『雷桜』 2010年
監:廣木隆一 主演:岡田将生、蒼井優
★★☆☆☆
病気療養のために田舎村を訪れたお殿様が
人知れずに山で暮らす不思議な少女と出会うお話。
分明から隔絶されて育った謎少女が主人公。
そんな彼女との恋愛話となれば
相手は大人な紳士だろうというのは
あくまで往年のハリウッド流。
この作品では将軍家実子、御三卿の家格を持つ若き馬鹿殿様。
世間知らずな男女二人が醸し出す空気は当然に甘ったるい。
ただ、これを幼すぎると一蹴するよりは
このひたむきさと正直さを微笑むべきなのだろう。
山娘と将軍家というあまりにも高すぎるハードルを前にすれば
もはや剥き出しの感情をもってしか
彼らの心を満たす方法などないだろう。
ただし、その周囲の連中まで浅くてはいけないよね。
社会であり、制度であり、身分であり、諸々の現実であり……
この対比なくしては悲恋の物語は成立しないでしょう。
彼らの命を狙いに来る意味不明な敵勢力も
謎の山娘を育てあげた父親代わりの男も
命を賭して殿様を諌める家臣やお目付け役の存在も
もちろん将軍家の縁者であるという重すぎる設定も
どれもとって付けたような扱いの軽さ。
もう少し真面目なドラマを用意できなかったものか。
おかげでせっかく用意された淡き恋愛模様すら
引っ張られ安っぽく映ってしまう悪循環はもったいない。
完全なる様式美としてファンタジー世界かのような
山間の美しさは素晴らしいんだけどね。
あくまで現実から隔絶された二人だけの
惚気放題な触れ合いを楽しむ映画かな。
『ライフ・イズ・ビューティフル』 1997年
監:ロベルト・ベニーニ 主演:ロベルト・ベニーニ
★★★☆☆
第二次大戦中のイタリアを舞台に
ユダヤ人主人公が見せる家族愛のお話。
イタリア人と聞いて誰もが想像する
ナンパなお調子色男が主人公。
物語は彼の粋過ぎる恋愛模様を中心に進み
前半戦はラブロマンス映画かと錯覚する程の仕上がり。
だが時代はそれを許さないわけだね。
これは「イイ格好しぃ」の意地の物語だろう。
全く先が見えない絶望の収容所生活の中でも
愛する幼き息子を前にして
父親として何処まで嘘を付けるか
何処まで虚勢を張っていられるのか。
「これはただのゲームだと」言い聞かせ
自身の命すら見通しの立たない中
その昔、奥さんを口説いた時に見せた明るさを
最後の最後まで貫き通す。
カッコツケ人間ならここまでやってみろと言う
愛に溢れた生き様への浪漫だよ。
『ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日』 2012年
監:アン・リー 主演:スラージ・シャルマ
★★★★☆
インドからアメリカへと向かう貨物船の難破により
少年と一匹のトラが共に小船で漂流するお話。
圧巻の映像作品だね。
画の力でここまでの感動を呼べるとは
実に映画冥利に尽きる一品。
海上を漂流する上で少年が出会う
自然の掟、生命の神秘、世界の不思議の数々
共棲するトラはもちろん、目の前に現れる鯨一つ、魚一つ………
その当たり前の営みがどれもあらためて神々しく美しい。
それも、自然の情景をそのまま切り取った作風ではなく
むしろ凝ったタイプのアニメーション作品のような
悪く言えば「作り物」感が溢れ出る表現が取られているのだから凄い。
言わば完璧なるエンターテイメント映像作品でありつつ
その上で生命の息吹と自然への敬意が
自然と沸き起こるマジックのような手法は見事の一言。
現実とは思えない映像である事自体を重要な要素として使いきる
テクニカルな悪ふざけ感も心地よく
間違いなくCG世界の扉を一つ開けた作品だろう。
物語は映像とストーリーが密接に絡み合う
とっても哲学的なお話。
冒頭からやたらと少年が神様の話をするのも
過去の思い出を振り返る自伝形式の構成なのも
全ては神秘性を高める事で、自慢の映像力で観客を唸らせるため。
とにもかくにも人知を超えた何かは伝わる映画だね。
『ライムライト』 1952年
監:チャールズ・チャップリン 主演:チャールズ・チャップリン
★★★☆☆
かつて名声を欲しいままにした名喜劇役者が
自殺未遂を犯した若きバレリーナと出会い
互いの人生観を補完しあっていくお話。
落ちぶれた老役者という役どころが素敵だね。
チャップリン自身の意地の一作なのかな。
誰よりも人生経験豊富な老人が
死にたがりの若き彼女に対してかける言葉の数々は
どれもが秀逸で心に響く物ばかり。
しかし、そんなパートナーが立ち直り感謝を抱き
さらには成功を獲得していくさなかで
彼自身は時代に取り残された者としての悲哀を
強めていくわけですよ。
決して取り繕った言葉というわけではないのだが
彼女への説法を振り返れば、自身との矛盾がたまらない。
この切なさ全開の雰囲気は至高の職人芸でしょう。
間違いなくこの作品は人間賛歌。
冒頭である通り
古きは滅んで新しきを迎えるのが
あくまで世の常なわけですが
それを構成しているのは生きた人間だからね。
一人一人の姿を直に見るならば
そんな理屈は納得を得る言葉にはならないだろう
そこをしんみりと、しかし絶望はせずに見守れる良作。
喜劇やバレイの舞台シーンが長すぎるのは
ちょっと困ってしまったかな。
良いとか悪いではなく
とにかく見方がわからない者からすれば
「困る」が正解だろう。
『ラブ・アクチュアリー』 2003年
監:リチャード・カーティス 主演:ヒュー・グラント、リーアム・ニーソン、他
★★★☆☆
イギリスを舞台に
様々な愛が成就する姿を描く群像劇。
求められた能天気。
老若男女を問わず、あらゆるカップルの形を映しながらも
ただ一つ共通している点は
最後は愛を確かめ合う恋愛成就の姿である事。
この徹底した拘りが心地良い。
ご都合主義とも言える軽い軽い展開の連続は
本格的な恋愛映画や現実の酸いも甘いをも描く作品ならば
当然、物足りなく映るだろう。
しかしこれは嘘ではない。
世の中、悪い部分もあればもちろん良い部分もあるのだから
決して嘘を描いた話ではないのだ。
あくまで焦点を何処に当てるかでしかなく
敢えて人間の楽観的な面を描く事に拘った
優しさに満ちた作品なんだよね。
軽くて何が悪い。
視聴後、僅かでも良い気分になれるなら
こんなに幸せな事はないだろう。
職人が仕上げた極上に薄っぺらい恋愛映画。
『ラジオの時間』 1997年
監:三谷幸喜 主演:唐沢寿明 他
★★★☆☆
新人脚本が初のラジオドラマ化で体験する
生放送をめぐるドタバタ物語。
三谷幸喜らしい屋内会話劇。
「舞台で済む」と言われればそれまでな
原作舞台のあるこのあたりまでの作品の方が
その分、洗練されていて楽しめるもんだね。
『12人の優しい日本人』は脚本演出の一人勝ちだったが
今作はより役者の妙が活きている。
よくもココまでの個性派が集まったもんだと思う。
脚本がドンドン書き換えられるという体験談の
パロディがパロディであり得るのは
そうなるのも仕方が無いと思えるキャラクターの存在感あってこそ。
ただし、人情タイムのシフトが大きくテンポは悪い作品だろうか。
過去作品のようなひたすらに笑いっぱなし
唸りっぱなしとはいかないのがやや残念。
『羅生門』 1950年
監:黒澤明 主演:三船敏郎、森雅之、京マチ子、志村喬
★★★★☆
女を襲う強盗、襲われた女、守れなかった夫。
一つの強姦事件を舞台に三者が後に紡ぎ出すことになる
各々にとっての真実の物語。
真実は藪の中。
本人がそうだと言うならば
既に過ぎ去ったことは二度とは蘇らないのだから
ある意味で全てが真実じゃないのかな。
自身のちっぽけな自尊心を守るため
より良くより納得のいくように、
もちろん都合の悪い所はカットして……
そうやって認識が伝わっていくのが人間の業でしょう。
語り部である杣売りとて
劇中だけで2度も大嘘を付いているわけだからね。
現実と照らし合わせての否定など誰もできないよ。
しかし、偽善を拒絶して開き直る
下人の言動が全てかと言えば決して違う。
そんな人間の本質を理解して
刷り合せを行えるまでの境地に達すればこそ
正義は一周して元に戻ってくるとも思えるね。
散々に人間の愚かな自尊心を晒しておきながら
その自尊心から救われる命もあるという希望を忘れないラスト。
完璧ですよ、完璧。
映像としては、同じシーンを4回も繰り返す構成から
やや単調かなと思いながらも
気付けば不思議と見入っているダイナミックさに溢れている。
まるで湿度までが伝わってくるような
日本ならではの山間の描写が美麗な一品。
羅生門における大雨描写、現実に直面してる三人に対して
その神秘的な空気感自体が虚構の象徴なんだろうけどね。
『羅生門』ではない別原作と
表題作の雰囲気を綺麗に融合させた作品。
『ラスト・アクション・ヒーロー』 1993年
監:ジョン・マクティアナン 主演:アーノルド・シュワルツェネッガー
★★☆☆☆
憧れのヒーロー映画の世界へと入り込んでしまった少年と
その劇中スターである主人公との
現実と映画の二つの世界をまたにかけた活劇話。
これももはやお約束になっている
シュワルツネッガーである事が大前提のキャラクター。
現実世界に存在するとは、全くもって想像すら出来ない程の
無敵のヒーロー像が絶対条件。
「そんなの映画の世界だけ」パロディが綺麗に成立する。
自分の家にでも置き換えればシュワちゃんが近くに居る生活など
誰が真面目に想像できようか。
シュワちゃんがスクリーンから現実に飛び出してくるという事が
既にギャグなんだよね。
とっても夢のあるお話で、少年の成長物語でもあるんだけど
そこで起こる出来事がいまいち薄味なのが残念かな。
もう少し深く突っ込める題材だと思うんだけどね。
ヒーローはヒーロー世界の中だからこそ、ヒーローなのよ。
あくまで無敵のアクションスターの持つ
少しヌケタ世間知らずな面の愛らしさを楽しむ映画。
『ラストエンペラー』 1987年
監:ベルナルド・ベルトルッチ 主演:ジョン・ローン
★★★★★
3歳で皇帝に即位し8歳で辛亥革命を迎える事となる
清朝最後の皇帝、愛新覚羅溥儀の生涯のお話。
まず衝撃の映像と言えようか。
古今東西、形式ばった儀礼で凝り固まる例は数あれど
ここまで大仰な装飾の多くなる文化となると、
やはり中国、特に満州族による清朝は世界でもトップではないだろうか。
もちろん多少の知識としては持っているが
それを映像で再現されたインパクトは絶大。
スケールが遥か想像の外。
壮大さと滑稽さの入り混じった独特の衝撃が凄まじい。
例えば清朝と言えば「三跪九叩頭の礼」は有名だが
これは屈辱的なイメージが強かったが
映像で見ると案外に自然な儀礼に見えるから不思議な物。
そして何より激動の中国だね。
もっと時代の中心となるような人物
孫文であり、袁世凱であり、蒋介石であり、毛沢東であり
いくらでもこの時代を描く上で劇的な人間は居るのだけど
敢えて溥儀の一人称に拘り続ける事で、
より冷静にかつ淡々と変わり行く中国を眺める事ができる。
さも自身がその場に居るかのような贅沢な錯覚に浸れるのは
何者でもない溥儀の視点ならでは。
この主人公は相当にアクの強い人物だよね。
野心家で、事なかれ主義で、狭量で。
誰が悪いか。
やはりこれは王朝だろう。
皇帝として生きられない運命にある人間を
皇帝として育ててしまった。
元を正せば全てはそこから生まれる悲劇なんだと思う。
彼の人生観を一体誰が責められようか。
皇帝の存続を利用する事で、自分達の立場や仕事
財産を守ろうとした腐れ清朝の役人や宦官たち。
そして彼の血筋と生い立ちを利用して
満州国を訴えようとした日本軍も同じだよね。
劇中でもオーバーラップしていたが
常に利用される人生さ。
もしくは、中国という国の極端さかな。
常に極限まで端に寄ってないと満足できないかのような
病的な熱狂度の繰り返しが弱者、敗者を追い詰めるのだと思う。
立場が変わればまたその繰り返し。
そのあたりの事にまで自然と感想が及ぶ大傑作。
近代中国の歴史に自信が無ければ
是非、見る前に高校レベルの予習をお勧めしたい。
『ラストサムライ』 2003年
監:エドワード・ズウィック 主演:トム・クルーズ、渡辺謙
★★★☆☆
軍隊近代化のため日本に招かれたアメリカ人顧問と
士族反乱を指揮する日本人との交流のお話。
西南戦争あたりのイメージで良いと思う。
もちろん、西郷さん程の大物ではないが
元老院に顔を出すレベルの架空人物が渡辺謙。
まぁ、いいんじゃないの?
