<アカデミー賞>  2011年7月31日 日記より


最近、映画作品を見る機会が多いのですが、 
中々、名作と出会える事は稀。 
そこで、過去の実績から自身の中で信頼の高かった 
「アカデミー作品賞」 
この受賞作を全て見てしまおうかな〜と思い、 
未見作品を埋めておりました。 

第一回受賞作 
1927-1928年 アカデミー 作品賞 
『つばさ』 1928年 
1927-28年 アカデミー 芸術作品賞 
『サンライズ』 1928年 

第六回受賞作 
1932-1933年 アカデミー 作品賞 
『カヴァルケード』 1933年 

この3本だけ発見できずに未見ですが、 
一応、残りは全作見せてもらいました。 

結果は上々。 
数多くの傑作に出会えましたね〜 
権威、権威と馬鹿にするなかれ、 
実際、選ばれるだけの水準は保証されてるし、 
少なくとも完成度では裏切られないので、 
お勧めでっせ。 

面白いのは年代ごとに 
全く、ジャンルや雰囲気が違うんだな〜って事。 
アメリカン社会大衆賞の側面が強いので、 
時代を色濃く映した作品が選ばれるわけですよ。 
思い当たる節が非常に多く整理してみると楽しいのです。 

直接の一口感想は、こっちに纏めました。 
http://www9.plala.or.jp/z-3/akade.html 



ちなみに、既存の全視聴映画に一口メモを載せて、 
リスト化できたら、スッキリして気持ちイイだろうな計画は、 
ぜんぜん、終わる気配がありませんw 
http://www9.plala.or.jp/z-3/frameeiga.html 
500本を超えたと言うに、 
まだ、ジャンルごと、シリーズごと書けてない作品が 
結構あるぞ。。。。。 

見てないようで、見ているもんですな〜 
うーん、継続中だがやはり無謀だったか。 



では、あらためて、 
第一回(1928年)〜1940年までの雑感。 

まず驚かされるのは、ジャンルの多彩さ。 
人生に迫るようなテーマ性の高い作品から、 
ただ見て楽しめる娯楽大作まで、 
本当に何でもアリのエンターテイメント世界。 
この時代に、完成された方式の多さに驚かされる。 
30年代に一度、黄金期を迎えてるんだね。 



1928-1929年 作品賞 『ブロードウェイ・メロディー』 
ブロードウェイ姉妹芸人の三角関係、恋のお話。 
地味ながら、とっても丁寧で、 
歌も踊りも楽しめる贅沢なトーキー初期作。 


1929-1930年 作品賞 『西部戦線異常なし』 
第一次大戦のドイツを舞台にした 
強烈な反戦大作映画。 
志願した若者たちが迎える悲惨な現実と言ったところか。 
舞台も、映像も、バラエティに富んでいて、 
後の戦争物と比べても、相当なハイクオリティ。 


1930-1931年 作品賞 『シマロン』 
1889年〜1930年までの開拓時代を淡々と振り返るお話。 
当たり前だが、半分は西部劇だね。 
馬や人の規模、時代ごとに変わり行く町並みの再現など、 
とにかく超大作。 
古きよき父親と母親の理想像か? 
1930年当時のノスタルジー映画だよね。 


1932年 作品賞 『グランドホテル』 
偶然にホテルのロビーで出会った人々が、 
各々で独自にストーリーを展開しつつも、 
微妙に絡み合うという所謂オムニバス物。 


1933年 作品賞 『カヴァルケード』 
発見できず。 


1934年 作品賞 『或る夜の出来事』 
世間知らずで我儘なお嬢さんが、 
紳士然とした男と出会い、反発し合う内に恋に落ちるという物語。 
もちろん、ウィットに富んだ洒落た掛け合いも混みで、 
『ローマの休日』などにも繋がる 
後の名作スタイルが、既に完成されている。 

1935年 作品賞 『戦艦バウンティ号の叛乱』は、 
大ロケ撮影が可能にした大洋の魅力に溢れた力作。 
迫力の映像の数々に酔いしれる 
十分なハリウッド大作。 

1936年 作品賞 『巨星ジーグフェルド』 
ブロードウェイの舞台裏を描きつつも、 
そのステージ規模の巨大さを堪能できる 
華やかなエンターテイメント大作。 
あまりのスケールに驚かされる 
職人芸溢れるミュージカル。 

