第8回 「うたかた」

黙っていた方がいいのだ
もし言葉が
一つの小石の沈黙を
忘れている位なら    谷川俊太郎「あなたに」より

シドニーに住んでいた頃、僕は在豪日本人向け月刊誌の編集社に勤めていた。
担当していた仕事のひとつに、シドニー近郊の学校施設を紹介するという
企画があったのだけど、取材したなかで、とても印象的な出来事があった。
秋の終わり─日本では初夏だ─ に、ナレンバーンという静かな街にある、
聾唖(ろうあ)の子どもたちが通う小さなプライマリースクールに取材に行った。
学校長へのインタビューが済んで、同行したカメラマンが校内を撮影している間、
僕は中庭で遊んでいる生徒たちと話をした。彼らは耳が聞こえないので、当然筆談だ。
生徒たちのなかに、グレーの瞳に濃い黒髪の、エイデンという子どもがいた。
聞けば彼は、音を「色」で表せるのだという。僕は興味を持って、次々に彼に質問をした。
「じゃあ、まず、電車の走る音って、どんな色?」エイデンはすぐに答えた。

   雨に濡れたコンクリート・ブロックの色。

だそうだ。「じゃあ、船の汽笛の音は?」

   キャンバス地の白。

キャンバス地の白、だそうだ。そこで僕はますます興味を持って質問した。
「それじゃ、金属のぶつかりあう音は?」

   お鍋いっぱいに注がれた油の色。

なるほど、とても金属的な色だ。次に、「ピアノの音は?」と聞いてみた。

   大きくて、今にも割れそうな鏡の色。

彼が失った(あるいは最初から持っていなかった)聴覚に対して得た色彩感覚は凄まじい。
シアン、マゼンダ、イエロー、といった原色や基本色だけでなく、
フランスや日本や中国の伝統色までほとんど覚えているのだという。
しかしそれでも世界に満ち満ちているあらゆる「音」を表すには足らず、
さまざまな物や事象を引きあいに出して、メタフォリカルに表現しているのだ。
彼の表現はとても的確で、同時に感覚的で美しく、ニュアンスに富んでいた。
画家の描く、緻密なスケッチのように。詩人の書く、繊細なソネットのように。

最後に、「将来君にもし、何を犠牲にしても惜しくない女の人ができたとして、
彼女の声は、一体どんな色だと思う?」と聞いた。
エイデンは顔を真っ赤にして、首を横に振った。
まわりの子どもたちもいっせいにはしゃぎ出して、彼をつついたり引っ張ったりした。
その日は冬を前にした小春日和で、夕暮れが近づき、芝生が冷たく濡れて来た。
もう帰る時間が来たので、あいさつ代わりに手を伸ばしてエイデンの髪を撫でた。
細い首の上に乗った彼の小さな頭は、水の上の泡のように頼りなく、柔らかかった。


第7回「宇宙」

聞いたことがあるかも知れませんが

宇宙は今も広がり続けています

一般に宇宙はビッグバンと呼ばれる

大爆発により誕生したとされていて

その瞬間から宇宙は今もなお

とてつもないスピードで広がっているのです

しかし 以前からこの事象について

1つの疑問を持ち続けています

それは今もなお広がっている宇宙の先には何があるのか?

つまり広がっている宇宙の受け皿は何なのか?ということです

例えば風船を膨らませるとします

風船は大気(空気)という膨らむスペースがあるからこそ

膨らむことができるのです

じゃあ 宇宙の場合は?