こういう感想しか出ない映画だね。
元々、この手のファンタジーは時代劇の真骨頂。
敢えてメチャクチャな設定や背景こそを楽しむ作品というのは
世界中に存在する立派なジャンル。
日本の時代劇風の映像でありながら
アクションシーン他、全てが確実にハリウッド演出。
この二つのギャップだけでひたすらに面白い。
日本人が見ると戦国時代と江戸時代の混合に戸惑うかな。
意外と白人に和服が似合う。
こういうちょっとした文化的な発見を楽しむ作品だろう。
テーマは描きたい事は理解できるけど
お話としての力はこれでは少々弱い。
最後の合戦シーンは爆笑。
デキの悪いブレイブハート、もしくはスパルタカスあたりか。
あれだけの大規模撮影を敢行してのこのチープさは逆に見事。
『ラストスタンド』 2013年
監:キム・ジウン 主演:アーノルド・シュワルツェネッガー
★★★☆☆
昔気質の田舎保安官が
凶悪犯グループを迎え撃つお話。
アメリカ片田舎の頑固気質が楽しめる一本だね。
僅か30分目を瞑れば済むだけの事が
どうしても許せないシュワルツネッガーの短気さよ。
彼が仲間と共に無謀とも言える戦線に身を投じる
この構成だけで素敵に過ぎる。
筋立ては至ってシンプルで
悪党は悪党、主人公は主人公とはっきり立場を分け
思う存分に往年のアクション映画の復活を味わえる仕組みになっている。
シュワちゃんが10年ぶりに主演復帰した作品として
この作りは満点だろう。
過不足の無いスマートな映像面も隙無しで
本来、キム・ジウン監督はもう少し凝れるはずだが
敢えて過剰な演出は控え
あくまで主役はシュワルツネッガー自身と
往年のアクション映画である事を弁える見事な職人っぷりを発揮している。
100分スッキリ間違いなしの佳作。
『ラビリンス/魔王の迷宮』 1986年
監:ジム・ヘンソン 主演:ジェニファー・コネリー、デヴィッド・ボウイ
★★★★☆
親と距離感が掴めない思春期真盛りの少女が
感情のままに口に出してしまった言葉を取り返すため
ゴブリン渦巻くファンタジー世界を旅するお話
CG映画時代に突入する以前の1986年作品として
限界まで極まった人形劇技術を楽しむ一品で
全編が言ってしまえば、ぬいぐるいみオンリーの作品なのだが
大作としてのスケール感が見事に味わえる。
どこか懐かしいテレビ番組で見た記憶のある雰囲気を
見事に一本の映画として成立させた紛う事なきファンタジー大作だね。
内容は言ってしまえば、オズの魔法使いそのものなのだが
独特のモンスター造形や、遊園地よろしくの巨大迷宮から始まり
楽しげなギミックや仕掛けの連続が目を飽きさせない。
そこにデビッドボゥイが演じる魔王様のインパクトと
要所要所で挿入される本人歌唱によるアンバランスなロックミュージックが
何とも不思議な世界観を作ってくれる。
セットの豪華さや、製作の手間隙、作品自体の大規模さを
暗黙の了解として味わえる時代の職人芸に満ちた空気が何とも心地よい。
繰り返すが人形による表情豊かで完璧仕草な演技が見所の一言。
『Love Letter』 1995年
監:岩井俊二 主演:中山美穂
★★★★☆
亡き恋人宛の届かないはずの手紙から始まる
不思議な文通の物語。
ただただ、あらゆる情景が儚くて綺麗な映画だね。
実在する一つの街をこうも繊細な姿で描ける物か。
今作における小樽とは
主人公にとっては恋人の過去が描かれる
非日常、非現実の世界なんだよね。
過去の思い出は美しい物。
そのオーバーラップを考えれば
映像の幻想的な完成度も納得か。
真面目に考えれば、主人公も文通相手も
実際にはとんでもない天然プッツン女だろう。
僅か2回目の文通の中に
得たいの知れない粉薬など同封されれば
通常の人間であればその時点でサヨナラだ。
しかし、ロマン溢れる今作においては
それは気にも止まらない。
見ず知らずの人間同士による文通
故人である恋人を媒介としての友情
誰にとっても憧れと言える出会いの先に
新たな人生を一歩踏み出せるまでの過程は
素直に未来を感じさせてくれる。
作り物である事が逆に嬉しくなってくる
そんな完璧な映像美が楽しめる一品。
『ラ・ラ・ランド』 2016年
監:デミアン・チャゼル 主演:エマ・ストーン、ライアン・ゴズリング
★★★★☆
ハリウッドで成功を夢見る男女が繰り広げる
ハイクオリティ恋愛ミュージカル。
数多くの実在映画やアーティストの名前が連呼され
舞台も舞台だけに、内幕ネタに見えなくもないのだが
映し出されるハリウッド情景のあまりの異世界っぷりと
出来上がりすぎ、美しすぎなミュージカル演出の数々が
それ故にどこか胡散臭い雰囲気を漂せてくる食わせ物。
この不思議な空気の中で
一体どこまで本気で見て良いかを試されている気分になる一品。
しかし、この世界観こそが
物語の筋立てとリンクし、見事に回収されるのだから
完成度の高さに驚かされる。
誰もが記憶の中に大事に持ち続けている
本当に輝いていた人生のひと時という物は
こうまで美しくなり得るという事だろうね。
素の状態でも十分なエンターテイメントに浸れる中で
ただの甘いドラマで終わらない欧州映画チックな哀愁にも満ちた
実に満足度の高い一本。
テーマ曲が頭の中にしっかり残ったミュージカル映画はは久しぶり。
『ラルジャン』 1983年
監:ロベール・ブレッソン 主演:クリスチャン・パティ
★★★☆☆
ある偶然から、偽札を掴まされてしまった青年が
周囲の悪意に捕まり人生を狂わせてしまうお話。
何だこの映画は。
単調で退屈で、ストーリー性も薄い。
でも、不思議と場面場面が心から離れないんだな。
音だろか。
無駄な煩さが全くない中で繰り広げられる
淡々とした会話や効果音、そして一部クラシック曲。
何か全てが引っかかるよね。
抽象的な映像の連続もどこか不快。
登場人物とて彼らが気持ちよく談笑している姿など
一体、誰が想像でもるのだろうか。
各々の人生の中では無いわけがないんだ。
それが皆が皆で世界中の不幸を背負っているかのような
どん暗い抑揚の薄さ。
こんな世界観、映像演出を繰り返した挙句
青年を取り巻いたのは人々の持つ僅かな悪意の帰結。
軽い気持ちの犯罪も巡り巡れば誰かを不幸にするわけだが
別にこの主人公の心は心で、同情にも値はしない。
決定的な事件こそ、愛する子と妻との別れなのだが
バックボーンとしたあったのは社会への舐めた不満だろう。
何がどこで壊れたのか、それとも初めから壊れていたのか。
そのあたりが曖昧なままだからこそ
このオンリーワンな印象が強く心に刻むのだろうが
あまりにも周囲の人物像が記号にすぎて
彼の本当の人間との触れ合いが見たかったかな。
まさか人生で全く無かったとは言わないだろうよ。
『乱』 1985年
監:黒澤明 主演:仲代達矢
★★★☆☆
謀略、非道の限りを尽くし、成り上がってきた戦国武将が
70歳を迎えて三人の息子達に家督を譲る事を決心する。
しかし自身が思い描いた老後からは程遠い
現実の恐ろしさを見ていくお話。
完璧な映画だよ。
絶景に次ぐ絶景、膨大な人海戦術、一大セットの数々……
まず、圧倒的なスケールでお送りする大作としての満足感。
そして要所、要所で画を締めるハッタリの見事さね。
太陽の光を使った絵が本当に綺麗なんだ。
決して甘ったるくない硬派方面からの芸術映像はそれだけで新鮮。
音楽は重厚な和の極地。
そこに仲代達矢による渾身の熱演と
原作『リア王』に込められた愚かさと悲しさ、
人間の業としてのテーマ性が載せられるのだから
どこに文句など付けられようか。
女→男となった兄弟三人の言動が実に男臭いのもよし。
ちゃんと時代劇をやっております。
個性溢れるキャラクターは
誰を追っても間違いなく納得できる人間味でしょう。
確かに面白い傑作。
ただ、かつての黒沢作品を見た時のような
身震いする程の斬新さという点では
今ひとつ物足りないのも事実なんだよね。
完璧な完成度を誇りながらも
そこから、さらに一歩欲しくなるのは贅沢なのかな。
そんな一本。
『乱気流/タービュランス』 1997年
監:ロバート・バトラー 主演:ローレン・ホリー
★★☆☆☆
殺人犯と刑事が乗り込んだ旅客機においておこる
航空パニック映画。
墜落を防ぐフライトアテンダントの黒人女性のお話。
巻き込まれ型の典型ですね。
お約束の素人とは思えない大活躍。
とにかく主人公の勢いに圧倒されてしまう。
他は特に目新しい面白さは無し。
適度な恐怖感、適度な緊張感、適度な人情。
とっても丁寧な作りで、そのつもりで見て、
期待を大きく下回る事はないB級良作。
色々と安さは目立つけどね。
『ランデヴー』 1976年
監:クロード・ルルーシュ 主演:クロード・ルルーシュ
★★★★☆
スポーツカーがパリ市街をオンボード視点で爆走するだけを描いた
僅か9分間の短編映画。
映画世界で街中疾走シリーズとして有名な作品は
『ブリッツ』や『フレンチコネコネクション』などがあるが
いっそ、車載映像だけを完全なワンカットで撮れば
それだけで面白いという開き直りが光るアイディア映画。
誰もが何らかの映像で目にしたことがあるはずの
パリ市街がオンボードで延々と映る姿は新鮮で
その舞台やルート選定の妙には
確かに映画作品としての拘りがあるだろう。
劇中で描かれる映像は本当にパリの日常に見える。
しかし、どうみても無許可無統制の下に
ゲリラ撮影しているようにしか見えないのだが
この作品は本当に大丈夫なのだろうか。
CG時代に突入してからでは決して成立し得ない
圧倒的な緊迫感と怖さが良いね。
怖いながらも背徳的なスピードと車への憧憬が詰まっている一品。
運転者は監督本人らしいというので驚き。
一度しか成立し得ないワンカット映像ながらも
最後の最後にそのまま失敗できない小芝居が入る点も
映像の貴重さを印象付けるアクセントで良し。
『ランボー』 1982年
監:テッド・コッチェフ 主演:シルヴェスター・スタローン
★★★☆☆
心に傷を負ったヴェトナム帰還兵が
自身を迫害した社会に対して暴れまくるお話。
ベトナム反戦運動は良いとしても
では実際に血を流して戦ってきた者達は
一体、帰国後にどうすれば良いのか。
間違った戦争ならば彼らの扱いはどうなるのか。
主人公は田舎街で流れ者としての不当な扱いに
言葉通りに"キレ"てしまう。
最後、何の映画的なカタルシスもなく
主人公ランボーが、元上官を前にして
戦争時代のトラウマと泣き言を叫び倒して終了する様は圧巻だろう。
実にテーマ性の高い作品なのだが
どうにも、アクションシーンにはやり過ぎ感が溢れ
隠し切れないお馬鹿映画の側面が漏れてしまっている。
素直に笑う事もできるのだが、ちぐはぐな感覚は否めず
果たしてどちらをメインに描きたかったのか戸惑ってしまう。
やや中途半端な完成度の一作目。
彼の圧倒的な狂気は素晴らしい。
『ランボー/怒りの脱出』 1985年
監:ジョージ・P・コスマトス 主演:シルヴェスター・スタローン
★★★☆☆
前作における社会的な罪の代償として
危険な戦後ベトナムと潜入するお話。