1937年 作品賞 『ゾラの生涯』は、 
自身の安定した生活を振り払ってでも、 
世間の避難に飛び込み、正義を追求するという 
映画の中の典型的ヒーロー像が拝める。 
熱血な不正裁判物。 


1938年 作品賞 『我が家の楽園』 
愉快なコメディ一家の中の姿からも、 
社会のあり方、人の生き方をテーマに通す 
一大風刺作品。 

1939年 作品賞 『風と共に去りぬ』 
言うまでもないアメリカにおける一大叙事詩。 
徹底した4人の大河メロドラマ。 

1940年 作品賞 『レベッカ』 
完全アウェイの家へと嫁いだ後妻が、 
どんどんと精神的に追い詰められる緊迫のサスペンス。 
客を不気味に思わせる事だけを追求した演出の数々は、 
もはやホラー映画の範疇だろう。 
(ホラー=異形の物 という定義を取らなければね) 



<1941年〜1950年> 

ここが一つの暗黒期なんだと思う。 
要するに、前半年代は第二次世界大戦の影響で、 
後半年代は赤狩りのせいか、窮屈な作品がとっても多い。 
30年代の多彩さと比べれば、実に選ばれるジャンルが地味。 



1941年 作品賞 『わが谷は緑なりき』 
ウェールズ地方の炭鉱で生き抜く一家の 
ひたむきでありつつ、美しい生き様を描くお話。 
とっても、綺麗でお気に入りの一本なんだけど、 
こういうのが続くんだよ。。。。 

1942年 作品賞 『ミニヴァー夫人』 
戦時中真っ只中のロンドンの中産階級の 
理想的な姿を映し出した、これまた綺麗な作品。 
夫も、息子も、そして主人公の夫人も、 
強く清くたくましく生きるお話。 

1943年 作品賞 『カサブランカ』 
奇跡のエンターテイメント作品。 
親独政権下のフランス領において、 
一人のやさぐれ男が、レジスタンス夫妻を逃がすお話なんだけど、 
このベタベタのストーリー展開の中に 
絶妙な「粋」が見つかる不思議な映画。 
演出や台詞回し、音楽が素晴らしい傑作。 

1944年 作品賞 『我が道を往く』 
教会を中心として息づく街の姿を 
人の良い老神父を通して描く、 
古き良きアメリカンスタイルの人情物。 

1945年 作品賞 『失われた週末』 
例外的な異色作だな。 
アル中の怖さを延々と描くだけのカルト作品。 
酒から逃げられず、どんんどんエスカレートする主人公の心境に 
途中で付いていけなくなって恐怖すら覚える。 

1946年 作品賞 『我等の生涯の最良の年』 
復員モラトリアムの時事問題映画。 
要は、厳しいながらも劇的で誇りある兵隊生活を送った方々が、 
夢の帰国をしたところで、 
現実は現実で、仕事は無いし、銀行は金を貸してもくれないしで、 
大変だよねという人生作品。 

1947年 作品賞 『紳士協定』 
反ユダヤ主義の差別の実態を 
クリスチャンの立場から理知的に提起する社会作。 
要するに、酷いでしょという差別される側のお涙ではなく、 
あくまで、差別する側の問題、心理状況の面を徹底した意欲作。 

1948年 作品賞 『ハムレット』 
言うまでもなく、シェイクスピア劇。 
大傑作だが、時代を問わないという点で取り上げる余地無し。 

1949年 作品賞 『オール・ザ・キングスメン』 
手段を選ばない豪腕政治家と、 
彼に影響されて道を踏み外す面々を描く物語。 
緊迫感はあるけど、テーマ性は低めかな。 

1950年 作品賞 『イヴの総て』 
古き良きブロードウェイの姿を描きつつ、 
そこで、繰り広げられる女優同士のドロドロの物語。 
それを祭り上げる裏方男どもの姿も含めた、 
見応えある一品。 







<1951年〜1960年。> 

とにかく、人生観や社会の理想像を描く作品が多かった40年代から一転。 
この50年〜60年代前半までは、 
紛う事なき大作黄金期だと思う。 
映画で描けない事はないと言わんばかりに、 
豪華絢爛な作品で満ちている。 


1951年 作品賞 『巴里のアメリカ人』 
究極の職人芸ミュージカル。 
仕掛けやストーリーではなく、 
一人の人間は、ここまで技術を極められるのだという姿を 
延々と見せ付けられる傑作。 