この疑問はもしかしたら既に答えが出ているのかも知れません

でも 宇宙にはまだまだ未解決な事がたくさんあります

そんな宇宙も徐々に身近なものになってきています

宇宙旅行もそう遠くない将来一般的になると言われています

無重力状態を体験したい

地球を外から見てみたい

月に行ってみたい

もし実現したらどんなテーマパークにも負けない

超巨大なテーマパークになるでしょう

生きているうちになんとか

実現して欲しいものです


第6回「トウキョウ」

    東京 東京 東京 東京 東京 東京
    東京 東京 東京 東京 東京 東京
    東京 東京 東京 東京 東京 東京
    東京 東京 東京 東京 東京 東京
    書けば書くほど、愛おしい。

   と、詩人の寺谷修治は書いた。
   もちろんこの詩には寺山修司一流の誇張と虚構が入っている。しかし
   青森出身で生涯その訛りがとれなかった彼が、愛憎入り交じった故郷への
   複雑な感情の裏返しで、熱烈に東京を愛していたのは確かだ。
   これは同じ青森出身の大宰治にも同じことが言える。
   NYやパリにも劣らない、巨大な地下組織のように広がるカルチャーシーンを
   持つ東京は、今も昔も文化や芸術を志す地方の若者にとって、夢そのものが
   マテリアライズされた甘美な桃源郷だろう。

   19歳の春に、大学進学で地方から上京してきた僕は、歌舞伎町の光の洪水や
   新宿西口の、空から降ってきたモノリスのように乱立する高層ビル群の中を
   歩きながら「これこそ文化だ」と思った。
    安っぽいポップカルチャーから目から鼻に抜けるようなハイセンスの
   サブカルチャー、そしてはったりと虚構だらけのアングラ・カルチャーまでも
   内包してさらに拡大を続ける渋谷は、圧倒的にパワフルで魅力的な街だった。
    ヘッドホンでデジタルロックを聴きながら、それらの街を大股に歩くだけで、
   なんだってできる気持ちになった。でも結局は、「自分には何かある」と
   思いながらも、それがなんなのかわからずにイライラし続ける4年間を
   過ごすことになったのだけれど。

   大学を卒業して、1年数ヶ月の外遊の後、東京に戻ってきた僕は、
   大きなカルチャーショックを受けた。東京と、1年数ヶ月を
   過ごしてきたいくつかの街との、圧倒的な差異にである。
   過剰なまでの人と建物の量は餌に群がるコイを、マスメディアによる
   間断ない供給ですぐに死んでしまう情報は、セミの死骸を連想させた。
   それはとてもプリミティブで、なかばアミニズムにも似たオドロオドロしさ
   すら感じさせる光景だった。僕はアパシーが来て、2週間は何もできなかった。

   上京して6年半で、僕と東京の間にいくらかの歩み寄りがあり、いくらかの
   乖離があった。それでもこの街は今なお魅力的だと思う。

   子どもの頃、夕方のニュースで宵闇に染まる山の手の風景がテレビに映るたび、
   小さかった僕は、東京という宝石箱みたいな場所がこの国にあるんだ、と、
   めくるめく期待感に胸をどきどきさせたのを覚えている。
   東京がいつまでも、ヒトのこころを美しく揺らしつづける街でありますように。


第5回「プレゼント」


今回のしりとりエッセイはワードワードの内幕を。
先日、区民会議が開かれました。
その名もしりとりエッセイ、次回予告無くそう会議。
議長は、区長でもある加藤和也。
加藤を納得させるためにディベート開始。
私は、予告有り派。
予告は来訪者の期待も高めるし、うちらも指針があったほうが書きやすい!
などなどいろんな理由を付けて熱く語る。
on 携帯メール。
でもメールの言葉は伝わりづらい。
プレゼン失敗。
結果、前回の予告部分が無くなり、自分でつけることに。
ゼロからの出発。

題名と内容が違う気がする?
今回は「ワードワード」、「トークトーク」、「クールクール」に続き、「プレゼンとプレゼント」!
プレゼントのほうも書けって?
このエッセイ自体がつらい現実の中ののんきで安心できるプレゼントってのはダメ?
明日は忘れてはいけない9/11。
from ground zero