一体、どうしてしまったのか。
前作から兆候は漏れていたものの
何故こうなるか。
二作目にして圧倒的なお馬鹿アクション映画に様変わり。
ベトナムから帰還し損ねた米兵を見捨てるような
「いい加減な戦後処理は許さん!」というテーマは強くあるものの
ランボー一人で全ての作戦が完結できる
あまりのパーフェクトソルジャー
暴走っぷりには思わず苦笑い。
ただし、開き直った馬鹿映画としてみれば
彼の脳まで筋肉と言える言動の数々は素直に面白い。
後々まで語り草になるような印象的なシーンが満載。
むしろ映画としては成功した舵取りかもしれないね。
前作から一貫して
「ランボーは凄いぞ」としか言わない
大佐の無能キャラクターはもはやネタの扱いか。
『ランボー3/怒りのアフガン』 1988年
監:ピーター・マクドナルド 主演:シルヴェスター・スタローン
★★☆☆☆
隠遁生活を送っていた主人公ランボーが
ソ連侵攻で揺れる激動のアフガニスタンへ赴くお話。
完全なる馬鹿映画。
もはやベトナムすら関係無し。
彼が抱える悲哀の理解者であった大佐すら
「おまえは、戦う事が生き甲斐だ!」と説得し出す有様で
初期キャラクターも何処へやら。
ただただ、鬼畜なソ連兵を向こうに回し
ランボーの八面六臂の大暴れを繰り返す
ミリタリーなド派手映像作品と化しており
テーマ性を感じる部分は皆無。
アフガニスタンが舞台になっているのも
たまたま、時代情勢に合っていただけで、
要は強いアメリカを噛み締められれば
何処でも良かった事は一目瞭然。
「全てのアフガン戦士に捧ぐ」的なテロップも
21世紀初頭の時代を知っている立場から観れば
何とも皮肉に溢れて滑稽な代物だね。
前作はまだ楽しめる余地は残っていたが
あまりに軽量化をはかりすぎた三作目。
『リアル・スティール』 2011年
監:ショーン・レヴィ 主演:ヒュー・ジャックマン
★★★★☆
最悪の関係から始まった
父親と息子が見せるハートフルな和解物語。
趣味まっしぐらで家族を捨てた駄目親父と
父親を軽蔑している11歳の息子。
上手くいくはずもない短い共同生活の中
気付けば父親が見せる荒々しい男の世界の魅力に
少年が引き込まれている展開は、
かつてシルベスタ・スタローンが演じた
『オーバー・ザ・トップ』を彷彿とさせる。
しかし今作はもっともっと欲張りで贅沢な作品だね。
舞台は近未来のロボットボクシング。
破天荒な旅ガラス生活や
父親との対等なパートナー関係だけに留まらず
メカニックなロボット世界から
賞金ギャンブル、ボクシングの熱気、TVゲーム
果ては自らがスター街道まっしぐらにと
とにかく男の子が抱くであろう憧れが
これでもかと全て詰まっているやりすぎ作品。
決して難しい事は言わずに
完成されたエンターテイメント街道を
好テンポで駆け抜ける爽快傑作だね。
『リーサル・ウェポン』 1987年
監:リチャード・ドナー 主演:メル・ギブソン、ダニー・グローヴァー
★★★☆☆
巨大な麻薬組織に立ち向かう
刑事二人の活躍を描くアクション映画。
50歳を過ぎた家族持ちの黒人刑事と
自殺願望を持つ危うい武闘派若手刑事。
彼らが織り成す良質バディ物だね。
荒唐無稽、やり過ぎアクションの体を取りつつも
本質は、如何にして二人が信頼を築くかを楽しむ一本。
ダニー・グローヴァーの溢れ出る人の良さと
メル・ギブソンの暴走っぷりが全て。
ファッションや所作も、時代らしく洗練されており
頭を空にしながらもハイセンスだけで楽しめる
実に清く正しい80年代アクション映画。
『リーサル・ウェポン2/炎の約束』 1989年
監:リチャード・ドナー 主演:メル・ギブソン、ダニー・グローヴァー
★★★☆☆
前作コンビが活躍するポリスアクション第二弾。
一作目のノリをそのままに、
手堅く楽しめるお馬鹿アクションへ。
ただし、メル・ギブソン演じる主人公からは
前作のような危うい儚さは消え去っており
あくまでちょっとイカれたイカした兄ちゃん程度へ。
真面目なドラマからは一歩引いて
やや、やりすぎ系のお笑いノリにシフトするのは
この手の続編のお約束か。
警察内部の仲間達も前作以上に悪乗り全開。
魅力的な敵役が居るわけでもなく
展開自体ももちろん粗いので
あくまで凹凸コンビのキャラクターを楽しむ一品。
『リーサル・ウェポン3』 1992年
監:リチャード・ドナー 主演:メル・ギブソン、ダニー・グローヴァー
★★★☆☆
警察内部の銃器横流し事件を追う
刑事バディ物、第三段。
すっかり、テンプレート通りのお気楽アクション映画になってしまったが
それでも時折、メル・ギブソン演じる主人公が醸し出す狂気は
まだまだ良いアクセントになっている。
ヒロインと傷を自慢しあうシーンなど、
通常のキャラクターではちょっと考えられない求愛だよね。
彼の寂しくて寂しくて溜まらない人生観と
それによる相方一家への依存度の高さが
画面から見え隠れしている限りは
どれだけお馬鹿なだけの作品になろうとも
この凹凸コンビは楽しいだろう。
一定の安心感の元に見られる良作。
『リヴァイアサン』 2009年
監:パトリシア・ハリントン 主演:キャスリーン・ラグー 他
★☆☆☆☆
まず、題名から海洋パニック映画と思ったのが間違い。
せめて大海原が舞台ならば楽しめるだろうと思ったら
ごくごく小さな湖畔に住み着いた
4M級の魚のような生物に襲われるお話。
ただ、B級モンスターパニックに必要な要素は
全てそつなく導入されているので悪くはない。
登場人物にありありと見える死相の連続は
このジャンルに求める欲求を綺麗に満たしてくれる。
CGの安っぽさは様式美として
ある意味とっても丁寧なお仕事で
無茶な点は少ない作品だろか。
その分、加点もない一本。
『リオ・ブラボー』 1959年
監:ハワード・ホークス 主演:ジョン・ウェイン
★★★☆☆
有力者の身内を逮捕した事により
その身を狙われる事となった正義の保安官の物語。
街中、誰一人として協力者が居ない中
モウロク爺さんとアル中の助手一人を抱えて
耐えに耐える姿が実にカッコよく映る映画だね。
道中は助手が人生を持ち直す人情物語もあり
主人公がヒロインと織り成すロマンスもあり
颯爽と登場する二枚目ヒーローもありと
その要素は中々に多彩。
容疑者を奪還せんとする襲撃に備え
淡々と受身を強いられる渋みを楽しみつつ
同時に個性溢れるチーム面子の言動からは
どこか可笑しさも味わえ
そして最後の最後はスカっと爽快。
こうでなくてはなるまい。
終始、一つの街中だけを舞台とするため
取り立てる程の派手さこそないが
とっても綺麗な構成が拝める素敵なチーム西部劇。
『利休』 1989年
監:勅使河原宏 主演:三國連太郎
★★★★☆
千利休という人物の面白さに尽きる。
日本史上最も複雑で芯の強い人物であるとも取れるし
最も過大評価されている人物とも取れる。
この映画の利休は
何も言わない、何も語らない。
ただただ何者に対しても譲らない。
一見、柔和で従順でありながら、
誰もその心を覗く事を許さない強さがある。
絶妙にイメージ通りの利休がそこに居る。
もちろん屋内劇の連続映画。
秀吉役の山崎務と利休役の三國連太郎の演技合戦が楽しめる。
芸術面からの時代劇に慣れていないと
若干、退屈に思えるかもしれないが
狭い茶室ながらも映像的な工夫は至る所に仕掛けてある
芸の細かさが素敵です。
『リスの住宅難』 1947年
監:ジャック・ハンナ 主演:
★★★☆☆
焚き木を拾うドナルドダッグと
住居の木をもっていかれた2匹リスとが繰り広げる
ドタバタの嫌がらせ合戦。
一本の木をめぐる攻防に終始したシンプルなお話だが
どんんどん過激にヒートアップしていく
互いのアイディアがとってもモダンなテンポで続き
普通に楽しいコメディ映画として十分成立している
10分程度の短編映画。
さすがに何本もの長編作品を作り上げている
1947年ともなれば映画としてのテクニックもお手の物か。
過剰なデフォルメ演出をメインに据える構図からは一歩引いて
あくまで仕掛けのアイディアで楽しませてくれる
とっても見やすく愉快なアニメーション。
『リトル・ミス・サンシャイン』 2006年
監:ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ヴァリス 主演:アビゲイル・ブレスリン 他
★★☆☆☆
皆がどこかに問題を抱えている一家族が
末娘のミスコン出場のために
家族総出で1000kmにも及ぶ車旅を行うお話。
強いよ、強すぎだろう。
結局、この家族連中は各々が個人で問題を乗り越えてるよね。
くすぶってた物が爆発して、一人悩んで前に進む事を決める。
この繰り返しでさほど家族同士で影響しあうわけでもない。
これでは何か違うよーな。
それでも僅か2日で絆は強くなる。
やはり家族旅は良いね。
それだけは間違いなく感じられる良作。
イベントの重要性だよ。
序盤のバスに走り乗るシーンが既に最高潮だろか。
あれはこの家族は乗り越えるなと確信できる瞬間。
ただ、そこからの展開が弱い。
9ヶ月間も口を開かない15歳の兄貴とか
自殺未遂して流れ着いたゲイの叔父とか、
勝ち馬と負け犬の論法で全てを割り切る親父とか
面白い人物目白押しなんだけど
結局はどれも薄味で終幕です。
『リベリオン』 2002年
監: カート・ウィマー 主演:クリスチャン・ベール
★★★★☆
平和目的のために人間が感情を持つ事自体が違法化した世界に
反旗を翻した元感情摘発・処刑人のお話。
設定だけを見れば、とても楽しげなSF映画に思われるが
描かれる展開、キャラクター全てがとにかく粗い。
主人公を狙うライバルキャラ一つとっても
とっても怒りっぽいお方で
どう見てもお前が感情違反人だろというお馬鹿さ。
時期的にマトリックスを意識したような雰囲気だが
この作品の特筆すべき魅力は
「ガン=カタ」と呼ばれるカンフー風味を加えた
独特のガンアクション演出にある。
後に一部では「ガンカタ式」と一つのジャンルとして扱われる程
インパクトのある斬新な殺陣が、とにかく気持ちよく
そのパワーだけで十分に見られてしまう。
如何に早い段階でお馬鹿映画だと気付けるかが勝負。
もしくはクリスチャンベールの復活を知らしめた映画という認識だろか。
『リミット』 2010年
監:ロドリゴ・コルテス 主演:ライアン・レイノルズ
★★★☆☆
目が覚めると棺桶の中に生き埋めにされていた男の物語。
徹底したシチュエーション限定映画で
最低限の光源と一本の電話のみを軸に
全編が土中の棺桶のみで展開されるという
やりすぎ挑戦作。
通常ならば15分も描けばネタも尽きてしまうだろう
この単調な構図の中で
きっちり90分間、映画として成立する展開とドラマが
注ぎ込まれているのだから大した物だね。
観客が飽きる手前、冷める手前のギリギリタイミングで
確実に次の一手を打ってくる構成テンポの妙がお見事。
こういう作品は適度な行動、適度な謎明かし、適度な刺激なんだね。
ただ結局は、主人公側からは何らアクションも起こせず