1952年 作品賞 『地上最大のショウ』 
ド派手なサーカスドキュメント。 
半映画、半ドキュメントなんだよ。 
大規模サーカスはどうやって移動して、 
どうやって経営しているのかを 
描き続ける不思議な一品。 

1953年 作品賞 『地上より永遠に』 
はやくも、戦時中を振り返る話だな。 
いわゆる、パールハーバー物。 
軍隊の腐敗っぷりと、開戦前のアメリカ兵のだらけっぷりが味わえる 
中々、映画冥利に尽きる一品。 

1954年 作品賞 『波止場』 
強烈な労働者映画。 
この時期、もう赤狩りは終わってるのか? 
一人の青年が不正に立ち向かう事になるお話。 
この立場においては、誰が味方で誰が敵なのか。 
頭でっかちな階級分けなど無意味な実情。 
中々に、考えさせられる良作。 

1955年 作品賞 『マーティ』 
これも人生観を語るアメリカ社会物かな。 
嫁と姑から派生する核家族問題を捉えつつ、 
醜男だが実直という35歳の主人公が、 
男女の関係を何かのアクセサリーかのように扱う 
プレイボーイ達をよそに、自身の幸せを見つけるお話だ。 

1956年 作品賞 『八十日間世界一周』 
TVが普及する以前の時代に、 
世界中の都市の映像をスクリーンに映し出した意欲作。 
これは、確かに世界旅行をした気になるよ。 
洒脱な紳士である主人公も中々。 
日本は、横浜が出てるぜよ。 

1957年 作品賞 『戦場にかける橋』 
日本軍の捕虜になったイギリス人兵士が、 
戦場に捕虜労働として橋をかけるお話。 
人生観を示す映画ながら、映像が壮大で美しい。 
橋はアレ…実物大で作ったんだよね、本当にw 

1958年 作品賞 『恋の手ほどき』 
1900年のパリ社交界が舞台のミュージカル。 
とにかく、服装から、部屋の内装から、 
パーティの様子から、全てが豪華絢爛。 
音楽に乗せて、映像を眺めてるだけで幸せな直球作。 

1959年 作品賞 『ベン・ハー』 
今更、説明の必要もないでしょう。 
キリスト時代のローマを舞台にした 
一大史劇物。 
その全てが規格外、映画史上、最も豪華な超大作だ。 

1960年 作品賞 『アパートの鍵貸します』 
心温まる喜劇。 
冴えない男と、冴えない女の恋愛譚。 
全編通して、台詞回しや小道具がオシャレなんだよ。 



<1961年〜1970年> 

前半は、まだ50年代の豪華時代を引きずっているが、 
後半からは地味時代が来るよ。 
ヴェトナム戦争のアレの影響からか、 
アメリカンニューシネマの台頭だな。 
40年代の賛歌とは逆の意味で、 
社会問題作が非常に多くなる。 


1961年 作品賞 『ウェストサイド物語』 
そうか、60年代はミュージカル新時代でもあるな。 
個人の卓越した技術を見せつけるような作品から、 
映画としての様々な見せ方を工夫する時代へ。 
特に、ウェストサイドの集団ダンスはエポックメイキング。 

1962年 作品賞 『アラビアのロレンス』 
時代の残り香とでも言おうか、 
あの有名な『クレオパトラ』もこの時代だよね。 
大スケール史劇物の終焉。 
最後のノンCGリアル大作として楽しんで下さい。 

1963年 作品賞 『トム・ジョーンズの華麗な冒険』 
イギリスコメディ。 
貴族の放蕩息子が繰り広げる、出会った先からヤリまくりの旅。 
こういう作品が出てくるあたり、変な時代に入ってきたと実感できるよ。 

1964年 作品賞 『マイ・フェア・レディ』 
これも、ミュージカルだね。 
我儘少女と、厳しい男の恋物語と言う典型例。 
やってる事は、10年前の『恋の手ほどき』と 
そう変わらないんじゃないかい。 

1965年 作品賞 『サウンド・オブ・ミュージック』 
またミュージカルだもの。 
これは、金字塔だね。 
映像やストーリーはもちろん、楽曲が素晴らしすぎる。 
ミュージカル映画で、ここまでのスケールをやるのかという驚き。 
映画ミュージカルが、舞台の延長から、完全に逸脱した瞬間だろう。 

