(7)2010年 初夏 道北E渓で難行苦行の末に大釣す


 ここに二冊の釣り誌があります。

 1990年2月発行、山と渓谷社刊の「渓流フィツシングNo9」と1991年10月発行、山と渓谷社刊の植野稔著「渓流巡礼三三ケ所」


 山釣り紀行作家の植野稔さんが道北の暑寒別岳山系を隈なく踏破した釣行記事が満載の釣り誌です。

 渓秋はその一編のE渓に魅せられ1997年以来通い詰めている素晴らしい渓を三度報告します。


 今回は一年前に知りあったフライマンで山岳渓流は初めてのYさんをお誘いしたのだが、都合がつかず釣兄のTさんと二か月振りの釣行となる。





「渓流フイッシング誌」と「渓流巡礼三三ケ所」



 二年振りの入渓だが峠の中ほどから入る林道は直ぐにゲイトがあった。以前は2km位い奥にあったものだが。なんとなく悪い予感が走る。


 ゲイトは錠前も新設されていたが、入林届箱に鍵番号が表示してある。

 次に入林届簿によると今年はすでに15名ほどが入林している。

 その中に唯一釣りの届、一週間前に記入有り。残念、先を越されたか。



 入林届箱のとなりには、羆注意の看板有り。そう云えば峠下の道沿いに「6月某日羆出没」入林注意の看板があったな。今回も羆に出会わないよう、願うのみ。


 他は全て山菜取りと有り。この渓は山菜の宝庫でもある。




第1ゲイトを開錠するTさん。




林道から見下ろす渓筋。雪代水がまだ残っているょうだ。



 林道行くと、両側の藪が覆い被さりひどい荒れようだ。昨年はまったく整備されていないようだ。


 更に見通しの悪い林道を進むと、ロープを三段に張った林道崩壊により通行止めの看板が設置してあるではないか。ここから歩きでは、釣りより歩く時間が多くなってしまう。


 断念して予備の渓へ転進するかと会話を交わしつつロープの支柱を点検していると、山側の支柱の固定が少し緩んでいるのを発見。慎重にづらしてみると。なんとか通行できそう。Tさんに誘導してもらって通過する


 更に進むと山側からの崩落で通行が厳しい。地形図をたよりに入渓地点の距離を測るもまだ遠い。再度Tさん誘導してもらって進むと。


 今度は林道の半分ほどが深さ50m程の渓底へ大崩落しているではないか。ここもTさんに誘導してもらって慎重に進む。行きは山側が運転席だが、帰りは渓側が運転席となり猛暑だが更に肝を冷やして涼しい限りである。




