(3)渓秋の渓魚大全


2005年5月20日追加編集


渓秋にとって、山釣りとはイワナ釣りそのものを意味する。

しかし、
北海道の渓谷にはさまざまな渓魚が棲息する。




深山幽谷の主・山釣りの憧れ 狩場山系F渓
 2001年9月23日




ピンネシリ山系H渓の清冽の中で
 1998年6月10日


余市岳山系T渓の清冽の中で
 1991年8月11日



清冽のイワナに想う



積丹半島H渓にて
 北海道と云えども、天然の渓魚はイワナとオショロコマだけであろう。
 それ故に、山釣りに魅せられるのである。
 よくイワナ釣りは難しいと云われるが、場所と時期の熟考、何時間も遡行する体力と根性が有れば、誰にでも釣れる魚である。
 しかし、この美しい渓々に棲むイワナ達は、確実に減少の一途を辿っているのである。
 匹数とサイズを自制出来る者だけが、真の山釣り師と云えるのである。




イワナ

 イワナは岩魚と表される様に、渓谷の岩陰を住処とする。
 非常に警戒心が強いが、鈍重な感じもする魚だ。
 悪喰、大食、獰猛果敢に攻撃する。
 北海道に棲むイワナは、白い斑点のエゾイワナである。
 オショロコマとの棲み分けの関係か、根室標津を東限とし、知床には棲息しない。
 河川・湖に陸封・残留型を居着きイワナと呼ぶ。
 全て天然魚で放流ものはない。
 保護色なのか渓々による個体差が大きい。


空知ピンネシリ山系H渓のイワナ
 1997年6月1日



橙斑点イワナ

 北海道南部の渓谷で稀に接見する。
 本州系のニッコウイワナ型と云われて居るが定かでない。
 鹿部のK渓、積丹のH渓で出会う。


恵山系S渓の橙斑点イワナ
 1996年4月28日



アメマス

 海や湖、ダム湖と渓流を行き来するイワナである。
 陸封型イワナの親魚である。
 大型化し、60cmを越える物あり。
 そのフアィトは素晴らしい。
 銀色の魚体に白く大きな斑点が特徴。
 雨降りに良く釣れるので雨鱒とか。


積丹山系H渓の大アメマス
 1991年11月11日



オショロコマ



ニセコ系N渓のオショロコマ
 1991年6月1日





日高山系M渓のオショロコマ
 2005年7月17日
 エゾイワナより古い種族イワナ属である。
 朱色の美しい斑点が特徴。
 地球の温暖化とイワナとの生存競争に敗れて、寒冷な源流域にのみ棲息する。
 エサ場の関係と群棲する性質によるのか、魚体は小型が多い。
 水量の多い渓で稀に大型が出る。
 北海道では、ニセコ山系以北に棲み知床半島では、緯度の関係か河口より居着く。
 体色と斑点は渓々により変化が著しく個体差が大きい。
 道央の羊蹄山系では金魚のような真っ赤な物有り。
 また、東大雪の渓々では青みかがってヤマベのような物有り。
 警戒心が薄く乱獲の心配あり。



ミヤベイワナ

 オショロコマの亜種で陸封型。
 然別湖とその流入するヤンベツ川にのみ棲息。
 体長は50cmを越えるものもあり。
 地元の鹿追町で厳しく管理されている。
 年一回の解禁も抽選の上、匹数など厳しい規制あり。
 発見と命名は植物学者 宮部金吾博士。

 大雪の冬将軍は早い、降雪のなかの釣りとなる。


東大雪・然別湖のミヤベイワナ
 1995年10月6日




暑寒別山系E渓にて



ヤマベ

 北海道ではヤマベと呼ぶが、本州ではヤマメと呼ばれている。
 サクラマス(桜鱒)の河川残留型。
 渓流の女王と呼ばれ山乙女と書く。
 その殆どがオスである。
 稀に抱卵したメスがいる。
 北海道では勿論天然物もいるが、殆どがサクラマス増殖の為の放流者である。
 北海道の渓流釣りの一番人気のある対象魚である。
 特に食べ頃サイズの小型を大漁に持ち帰るもの多し。
 春先に降海する2ヶ月は全河川禁漁となる。
 渓々による個体差は殆どない。


