<告白>  2011年2月2日 日記より


やっと読みますた。 
一応、2010年のNo.1ベストセラーは、 
ドラッガーの何たらという事になっていますが、 
それは「新刊」としての数え方の問題でして、 
実は、文庫本(ノーカン)が200万部以上売れとりますので、 
純粋に、最も読まれた小説という点ではコレなんですな。 

さって、賛否両論も理解できる内容。 
直接のネタバレ無い程度に雑感。 



「読者の期待を如何に大きく裏切るか」が、 
小説としての出来良さであるという事は断じてありません。 
ただそれが、 
「読者の"推理"を如何に綺麗に覆すか」となると、 
推理小説としてならば、それは一つの正義なんだな。 

その点、神懸りです。 
そもそも「小説推理 新人賞」の受賞作でっせ。 

ただし、この作品には、 
死者が残した暗号文も無ければ、 
密室トリックも存在しない。 
数学的な思考も不要だし 
作者がこれみよがしに、 
さぁ真犯人を推理してみろと主張もしません。 

推理小説然とした内容は一つもなく、 
一見、展開されるのはヒューマンドラマです。 

それでも、これは紛う事なき推理小説。 
読者は、誰に煽られるでもなく、 
最悪、自身がそうしている事に気付きすらせずに、 
読中、せっせと推理を始めるでしょう。 
しかも、自らの人生観までをも絡めて必死になって、 
全精力を使い込んで、与えられた情報から、 
自身にとって完璧な結論を求めないと気が済まなくなる。 

何を? 
起こっている事態、全てを包み込むだけの理由をです。 
心です。 

百人居れば、百通りの捉え方が行われる。 
しかし、その推理は 
次の章において、ほぼ100%の確率で外される。 

その名の通り、この小説は、 
登場人物による「告白」のみによって進行します。 
章が変われば、その主体も変わる。 

一章で結論付けた納得が、二章の独白で壊れ、 
二章から感じた理想が、三章の独白で壊れ、 
三章で〜(中略 

無駄ですよね。 
そんなもの、当たる訳が無い。 
何故なら、実際に生活を共にしている登場人物同士でさえ、 
お互いの心境なぞ全く理解しあえていない。 
それが、ただ興味本位で覗いているだけの 
第三者である読者が、わかった気になる事自体、 
驕り以外の何者でもない。 
何度でも言いますが、それはただの「推理」です。 

「そんな事は、一言も書いてない」 
もう一度、ページを遡って、同じ場面を見直せば、 
本気になって、重苦しいテーマを受け止めて、 
真面目に理解したつもりの少年少女が、 
読者が脳内で作り出した創作のキャラクターだった事に気付かされる。 
勝手な妄想お疲れ様と冷水を浴びせられる。 

そこに、たまらない快感がある。 
そのトリックに納得した瞬間、 
オイラにとって『告白』は傑作になりました。 

そういう仕掛けが、 
皮肉たっぷりに効いていて、 
その都度、激昂する人も居るでしょう。 
社会派作品だと思って読み進めて 
読後もそのつもりでい続ける事もあるでしょう。 

評価が割れるのは当たり前の作風です。 

しかし、思春期の少年少女を扱っているとは言え、 
全体にデフォルメが強すぎで、 
やりすぎ感が漂うシーンが多々あるので、 
それが一つのヒントなのだろうか。 
一つ、一つのパーツはあまりにチープです。 

読者が、喜んで推理を始めだすために、 
最もそそられる題材が敢えて採用されている。 
ここがエグイ。 
あるいは、作者もある程度は本気なのかもしれませんが、 
それは気持ちの話であって、テーマという程に詳しくはない。 

繰り返しますよ。 
この作品は、 
「小説推理新人賞」の受賞作であり、 
双葉社『小説推理』に初掲載された小説です。 

それが既に語るに落ちている。 
作風が、既に作者のトリックなんだよな。 

ただ、中身に現実味があろうとなかろうと、 
この題材を笑い飛ばせる人は居ないでしょう。 
クズしか出てこないどうしようもない話。 
一気に読み進められる簡素な内容で、 
そして、読後感は最悪デス。 

でも、、、、面白かったと言わざるを得ない。 
そんな小説。 

デビュー作でこれはパワーありますな。 
売れるのも納得だ。

戻り