『ワーロック』 1959年 
監:エドワード・ドミトリク  主演:ヘンリー・フォンダ、リチャード・ウィドマーク
★★★★☆

荒くれ物に蹂躙される町を守るために
住人達が名うてのガンマンを雇うお話。

街に迎えられるヘンリー・フォンダが演じる名ガンマンは
非の打ち所がない程に実直でストイック。
罪人に対して町人のリンチすらをも許さない程の威風堂々っぷりだが
彼の存在自体には何処か空虚な感じが漂っている。
あまりにも完璧である彼に頼り、彼を英雄とすることに対しては
何かが違うとする空気が常に悶々としているんだね。
現実面での悪い部分はアンソニー・クインが演じる
プロデューサー的な相棒が担ってくれている面もあるが
それを差し引いてもカッコ良すぎる。

対照的なのがリチャード・ウィドマーク演じる
無法者から郡の保安官補に転身した男。
彼は無力で悪党側にも民間保安官側にも
どこか勝てなさそうな頼りない存在なのだが
その独立性、狂おしい程の正当性において
正義の象徴として存在感を発揮していく。

自身は危険を避け、好き勝手な立ち居振る舞いに終始する
愚かなる町の人々が最終的には自らの手をもって
治安を守ろうとする流れに行き着くには
前者のフォンダではなくウィドマークの存在がなければならない。

これは一筋縄ではいかないテーマだね。
暴力に対してより強い暴力を用いることへの
不誠実を象徴しているのかな。
殺し合いの次には、また復讐の殺し合いが延々と続くわけだ。
結果、悪党は死に、超越的な力の象徴であるフォンダは町を去る。
一つの時代の終焉と社会への意思を感じる
完璧なまでの重厚ストーリーは見事のひと言。

それでいて今作は
徹底した「早撃ち」に拘ったガンマン作品でもあり
古典的な西部劇の遊び心をもったエンターテイメント映画としても
十分に楽しめる仕上げなのが贅沢にすぎる一本。

ヘンリー・フォンダが演じる正義でも悪でもない
独特のガンマンの存在があまりにも素晴らしい。
完璧なスターであるフォンダの存在感を
逆手に取った脚本の妙が活きているよね。
普通に見ても楽しくテーマ要素も実に深い西部劇の傑作。




『ワイルドスピード』 2001年 
監:ロブ・コーエン  主演:ポール・ウォーカー
★★★☆☆

輸送トラックが改造スポーツカーに襲われるという
連続強盗事件を追う潜入捜査官のお話。

カッコイイね。
スポーツカー好きの専用映画だろか。
一応ドラマもあり、ド派手シーンもありで
誰が見てもそれなりのアクション映画として完成はしている。
それでも
「何故、いきなりエクリプス??」
「フェラーリ355GTSを加速でぶっちぎるスープラ!!」
「いや、セフィーロって………」
「結局、全部日本車だったな〜」などなど
色々と突っ込みどころ満載なお馬鹿な車要素を
楽しみながら笑い転げるのが正解だろう。

展開が早いので軽く見てスカっとできる一本。
レース映画ではなくスポーツカー(not スーパーカー)映画だね。




『ワイルド7』 2011年 
監:羽住英一郎  主演:瑛太
★★☆☆☆

極悪犯罪者だけで構成されたという
警察を超える超法規的秘密組織。
悪には悪の論法で作られた、ワイルド7の活躍のお話。

映像的にはそこそこ楽しめる映画だろうか。
ド派手で実に頭の悪いシーンが
クライマックス前は続々と登場する。
やり過ぎ、撃ち過ぎというツッコミを入れて楽しむ
お馬鹿作品としては相応な規模を保っている一品。
基本はバイク映画と思ってよいでしょう。
7人各々が違うバイクに乗り込んで
公道を全開で走り回る構図に魅力があるかどうか。

ただし、他は足りないね。
特にBGMや展開だろうか。
ここで欲張りすぎな点はいただけない。
壮大で感動を押し付けるようなBGMの連発や
ドラマチックで泣かせに入る男女と親子のお話。
そして、国家規模の陰謀や危機を題材にしないと
映画が作れないかのような無駄なスケールの大きさ。
前述のお馬鹿要素で突き抜けるにしては雑音が多すぎて
ドラマや世界観で楽しむにしては軽めに作られすぎている。
原作を考えれば、政治色は良い。
しかし、その政治色がIT社会を勘違いした程度の方向では
やはり薄味としか言えないだろう。
この題材こそもっと濃くて良いのだよ。