道北・初山別山系S渓のヤマベ
 2002年8月3日



尺ヤマベ

 ヤマベ師垂涎の的。
 北海道で一番人気のあるヤマベ釣りも、尺を越えるものは簡単には釣れない。
 水が余りにも透明過ぎて、深さが解らない位の澄み切った、大河の渓でこの大物がが出た。
 尺を越えると、乙女の面影は消えて、もう親鱒の顔となる。


日高山系十勝R渓の尺超ヤマベ
 2001年10月7日





道南松前T渓の尺超ヤマベ
 2004年9月15日



サクラマス



雄冬山塊C渓のサクラマス
 1990年8月17日
 北海道では何時如何なる場所でも鮭鱒の捕獲は御法度である。
 水中で写真に修めて、即リリ−ス。
 ヤマベの親魚で産卵のため桜の咲く頃より遡上し、秋まで居着く。
 初秋の頃より婚姻色の紅色に染まる鮮やかな魚体をよく見る事がある。
 ダム湖や湖で放流増殖している処も有り。
 支えている両手は当時小学生の息子。



チップ

 チップは紅鮭の陸封型で原産地は阿寒湖である。
 その可憐な容姿から姫鱒と呼ぶ。
 湖やダム湖に放流増殖されいてる。
 北海道では支笏湖が有名である。
 稀にダム湖に繋がる渓流で釣れる。
 概して小型が多い、支笏湖でも尺物は珍しい。


日高山系静内P渓のチップ
 1994年11月11日



イワメ(幼魚)



狩場山系S渓のイワメ
 1994年9月3日
 命名と御説は釣友 A青年による?。
 イワナとヤマベの自然交配種とか。
 15年間でたった一匹の貴重種。

 佐々木和男著の「釣り達人たちの裏話」によると、背中の虫食模様からか「カワサバ」とも云うとか。2004年1月20日追記



ニジマス

 体側に虹色の美しい帯があり虹鱒と和訳。
 明治期より移植放流され、完全に同化し北海道全域に棲息いてる。
 英名はレインボ−トラウト。
 繁殖力が強く、放流も盛ん。
 湖、ダム湖では70cmを越える物あり。
 渓流で35cmクラスのジャンプ・テ−ルウォ−クのフアィトは素晴らしい。
 しかし、イワナにとっては大敵だ。
 渓秋は匹数制限を設けず、薫製に最適。


十勝平原・士幌S渓のニジマス
 2004年5月3日




雄冬山系K渓にて



ドナルドソン



襟裳岬S渓のドナルドソン
 1994年10月9日
ニジマスの改良種、成長が早い。
管理釣り場、食用増産用に改良か?。
河口からダム迄の500mの間の三面護岸の渓の入口で釣れた。
居合わせた地元釣師に指摘されるも、ニジマスとの見分けは付かず。
誰がこんな処にまで放流するのか。



ブラウントラウト

 欧州よりの外来種。
 戦後以降の移植か?。
 最近は北海道全域に広がりつつ有り。
 生態系を乱す恐れ大なりと危惧。
 自分本位の放流に憤りを感ずる。
 湖、ダム湖では、80cmを越える物あり。
 シュ−ベルトの名曲の「鱒」とか、赤い斑点の廻りに白い縁取りがある美しい魚体ではあるが、狡猾で獰猛、在来種の大敵なり。


