2011年(8)東大雪の渓々を釣り歩く。

8月の一カ月は休釣期間で夏休み。
5人の孫たちとのんびりと遊んだ。
9月は早々に「登山家の龍さん」と十数年振りに道南へ二泊三日の釣行予定。
宿の手配と釣行スケジュールを万全に整えたのだが、台風12号の襲来で前日になって中止を余儀なくされた。

小生は未練がましく強行をもくろんだが「登山家の龍さん」曰く。
登山仲間では「山は逃げない」との格言があるそうで「森さん・渓は逃げない」ですよ。


しからば、単独行で積丹か暑寒別に切り替えようとしたのだが、今度は台風13号の大雨と洪水で10日間も待機状態。
その間は暑いので2カ月休止をしていた「木彫の大作」を再開して気を紛らわす。

今回は以前から予定の生まれ故郷での行事に出て、序でに東大雪の渓々を釣り歩きました。
地元の皆からは洪水がまだ治まっていないので無理だと注意を受けての出発なり。
許された時間は24時間なり。

森 渓秋


その1・音更川の支流「中の川」の巻。

故郷の妻の実家での行事をそこそこに、日暮れ前に「今晩のおかず」を釣りあげなくてはならないのだ。
帯広から真北に80km、ひなびた幌加温泉が今夜の宿だが食事が出ない。

国道は大雪の峠を目指して真北に一直線。
どこまでも続く白樺林。下界は気温28度
標高800mのこの地点は気温11度、もう寒いくらいだ。
三国峠を遠望する。
数年振りで「中の川」のニジマスとオショロコマを狙う。
しかし、目指す「シノスケ林道」は看板壊れてなく「ゲイトが閉まっている」
夕暮れ時で徒歩の時間ない。
国道の反対側の置戸湖(鹿の子ダム)への林道は解放されているのですぐ近場から入渓する。

渓は400mmの大雨・洪水が完全に治まっていない。
随所にあった倒木が造るプールが跡形もなく平瀬になってしまっている。
平瀬続きの渓は笹濁りと増水でポイントが無く探すのも一苦労だ。
魚影も薄い。
河畔に柳の倒木に「大きなヤナギタケ」を見付けて収穫する。
これで今夜は魚のアラ汁だ。
初秋の渓の夕暮れは早い。

1時間釣行で午後6時。
30cmのニジマス。小型のオショロコマ。
これで今晩のおかずは揃った。


その2、幌加温泉に泊まるの巻。

かっては三軒の旅館があったのだが、今は一軒のみ。
目もくらむような渓谷に建つひなびた宿が今晩のねぐらだ。

香川京子似の上品な老女将がたった一人で最後の宿を守っている。
時々はボンンテアが助けに来てくれるそうだ。
今日も温泉源と水源が台風・大雨で故障し修理の応援が来ていた。
温泉は三種類の泉質で混浴なり。
本日は天女の姿無し。
真っ暗な谷間に露天風呂があるが、熊出てきそうで恐ろしい。
風呂の下は深い渓でなお恐ろしい。
今晩のメニュー。
ニジマスとオショロコマの塩焼き、30cmのニジマスの刺身、魚のアラとヤナギタケの醤油汁。
コンビニのオニギリとタマゴ焼き。
缶ビールと山形の銘酒・初孫。

寝袋持参だと宿代は半額なれど清潔なフトンを用意してくれた。
テレビは地デジ化に伴い廃止。
携帯ラジオを聞きながら渓の恵みをいただきました。
1階の小さなホールで居合わせたお中年の客とボランテイアの中に入り話がはずむ。

このセパート犬はボランティアさんの連れ。
メスで4歳(人間で30歳相当だそうです)
犬が苦手の小生は少し緊張。
でもだんだん慣れてくれて横でねそべってくれた。

本日のお客は、横浜来た中年の男性一人旅・もう一人中年男性・岩間温泉への林道が通行止め急きょ訪れた中年の夫婦・夜遅くに来た若い女性登山姿の三人組。
廊下は9時消灯。
翌朝4時半、気温3渡。
東の空が美しい朝焼けだ。
クマネシリ岳(1635m)山系を遠望する。
その3、石狩川本流ダム下の巻。

幌加温泉を早朝5時に出発。
標高1300mの三国峠を越えて走行40kmで 大雪ダム湖に至る。眼下に迫る大雪ダム湖は茶色に濁って今一釣気を削ぐ光景だ。
今回の狙いは産卵期を迎えダム湖より遡上する45cm超の大イワナ(アメマス系)だ。

石狩川本流は広い河原をダム湖より蛇行を繰り返し2kmで魚道の無い大ダムに至る。
本日は増水がまだ治まらず、ダム下は激流が渦巻き魚影は全く無し。
500m下流の林道の橋を目指して釣り下るも魚影は全く無し。
流れも河原いっぱいに広がり水勢も強く立ち込み容易でない。
ルアー竿にしょうか。
それとも丁度1年前に愛妻よりプレゼントしてもらった8.5mの本流竿にしようか?
やはり大洪水の影響で遡上を見合わせているのだろうか?
あきらめ掛けた時8.5mの本流竿の目印が止まり魚信がある。
待望の遡上イワナを取り込む。
期待の釣果も37cmと35cmの2匹のみ。