もちろん、最初から100分映画に
7人分の見せ場などは期待してはいないが
それでも、全員の顔と名前が最後まで一致したかすら
怪しいレベルの個性ではどーだろうか。
意外にも瑛太のキャラクターが成立していのが
かえって惜しいと感じられる一作。




『ワイルドバンチ』 1969年 
監:サム・ペキンパー  主演:ウィリアム・ホールデン
★★★★☆

20世紀初頭のアメリカを舞台に
時代に取り残されたかのような強盗集団が
執拗な追跡を避けながらもひたすらに暴れまくるお話。

映像美だね。
スローモーションを多用する演出
徹底して拘り抜かれた着弾時の描写。
この二点が恐ろしい完成度。

しかし、そこまで洗練された映像芸術で魅了しておきながら
キャラクターやストーリーについては無法の一言。
逃げ続ける強盗団も、追手の賞金稼ぎ集団も
逃亡先であるメキシコの将軍も
皆が皆、やる事成す事、暴力志向にすぎる。
刹那的で虚無的でそれでいて欲望にも忠実な
とにかく彼らから溢れ出る勢いが素晴らしい。
いつか滅ぶ事は彼ら自身でも理解はしているんだろね。

あまりに多くの人が撃たれるので
誰が何所で何人を撃ったのか整理がつかないのだが
おそらくメインキャラ全員がクズ野郎な事は間違いないだろう。
仲間内ですらいつ暴発するかわからず
妙な意味で緊張感抜群で困ってしまう。

加えて大作然とした雄大なロケーションまで堪能できるというのだから
何という贅沢な一品だろうか。
どんなショットであってもこの作品の画は美しい。
ラストの銃撃戦など一体どれだけの手間をかけたのだろうか。




『わが命つきるとも』 1966年 
監:フレッド・ジンネマン  主演:ポール・スコフィールド
★★★★★

トマス=モアの法律家+聖職者としての意地の物語。 
国王と社会の流れに対して、最後まで折れない頑固親父のお話。 
終始、たった一人の人物を魅力的に描ききるだけで 
十分な傑作になりうるのだから歴史物はやめられない。 

歴史的、思想的な評価なんてのはどうでもよく
一人の人間のプライドを徹底的に描ききった
ぶれの無さが素晴らしい。 

「命より誇り」シリーズの一つ。
この路線は古今東西問わず最も熱い物語。
戦記物と違い、派手な展開や拷問シーンも無い中で
それを説得力抜群に描くのは本当に匠の仕事。




『若き日のリンカン』 1939年
監:ジョン・フォード  主演:ヘンリー・フォンダ
★★☆☆☆

若き、弁護士時代のエイブラハム・リンカーンを主人公とした
純度100%の法廷劇。

いまいち、やりたい事が伝わらない映画かな。
当時の民衆の程度や法制度そのものからして
その程度と言えばそうなのだが、
法廷物としてはお粗末すぎる。
展開があまりにも唐突で纏まりも弱く
この方面からの見所は一つもない。

主人公の公明正大で洒脱な若手弁護士という役が
あのリンカーンである意味も全く見出せない。
少なくともアメリカ外の目から見た
彼の弁護士像とはもっとも遠いキャラクターだろう。
歴史物にとっては創作もifも何も障害にはならないが
噛み合う要素を何一つ提示できなかった際だけは
その意義を問う事になる。

何故、意味もなく実在の舞台を設定したのかとね。
政治家としての彼に繋がるお話ですらないのには
拍子抜けを通り越して呆れてしまった。

若かりしヘンリー・フォンダの熱演だけが光る一品。
あとはジョン・フォード監督とは思えない程に
仕掛けの弱い垂れ流し映画。
しかしアメリカは本当に私刑の国だね。




『わが谷は緑なりき』 1941年
監:ジョン・フォード  主演:ウォルター・ピジョン 他
★★★★★

ウェールズ地方における 
炭鉱一家の何の事はない家族の物語。 

賃下げ、スト、事故、一家の離散、時代の移り変わり…etc
派手な人物もいなければ大事件もなく淡々と丁寧に人生は続く。 
それが何よりも綺麗で大事なんだよな。
炭鉱や扱ってる話からして"綺麗"なわけがないんだけど
何よりも"家族"という物が綺麗に映ってます。 
時代をたくましく乗り切る生き様とね。 
白黒とは思えない映像美も含めて見て損無しかな。 