受身に次ぐ受身という展開が続き
また拉致監禁されたテロリストの被害者という立場もあるため
基本、見たくない物ばかりを見せられる
非常に嫌な映画という感想だけが残るかな。
決して後味も良くはないし
あくまでアイディアと技術の完成度に唸るカルト作だろう。
見応えはあるがそれ以上は保障しない一本。
『理由』 1995年
監:アーネ・グリムシャー 主演:ショーン・コネリー
★★★☆☆
白人少女の強姦殺人事件への容疑から
死刑判決を受けた黒人男性を救うため
大学教授の主人公が冤罪事件として捜査を洗いなおすお話。
良質なサスペンスですね。
誰が犯人で何が真実か。
本当の原因は何所にあるのか。
全てが不透明なまま淡々と情報が集まる様は緊張感抜群。
何より教授の圧倒的な存在感だね。
ショーン・コネリーは凄い。
若い頃にアレだけのキャラクターを作ってしまったのに
この年になって全く別の精力的な爺さんとして
十分に一級の個性を出せるのだからね。
この教授の喰えないながらも素直な人間性こそが
周囲の悪党どもの魅力を増すわけですよ。
やや、テンプレートに過ぎる面もあるけどね。
それでも100分程度の短い尺をノンストップで駆け抜ける
疾走感は中々ステキ。
少し社会を考えさせられる要素もありつつ
全く目を離す隙が無い密度ある一作。
『龍が如く 劇場版』 2007年
監:三池崇史 主演:北村一輝
★★★☆☆
夜の新宿を思わせる架空都市、神室町を舞台に
10年ぶりに刑務所より出所した主人公が
かつての因縁から再びヤクザ同士の抗争に巻き込まれるお話。
程よくお馬鹿で良いね。
この設定で下手にリアリティを出しすぎると
ただのVシネマになってしまうという事を
とっても良く理解しているゲーム映画。
適度に荒唐無稽で適度にガキっぽい映像こそが
ムービーゲームの個性、本質でしょう。
見た目は新宿なんだけど、
その中身は『マッドマックス』かと思うような
素敵な無法都市。
喧嘩と拳銃、殺しに強盗が日常に飛び交う
作り物感全開の空気が、逆に適正な雰囲気を作ってるのではないだろうか。
アクション映像の嘘臭さも合わせて
間違いなくテレビゲームの映像化として納得はできる仕上がり。
実は群像劇なんだよね。
一つの町を舞台に同時刻に繰り広げられる
最低な連中の最低な行為の数々。
さて結末はどうなるのかという点だけで一応は楽しめる。
正直、どれも大した魅力的なお話でもないので
確かにこれの一本を丸々100分かけて描かれても
間違いなく冗長だった事を考えれば上々な思い切り。、
だからと言って主筋は省きすぎかな。
何のために登場したかわからない人物が多すぎだよ。
お話だけ追えば間違いなく未完成品。
冒頭、まるで冗談のような空気を感じつつも
気付けばそこそこ楽しめている不思議な空気を持つお馬鹿映画。
『龍拳』 1979年
監:ロー・ウェイ 主演:ジャッキー・チェン
★★★☆☆
対決の末に師匠を殺された主人公が
道場再建の筋目を通すため
師匠の妻子と共に仇の元を訪ねるお話。
水準以上のクソ真面目カンフー映画。
舞のように完成されきった殺陣
アクションシーンはもちろん骨太だが
何よりも暴力の連鎖の行き着く先の
復讐の愚かさ虚しさまでに踏み込んだストーリーが素敵。
何と言っても、不要な殺しを私怨から行った夫を諌めるため
自らの死を戒めに説教を行うという女の強烈さ。
それを受けて自らの足を切って捧げる仇の爺さんとかね。
行き過ぎた武侠の清廉とはこの事、怖い怖い。
これこそが中国オンリーワン世界観だろう。
そういった重苦しくも、誇り高い連中の繰り広げる
どうにもならない泥沼を楽しめるという一点で楽しめる映画かな。
『理由なき反抗』 1955年
監:ニコラス・レイ 主演:ジェームズ・ディーン
★★★☆☆
家庭にも、社会にも
どこか自身の居場所を掴みかねている若者達が繰り広げる
抜き身の魂をぶつけ合う喧騒のお話。
真面目だね。
この主人公の人の良さが全てだろうか。
父親に対しても、友達に対しても、敵対人物に対しても
あらゆる方向において彼の心は半端を許してはくれない。
それじゃ息も詰まるのも当たり前だ。
もっといい加減に生きて良いんだよと
心の底から話し合いたくなる彼らの純粋さこそが
この作品の本質だろう。
一線を超える前に何故、周囲は止められなかったのか。
本当に執拗に絡んだ不良グループだけが悪いのか。
また、不良連中の遊びが強烈だよね。
シャレだと言い張る「ナイフバトル」であったり
車で崖へ一直線の「チキンレース」であったり
この映画が生み出す独自文化の荒々しさは
まさに衝撃の一言。
甘ったれたガキのお話でありながらも
この息もつかせぬ圧迫感はさすがのニコラス・レイ監督。
視聴後に色々と参っちゃう一本だね。
『旅情』 1955年
監:デヴィッド・リーン 主演:キャサリン・ヘプバーン
★★★★☆
ベネチア旅行の女と現地男が織り成すメロドラマ。
言ってしまえば
ちょっと無理して自分探しのベネチア観光へ訪れたオバサンが
行きずりのイタリア男とセックスして帰るだけの映画。
それが、あまりにキマりすぎている映像美の数々と
キャサリン・ヘップバーンによる繊細な人物造詣によって
実に格調高く完璧に仕上がっている一品。
決して裕福でもない40歳を超えたオバサンが
意を決して長期休暇でベネチアくんだりまで足を伸ばして
まだ何かが足りない、何か求める物と違うと感じながら
出会いやコミュニケーションを焦りながら探る姿は
言うまでもなく痛々しい。
映像面でべネチア市街の美しさが際立てば立つ程に
心の底から景色に感動していながらも
真の意味では満足しきれていないだろう女の本音も浮き出てくる。
この絶妙な相乗効果が素晴らしく
過剰な仕掛けや会話劇などなくとも
見事にキャラクター性が伝わるテクニックに脱帽。
せっかくの機会、限界までハシャごうとする心は見えるのだが
どうしても、そこまで突き抜けられない憂いは
身に染みるよね…他人事ではないのだよ。
旅先でカメラを回すことに躍起になるのを止めた時に
旅行とは真に身になるものだろうか。
この現代病を1955年公開作品で既に示している大傑作。
『ルパン三世 ルパンVS複製人間』 1978年
監:吉川惣司 主演:山田康雄
★★★☆☆
ある日、ルパンが処刑される。
死んだのは間違いなくルパンなのだが
それが信じられない銭形は……というお話。
題の通り、クローン人間の話が大筋で
SF的な設定はとても面白いです。
ただそれだけかな。
こういう作品の場合、黒幕のキャラクターが薄い事が
非常に多いのは何故なんだろうか。
神に近いはずの存在が、話を聞けばそこらの通行人一人より浅い人生観を語る。
一体、何が楽しいかがわからない。
ストーリーやキャラクターの問題により
せっかくの設定が全く生きない映画ながらも
ルパン三世としての雰囲気は1st前半より。
とにかくカッコよくて、しかし人間として恐れもすれば悩みもする。
生きたルパンのキャラクターが味わえる。
元々、踏みにじられたプライドを取り戻すために、
一年がかりの復讐を行うような生々しいキャラですよ。
作画や演出も、そのために作られた作品で
ルパンの世界観を堪能したいなら
それだけで満足はできる一本。
『ルパン三世 カリオストロの城』 1979年
監:宮崎駿 主演:山田康雄
★★★★☆
偽札の秘密と公国の政争をめぐるお話。
もちろん、ルパン三世としては問題作ではあるのだけど
アニメーション映画としての完成度の高さに
細かい事はとりあえず忘れてしまう一品。
シナリオの隙の無さ、暖かみのある作画の数々
印象的な名シーン、名台詞の連続。
まさにエンターテイメント大作。
完璧な映画です。
ただ、1st後半をより一層丸くした感じで
既存のキャラクターを使った物とすれば
色々と勘弁してくれと思う点も多い。
クラリスという少女メインの視点構成や
父性からなのかそれとも素直な恋からなのか
どちらにしろ子供に半ば惚れかかるルパンなど
誰が見たいのだろか。
古いアニヲタが集まった際の
論争の花形と言ってもよい伝説の映画。
以前、ある人物から諭された
「とっくに引退した一味が久しぶりに集まった 同窓会と思えば?」との言葉が
個人的には目から鱗だった。
えぇ、良い映画です。
『ルパン三世 風魔一族の陰謀』 1987年
監修:大塚康生 主演:古川登志夫
★★★☆☆
隠された財宝と巻き込まれるヒロイン。
それを狙うはルパン一味と悪の組織。
そこに銭形が介入するという定番のお話。
とてもスマートな作品です。
コミカルも程々、リアルタッチも程々に
緑ジャケでやや落ち着いたルパンが立ち回る姿が素敵。
お話や登場人物で唸るような事はないが
視聴者が白ける事もない良作。
むしろ、声優についての話題が多い一品。
ルパン三世:古川登志夫 、次元大介:銀河万丈、峰不二子:小山茉美
石川五ェ門:塩沢兼人、銭形警部:加藤精三
全員が新しいキャラクターを見事に作り上げていて満点だと思うが
コメディタッチ寄りのルパンが好きな人からすると
少し濃すぎるのかもしれない。
もちろん新ルパンの旧キャストも素晴らしいが
この時に上手く代替わりが行われていればと
今になってみると思わざるを得ないかも。
『ルパン三世 DEAD OR ALIVE』 1996年
監: モンキー・パンチ 主演:栗田貫一
★★★★☆
カッコ良くてギラギラしたルパンを描きたい。
そんなコンセプトで綴られた芯の通った一本。
原作者が監督として入っているだけに
間違いなく原点回帰なわけだが
ただどうにも、ふざけない事を意識しすぎてか
原作が本来持っていたはずの大人のユーモアも薄くなっている気もする。
全体通して長編ルパンにありがちな退屈さはなく
ルパン三世というキャラクターならではの仕掛けが
きっちりと動く様もお見事。
時期的にこれで山田康雄が主演だったらなと切なくなる良作。
銭形の魅力は本当に難しい。
これもアリだが、いまいち正解が見えないキャラクター。
『ルパン三世』 2014年
監: 北村龍平 主演:小栗旬
★★★☆☆
漫画・アニメ、ルパン三世の実写化作品。
かつての泥棒仲間とのライバル関係を軸に
恩師の仇にケジメを付けるお話。
大作アクション映画に限りなく近いフリしたお馬鹿映画だね。
フリである事を十分に理解した上のおふざけが綺麗にハマった一品。
敢えて国際色豊かな俳優を大量に配置しておき
邦画でありながら事実上の日本語吹き替え作品という何ともふざけた演出も
肩肘を張って見に来た観客の脱力に一役買っている。
冒頭、山田康夫風のお喋りで小栗旬が登場する小ネタを披露する事で
まず真っ先に、物真似作品を作るつもりではない意思の強さだけは示しつつ
その上で作風が見事な肩透かし系になっているのが心地良い。
ルパン三世とは思わずに見れば楽しいのかという期待と
ルパン三世だからと思って見るから楽しいのかという期待が
観客の心の中で綺麗に融合していく過程が
今作オリジナルのキャラクター像を作るのに一役買っている。
単体の映画としてみた場合、登場人物達は間違いなく全員がカッコ良く