十勝大平原のS川のブラウントラウト
 2001年5月4日



カジカ



暑寒別山系A渓のカジカ
 1993年5月23日
 子供の頃はドンカチと呼んで清流で幾らでもつれたものだが、今では渓流でもなかなか釣れなくなってしまった。
 野宿家でエッセイストの本山賢司画伯によると、「味の素」はカジカから造るのではと云われるほど美味である。
 キャンプの山菜汁のダシに最適。
 また、こんがり焼いてガシカの骨酒はイワナの骨酒に勝る一品となる。



ザリガニ

 30年ほど前には、札幌郊外の沢でも居たものだが、今では渓流でも滅多に見ない。
 H渓の下流域の岩盤底の20cmほどの穴の中に、手を入れるのが恐ろしいほど群棲していた。
 高級なフランス料理の食材と云うが、なぜか哀れで食する気になれず。


積丹山系H渓のザリガニ
 1992年8月10日



アカハラ

 渓魚ではないが北海道の全域の清流で釣れる。
 ウグイの降海型、春の産卵期には体側に朱色の帯が出るので赤腹。
 非常に大型となり、かって47cmの大物を釣ったことも。
 水温の上がる夏場は、渓流の奥まで遡上することもある。
 渓流釣りでは外道扱いでよく岸辺にうち捨てられる。
 外道でもリリ−スか、美味しく食べて成仏させてやるべし。
 臭みを塩で良くモミ落とし、小骨切りをした刺身をショウガ醤油で食すとなかなかの味。


十勝川本流
 2005年4月2日



渓秋の餌釣りへの拘り

 イワナを釣るにはいろいろな技法があるが渓秋はエサ釣りが殆どである。
 山深い幽谷で素朴に単純にイワナとの遣り取りに一番似合う釣り方と思う。
 ルア−や毛鈎釣りは乱暴でイワナに与えるダメ−ジが大き過ぎるからだ。
 エサ釣りでも鈎を飲まれたら直ぐに、鈎素を切ってそっとリリ−スすれば大丈夫だ。
 2-3日で自然に外れるらしい。
 また、何度か体内に鈎のある物を釣ったが大丈夫らしい。
 イワナ釣りのエサはいろいろ試したが、蚯蚓が一番。
 しかし、その蚯蚓も今では田舎でも、農薬の関係かなかなか入手が出来ない。
 釣具屋で買う悲しさよ。


空知ピンネシリ山系H渓にて



ルア−釣り

 渓魚たちはどうしてこんな物に食いつくのか。
 人間の騙しのテクニックには勝てないらしい。



狩場山系S渓のルァ−にきた大イワナ
 1992年10月17日



毛鈎釣り

我が山釣り工房の毛鈎巻きも楽しみの一つだ。
ルア−よりダメ−ジは小さいが、何れにしても騙し釣りテクニックに他ならない。



雄冬山系I渓の毛鈎にきたイワナ
 1994年8月28日



無斑点大イワナ(イワメの成魚)

 昨年の初冬にこの渓の原流で橙点の尺イワナを釣り上げたが、今年は中流で無斑点の大イワナを釣る亜種の多彩な渓であ。
 魚種の再確認のため....釣友のA氏がさる大家に依頼して鑑定中.........自然交配種の可能性大なりとか。


 帯広の釣り具店に展示していた、濃いピンクの大斑点の大型アメマス(72cm)の剥製は音別川の海からの遡上ものとか。
 店主によると最近は判定不能な魚体が多く釣れるとか。

 それをヒントに再考するに、無班点大イワナはイワメの成魚との推測に至る。2004,05,03渓秋追補



中流の小函帯にて


無斑点の大イワナ 42.5cm
 2003年11月1日
 積丹:H渓



朱点大アメマス



2005年3月15日撮影



チビでもトラウト魂有り

 自分より大きいルァ−にアタックしたサケの稚魚に脱帽




2005年4月16日
十勝川JR鉄橋付近



 渓秋が愛読して止まない、かの開高 健もアラスカのキンクサ−モン釣りで斯様な仕儀に、名人に共通した技なのか?





(写真)
「旅人 開高 健」より
開高健の専属カメラマン高橋 f著