どんな素敵なアイディアをひねり出した映画でも
結局、こういう作品には勝てないのかもしれないと
素直に思えてしまう威風堂々とした大傑作。




『我が道を往く』 1944年
監:レオ・マッケリー  主演:ビング・クロスビー
★★★☆☆

老神父が一人で切り盛りする経営難に苦しむ教会へ
若い神父が派遣されお互いに人生を見つめていくお話。

綺麗だね。
こういう世界観を古き良きアメリカというのだろうか。
街の中心として教会があって、警察官すらも含め
人々は様々な相談や手助けを教会へ求める。
教会も神父も清く貧しくそれでいてやや洒脱。
街には心の底から悪い人などおらず
子供達も金貸しも皆と話し合える。
音楽は常に神聖だしね。

何より90歳を超える母親にもう一度会いたいと願う
引退を迫られた勤続45年の年老いた神父の人柄がよい。
若いやり方に反発しつつもその真摯な姿勢に感化されていく。
その姿は確かに素敵。

本当に嫌味が無い映画。
逆に、嫌味が無さ過ぎる世界観が嫌味に見えるか
本国の方が見れば評価が一つ違う作品だろうけど
完成度の高さで楽しむだけの映画かな。
ゴーイングマイウェイの歌は素晴らしいね。






『我が家の楽園』 1938年
監:フランク・キャプラ  主演:ライオネル・バリモア
★★★☆☆

大企業の立ち退き勧告に対し
一人抵抗を続ける一家が繰り広げるトタバタコメディ劇。

やりたい事しかやらないと豪語し
物質的な欲求社会から距離を置く
所得税すら払わないこの一家の長は強烈だね。
少し、立ち入りすぎて「ism批判」をしながらも
(ファシズム、コミュニズム……etc)
自身も一つの主義なんじゃないかと疑いなくなる程の演説家。
ただ、彼の作り上げた一家の面々の愉快さは本物。
歌いたければ歌って、踊りたければ踊る生活の実に爽快な事。
彼らを眺めているだけで十分に楽しめる。

しかし、彼らがそこまで支持を受けている理由と言うか
民衆の代表みたいな立場になっている過程が
全然描かれないままに
上流階級一家との対比を作られるのは
ちょっと不親切かな。
中身を覗いている観客は理解できているのだが
傍から見て彼らはそんなに魅力的だろうか。
テーマ先行が過ぎるとこの手の作品は冷めてしまうよね。

基本的にコメディと人情で楽しませてくれる割に
全編通して社会や国家への警鐘が多く
どうも重苦しさが抜けないのは時代だろうか。
確かにこの後、国家が持つ暴力性の究極である
世界大戦が勃発する事を我々は知っているのだが
キャプラ監督は見事に未来を予見してたと言うわけか。
切ないな。




『私が愛したギャングスター』 2000年
監:サディウス・オサリヴァン  主演:	ケヴィン・スペイシー
★★★☆☆

アイルランドで名を馳せた一大窃盗団による
絵画強奪計画を描くお話。

キャラクターが良いね。
主人公はカリスマ的な窃盗集団の長でありながら
奥さんや子供と普通に生活を送る良きパパである。
もちろん仕事の事は了承済みながらも
このあまりに、一般的な家庭描写とのギャップが
可笑しくてたまらない。

90分程度の短い作品のため
そんな主人公が仕切る強盗計画の痛快さを追うだけで
スッキリと楽しめる綺麗な娯楽作。




『私は貝になりたい』 2007年
監:福澤克雄  主演:中居正広
★★★☆☆

戦争中に上司の命令に従って捕虜を虐殺した兵士が
戦後に罪に問われるお話。

不条理を描いた作品でありながら
実は人情物だね。
中盤以降、刑務所で知り合った仲間や
間接的な責任者である矢野中将との関係
何より看守のアメリカ人たちとの
生きた人間同士の触れ合いが
如何に心が温まるかって事だ。
現実はどうあれ、戦争は戦争であり
人間は人間であるという
作者の強い意思が見えてステキ。
ここまでのテーマを描く作品は良い。