小栗旬の顔芸、笑顔は既存のルパン像とはまた違った
何とも人懐っこい魅惑の怪盗キャラクターを成立させている。
気付けばパーティ全員が気に入っている詐欺のような一品。
邦画特有の安いノリもありつつも
感動抑え目のテンポに拘ったエンターテイメント作品として
可能な限り目立たないような工夫も見られる。
この面子ならば続編が有っても良いね。
『るろうに剣心 』 2012年
監:大友啓史 主演:佐藤健
★★★★☆
幕末の京都で、最悪の人斬りとして恐れられた主人公が
10年後の東京を舞台に活躍する少年コミック原作映画。
とにかく、画の美しさに拘った一品。
目を見張るような劇的な構図はもちろん
細部における美術の数々に至るまで
手抜きのない堅実なお仕事が常に目に優しい。
そこに漫画的なキャラクター造形や
人間の枠を超えたようなアクションシーンが加わる事で
時代劇でありながらもファンタジーでもあるという
絶妙な説得力が生まれている。
結果、コメディ要素も十分に盛り込みつつも
作品全体の雰囲気が安っぽくならない点は
コミック原作映画としては見事の一言。
ストーリーは映画単体で完結する作りで綺麗に纏まり
テンポも上々。
シンプルながらも、業を背負った主人公の苦悩はきっちりと伝わり
特に希望を持たせつつもどこか彼の将来への不安をも暗示する
哀愁のエンディングは素敵だね。
少々、登場人物数を欲張りすぎて活躍が散らされた感はあるが
エンタメアクション映画としてお手本のような高クオリティ作品。
『るろうに剣心 京都大火編』 2014年
監:大友啓史 主演:佐藤健
★★★★☆
元薩長方の人斬り主人公が
明治政府の転覆を企む幕末の亡霊と戦うお話。
原作でも最高の人気を誇ったエピソードを描いた
虎の子とも言える続編で
前作における映画的な魅力を全て備えたまま
ブラッシュアップされた密度が堪能できる良作。
所狭しと背景を描き込む
画作りのセンスは変わらず素晴らしく
映像面から物語への説得力を生んでいく順序は
何より実写映画化の冥利に尽きる作風だろう。
実直な映像の積み重ねからしか生まれ得ない重厚さを持つ
不思議なファンタジー時代劇は今作でも健在。
物語は前作から既に暗示されていた
主人公の業を孕んだ危うさが現実となるもので
彼の悲痛な姿は魅力たっぷり。
この一点は、何よりも原作からの設定が上手い。
結果、寒々しいコミカルシーンは影を潜め
全編がシリアス路線一直線となるが
この効果はむしろ上々で
大作化した続編が持つべき品格として見事に昇華されている。
大友監督らしく
途中、大仰に過ぎる演出は目に付きつつも
終盤にかける熱さへの架け橋と思えばそれは納得。
十分なエンターテイメント性を保ちつつ
完結編への期待度もバッチリで終わる
パーフェクトな"前編"が楽しめる。
一般的に人気漫画を原作に持つ映画は
役者相性に拠る要素も大きいのだが
所謂、大友組の面々のハマリっぷりこそが何よりも成功の秘訣だろう。
特に、お庭番の翁を演じた田中泯のパワーにはただただ圧倒されるばかり。
ラスト一分に至っては役者も、画も、音も、演出も
全てが『龍馬伝』そのもので苦笑い。
『るろうに剣心 伝説の最期編』 2014年
監:大友啓史 主演:佐藤健
★★★★☆
前作までの魅力を全てそのままに
主人公が導き出す懺悔人生への結論と
過去最大級の大立ち回りが楽しめる完結編。
カンフーアクション、剣戟アクション、プロレスアクション
そして、背景、小物演出アクションと
あらゆるアクション物の要素が綺麗に融合されており
元が、少年バトル漫画である事を十分に承知した上での
ファンタジックなアレンジ技術は変わらず素晴らしい。
ハイスピードな視点による目の忙しさが何とも心地よい。
それでいて、京都は京都、東京は東京と
一目で町並みすらも理解できる
日本らしい圧倒的な絵作りの美しさも忘れず
時代劇としての一面も備えているのだから驚き。
監督の演出過多癖は変わらずではあるが
まさに邦画の新たな歴史を作るに足る
一大豪華アクション大作が完成している。
やや、人間ドラマパートが薄味な点と
原作の著名なシーンが軽く流される点は
前作での期待度からすれば物足りなくも映るが
一つの映画作品としてはテンポの面では正解だろう。
何より、大ボス志々雄真実のキャラクター性が圧巻。
彼の言動に酔いしれていれば十分満足できる事間違いなし。
あれは反則、カッコイイ。
『るろうに剣心 最終章 The Final 』 2021年
監:大友啓史 主演:佐藤健
★★★☆☆
大ヒットジャンプコミックの実写映画。
第三段にして完結編。
主人公への復讐を企てる男のお話。
前作の敵役であった志々雄真実との明確な違いは
その復讐の定義だろう。
志々雄の復讐対象は明治政府そのものであり、本人も野心家でもあったのだが
雪代縁のターゲットはあくまで剣心そのものであり
とにかく心の内へ内へと入っている極めて個人的な物語が展開される。
そのために剣心の周囲全てを対象とした
無作為なテロリズムが延々と繰り返されるという
とにかく陰鬱な空気が全編を支配する一本で
前作までのようなカタルシスは薄めだね。
シリーズの根本的な設定になっている
主人公が過去の罪とどう向き合って生きていけるのかという
決して避けて通れない部分に正面から挑んだ意欲作だろう。
重厚でシックな画の質感は変わらず
かつ、古今東西のアクション要素を混ぜた
軽快なバトルシーンは相も変わらず超一流。
江戸が火の海になるシーンもとってもド派手でエンタメ感抜群。
ただ、あまりにも深い要素がテーマになっているため
結局は、一騎打ちでの勝った負けたで
どうこう決着がつくような話の構造になっていないため
せっかくのアクションシーンが必要なのかが怪しく映る。
導入されるたびに浮いてしまっているのが難しいね。
少年ジャンプのバトル漫画特有の個性の強い敵キャラクターたちも
アクションが主役になりにくい世界観とは何か違っていて
どこか所在なさげに浮いて見えてしまうかな。
もちろん、全てを解決するような魔法のような答えは出ないが
全編通しての完結編としては避けて通れない章を扱った一本で上々の完成度。
前作から7年も経ってこのクオリティを繋いだのは見事。
『Ray/レイ』 2004年
監:テイラー・ハックフォード 主演:ジェイミー・フォックス
★★★☆☆
稀代の音楽家、レイ・チャールズの人生を
少年時代の記憶をフラッシュバックしつつ追体験するお話。
何よりも、彼のパワーにノックアウトだね。
女と麻薬にだらしのないどん底トラウマ人生を描きつつも
同時に華やかな成功とヒット作の歴史を追っている二重奏が心地良い。
その都度挿入されるゴキゲンすぎるヒットナンバーだけで
何故か駄目男の人生譚がいくらでも見ていられる。
若者から大物へと変貌していく様、世界中が知っている独特の仕草や表情を
ジェイミー・フォックスが熱演しており
もはや途中からレイ本人にしか見えなくなっていくのだから凄まじい。
彼ありきの作品かな。
特別な仕掛けはないのだが
偉人としてのレイ・チャールズを清濁合わせて捉えた自伝映画として
素直で完成度の高い一作。
『レイジング・ブル』 1980年
監:マーティン・スコセッシ 主演:ロバート・デ・ニーロ
★★★☆☆
ボクシングに人生を捧げてきた
あるチャンピオンの人生譚。
敢えての白黒で撮影された1980年映画で
全編が乾いた実に暴力的な世界観が魅力だろう。
主人公は粗暴で無知で何より嫉妬深く
男のクズ要素全てが合わさったような人間なのだが
誰にも負けたくない、ダウンしないという心根一本だけをもって
妻も弟もと周囲全てを傷つけながら生きていく。
幸せになれるはずもない愚かな男の人生が
淡々と抑えた映像と共に描かれるピーキーな一品。
彼に共感を乗せられるかは人それぞれ。
結果、悲惨な後半生が待っているわけだが
彼が人生までを後悔したかはわからんね。
もはや、この駄目男本人にしか見えない
既存スター俳優とは一線を画したスタイルが魅力の
ロバート・デニーロの名演を拝むだけでも
十分に楽しみ方がある一本かな。
『レイダース/失われたアーク』 1981年
監:スティーヴン・スピルバーグ 主演:ハリソン・フォード
★★★★☆
1930年代後半、イギリスとナチスドイツがしのぎを削る中
考古学に魅了された冒険家の教授が
伝説の聖櫃を求めて暴れまわる大活劇。
いわゆる、アメリカンなハリウッドアクションのエンタメ傑作。
そういう雛型ではないかな。
これ以前の映画とは明らかに異質。
快活な肉体派の主人公が居て、小生意気なヒロインが居て
明確な悪役が居て、冒険があって、適度なアクションがあって
秘められた謎としてのオカルト要素満載で
そして、所々にお馬鹿な笑いが散りばめられている軽いノリで。
見事なまでに2時間夢中にさせてくれる娯楽映画。
80年代以降のアクション大作はみんなこの形。
ヒーロー像としては、在りし日の娯楽西部劇のノリかな。
骨太に男前。
加えて冒険物としての胡散臭さがたまらない。
うっかり踏むと罠が発動する床だとか
巨大な石に追いかけられる洞窟だとか
頭の悪い仕掛けのオンパレードが楽しすぎる。
そこに適度に過激でタフガイなアクションや
カーチェイスまでが織り交ざり、本当に飽きさせない。
誰だって頭空っぽにして笑いたい時はあるよね。
『レイ・ハリーハウゼン 特殊効果の巨人』 2011年
監:ジル・パンソ 主演:レイ・ハリーハウゼン 他
★★★☆☆
ストップモーション映画の大御所
レイ・ハリー・ハウゼンの仕事を振り返るドキュメント映画。
歴代作品を時系列順に紹介しつつ
彼に影響を受けた有名監督のインタビューが交わる作りで
スターウォーズや、ジュラシックパーク、ロードオブザリング、アバター……など
驚く程に似通ったシーンの連続が楽しめる。
視覚の説得力とは大したもので
これによって皆の御大に対する敬意の表れが
観客にも直感で伝わる丁寧な構成が良いね。
肝は
ハリウッド映画市場に、SF・ファタタジー文化を根付かせた歴史的意義の確認と
コンピューターグラフィックス表現についての
レイ・ハリー・ハウゼン本人の見解。
彼曰く、CGは科学技術の側面が強い精密製品で
ストップモーションは、製作者一個人のセンスが多分に画面に残る
アナログなアニメーション芸術らしい。
つまり、特殊撮影である事は
見る側にとっても最初から暗黙の了解で
種明かしの想像を楽しむマジック舞台のように
そこには作り手の技術と工夫を想像する余地があったわけだ。
例えば「2000人の兵士」を描くシーンでも
CG製作の現代映画と人海戦術でやっていた古い映画の場合で
もし、後者側に感動する人が多いとするなら
それは一作品として提示された映像以上に
映画を作り手側への敬意をも交えて楽しむ人間が多いという事だろう。
事実、その方向で感動した若者達が後の大監督になり
またファンタジー映像、SFアクション映像の数々が
ハリウッドの売れ線として君臨していく事を思えば