第4回「ループ」

それが天から地上に舞い降りたとき、まず人々は、
その頭上に美しく光り輝くループを讃えました。

天使がいるとしよう。
彼らはひとの幸せのために日々忙しく働いている。
失業した中年男や不条理な暴力に巻き込まれた女、
満たされない家族のひとりひとりに、平安とささやかな幸福を与える。
また時には、すれちがう男と女にちょっとした運命のいたずらを提供したりもする。
天使には、すべてのひとの人生をハッピーエンドにできるほどの
絶対的な力を与えられていないが、彼らはいつも最大量の幸福を願っている。
サンフランシスコに1日の終わりが訪れるころに、
彼らはミーティングを開く。世界中のひとびとに起こった
さまざまな事象を、とても詩的な表現で、ひとりひとり報告する。
「夕暮れの東京では、歩道橋で立ち止まった男が振り返って虚無を見た」
「パリのビガール広場で出会った男と女が時の始まりを知った」
「クアラルンプールのメインバザールで金時計を盗んだ老婆は、
フランシス・ベーコンの亡霊に取り憑かれていた」などなど。

    地上の人口は増えているが、天使の数はそうそう増えるものじゃないから、
    
彼らが不眠不休で働いていても世界はすこしずつ狂っていく。
    
宵闇のビルの隙間、アパートの脇の自転車置き場、化粧台の引き出しや電話の
    
受話器の中にひっそりと残る不幸のしずくを、天使たちは掬えなくなってきている。
    
今日、友人たちの泣いている顔や、満たされない表情を想像するのは
    
彼らの笑っている顔を想像するより容易い。僕らはそういう時代に生きている。

   悠久のときが流れ、あらゆるものが消え去ったあとに、
   残っていたものは、天使の輪だけだったそうです。


第3回「クール クール」

最近の夏の異常な暑さは「ヒートアイランド現象」と呼ばれるものが原因だそう
湿外機からの熱風もそのうちの1つ
自分の部屋は涼しくなるけど、結果的には自分で自分の首を絞めているようなもの
それでもやっぱりクーラーはやめられない
「ノークーラー、ノーライフ」ってわけです
かなり軟弱な宣言です
でもこの前、誰かが次のように言ってました
「東京の気候はもはや温帯ではない。ここ最近で熱帯に移行しつつある」
コンクリートジャングルが本当のジャングルになる日が来るのでしょうか?
川でザリガニを探してたら、アナコンダに出くわしたとか
海外に行ったことがないのに、マラリアに感染したとか
想像しただけでも、恐い、恐い
どうですか?ちょっとは涼めました?

次回は「ループ」で。


第2回「トーク トーク」

「失敗を恐れるな!」
初対面の人とのトークが苦手、という人は多い
そんな人たちに贈る今回のシリトリコラム
必要な唯一のこと
挨拶の時に使える小ネタを用意する、これだけ
それは仕込みネタでもモノマネでもパクリでも良い
失敗を恐れる事なく思い切りやる、これが大事
ウケれば文句無し、でも例えウケなくても何か変わる
その後は話せるようになる
気配はある
作者のネタの具体例をあげたいと思う
・・・
つまらないと言われるのが恐い…
うーん、トークの道は遠く遠く
・・・
今回は失敗か?
恐くないけど

次回は「クール クール」で。


第1回「word ward」

 記念すべき第1回ということで、このHP「word ward」の説明を。

「word ward」 はword wardに暮らす住民達によって作られています
よって制作者は1人ではありません 今はまだ数人にしか住んでいません
このHPを見て自分も参加してみたいと思った方は
是非メールにて住民登録を行ってください
気軽に参加できるコーナーも企画中です
何分今回がHP制作初めてなもんでまだまだ見るに耐えませんが、どんどん素敵になっていく予定なので
「お、ちっとは上達したじゃないか」ぐらいのあたたかい目で見てやってください。
一方から伝えるのではなく、双方から何か伝え合うことができれば幸いです
かなり固い文章になってしまいましたが、やってることはおバカなことが多いと思うのでいつでも気軽にどうぞ

次回は「トーク トーク」で。