中居正広はもっと映画に出れば良いのにと思う。
あの怪演が堪能できるのが数本ではもったいない。




『笑の大学』 2004年
監:星護  主演:役所広司、稲垣吾郎
★★★☆☆

時は昭和の15年。
言論への検閲が厳しさを増す日本において
生涯で一度も笑った事が無いという堅物検閲官と
無理難題を跳ね除け脚本を書き直し続ける喜劇作家とが繰り広げる
二人だけの密かな戦いのお話。

前半は完璧な喜劇だよね。
過剰なまでに堅苦しい検閲官のキャラクターと
どこか憎めない愛嬌のある脚本家。
この二人が繰り広げるハイテンポな掛け合いの妙は
全てにおいて芸術的。
半ばお約束として次の展開は読めつつも
具体的にはどう返してくるのかという
ドキドキ感とそのくだらなさに
終始、顔からはニヤツキが止まらない。

ただ、終盤のくどさはどうなんだろうか。
ドラマを描きたいのなら相応の仕込みは必要でしょう。
まるで前半戦と後半戦で
別の映画を見ているようなテンポの変わりようは、
自身がさっきまで馬鹿笑いしてた楽しさは
一体何だったんだろうかと過ぎた時間の価値まで下げてしまう。
後半も十分に成立はしているんだけど
あくまで笑いの中に感動があるというのではなく
笑いは笑い、感動は感動と、仕切りを入れられたような
押し付けがましさは勿体ない。

密室劇としての可笑しさは完璧ながら
人と人が触れ合い、絡み合う過程を描く映画としては
決して練られた部類には入らない一品。
一芸で突っ走る度胸が無い作品の限界だろうか。





『我等の生涯の最良の年』 1946年
監:ウィリアム・ワイラー  主演:フレデリック・マーチ、ダナ・アンドリュース 他
★★★★☆

戦争から故郷に帰ってきた3人の男達が
日常世界へと戻っていく物語。

何という戦後リアリティ。
1946年の映画であればそれは当たり前。
序盤のシーンで既に答えは出てる作品だよね。
3人が帰還時に乗り合わせた飛行機の中で
早くも「現実世界」というキーワードが飛び出している。
結局、その通りなわけだ。
戦地でいくら理想の故郷を夢見ても勝手だが
日常生活は日常生活で地味で辛い日々なのだよ。
相変わらずアメリカ映画のフットワークの軽さには驚く。
復員モラトリアムとでも言うのか。

三者三様の現実があるわけだが
どれも痛い程によくわかる。
アルは経済的には恵まれてるかもしれないが
事実上、帰還兵の夢を砕くような仕事だからね。
何ら戦争経験も無くこの時代に生きたわけでもないが
それでも理解できてしまうのがこの作品の凄い所。
とにかく丁寧な人物造形で、真摯に描いているのが素敵。
今後、彼らが幸せになれるかは知った事ではなくて
あくまでこの一年で一歩前に進むプロセスが楽しい映画だね。






『ワンス・アポン・ア・タイム イン・アメリカ (完全版)』 1984年
監:セルジオ・レオーネ  主演:ロバート・デ・ニーロ
★★★★☆

アメリカの貧民街から共にギャングの道を歩んだ
男達の友情を描いた一大叙事詩。

レオーネ+モリコーネ。
この黄金コンビがお送りする格調高き青春への憧憬作品。
あまりにも贅沢な一時が過ごせる3時間50分。

本当に馬鹿な男共ですよ。
でもその愚直な生き様にこそ
皆、憧れるんだろうね。
国家も、時代も、人生観も……
劇中とは一切の共通項もないはずだが
誰しもが何処か懐かしく物想いに耽られる。
若かりし日々と残酷な時の流れにおいて
共感できる部分を探せる不思議な一本。

何より全シーンが徹底的に拘り抜かれた
絵作りの美しさによる所が大きいだろうか。
そこに象徴的なシーンを選び
一々、哀愁誘うテーマ曲が加わる事で
尺を使う事など一切恐れない
レオーネ独自の「間」を操る演出が冴えに冴えてくる。
所詮はギャングと言わんばかりに
お話自体は決して綺麗な方向へと進まないのも良いね。
起きてしまった事、過ぎてしまった時間は
決して戻りはしないのだよ。

老年の主人公が過去を振り返る形式も相まり
終幕に味わえる哀愁はただただ極上の一言。





『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱』 1992年
監:ツイ・ハーク  主演:ジェット・リー
★★★☆☆