まさに御大なのだろうね。
『レインマン』 1988年
監:バリー・レヴィンソン 主演:ダスティン・ホフマン、トム・クルーズ
★★★☆☆
父親の遺産を受け継げなかった青年が
その理由を追求する内に自閉症の兄の存在を知り
ほんのひと時、二人きりの兄弟旅行をするお話。
とってもスマートで良いね。
重度の自閉症の兄の症状は当然良くはならないんだけど
代わりに成長するのが健常者の弟クン。
二人とも行動こそ極端だけど
決して悪意はない本当に素直な人間だものね。
初めて出会った兄弟二人による心温まる一週間の旅は
彼の人生にとって良い刺激になったのではないだろうか。
何かを訴えようだの社会派作品を作ろうだの
そんな事は決してなく
とっても現実的な人間の小さな心を綺麗に描いた良作。
とっても丁寧な一品。
弟の自由な行動力に魅了されながらも
ちょっとだけイイ気分になれる映画です。
『レヴェナント: 蘇えりし者』 2016年
監:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 主演:レオナルド・ディカプリオ
★★★★☆
西部時代、毛皮収集の仕事に参加していた主人公が
仲間の裏切りで息子を殺され
復讐の一心で過酷な雪山サバイバルに挑むお話。
開始から終劇まで実に2時間半に渡り
延々と山中の光景が映るだけの変態映画だが
あまりにもその映像が本物すぎて困ってしまうね。
何の捻ったストーリーも会話劇もなく
ただただ、レオナルド・ディカプリオが
大自然と先住民に苛められながら
瀕死の状態を生き延びるだけの描写が
何故にこうも、神々しく映るものだろうか。
また自然の姿をそのまま捉えたような映像美と同時に
人間も動物もとにかく大量出血で
臓器だの傷口だエグイ描写もてんこもりなのだが
決してそれが不快にはならないんだね。
むしろその融合に「生命」を見出して
神秘的な気分になってしまうのだから凄い。
不思議と全く飽きが来ない。
ただただ、自然スゲ〜と感嘆せざるを得ない。
詐欺のような本物志向の一本。
そこまでの大自然を描きつつ
お話は二人の人間が欲得と復讐に明け暮れる姿のみと言うのが
また綺麗な引き立てになっているね。
『レオン』 1994年
監:リュック・ベッソン 主演:ジャン・レノ、ナタリー・ポートマン
★★★☆☆
凄腕の殺し屋と、両親を殺された少女とが送る
不思議な共同生活を描くお話。
情緒という言葉で表すのが一番の映画だろう。
ストーリーは至ってシンプル。
殺し屋の隣人一家が皆殺しに合い
生き残り少女が居候してくる。
すぐに正体は割れ少女は復讐の手段を乞う。
お互いに芽生える愛情、そして切ない別れ。
たったそれだけの作品でありながらも
やはり純正ハリウッドとは一味違う楽しさがある。
少女との間にできあがる絆は
友情でも擬似親子関係でもなく
間違いなく男女の愛情であるのだが
この年の差がジャン・レノの醸し出す純粋さであれば
不思議と許されてしまうのが面白い。
本来、どう考えてもこの関係性は駄目だろう。
これを真っ向から何の疑問もなく押してくるのが
さすがのフランスセンス。
他、細かい映像の隅々までが
何処か垢抜けない感覚に満ちていて退屈させない。
むしろ脚本や映像、描写だけを取れば
チープな部類に入る一本なのだが
独特のテンポと情緒が不思議と心に残ってくる
反則のような作品。
『レザボア・ドッグス』 1992年
監:クエンティン・タランティーノ 主演:ハーヴェイ・カイテル
★★★☆☆
強盗計画の失敗から始まる男6人の密室物語。
意味が有るかどうかもわからない会話パートに
大量の尺を割く無軌道な作風ながら
気づけばそれが綺麗な個性付けになっている。
僅か100分の映画に登場する6人もの登場人物が
どれも強烈で忘れられないのだからお見事。
程々の汚さに、程々のバイオレンス描写
あまりに品の無い台詞回しの数々に
思わず笑ってしまう世界観は
まさにタンティーノ節だろう。
無駄な絵作りの美しさの裏に
実に低俗なノリを兼ね備える雰囲気が心地良い。
どうの仕様も無い男達が、どうの仕様もない醜態を晒す魅力。
期待させるだけさせ真っ当な落とし所すら用意しない
シンプル過ぎるなサスペンス絵巻。
後の作品のような過剰サービスは薄めだが
これはこれで既に完成品。
『レジェンド・オブ・ゾロ』 2005年
監:マーティン・キャンベル 主演:アントニオ・バンデラス
★★☆☆☆
カリフォルニアを舞台にした
英雄ゾロの活躍を描くエンターテイメント第二段。
果たして必要な続編だったのだろうか。
奥さんと子供との関係性に追われる
人間味溢れる父親ゾロの姿は確かに面白いが
基本はエンタメ志向故に唸るようなドラマは特に無い。
しかし、ヒーロー物として突き抜けるような爽快感もないわけで
必要な要素だけを淡々と消化する姿はさすがに退屈だろう。
欲張りすぎてどちらも今ひとつ。
せっかくのゾロでありながら、異国情緒すらも薄めと来れば
どうにも見所に困る一本。
これで120分超はさすがに長い。
『レッドクリフ part I』 2008年
監:ジョン・ウー 主演:トニー・レオン
★★★★☆
三国志における「赤壁の戦い」のみに焦点を絞った物語。
いつの頃からか
超大作はハリウッドではなく中国映画のお家芸になってしまった。
エキストラの人数だけを言ってるわけではなく。
本当に大切なのはそれを裏打ちする美術の仕事。
歴史物の基礎中の基礎だろう。
この映画には
21世紀では誰も適わないオンリーワンの大作世界がある。
ジョン・ウー監督という事で
お馬鹿なアクションシーンがメインではあるが
あらゆる登場人物がカッコ良く
酔いしれている内に終幕という見やすさもポイント。
なお、絶対に不要なはずの馬鹿な小娘は、
どうも中国においては必須らしいので我慢。
金庸などを読んでもほぼ100%の確率で登場するよね。
『レッドクリフ Part 2』 2009年
監:ジョン・ウー 主演:トニー・レオン、金城武
★★★★☆
後編。
「孔明の罠」が冴える。
ここからが本編と言ってもよし。
前作が満足できた人なら
それを数倍上回る期待以上の熱い展開と
圧巻の映像クオリティが保証される。
一点に拘りぬいた作品だけに
下手を打つ可能性も皆無。
『レッド・サン』 1971年
監:テレンス・ヤング 主演:チャールズ・ブロンソン、三船敏郎、アラン・ドロン
★★★☆☆
19世紀末のアメリカ西部を舞台に
日本の武士使節団が列車強盗に巻き込まれるお話。
コンセプトはただ一つ。
チャールズ・ブロンソン、三船敏郎、アラン・ドロンが一堂に会する
世界スター揃い踏みの贅沢映画だろう。
裏切られた強盗団の元ボスにブロンソン。
使節団の腕利き侍に三船敏郎、ボス役の悪党をアラン・ドロン。
最高の面子。
ただ、どうも味付けが薄味にすぎるね。
物語自体は心温まる異文化交流の典型で大きく外しようもないのだが
寡黙な侍ミフネと、お調子者ガンマン ブロンソンとの
友情物語というには淡々としすぎていて
あまりにも具体的な人間像やドラマが足りていない。
物言わぬコマンチ族の大群に襲われるという
オチの大バトルも西部劇の典型にすぎる。
もちろん、西部の雄大な大地をサムライ三船とガンマンブロンソンが
並んで映っている姿はそれだけで楽しいが
それっぽいイベントを二人が順番に進行するだけの映画では
あまりにもったいない。
やはり、大スター集合の期待値が高すぎるのかな。
中でも割を食ったのはアラン・ドロンだろう。
ややスタイリッシュな外観を持っている事だけが取り柄の
無個性悪役ではさすがに役が退屈すぎるよね。
二度と訪れない世界的な機会なのだから
もう少し欲しいと観客側が贅沢になってしまう一本。
『レッド・ブロンクス』 1995年
監:スタンリー・トン 主演:ジャッキー・チェン
★★★☆☆
叔父の結婚式に出席するためにNYへと渡った
カンフーの達人である主人公が
街の治安の悪さに巻き込まれていくお話。
何と言う恐ろしい街だ。
まるで『マッドマックス』かと勘違いする程に
無法の極地と化したNYを楽しむ作品だろう。
5分に一回は、住人達の狂気に満ちた行動と
それに華を添えるド派手な映像を堪能できる一品。
これ以上にお馬鹿な映画は見た事ないかもしれないね。
ハリウッド式の演出を意識しつつも
間違いなくこの勢いだけは香港流。
この贅沢な競演が楽しめる点は素晴らしい。
特に破壊のアイディアにおいて、
頭が悪ければ悪い程に正義だろうと言わんばかりの
度肝を抜き続ける執念の映像に酔いしれるべし。
ジャッキーもいつも以上に体張ってます。
香港製作らしからぬテンポ上々。
『レディ・プレイヤー1』 2018年
監:スティーヴン・スピルバーグ 主演:タイ・シェリダン
★★★★☆
西暦2045年の未来。
世界的な大流行ネットワークゲームを舞台に
若者達がクリアアイテムを集めていくお話。
とにかく凄まじいまでの物量と熱量だね。
監督本人がリスペクトを感じているだろう歴代のカルチャー作品が
所狭しと本物デザインで登場する大サービス映画で
この権利関係を全てクリアにしたことそのものが
何よりスピルバーグの偉大さなんだろうな。
まず「歴史」への畏敬の念を込めた真摯さが光る一品。
基本はCG全開のアニメーション作品なんだけど
設定とシナリオを綺麗に絡ませることで
実写パートとの行き来がごく自然に受け入れられるテクニカルさが見事だね。
VRとMMORGPを足して作られたような仮想空間の映像も
2018年公開当時の現実のゲーム空気とは相性抜群。
この手のカルチャーに経験があればある程
仮想世界と現実世界との距離感に納得できるのではないかな。
それでいて映画としては、子供達のロマン溢れるファンタジー冒険譚でしかなく
かつての『グーニーズ』あたりと何ら変わらないシンプルっぷり。
そこに2018年流のSNSやネットゲームが抱える
現実と仮想との二重構造の問題点に軽く踏み込み
ぎりぎりの綱渡りで活劇展開と併走しているのが素晴らしく
とっても爽やかな説教映画に仕上がっている。
それを心地良いと思うか野暮と思うかは観客に拠るだろうが
このテーマ性の上に設計されている安心感があるらこそ
今作は超一流のエンタメとして誰もが素直に楽しめる大作な気がするね。
サブカルチャーへの愛に寄り過ぎるが故に
内輪ネタにはしゃぐだけの閉じたヲタク作品との紙一重さを
大人のバランス感覚で乗り超えた良作。
『レベッカ』 1940年
監:アルフレッド・ヒッチコック 主演:ジョーン・フォンテイン、ローレンス・オリヴィエ
★★★★☆
妻と死に別れた男と恋に落ち、彼の後妻として家に迎えられた主人公が
使用人、夫、家……あらゆる物から前妻の影に怯えていくお話。
何という恐ろしさか。
一体、皆は自身の事をどう思っているのか
気付けば亡くなった奥さんと比べられているのではないか。
その強迫観念に捕らわれていく圧迫感が半端ではない。
陰影のメリハリの利いた白黒映像に
絶妙な心地悪さを提供する気の利いた演出の数々。
明確に敵対してくる前妻づきだった使用人も