1966年 作品賞『わが命つきるとも』 
地味史劇がきたよ。 
欧州中から慕われる頑固親父が、最後まで皇帝に折れなかったお話。 
トマス=モアの意地と名誉の物語。 
とっても、カッコイイ。 

1967年 作品賞『夜の大捜査線』 
きましたよ、黒人物語。 
南部の差別の実態を徹底して描きまくる 
インテリ紳士黒人刑事の奮闘記。 
恥を生み出すのもアメリカならば、 
その姿を堂々と世界に暴露するのもまたアメリカ。 

1968年 作品賞 『オリバー!』 
またまた、ミュージカル。 
今度は泣かせの物語。 
孤児のオリバーが母親と出会うまでという 
全年代にお勧めできる柔らかいお話です。 

1969年 作品賞 『真夜中のカーボーイ』 
ついに、オスカーですよ。 
こんな作品に作品賞を与えては駄目だw 
NYの都会で自分を探せずに腐ってる若者二人の 
マイナス、マイナスの駄目駄目な物語。 
過去のアカデミー作品と比べてあまりに異色の一品。 
ちなみに、『イージーライダー』も69年だぜぃ。 

1970年 作品賞 『パットン大戦車軍団』 
ここで二次大戦物というのも面白い。 
問題児ジョージ・パットンの物語。 
珍しく、超大作です。 
ロレンスで最後と言ったが、最後の大作はコレかもな〜 
必ずしも、強いアメリカに終始しない作風も面白い。 



<1971年〜1980年> 
社会問題提起作というのが、 
全く違和感が無くなるのがココでしょう。 
60年代末に撒かれた種が実った瞬間だろか。 
キッツイ映画が多くなってきます。 
と言うよりも、「そこを突くか!!」と思わせたもの勝ち、 
何か、テーマ性を持たせるのが優れてるみたいな? 


1971年 作品賞 『フレンチ・コネクション』 
リアル刑事物です。 
ダーティーハリもこの71年で、刑事物の当たり年。 
つーより、カーチェイス物と言うのが正解か。 
早回し抜きのガチカーチェイスは、 
68年の『ブリッド』が元祖と言われているので、 
今では、アクション大作に必須なシーンであるカーチェイス。 
この数年が、新たなジャンル、誕生の瞬間なのだ。 

1972年 作品賞 『ゴッドファーザー』 
重い作品に絶えられる時代になったという事だろうか。 
この重厚感と、一見して把握しにくい複雑な構造が 
人気を博すというのは、一つの過去との決別ではないだろか。 

1973年 作品賞 『スティング』 
一芸爽快ペテンギャンブル映画。 
翌年がゴッドファーザーの二作目だから、 
重苦しさに挟まれた一服の清涼剤か。 
サっと吹き抜ける爽やかな風のような作品です。 

1974年 作品賞 『ゴッドファーザーPart II』 
前作を上回る慌しさと複雑さ。 
若き首領、マイケルの愛と苦悩を 
3時間半、じっくりと堪能して下さい。 
過去と比べれば、全く映画らしくない映画という事になるでしょう。 
綺麗な一本通るシナリオが無いのに、決して雑ではないんだよね。 

1975年 作品賞 『カッコーの巣の上で』 
精神病棟の話です。 
異常な活力をもった健常者を紛れ込ませて、 
その管理する側すらも、どこか狂ってるよねという姿を 
見事に浮かびあがらせるお話。 
勘弁してください。 

1976年 作品賞 『ロッキー』 
この映画って、どっちなんだろ? 
くすぶっている若者の気持ちを代弁するような 
アメリカンニューシネマ的な雰囲気を持ちつつ、 
きっちり爽やかに燃え尽きれるお話だよね。 
ちゃんと活力のあるお話だから、立派な新機軸か。 
一夜にして有名人って意味では、アメリカンドリームでもあるし。 

1977年 作品賞 『アニー・ホール』 
最初から最後まで、人間的にやや問題アリな 
コメディアンの主人公が語りっぱなしの映画。 
社会問題を風刺して初めてブラックユーモア。 
そこは、表裏一体よ。 

1978年 作品賞 『ディア・ハンター』 
勘弁して下さい第二段。 
ヴェトナムを経験した若者が、 
非常に荒んでしまうお話。 
構成から何から、意図的に異常に荒い映画。 
テーマも、シナリオも、な〜〜んも無い。 
そこが無常なんだろけど、苦手だぞ。 