排外運動高まる清朝末期の中国を舞台に
武術の達人である主人公が悪と闘うお話。

敵はカルト宗教として登場する白蓮教と
彼らを利用した清朝役人という事になるのだが
無論、実在の姿とは違う物であろう。
ただこの19世紀末〜20世紀初頭における
混乱期の中国という舞台は本当に面白い。
入り乱れる列強勢力、傲慢で旧態依然の清朝
そして理想に燃える革命家たち、一旗上げる気の野心家
国際都市で感覚を磨かれたハイソサエティ
対して混乱と疲弊に満ちた一般の民衆達…
これら全てが同居する社会はある意味で活気に満ちている。

今作でも孫文の同士として登場する革命家が
カルト教団の信仰に凝り固まり暴れる民衆を見て
自身はこんな愚かな国を本当に救えるのかと
意思を揺らがせる姿など独特の味に満ちている。
カンフー映画でありながら
歴史物としても楽しめる舞台設定は贅沢。

もちろん、肝心のカンフー描写は見事の一言で
男臭さで魅了する華麗なブルー・スリーとも違い
アイディア満載の小気味良さで攻めたジャッキー・チェンとも違う
まるで中国雑技団かと思わせる
トリッキーな身体美を追求したジェット・リーの姿は
間違いなくカンフー新機軸の一つ。
これはもう、極限まで突き詰められた演舞だね。
辮髪姿に引き締まった顔立ちという
欧州的な二枚目とは程遠い位置にある
中国人キャラクターとしてのカッコ良さは
一度見たら忘れらない事間違い無し。

粗い点も数あれど
ジェット・リーのパワーが全てを飲み込んでくれる
傑作カンフー映画かな。





『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』 2019年
監:クエンティン・タランティーノ  主演:レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピット
★★★☆☆

1969年のハリウッド界を舞台に
落ちぶれたスターと相棒のスタントマンが生きていくお話。

当時の映画ドラマ制作現場のハリウッドを取り巻く環境が
虚実入り乱れて淡々と登場し続ける不思議な映画だね。
ヒッピー文化が行き過ぎたカルト集団が起こす
残虐な事件の予兆を裏で延々と臭わせながらも
映画自体にはストーリーらしい物は全く見られず
登場人物同士すらほぼほぼ絡みもない。
単発での出会いや場面は作られているが
そこにも特別なドラマがあるわけじゃないんだ。

ロマン・ポランスキーとシャロン・テートは言うに及ばず
スティーブ・マックウィンやブルー・スリーまで
特に意味もなくスターが登場するサービス満点っぷり。
1960年代のヒッピー的な空気感を堪能しつつ
ハリウッドの内幕を描く作品でもあるわけだ。
当時はアメリカも日本も映画よりもTVの時代で
テレビドラマが台頭して、元スターの出稼ぎイタリア西部劇が出てきて…
もう最初から最後までネタに次ぐネタがてんこ盛り。
映画の表題からしてワンスアポン・タイム・イン…ですからね。

とにもかくにも、時代の空気を感じる映画。
古き良きは過ぎ去っているが、それでもまだまだ良い時代の
セレブで無茶苦茶なハリウッド世界を覗きながら
架空の男二人のリアルな人生模様が絡む少々の苦味を
淡々と眺める作品だろうか。
なお、最後の展開はご愛敬で
やはりタランティーノというお遊び心が抜群。

多少なりとも古い映画に興味がなければ
意味がわかりにくいだろうが
逆に少しでも思い出があれば心地良く眺めていられる
ピーキーな一品だろう。





『ワンダーウーマン』 2017年
監:パティ・ジェンキンス  主演:ガル・ガドット
★★★☆☆

DCコミックスのヒーロー映画。
前作にあたる『バットマンvsスーパーマン』で登場した
アマゾネスの女王ワンダーウーマンが
100年前の戦争体験を思い出すお話。

本編は基本的に昔話のみで構成され
最後に現代の物語へと繋がるという構造は
MCUにおける『キャプテン・アメリカ』と全く一緒。
しかし、どこか画面が重苦しい雰囲気に捉われているのは
この時代のDC映画ならではか。
若干、靄がかったとも言える重厚な質感の映像の中
舞台はなんと第一次世界大戦なのだから
それだけで一風変わった拘りがあるだろう。