いまいち本心が覗けない夫も
敷地内に存在する謎スポットも
あらゆる場所に残される前妻の残り香も
全てが見事に彼女の心を孤立させていく。
特に心の拠り所になるはずの夫との愛に確信が持てない様は圧巻。
全てアウェイでこれは辛いわ。
少しづつ、本当に少しづつ
本心、真相に近づいていく緊張感がたまらない超一級サスペンス。
既に亡くなっていて登場しもしないレベッカという人物に
ここまでの存在感を出せるものかね。
『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』 2008年
監:サム・メンデス 主演:レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ウィンスレット
★★★★☆
どう見ても、幸せな家庭を築けているのに
何かが物足りないな夫婦の物語。
実に痛い映画。
何処か不満がある人生に対して
その解決を義務として捉えてしまった悲劇かな。
強迫観念が先行しすぎなんだね。
結果、現状を否定さえすれば上手くいくはず
あるいは、否定しなければ一歩も前に進めないと
意味もなく追い詰められていく夫婦の姿は
見ていて辛すぎるだろう。
一見、妻が先走っているようにも見えるが
夫は夫で事実として浮気をしているわけだ。
確かに家庭は壊れている。
彼女が田舎街で社会から取り残された感覚に襲われ
何かを変えねばと焦る気持ちもわからないではない。
「現状を否定すれば上手くいく」
これは魔法の思考だよね。
大体において、問題は自らの中にこそ原因があるはずだが
人はついつい外に責任を求めてしまうもの。
シンプルな昼メロドラマに見えつつも
実に考えさせられる一本。
『レ・ミゼラブル』 2012年
監:トム・フーパー 主演:ヒュー・ジャックマン
★★★☆☆
パン一つを盗んだ罪で19年間の服役生活を強いられた男が
自らを恥じ人生をやり直そうとする物語。
ミュージカル版を原作としているためか
映画としては、余りにダイジェストに過ぎる作りだね。
全編が歌唱で構成されている劇中は
何処を切り取っても大作感抜群の
一級ミュージカル史劇ではあるのだが
あまりに完成度が高いためか
途中でミュージカルである事自体に慣れてしまう。
結果、ヒュー・ジャックマンの力強い存在感を
自然な物として受け容れられていく程に
つい興味の中心は彼の人生観や生き様の方へ移ってしまう。
その点では、主人公ジャン・バルジャンの大河ストーリーが
サラリと流されすぎではなかろうか。
若者達が取り付かれる革命時代の熱気も
体制の権化として登場する恐持て警部の存在も
どうも薄味で消化されていくのが残念。
重厚な世界観や音楽に彩られた
退屈とは無縁の一級映画ではありつつ
お話にもう一歩深みが欲しい一本かな。
『連合艦隊司令長官 山本五十六』 1968年
監:丸山誠治 主演:三船敏郎
★★★☆☆
連合艦隊司令長官の山本五十六の軸に
太平洋戦争の最前線を描いたお話。
何を置いても究極の特撮映画としての楽しみ方だね。
もちろん、ミニチュアを使った特殊撮影である事は
映像としては明確なのだが
あまりに見事な導入で途中から全くその意識もなくなり
ごく普通に当時のリアルを見ていると錯覚できてしまう。
劇中で綴られる戦争の経緯に対する説得力が
映像から滲み出てくるのは凄いね。
人格者として日米共に評価の高い山本長官の人徳をベースに
過剰さを極力排して俯瞰で淡々と戦局を見守る作風。
彼があまりにカッコ良すぎるためにか
ドラマらしいドラマも生れようがなく
本当に実直一本の映画になっている。
三船敏郎が見せる貫禄もそれを補う物でしかなく
あくまで視覚で楽しむ大作映画だろう。
中々のオールスターキャストではあるのだが
人間ならではの個性を楽しむ作風ではないために
皆、前作『日本の一番長い日』程の輝き方はしていないかな。
『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』 2001年
監:ウェス・アンダーソン 主演:ジーン・ハックマン
★★★☆☆
心が離れ離れになってしまった
ある一家の将来を描くお話。
かつて、天才児ともて囃された面々も
大人になれば、それぞれに悩みを抱えるものだろう。
登場人物は皆がどこか病的でありながら
どこか楽観的でもあるという
不思議な雰囲気に満ちている一品。
特に親父さんが見せる破天荒なクソっぷりが
インパクト抜群に素晴らしいのだが
ここまで悩み続ける駄目連中であるならば
この独善的な屑っぷりこそが
逆に心地良いまであるよね。
本意であろうと無かろうと
結果、一家の長だった親父さんのお陰で
皆が一歩前に進めたんじゃないかな。
そんな喧嘩しつつ揉めつつも
家族の良さを肌で感じさせてくれる
善意に溢れた一本。
『ロード・オブ・ザ・リング/旅の仲間』 2001年
監:ピーター・ジャクソン 主演:イライジャ・ウッド
★★★☆☆
冥王サウロンの作った呪われた指輪を巡り
様々な種族や国家、そして闇の勢力が胎動するお話。
現在、漠然と頭の中に存在しているファンタジー感の
全ての基礎を作ったとされる伝説的小説の映画化。
当然、21世紀の技術で映像化された世界は素晴らしいの一言。
ホビット、エルフ、ドワーフ、そして人間。
闇の勢力の数々、異形のクリーチャー造形
圧倒的な空想大自然の絶景……
本当に見ているだけで幸せになれる超大作。
ただ、ストーリーは地味ね。
仲間が終結して指輪の恐ろしさが見えてという
イントロダクションで終わってしまうために
単体では個性的キャラクターと映像化された世界観を楽しむだけで
我慢せざるを得ない映画になっている。
連作物の一作目は如何に魅力的な異世界を提示するかと
次作への期待を持たせられるかが大事。
『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』 2002年
監:ピーター・ジャクソン 主演:イライジャ・ウッド
★★★★☆
素晴らしい。
ついに戦争ですよ。
種族を超えた大決戦の圧倒的なクオリティは
CG時代の一つの到達点かとすら思う。
この見所があるだけでも二作目の価値は高いが
ストーリーも真に迫ってきて良い。
もちろん、そのタイトルが現す通りに
主人公が持つ指輪こそがメインストーリー。
時が経つ程に呪われた指輪に魅了されていく主人公の
ギリギリな綱渡りっぷりが退屈させない。
種族間のお話も一筋縄ではいかず、仲間も散り散りになり
一体どうなってしまうのかという
ドキドキ感を全開にしての大合戦クライマックス。
元の指輪の持ち主であるゴラムの愛嬌あるキャラクターが
前作とは一風変わった華を添え
二作目として完璧な作り。
『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』 2003年
監:ピーター・ジャクソン 主演:イライジャ・ウッド
★★★★☆
完結編。
散々に引っ張ってきただけに
主人公のフロドが出す結論の待ち遠しさだけで
十分に持ってしまう最終作。
全体のクオリティは折り紙付き。
何より一作目から圧倒的な存在感を示してきた
年老いた賢者、魔法使いガンダルフが良い。
敵側のサルマンもね。
こういう空想を具現化したようなキャラクターに彩られるだけで
ファンタジー世界は十分に成立してしまう。
終盤はやや単調で冗長な感も出てはくるが
それでも3作とも3時間に到達する大長編三部作の本当に最後だと思えば
多少のくどさもOKか。
少なくとも前二作を楽しめた人は
決して裏切らない手堅い一品。
ファンタジー作品がアカデミーの頂点というのは
前代未聞の快挙だよね。
当時、100年近い歴史でこれ一本。
それだけでもパワーが伝わるだろう。
『ロード・トゥ・パーディション』 2002年
監:サム・メンデス 主演:トム・ハンクス
★★★☆☆
1920年代のアメリカを舞台に
ギャングの内部抗争から追われる身となった
父子の逃亡劇を描くお話。
親子の絆を再確認するロードムービーかな。
半ば暗黙の了解として
観客にとって父親の最後は予想の範囲内で
彼自身が全ての業を背負う事は大前提だろう。
そうであれば彼が如何に限られた時間を
息子との触れ合いに費やせるのか、
あるいは家族の長たる毅然とした姿を伝える事ができるのか。
ここを思えば道中の光景全てに胸が痛む。
男同士として誰もが自身の子供にしてあげたい
憧れの姿がいっぱい詰まっている映画。
じめじめした空気に包まれた序盤のギャング世界と
逃亡する事で目にできる開かれた外の世界。
この空気の差が映像から一発で伝わる演出は見事。
トム・ハンクスならではの実直な父親像もさすがで
ストレートな良作親子劇として楽しめる一作。
『ロープ』 1948年
監:アルフレッド・ヒッチコック 主演:ジェームズ・スチュワート
★★☆☆☆
愉快犯的な心理から絞殺事件を起こした大学生の二人組みが
死体が眠る自宅でそのまま関係者を招きパーティを催すお話。
81分という短編映画として
一発芸を楽しむ分には良いのかな。
確かに特徴的な試みで作られた映像は目に新しい。
でもそれだけの映画だよね。
せっかく登場人物を限定した密室劇の割に
それ程に人間模様に触れるような展開はなく
淡々と時間が流れるだけ。
追い詰められる犯人の片割れも
要は最初から心自体は極限まで達していたわけで
劇中でどう動かされたという事ではない。
相変わらず、観客をドキドキさせるという一点においては
時折見事なシーンは見受けられるが
それも白黒映画で見られる程のメリハリは無い。
陰影に拘らない監督作品は違和感大。
本当に映像面の不思議さを楽しむだけならば
ハナから舞台でも録画すれば済む話ではないのだろか。
『ローマでアモーレ』 2012年
監:ウディ・アレン 主演:ロベルト・ベニーニ、他
★★★★☆
ローマで繰り広げられる
勘違い女と馬鹿男達の狂乱をオムニバス式に描いたお話。
ローマらしく陽気でお馬鹿で
ちょっとイケナイ恋の物語。
お洒落で、綺麗で、格式ある街並みの傍ら、
ウィットさとシニカルさの共存の元に飛び交う
軽快なトークに苦笑いをしていれば
あっという間に終劇一直線。
相も変わらずセンスの塊のような作風で
ロンドンでもパリでもなく
ローマである事をダイレクトに意識した絵作りには
街並とそこに暮らす人間の文化風土が
嫌味なく収まっている。
人あっての街、街あっての人と言う事だろうか。
ウッディ・アレン監督が展開した
ヨーロッパオシャレ都市シリーズを代表する一本だね。
『ローマの休日』 1953年
監:ウィリアム・ワイラー 主演:オードリー・ヘプバーン、
★★★★★
ローマを訪問中の某国王女が繰り広げるドタバタ恋愛劇。
ヒロインのオードリー・ヘプバーンが美しいのは当たり前ながら
それを彩る舞台と展開がまた輪をかけて綺麗。
電撃的な男女の出会いによる
プラトニックな妄想恋愛はコレ一本見とけばOK。
もし、目の前に唐突にお姫様が現れたら?