その4、石狩川本流ダム上の巻。

期待の大ダム下がダメだったので十数年振りにダム上を探る。
本流はここより6kmで最後の砂防ダムがある。
このダム上はオショロコマの楽園でもある。
途中に入るヤンベタップ川と併せて様子を見る。

しかし、あえなく途中のヤンベタップ川合流地点で林道閉鎖中。
台風の影響で林道崩壊。
大雪山の登山も出来ないと注意書き。
右手に入る「高原温泉」までは開通していた。
支流のヤンベタップ川に入る。
昔の情報誌によれば初秋の頃に本流より60cmクラスの大イワナが遡上するとか。
上流域はここもオショロコマの楽園である。
本日は増水が治まらず全く魚影無し。
土産に「ナラタケ」を収穫...残念・映像無しです。
しからば、本流を探るも全く魚信無し。
残された時間が少ないので早々にあきらめる。
流れから林道に登ろうと見上げると美しい「トリカブト」が咲いていた。
家畜も食べないご存知猛毒草です。

その5、小渓のホロカイシカリの巻。

この小渓は大雪ダム湖に直接注ぎこむ単独の渓だ。
しかし、小渓でも 侮れない。
渓秋は平成5年に入渓して42cmを始めとする大イワナを数本釣りあげた実績がある。
以来、数度入渓しているがそれなりの釣果に恵まれた。
上流域はここもオショロコマの濃い渓である。

国道に出て目指す林道へ。
この白雲台へ通ずる林道は紅葉時期はマイカー規制でシャトルバスを運行。
本日がその初日とか。
しかたなく遠くに愛車を止めて歩きとなる。
それでもこの3人の係員は、小生の入渓を許可するかどうかを協議をしてOKだと。
何を考えてるのか?理解に苦しむ。
徒歩がダメならシャトルバスもダメだろうが・と思わないか。
通行規制の橋から見下ろす渓は増水が治まらず荒れ狂っている様子だ。
小渓だが落差がある流れは増水でイワナが溜るポントが見当たらない。
苦戦なり。

あと2,3日もすれば大物の遡上ラッシュが見れるはずだが...残念なり。
それでも1時間で30cmを頭に3匹を釣る。
他に小型のオショロコマ数匹。
平成5年の大イワナ42cmのフイッシュカービング。
渓秋の工房に展示中です。


その6、再び中の川を探るの巻。

約束の24時間に迫ってきたので、石狩川水系を切り上げる。
帰途の残りの時間でもうひと稼ぎを考える。
時間がおしいのでウェイダーを履いたまま移動する。
国道からは離れられないので昨日の「中の川」に戻ることにした。
今朝国道側から渓に入る小道を発見ここより入渓する。

国道より下流域は倒木がプールを造る絶好ポイントの連続のはずだったが、倒木は押し流されて平瀬続きとなってしまった。
ホイント探しに苦労する。
それでも短時間で引きの強い元気な25cmのニジマス3匹の釣果なり。

その7、音更川本流を釣るの巻。

第306新渓  第787釣行

まだひと釣り出来る時間がある。
国道を数キロ下がって三股橋より音更川本流に入る。渓は林道とおなじレヘルで白く濁る流れが蛇行を繰り返す。

平瀬で大場所らしきものは見当たらず。

砂質シルト系の土質なのか濁りが強くて、水中の足元が見えない。
安全を期して河畔の藪こきをしてやっとポイントを探す。
この渓は薄い魚影だ。
短時間だがヤマベと見間違るこの幼いニジマス1匹のみで切り上げる。

この音更川は糠平ダム湖に注ぐ大きな川だ。
途中の幌加地区に発電用の小さなダムがあり渓魚はダム湖からの遡上は出来ない。
それにしてもこのダム上の源流域はニジマスが非常に濃いところだ。
渓秋は一度もイワナの姿をみたことがない。
何時誰がニジマスを放流したのだろうか、イワナはもう駆逐されたのだろうか残念だ。
しかし、オショロコマは源流ほど濃い渓である。

国道273号沿線は、糠平ダム、糠平温泉郷、東大雪連峰、など観光名所です。
約束の時間で帰途に。
幌加地区に残る「旧十勝三股線のアーチ橋の遺跡」数か所に残るアーチ橋は観光名所であり、なんとかの「遺産」指定の貴重な遺物である。

24時間の駆け足釣行でした。
残念なのは台風・大雨・洪水の爪痕治まらず期待の大物に出会えなかったことです。
また、何時の日か再挑戦して報告したいものです。
以上。一泊二日・733km釣行記でした。


渓の恵みを持ち帰り.....楽しい釣行の余韻に浸りました。
幌加温泉の塩焼きの残りでニジマス炊き込みご飯。イワナの筋子の醤油漬け。

函館の龍さんからの到来の焼酎で旨し。
今回キープした、イワナとニジマスを「冬葉=とば」に加工中....一週間は扇風機を掛けて乾燥。