ただし、基本はシンプルだね。
世間知らずのアマゾネスの王女様が
イケてる男に惚れながら人間の世の中を学び
オシャレなファッションに身を包みつつ
故郷に伝わる伝説を信じ
宿敵を倒すためにイギリス軍として戦争に加担する
エンタメアクション映画だよ。

それと同時に
悪神一人を殺せば戦争は終わると無邪気に信じる少女が
一目ぼれした初恋の男に寄り添いながら
最終的に人間の持つ愚かさと愛情を同時に学ぶことで
一人の独立した女性として成長する物語でもあるんだ。
これはもう、とっても夢がありつつも
現代社会に通ずるきっちり苦いお話になっているのが見事。

人間の友は年を取り死んでいく中
彼女自身はいつまでも若いまま生き続ける悲しさもあるさ。
100年前の思い出を抱えながら
再び戦うべきに日に備えて隠遁生活を送っていたわけだね。

とても丁寧で贅沢な作り方にはなっているが
基本はエンタメアクションに乗せながら
新しいキャラクターを丁寧に掘り下げるタイプの映画であり
あくまで後にDCヒーローが大集結する
『ジャスティスリーグ』のための一本だろう。




『ワンダフルライフ』 1998年
監:是枝裕和  主演:ARATA 
★★★★☆

死者の魂を送り出すため
死んだ人間一人一人に自身の人生で最も印象に残った瞬間を
思い出してもらうという不思議なお仕事のお話。

冒頭、見るからに古臭い建物の中で
爺さん婆さんが集まって世間話をしたり
愚痴る職員たちが居たりと
何か怪しい仕事の映画かなと思って見ていたら
まさかのファンタジー全開な展開に
まず度肝を抜かれる一品。

そのくせ、繰り広げられる会話や世界観は徹底的なリアル志向。
映画である事を忘れるような
何所でも居る人間の、何所にでもある語りの連続。
演技もクソもないあまりに日常な雰囲気に
またまた驚かされる。
映画とは自由なもんだなーと、一人で感心させられる怪作。
冒頭に最大級の大嘘だけを付いて
後は徹底的にリアルで塗り固める。
こんな手法も面白いもんです。

お話も複数の人間に対して
ある種、あなたの人生はどうだったのかと問い
延々と語らせるだけに終始した代物。
本当にそれだけの映画なのだが
これが退屈にならないのだから
人間の人生観ってのは不思議な魅力があるもだよね。
シンプルさに拘った繰り返しの演出も光る。

そして、さらには映画界の楽屋オチ感の強くなる
思い出の「映像製作」パートへの突入と
もうやりたい放題だなと呆れつつも
気付けば立場を自身に置き換えてしまう。
僕の最も古い記憶は何だろう?
死後、永遠にその思い出の中で生き続けるとすれば
自分が選択する人生の時期とはいつになるだろうかと
ふと考えてしまっているわけだよ。
やられたな〜と素直に感じ入る傑作。

徹底して地味な120分でありながら
視聴後に人生少しは大事に生きようかなと思わせてくれる
ややイイ映画だろかね。




『ワン・フロム・ザ・ハート』 1982年
監:フランシス・フォード・コッポラ  主演:フレデリック・フォレスト
★★★☆☆

華やかなラスベガスを舞台に
付き合って5年が経った倦怠期の浮気カップルの姿を
音楽と映像に乗せてを描くお話。

非常に落ち着いた空気感の中
揺れ動く二人の心境や状況を
その都度、バックにかかる楽曲が説明してくれる。

何を置いても、映像演出が光る作品だね。
特にこれ程に陰影やら光源やらに拘って
作り物として演出されきった映画もそうはない。
ワンカットに拘ったシーンの画面変化の多彩さは
もはや滑稽と紙一重とも言える繋ぎ方なのだが
とにかく理屈抜きに美しい。
普段から映画を理屈込みで楽しんでいる人なら
鑑賞中に「すげぇな」と演出だけの感想を数十回呟くことになるだろう。
全編通して流れる大人の音楽や展開に合わさり
それが十分にオシャレに見えてくるから不思議。

本編の最後に「全てスタジオで撮影しました」との
テロップが入るくらいなので
やはりココは監督としても見せ所としての拘りなのだろう。
終わり方一つとっても実に小粋。

ストーリーは男と女のだらしない恋愛部分を
敢えてエッセンスだけを感じる程度に収めているのかな。
100分弱の短い尺が成立させた文句無しの一芸作品。







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