シゲチャン日誌・2004年1月

2004年1月7日

ロス・アンジェルスのデザイン学校に通っているYさんという女性から電話があり、今日相生まで訪ねて来る約束になっている。以前ロス市内にある美術館でボクの作品集「メニー&ベリー」を見てから気になっていて、いま紋別の実家に一時帰国をしているので、この機会に一度会ってもらえないかとのことであった。
いやー本当に来ましたよ。約束はしたけれど、雪道のなか紋別から訪ねてくるなんて半信半疑だった。バスを乗り継ぎながら5時間の長旅である。何という熱意。驚きました。さっそくランドを案内することにする。
長靴で雪をかき分けてゲートに向かう途中、彼女がため息まじりに「雪がキレイですねー」といった一言にドキリ!!とさせられる。ボクも相生に移り住んだ当初は雪の美しさに感動し、長い時間見とれていることもしばしばあった。しかし、月日が流れるとともに感動は薄れ、除雪作業のことを考えると、気が重くなってくる。まぁ、雪国で暮らすとなれば、これが自然な感情の流れというものであろうが、以前からこの心境の変化に戸惑いを感じていて、のど元に魚の小骨が刺ったかのように、心の片隅に引っかかっていたのである。「どーもイカンなー」生活者の目線になってしまっていた。これからも相生で暮らしていくボクにとって、実にいいタイミングでYさんが訪れてくれたということになる。感謝するしかない。

雪の中のランド

雪に埋もれたシゲチャンランドのヘッドハウス。これが砂糖なら…ネ。しかし、春にはことごとく消え去ってしまうというのが、今は信じられない。


2004年1月11日

昨日から降り積もった雪を見て、ココ(カミさん)は「これが砂糖なら、まる儲け」と、のん気なことをいっている。ボクも「そうだなー」と胸の中でうなずく。
ランドのようすをスキーで見回ったけれど、太ももまで埋もれて前に進むことができない。仕方がないのでスキーをぬぎ、スコップで各展示館をつなぐ道を除雪する。ランドは風が強く吹き荒れるので、吹きだまりができやすい。深いところで胸元ぐらいあり、雪ハネというよりはトンネルを掘っているように思えてくる。だが、「東海道も、国道も先人の一歩から・・・」と自分にいい聞かせては、掘る、掘る、掘る。

そらまめでできています

ボクの好物そら豆に目鼻手足をつける。
このバカ元気さは、どこからくるのかは不明。


2004年1月27日

遅い朝食のあと、家の近くの農林道を散歩する。雪が積もって、道と畑の境いが分からないほどの雪原となっていて、人の踏み入った形跡はない。一台のトラックが往復した2本のタイヤの跡が線路のように木禽缶の方へと続いている。これ幸いと、雪が圧縮されたタイヤの跡をたどって歩いていく。
雪原をネズミ・ウサギ・キツネなどの小動物がミシンの縫い目のように点々と歩き回った足跡があり、まるで雪上に描かれた抽象画のようである。その足跡を目で追っていくと、実にさまざまなドラマが展開されているのが分かってくる。それらの小動物が、ただのんびり気ままに歩き回っているわけではないようである。
木の皮をかじったり、雪の中を掘ってみたり、木かぶの下に巣を作って暮らすネズミやイイズナを狙って、エゾクロテンやキツネが荒した形跡などがある。
一見のどかに見える雪原ではあるが、食べる物の少ない冬場は、これらの野生動物たちにとって、この冬を生きぬくためのサバイバルの場でもあるのだ。


LAND TOP