1979年 作品賞 『クレイマー、クレイマー』 
お次は、両親の親権裁判だ。 
子供を愛して病まない親二人だが、 
自分の生活は自分の生活で大事。 
だから、共には暮らせないというアメリカン全開映画。 
この心境はちょっと特殊。 
完全な屑親というわけではないのが不思議。 

1980年 作品賞 『普通の人々』 
続きますよ〜〜w 
これは、自殺未遂を起こした思春期少年が、 
両親の事を気遣い、周りの目を気遣い、 
それでも、少しづつ前に進んでいけるのかな〜というお話。 
まさに、主人公の「普通」っぷりが素敵。 


……70年代酷ぇなww



<1981年〜1990年> 
基本的に70年代のノリと変わらないのけれど、 
締め方が明るい映画が多くなった気がします。 
真正面からの社会問題というより、 
人間同士の深い関わりに対する賛歌かな。 


1981年 作品賞 『炎のランナー』 
20年代のオリンピックに出場する短距離ランナーのお話 
アマチュアスポーツの理念みたいなね。 
元々、上流階級がより良い紳士たるために始めたスポーツ。 
ならば、人格形成、社会性形成が主題であって、 
そこを蔑ろにする行為は本末転倒だよんという 
とっても、奥の深いお話さ。 
決して、アマチュア賛歌では終わらない点もよし。 

1982年 作品賞 『ガンジー』 
地味史劇。 
彼の主義自体は、派手そのものだけどね。 
非暴力ばかりが注目されるが、真に過激なのは『非服従』の方だぜ。 
あらためて突きつけられると、この人の偉大さを噛み締める。 

1983年 作品賞 『愛と追憶の日々』 
アメリカン全開な母と娘の人生譚。 
こんなに自己主張が激しくて良いのかい。 
でも、確かに人生にパワーはある。 
そんな現代アメリカ人の姿を描く社会作。 

1984年 作品賞 『アマデウス』 
7〜80年代、一服の清涼剤。 
宮廷美術、壮大なモーツァルトの楽曲の数々、 
フルオケによる盛り上げ方、全てが豪華絢爛。 
天才と凡人の対比も上々でキャラクターの魅力も大。 
映画は総合芸術だよと再認識できる傑作だね。 

1985年 作品賞 『愛と哀しみの果て』 
アフリカで激動の人生を送った女の生涯。 
恋の物語でもあるのさ。 
植民地で農園を経営して、現地の民と親交を築き、 
アフリカの自然にも魅了されての 
辛いんだけど、充実はしてただろうという人生を見るお話。 

1986年 作品賞 『プラトーン』 
ヴェトナム戦争の前線を描くお話だな。 
『フルメタルジャケット』もそうだけど、 
何故、この時代にベトナム物が多いのか。 
ここが、国内世論的に「時効」だったのか。 
この作品が描く前線兵のやり取りは、かなりエグイです。 
こんな事をやっていては駄目だろうと素直に思える作品。 

1987年 作品賞 『ラストエンペラー』 
10年に一回くらいは、このクオリティの大作が混じって欲しいよね。 
清朝のゴテゴテに装飾された儀式の数々に目を奪われる。 
素直に恐れ入る。 
溥儀を描くと言うよりは、20世紀前半における激動の中国。 
この時代の中国は、どの物語よりも凄まじいよな。 
つーより、よくこんな映画が撮れたなと思う。 

1988年 作品賞 『レインマン』 
これが、80年代マジックの真骨頂だろう。 
自閉症の兄と、弟の絆を描くお話ながら、 
その終わり方は実に爽やか。 
社会問題かと思わせておいて、 
実は、弟側の成長物語と言うのが素敵。 
トム・クルーズの提唱したイケメン基準が新時代の幕開け。 

1989年 作品賞 『ドライビング Miss デイジー』 
これもそうさ。 
ユダヤ人と黒人という、アメリカにおいてやや距離を置かれている 
老人二人が紡ぎ出す友情物語。 
悲しい話ながらも、実に人生に力を感じて 
元気を貰える良作。 
こういう気持ちになれるのが良いよね。 

1990年 作品賞 『ダンス・ウィズ・ウルブズ』 
西部時代に、インディアンとの交流を描いたお話。 
西部の雄大な景色を存分に堪能できる豪華作品。 
このあたりから、ストーリーが地味と言うか、 
予定調和物が多くなるんだよね。 
良作なんだけど、驚かされない史劇映画が多くなる。 


