。 

ま、岩崎弥太郎を狂言回しにという仕組みは、 
あんま上手く機能してたとは思えないけどね〜 
普通に登場人物の一人として組み込まれすぎてて、 
何ら特別な存在には見えず、 
かと言って、物語面に直接的な絡みが多いわけでもないので、 
なーんか、出番だけ多いのが、半端な位置付けでした。 
まして、香川照之の一人舞台とくれば、 
嫌でも画が映えるからね〜 

海援隊だったり、後藤象二郎だったりとの 
土佐のパイプ役としては綺麗に嵌ってましたが、 
それこそ、普通の登場人物として使えばって位置ですしな。 


役者〜 
かなり良好。 
ココまで外れゼロは珍しい。 

主演は、言うに及ばず。 
彼にしか作れない素晴らしい龍馬だったと思います。 
基本、明るくて優しくて……でも決して、厳しい"現実"と心の影を忘れない、 
味のあるキャラクターでした。 
このあたり、武市一派の栄枯盛衰に重点を置いた構成からくる 
説得力でしょか。 
場面ごとの転身が素晴らしく、 
まず、見ていて飽きないと言うのが一番。 

大森南朋とか、佐藤健とか、田中泯とか、 
前半登場組みは、以前にも触れた気がするので割愛。 

後半組は、 
まずは、大殿様こと容堂公こと、近藤正臣の怪演だな。 
(弥太郎除いて)実直な約作りが多いこのドラマで、 
一人やりたい放題やっとりましたが、 
まぁ、格が違う。 
中盤で出る度に口にしてた「タケチィ〜〜」が癖になります。 

世捨てっぽい雰囲気出して、 
若手に、やりたいようにやらせつつ、 
それでも、時流を見極めて、ちゃんと出るトコでは前に出てきてくれる。 
土佐勤王党の躍進〜弾圧の流れも、後半の後藤象二郎への絶対的な信頼も、 
結局は、そういうキャラだったんだよね。 

そーね、後半と言えば、その後藤様でしょう。 
青木崇高。 
化けたね〜 
エリートの誇りみたいもんでしょか。 
自分が特別である事に何の疑問も抱かない格好よさ。 
彼にはその十分な能力も地位もあるわけですが、 
龍馬だけは別。 
後半メインで動いていた龍馬/後藤コンビは中々ステキでした。 

そして、後半の目玉・・・だったのかな? 
高橋克美の西郷さん。 
俳優としての実力の違いでしょか。 
ありえないくらいきまってた思います。 
明石家さんまと、よく遊んでるただのお笑い好きの人じゃないんだよw 
一般的に西郷さんを現す「大らかさ」とは、 
やや離れたキャラクターでしたが、 
彼のそれは豪快でありつつ、絶妙に怖かった。 
あのノリで畳み掛けられるともうダメね。 

あとは、長次郎。 
大泉洋を初めて良い役者さんだな〜と思った。 
これが、ムカつく役どころなんだw 
神経質で、細かい事でうるさくて、それでいて優秀で。 
これぞ、ハマリ役つーんだろね。 

人が死ぬ展開をドラマ仕立てにしすぎて、 
見てる方が勝手に冷めてしてまうという 
冒頭に述べたこの作品のダメなトコロの中で、 
長次郎の退場だけは、中々哀愁があってよかたのではなかろか。 


中岡慎太郎は上川隆也。 
最終回でワンマンショーをするにしては、 
出番少なかったね〜 
もっともっと、龍馬と揉めて欲しかった。 
長州との関わりもいまいち描かれてなかったしね。 
でも、ステキでしたよ。 

最後の将軍様は、小物っぷりがナイス。 
英邁なのは間違いないにしても、 
あの雰囲気は何だろね。 
結局、龍馬側、土佐視点からみれば、 
偉大で勇気ある決断をした英雄という役どころをもらっていたが、 
このドラマにおける慶喜のより深いトコロは、 
最終的に、幕府側の大名たちを 
「信じきれなかった人」という寂しにあるのかな。 
ず〜っと、小物っぷりを演じていただけに、 
大政奉還の回はクルものがある。 
田中哲司さんお見事。 


あと、中盤〜後半、 
ず〜っと龍馬の宿敵として悪役をやってくれた 
長崎奉行、石橋凌。 
そんで、同じく長崎で龍馬達の保護者として支えた 
小曽根乾堂こと本田博太郎。 
役どころは地味ながら、とにかく出番多かったので、 
ドラマを安っぽくしないための縁の下として、うまく支えてくれたと思いやす。 


谷原章介。 
木戸先生ですな。 
前半の余裕っぷりと対照的に、 
後半、すっげー神経質で、常に胃がキリギリした感じが最高でした。 
常時ネガティブで、それでいて頑固で偏狭的で、 
一つの笑顔すら見せない。 
そんな木戸先生。 
「騎兵隊」が一つのキーワードになってたこのドラマにおいて、 
高杉晋作と共に、物語の主役でしたな。 



女関連。 
オイラは、そもそも『竜馬がゆく』好きなもんですから、 
女性関係の絡みが重点的に描かれる事自体は、 
なーんも、不満ありません。 
さな様も、おりょうも、おもとも、 
まぁ、ソツなくこなしていたのではないでそか。 
ただ、そのせいで、丸々一話使って 
退屈な回が多かったのも事実。 

週に一度ではなく、一気に見るとイメージ違うのかな。 


最終回、 
今井信郎の役で、ゲストに市川亀治郎が出てきたのは反則〜 
何かよくわからん不気味さがステキ。 
誰が暗殺したってより、 
「武士という身分の怨念の集合体」が殺したみたいな結論は 
ヨイんじゃないだろか。 
徳川家というより、幕府というより、 
何より、特権職業としての260年の重みを愚弄された連中の怨念は、 
これをい避けてはくれないよねって流れは良い。 


パッと思い出すだけで、これだけ出てくるんだから、 
やはり、オイラは相当に楽しんだドラマなんだろね。 




ドラマ全体の流れとしては、 
『龍馬伝』の名が示すと通り、 
あくまで、坂本龍馬個人を追っていくドラマです。 
幕末物として見るには舞台が狭すぎですし、 
視点も一元的すぎます。 
でも、それは良いんだよね。 
このドラマにおける「坂本龍馬」像は、 
序盤〜中盤で既に確立させているわけだし、 
その像に順ずる形で丁寧に、龍馬視点の物語を紡いだ作品でしょか。 
だから、恋愛話に一話丸まる使おうが、 
それは龍馬自身の重要度からすれば、全然OKなわけだよ。 

一貫性はあったと思う。 
脚本はクソでも、構成はよかったという例でしょか。

戻り