世間知らずでちょっと勝気が可愛くて
しかもとっても美人のオマケつき。
そんなお嬢さんと
これまたローマ市街という最高にお洒落な舞台を用意されての
ドタバタ恋愛デート記とくれば最高だろうさ。
もちろん一晩だけの切ない恋である。
まさに、最高の休日に酔いしれて下さい。
グレゴリー・ペックが持つ男の包容力。
オードリー・ヘップバーンが持つ持つ王女としての気高さ。
人間の良心とも言える誇り高き選択。
キャラクター像を見ても完璧な心地よさを提供してくれる
隙のない完成度を誇る一品です。
『ローラ殺人事件』 1944年
監:オットー・プレミンジャー 主演:ジーン・ティアニー
★★★☆☆
散弾銃で女性が顔を撃たれたという
殺人事件を捜査する一人の刑事と
容疑者として候補にあがった二人の男の問答話。
時代なのかな。
捜査を行う側にも参考人となった男の側にも
不思議と言動に余裕が感じられる。
ゆったりと、しかし的確に鋭く
淡々と真実に迫っていく姿が面白いね。
尊大な老紳士、小物臭漂う体躯の優れた若者
さらには事件を進める刑事自身も含めた三人の男が
自然とローラという女性に捕われていく様は
一風変わった緊張感抜群。
そして、如何に観客の裏を掻くか
意識されていない展開に持っていけるかが
一つのキーワードになった作品だろうか。
スローペースで進む割には、呆気に取られる展開もあり
突っ込みながらも退屈はしない一品。
映像が引き締まっている事も大きいだろうね。
展開や雰囲気に反して、実に丁寧な一作です。
『ロスト・イン・スペース』 1998年
監:スティーヴン・ホプキンス 主演:ウィリアム・ハート
★★☆☆☆
惑星探査のために飛び出した宇宙船内で起こった
あるアクシデントにより、広大な宇宙を漂流する事になった
一つの家族のお話。
安い。
これに尽きる。
超大作として生まれた作品らしく
宇宙船や未知の惑星における景色は徹底して作り込まれていて
美術だけは本当に素晴らしい。
しかし、それだけのお膳立ての中
どうしてこうも唐突で舌足らずで、興味をそそらない展開を繰り返せるのか。
狙ったチープさというだけでは
到底収まらない視聴者置いてけぼりの連続。
年月という仕組みを使った重みのある仕掛けの中
どうにも薄味なキャラクターの言動が
世界に入り込む事を一々許してくれない。
ストーリーもオチも含め釈然としないまま終わってしまう一作。
『ロッキー』 1976年
監:ジョン・G・アヴィルドセン 主演:シルヴェスター・スタローン
★★★☆☆
しがない三流ボクサーが自分の全てを賭けた一試合に臨み
一夜にしてスターになるお話。
男が拳一本の荒々しさと
その努力と気概で全てを掴み取るという
汗臭くも夢のあるお話。
まさにアメリカンドリームの実現。
70年代後半の時代を象徴する代表作だろか。
とにかく全てが地味ながら
その地味さが共感を呼ぶという見事な手法。
逆転人生だよ、人生はどこからでも奮い立てるんだ。
あのテーマ曲で熱くならない人が居ようか。
最後に劇中から漏れ出てくる
主人公のやりきった顔が素晴らしい。
やりすぎくらいが丁度良い。
そんな印象的なシーンの連続映画。
『ロッキー・ホラー・ショー』 1975年
監:ジム・シャーマン 主演:ティム・カリー
★★★☆☆
深夜のカップルが迷い込んだ
田舎洋館で繰り広げられる狂乱の一夜。
圧倒的な頭の悪い映像演出の数々に
全編が狂気に捕らわれている映画だね。
一体、この製作者は何処まで本気か……
そんなもの全部本気に決まってるよね。
人間誰もがその本質は倒錯者ですよ。
全編、悪趣味ハイクオリティミュージカル仕立ての中に
楽しい瞬間と、裏返しとしての寂しい瞬間、悩みの瞬間までもが
全て詰まっているんだな。
狂乱の中に何処か皮肉が効いたなんとも悪童臭全開の映画。
『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』 1998年
監:ガイ・リッチー 主演:ニック・モラン 他
★★★★☆
借金返済で首の回らなくなた小悪党の4人組みが
苦し紛れの現金強奪計画を企むお話。
突っ込みドコロ満載な
小気味の良いコメディタッチも上々に
コレでもかと言う程、綺麗に話が繋がっていく過程が
とっても可笑しい構成勝ちの一本。
やや、登場人物や勢力が多すぎる感もあるが
人間個性よりは、役割が主体のギミック的な扱いに据える事で
見事に整理は付いており
むしろ、完成度を楽しむ伏線回収作品において
対象は多彩で慌しい程に面白いだろう。
良く出来た作り物である事を
最大限ポジティブに堪能する映画だね。
クライム物だけにやや悲惨な展開もあるのだが
基本、悪党ばかりが登場しているので
最後のオチまで付き合って
何だかんだと笑って見られる良作。
『六本木バナナ・ボーイズ』 1989年
監:成田裕介 主演:仲村トオル、清水宏次朗
★★★☆☆
二人の若さ溢れる主人公が、ヒロインを巡って
ヤクザと対決する破天荒なお話。
『ビー・バップ・ハイスクール』を見た勢いで
そのまま楽しむ事をお勧めする映画。
何と言っても、名コンビそのままでありながら
圧倒的にオシャレで、大人になった二人のパワーが良い。
楽しんでいる最中と言うか乗りに乗った状況と言うのは
見ているだけで活気が違う。
心地よい馬鹿ドモです。
勢にまかせた強引さが楽しめる展開や
キャラクター造形の魅力が素晴らしい昔ながらの大娯楽作。
むしろ、この時代では貴重な映画なのではないだろうか。
『ロビン・フッド』 2010年
監:リドリー・スコット 主演:ラッセル・クロウ
★★★☆☆
フランスからの陰謀渦巻くイングランドを舞台に
人間の尊厳をかけて戦うロビンのお話。
まさかの史劇系作品。
所謂「森の義賊」としてのロビン・フッドの活躍は一切描かれず
十字軍帰りの主人公が、ジョン王の圧制の中
誇り高き一領主として振る舞い
フランスの侵略から祖国を守るという筋立て。
つまりはロビン・フッド誕生の前日譚としての物語だね。
リドリー・スコット+ラッセル・クロウのコンビは
『グラディエイター』にて折り紙つきの
圧倒的な密度でお送りする男臭い映像美。
史劇物として納得できるだけ作りこまれた美術のお仕事と
まさに大作を見せてもらえる喜びに満ちた作品。
ただし、ストーリーの半端感は否めないかな。
ロビン個人の超人的な活躍を描くべきか
あくまで大局的な戦記としての話を描くべきか
または、圧制に苦しむ領土からの自由憲章への誇りを描くべきか。
欲張った結果、どれも十分な深みが貰えない典型ではないだろうか
特に十字軍時代からロビンの周りを彩っていたはずの
仲間連中の影の薄さは酷いよね。
「ロビンと愉快な仲間達」を期待すると肩透かし。
上陸位置を間違えすぎているフランス軍の間抜けさも中々で
クライマックスがある意味で一番の笑い所になってしまっている点からも
大真面目に見られる作品ではないんだよね。
大作感と締まった映像の魅力で押し切る
最新CGによる歴史映画の雰囲気を楽しむ一本だろうか。
ラストへの繋ぎは綺麗だな。
『ロボコップ』 1987年
監:ポール・バーホーベン 主演:ピーター・ウェラー
★★★☆☆
殉職した警官の体を使って作られた
ロボコップという人工ヒーローのお話。
近未来の架空世界の話ではあるのだが
まずこの映画の第一の見所は
「デトロイトってこんなに治安悪いの?」だろう。
この世界観が勝利の要因。
マッドマックスあたりと同じタイプの切り口。
主人公のロボコップは
そのデザインからも
機械としての自分、人間としての自分に悩んでおり
時たま現れる過去の記憶に悩まされる悲劇性も含めて
70年代の特撮ヒーロー作品に親しんでいるほどに
あらゆる定番の連続で面白い。
最後の解釈は実にアメリカンでこれまた面白い。
企画勝負のお馬鹿映画として気楽に楽しめる一品。
『ロミオ+ジュリエット』 1996年
監:バズ・ラーマン 主演:レオナルド・ディカプリオ、クレア・デーンズ
★★★★☆
舞台を現代社会に置き換えた
『ロミオ&ジュリエット』映画。
台詞自体は原作さながらの
時代がかった大仰な言い回しが採用されているため
結果、よく分からないシュールな世界観が
溢れ出てしまった一本だね。
それでも、原作の持つパワーは凄まじく
気付けばそんな違和感はお構いなしに
悲劇の物語に引き込まれている事から
自然とシェイク・スピアの素晴らしさが堪能できる。
途中、シュールな構図は控え目になり
悲劇が進む程、演出も絵作りも壮大でオーソドックスになっていくのだから
ますます、何のための設定だったのかは疑問に残るが
あるいはそんな完璧な原作に対するが故の
抵抗心の顕れなのかもしれないね。
若かりしディカプリオの美しさは溜め息物で
誰もが世紀のカップルとして認められる
完璧な若さがココにある。
これだけで十分な価値の一作ではなかろうか。
シェイクスピア原作である事が
タイトルからも強調されている通り
今作は奇をてらった物ではなく
あくまで舞台を置き換えただけで
中身はロミオジュリエットなのだろう。
『ロング・ライダーズ』 1980年
監:ウォルター・ヒル 主演:ジェームズ・キーチ
★★☆☆☆
南北戦争の終結直後。
敗軍からあぶれ、刹那的な強盗を繰り集団が主人公。
彼らの滅びの様を描くお話。
いまいち、彼らの置かれている状況が掴みにくいよね。
南軍に従事した英雄なのかな。
地元での人気は高く身内の繋がりが強く
劇中には義賊という事場すら登場する。
しかし、時代はそれを許さないという事だろう。
彼らに賞金をかけて追跡する探偵社は
北軍崩れ、南軍崩れの混合軍。
これが時代なのではなかろうか。
大掛かりな強盗を繰り返しつつも
家族や友情を大切にし女性との愛情も育む彼らの姿は
割と普通の人間なんだよね。
ただ、登場人物が多めの割には
淡々とした運びで大きな個性は見つからないかな。
目立つのは2、3人で大した活躍もないままに
彼らの群像劇風の帰結を見せられても
盛り上がりようはない構成。
『ワイルドバンチ』に舞台こそ似ているが
あくまで情緒と言うか、
空気だけを感じてくれという一品かな。
アクションシーンも派手ではあるが
水準以上という事はないだろう。
良くも悪くも1980年代の西部劇。
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