<1991年〜2000年> 

何でもアリ時代へ突入。 
そんな感じがある90年代。 
映画の規模と興収は大きくなる割に、 
誰もが知っている代表作が少なくなった。 
そんな逆転現象からかね。 
とにかく多彩だーね。 

1991年 作品賞 『羊たちの沈黙』 
いきなりだぜ? 
こんな映画をオスカーに選出して良いのかい。 
いや、傑作中の傑作だけどね。 
人喰い設定が光るサイコパスの教授のキャラクターと、 
その行動力が唯一無二。 
終始、ドキドキできちゃう一品です。 

1992年 作品賞 『許されざる者』 
まさかの西部劇。 
あれ程の黄金時代を築きながら、 
結局、作品賞が送られる事のなかった西部劇が、 
92年という時代に受賞。 
イーストウッドの作品賞一回目。 
彼の映画は描写が丁寧だよね。 
消化する要素が多すぎて、少し淡々としすぎな感もあっけど。 

1993年 作品賞 『シンドラーのリスト』 
これは卑怯だな。 
この規模、この手間で、ナチスドイツを相手にすれば、 
感動作が出来て当たり前。 
ところが、映画としてきっちり面白いんだよね。 
シンドラー自身の映画内のキャラクターに筋がある。 

1994年 作品賞 『フォレスト・ガンプ/一期一会』 
はい、アメリカ人の理想です。 
過去30年におけるノスタルジー映画。 
こんなアメリカ人、いねぇよと笑いながら、 
あぁ、これがオッサン達は好きなんだなと思える 
素直な映画で、作品賞ってのはわからんでもない。 

1995年 作品賞 『ブレイブハート』 
まさかの戦記物。 
この映画を90年代に作ろうと思ったメルギブソンは 
大したもんだ。 
まぁ、残念と言えば残念な密度なんだけど、 
それでも、90年代クオリティで楽しめる 
直球史劇映像は新鮮。 

1996年 作品賞 『イングリッシュ・ペイシェント』 
最初から最後まで人間の物語だよ。 
二次大戦末期に、ある地域で絡み合う絶妙な関係性。 
日本的に言うと、虚無かな。 
人生終わらせるには早い気はするんだ。 
アカデミーでは珍しく芸術系映画の受賞。 
美しいが退屈とも言えるでしょう。 

1997年 作品賞 『タイタニック』 
甘ったるい一大ロマンス映画だ。 
つーても、世間知らずの女の子が、 
自分と違う世界に生きる男と出会ってというのは、 
30年代から続くハリウッドの典型なんだよね。 
そして、後半のパニック物としての一級っぷり。 
まるで二本の別映画が見事に崩れずに共存しているかのような傑作。 

1998年 作品賞 『恋におちたシェイクスピア』 
甘い作品が続きますな。 
甘いながらも、ロミオとジュリエットのストーリーと、 
劇中のシェイクスピアの恋愛関係がリンクしていく様は 
とっても見事。 
劇中劇の結末は知ってるけど、映画の結末はわからないからね。 
最後まで、良い緊張感に包まれます。 

1999年 作品賞 『アメリカン・ビューティー』 
こんな映画が選ばれていいのか第二段。 
思春期の少年少女の世界観も良いし、 
そんな彼らを子供に持つ親の苦悩も良いね、 
どちらも華麗にぶっ壊れている。 
前半の退屈さから一転、後半んから怒涛の一品。 

2000年 作品賞 『グラディエーター』 
リドリー=スコットまさかのローマ史劇物。 
2000年だぜ、2000年w 
つーても、基本はアクション物だけどね。 
物語を控えめにして、アクション面に舵を切ったのが 
珍しく当たっている一品。 
この後、何本から出る史劇物はどれも酷いが、 
こいつは、絶妙なバランスでさすがに他を圧倒。 


<2001年〜2010年> 

90年代の何でもアリの多ジャンル時代が、 
そのまま洗練された感じだろうか。 
いや、エンターテイメント路線に戻ってるかな。 
アメリカの社会性を写さない駄目みたいな風潮が、 
やや弱くなった気がする昨今のアカデミー。 