渓底のまで50mの大崩落。


 更に慎重に進むと、今度は大木が林道を塞いていた。さすがにこれは超えられず、身支度をして歩きとなる。



行く手を塞ぐ大倒木。


 林道終点まで行くと、ここもいつもは小さな枝沢が氾濫したのか車止め広場は半分削られて消失していた。




枝沢の氾濫跡。車止めが半分消失。


 午前9時30分、やっと渓に降り立つ。

 気温17℃、水温12℃。遥かに望む南暑寒別岳は未だ残雪がくっきり残る。きょうのこの地方の最高気温は27℃と予報されている。今年の北海道は例年にく暑い日々が続く。




入渓地点。
やはり水量は予想より多い。この処の猛暑で融雪が一気に進んでいるのか。


 この渓は例年のことだが、渓床が非常に滑る「苔が一面にはびこっている」ゆえに水中床はご茶色をしている。やや海苔のような臭いもただよう。

 このやっかいな「苔」秋に向けて自然に消えていく。





やっかいものの「苔」、滑って足をとられてとても危険な遡行となる。


 慎重に遡行して、最初のプールの瀬尻で第一投。一発でTさんに尺上の大物がヒットする。





第一投の大物を慎重に取り込むTさん。


 Tさんの取り込みを写真に収めようと瀬頭から釣り下ると渓秋にも更に大きなアクションが来る。竿先がなかなか立てられず慎重に浮かせると美しい魚体が水面を割る。



Tさんの取り込みと重なり出てきた美しいイワナだ。




早速計測。38cmのこれがE渓の黄金イワナだ。




渓秋にとっては二年振りの大物だ。さあ次は40cmオーバーに挑戦だ。




初っ端からの大物でビクに入らず、きょうの暑さでは鮮度も落ちる。
そこで、水中に沈めてデポすることに。



 一息つく間もなく次のプールの瀬尻でTさんにまたもや尺上がヒット。渓秋が瀬頭から近づくと、強烈引き込みで5.3mの竿先が水中に没し、糸がキンキンときしむ。懸命に持ちこたえるも、あっけなくハリスを切られてしまった。逃がした魚は大きい「推定45cmオーバーか」残念と云うよりは自分の不注意が悔やまれる。先ほどの38cm取り込み後にハリスの点検交換をおこたったのが原因だ。

 過去に0.6号で47cmを取りこんだのに、今回は0.8号で取り逃がしてしまった。返す返すも残念だ。




大きなプール(瀞場)の瀬尻で尺上を慎重に取り込むTさん。




E渓の特徴「黄金に輝く大イワナ」


 Tさんは、今回取り込み失敗が多いようだ。不審に思っていると師匠を真似てハリスを0.8号に落としたそうだ。それて゜今までの太い仕掛けと同じ強引な取り込みは無理でしょう。


 尺上のイワナをこの時点で道糸に手お掛けたらとても取り込めないよ。




結局、取り込み失敗が数匹有り と残念がる。より一段と慎重な取り込みのTさん。


 この渓に数度釣行しているが、尺上ばかりが立て続けに来るのは初めてだ。すぐにビクが満タンに。本日二回目の「デポの腹裂き準備」




尺上揃いの黄金イワナを二度目の「デポ」




蕗の葉を「デポ場所」の目印にする。
奥の大石の間にデポする。


 釣行開始2時間、大物の入れ食いアタックにはまいった。その上、川底が滑って渓秋が一回、Tさんは三回も水浴びする。

 三回目は完全に沈没でウエーダーを脱ぎ水を出し、シャツを絞ることに。



 その上、手招きするので戻って見ると沈没・転倒で竿を折ってしまった。かつ、この荒瀬の深場は本日のTさんの体調では渡渉困難と判断。


 さかんに気して済まながるTさんに2時間でこれだけの大釣りができればもう十分なり。本日目標の「三段の滝」を望めなかったが充実の一日でした。同行に感謝する。



三度目の転倒・沈没でウエーダーを脱ぐTさん。


 もう昼近いが、竿を納めて取りあえず林道より脱出を優先とし昼飯はその後にと衆議一決。デポのイワナを回収しつつ渓を降りる。




先を急ぎつつも、ふと川岸に目をやるとタニウツギの花がこぼれて美しい。


 結局本日のキープは尺上ばかり10匹となった。
 入渓時にTさんに理由を伝えずに20cm以下を一匹キープをお願いしたが十数匹全てが尺上サイズだった。


 小イワナは内緒で「背越し」にようと「酢のボトル」をザックに忍ばせたが結局ダメだった。Tさんに美味しい昼飯のオカズと思ったが楽しみは次回に。


 今回はゲストのYさんが参加出来なかったが、山岳渓流が初めての彼には無理だったかなと思った。


 渓を管理する営林署も林道崩壊で林道維持を放棄したのかな。それであれば、余程のマニアでないと釣行は困難な渓となるであろう。渓秋にとっては逆に歓迎すべき渓となる。


 次回、秋の釣行予定では無理せずに「林道大崩落」手前から歩いて、安全第一を心掛けようと反省する。




最後に暑中見舞いがわりのワンカット



崩落した「群馬の沢」バックに・・・。

暑中お見舞い申し上げます。




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