シゲチャン日誌・2005年8月

2005年8月1

 我家は森の中にある。今日は朝から薄い雲が空をおおい、森全体が眠っているがごとくシーンと静まりかえっている。ところが、雲の切れ間から太陽が顔を出すやいなや、いっせいに夏ゼミが火が付いたように鳴き始める。この森に何十・何百匹の夏ゼミがいるのかは分らないが、これがいっぺんに鳴き出すと堪ったものではない。それはそれは、割れんばかりの騒乱・狂乱の森と化すのだ。雲が消えて空が晴れ渡ると、気温はどんどん上がり、これに夏ゼミの鳴き声が追い打ちをかけるものだから暑苦しいといったらありゃあしない。この「ジーーー。ジーーー。ジーーー」という鳴き声が、高温で天プラを揚げる時の音にも似て、まるで天カスと一緒に油鍋の中に浸っているような錯覚に落ち入るほどである。


駐車場にあるレバータワーの下段部分。「キャーッ、カワイイー」といって写真を撮り、それで帰ってしまう女性も多い。



2005年8月9日

 昼すぎに、ランドに一台の黒塗りの高級車がすべり込むように入ってきた。ドアーを開けて降りてきたのは、車の雰囲気に反し、黒々と日焼けをしたニッカボッカに腹巻き姿のオジさんであった。そのオジさん、両手で腹巻きをスリスリしながらボクの方へと歩いてきた。
 そして一言。「熊いらんかね?」。ゲッ!!いきなり何を言い出すのだ。すると、ユニック付きの4トントラックが入ってきて、その荷台には両手を大きく広げ、仁王立ち姿の巨大な熊がくくり付けられているではないか。一瞬ひるむボクに、「イヤァー、ハク製の熊だ。入口にでも置いたら、客が喜んで入ってくるよ」と、ニカニカ笑いながらニッカボッカのオジさんは言う。オジさんは尚も畳み掛けてくる「これは、ガォーッ!!とほえる仕掛けをしていて、首を左右に振るというスグレものだよ」。オジさんの勢いに押されて、瞬間、ランドに熊があっても面白いかなとも思ったが、ただでさえ、このランドは怪しすぎるといって入口で帰ってしまう客も多いのに、熊なんぞ置いてしまった日には、入る客も帰ってしまう。客引きのために、ランドに何でもかんでも置けばいいというものでもあるまい。
 荷台の熊をよく見てみれば、全身ホコリまみれであり、爪の何本かは抜け落ち、毛皮のあちらこちらがボロボロに破れていて、詰め物がはみ出している。何とも、憐れみさえ漂うとんでもない代物ではないか。これでは、いくら何でも引き取るわけにはいかず丁重にお断わりする。オジさんは、他でも何軒か門前払いを食ってきたのだろう、あっさりと「そうか・・・」と言って黒い乗用車に乗り込み、続いてトラックの荷台にくくり付けられた憐れなボロ熊は、車の振動でユラユラ揺れながら国道を阿寒方面へと走り去っていったのであった。


このタイプの販売作品が残りわずか。ココハウスの壁面が寂しくなってきた。



2005年8月21日

 懐かしい青年がランドに顔を見せる。5年前の冬、シゲチャンランド用の写真集・ポストカードを撮影するため、写真家の藤井保さんが来てくれた。その時にアシスタントとして同行した長沢君だ。
 あの時は、見るからにひ弱そうで、まだ少年の面影を残す端正な顔立ちの若者であった。和服姿で化粧などし、ゲイ・バー等にデビューすれば、必ずやNo.1となったであろう。そんな彼が5年という月日の中で、藤井さんに鍛えられ、すっかり逞しい青年へと成長していたので驚いてしまった。親でもないが、こういう再会は嬉しいものである。


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