2001年 作品賞 『ビューティフル・マインド』 
おまえら、統合失調症好きすぎだろw 
そういうアメリカン映画。 
キチガイを眺めて理由を解明したがるのが、 
本当に好きすぎる。 
映画としては、主人公像の描かれ方に筋が通ってなくて駄作かと。 

2002年 作品賞 『シカゴ』 
ミュージカルktkl!! 
60年代にあれ程に乱発されたミュージカルオスカーが、 
68年のオリバー以来の登場。 
昨今は、西部劇よりも史劇よりも、 
ミュージカルが売れない映画の王様なわけだ。 
しかし、そのクオリティは異常に高い。 
芸術面の拘りも、映画としての一貫した雰囲気作りも 
どちらで見ても楽しめる大傑作。 

2003年 作品賞 『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』 
出た!!!! 
70年代の後半頃から、SFやファンタジーは、 
間違いなく映画産業を支える一大ジャンルなのだが、 
アカデミー会員は好きではないようで、 
今まで、一度も作品賞を取った事がなかった 
(撮影賞とかは有るがね) 
それも、『ベン・ハー』『タイタニック』に並ぶ11部門受賞だぜ。 
これはもちろん、三部作の締めに送られた賞なので、 
全作まとめてオスカーみたいなもんでしょう。 
CG遊びの一つの到達点だと思う。 
傑作映像でっせ。 

2004年 作品賞 『ミリオンダラー・ベイビー』 
イーストウッド監督二回目の女子ボクサー映画。 
やはり、淡々としすぎていて、 
全く、キャラクターに移入はできないのだけれど、 
そのあまりの丁寧な雰囲気作りに 
気付けば飲み込まれている詐欺みたいな良作。 
テーマを持たせないと気が済まない監督らしく、 
この映画の終盤はキッツイぜ。 

2005年 作品賞 『クラッシュ』 
差別、差別、差別、差別・・・・ 
アメリカの片田舎で起こる一つの事件を軸に、 
様々な立場の人々の姿を描くオムニバス映画。 
その絡み方は緻密の一言。 
扱っているテーマの汚さと裏腹に、本当に美しい映画ですよ。 

2006年 作品賞 『ディパーテッド』 
これが、21世紀のサスペンス。 
マフィアに潜入する捜査官と、マフィアと通じている刑事のお話。 
特筆すべきはテンポだね。 
早い、早い。 
現代人のスピードはこのくらいには絶えられる。 
情緒溢れるサスペンスも良いが、 
息もつかせぬ密度で押し切る緊張感も悪くはない。 

2007年 作品賞 『ノーカントリー』 
これは、ちょっと評価できないな。 
ホラー映画として映像や演出を見る事はできるが、 
他に全く中身なく、その一点で攻める作品がオスカーか。 
つまり、『巴里のアメリカ人』のように、 
「ミュージカル」一本で攻めた映画に対して、 
似たような評価を、このサイコな映像に出してるって事だよね。 
うーん、これが映画か? 

2008年 作品賞 『スラムドッグ$ミリオネア』 
びっくり。 
インド映画なんだね。 
(厳密には、インド映画風のアメリカ映画) 
この国の底を描けば、そりゃ面白いさ。 
異国情緒なんてレベルではない。 
そこに、元々のクオリティが異常い高い 
あのミリオネアの演出が合わされば、そりゃ面白いさ。 

2009年 作品賞 『ハート・ロッカー』 
久しぶり。 
戦争をテーマにした前線の苦悩を描く映画だね。 
イラク戦争を挟んでいるのだから当然だけどね。 
散々、この戦争を題材にした作品が乱発された下地の上で、 
2008年製作かな? 満を持しての受賞ってトコだろか。 
確かに、民間人とテロリストの区別が付かず、 
民間人撃ったら大責任、テロリストだったら自分が即死。 
この狭間が生み出す緊張感は半端じゃない。 
イラクの特殊な事情が見事に現れていて中々の社会作。 
主人公が、アクション映画のヒーローに過ぎるがw 




以上、作品賞でした。 
次は、「監督賞」に挑戦しようか。 
基本、作品賞と監督賞は、同時受賞が当たり前で、 
8割近くは、同一の作品が受賞しているそーな。 

それって、つまりは、 
作品賞とは別に、監督賞作品が存在している年は、 
最優秀映画が二本あるって意味だよね。 
未見作品が15本くらいあるよーなので、コレから名作を貰おうか。

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