シゲチャン日誌・2003年10月

2003年10月2日

小津安二郎監督作品の無声映画「生まれてはみたけれど」をビデオで見る。小津作品であるから例によって、特別な事件も出来事も起きるわけではない。昭和31年の東京郊外が舞台で、父親と2人の息子との物語だ。タイトルの出だしから、実にゆったりとしたテンポで始まる。ぬる目の風呂にどっぷり漬かっているような気分にさせてくれる。好きだナー、こういうゆるい映画。
出演している兄の方が10歳ぐらい。この映画が配給された昭和31年といえば、丁度ボクも10歳だ。坊ちゃん刈りに、少しほころんだり、ツギ当てのあるセーターに半ズボン姿というのが懐かしい。学校が終わると、いつのまにか近所の悪ガキ達がゾロゾロと空地に集まってきては、たわいのない遊びを始める。このグループに女の子はいない。入れないのだ。悪ガキ達だけの世界。そんな時代だった。タイトルが流れて終わるまで、いつしかボクもこのグループに加わり、ともに怒り、笑い、そして遊んだ。この「生まれてはみたけれど」は戦後まもなくの日本を追体験させてくれ、今日では失われつつあるキラリと光る原石を随所に再発見させてくれる貴重な映画である。とくに同年代の人にオススメです。レンタルビデオの「ツタヤ」にありました。

不思議な感じの写真

今回この日誌に登場した「ホルガ」で撮影したもの。もう一枚同じ写真を撮れと言われても、絶対に無理です。


2003年10月8日

今日は集団と単独行動をとる双方の生き物に遭遇する。ボクの天敵であるテントウ虫が、今日もランドめがけて大襲来。波のように繰り返し押し寄せてくるのを目のあたりにし、「掃除機で吸い取りまくってやる」なんて考えは、すっかりしぼんでしまった。明日から入口にことわりの張り紙を出すことにする。「今日、ランド内はテントウ虫の団体客でにぎわっておりますのでご了承下さい」と。これで帰ってしまう客がいても仕方がない。この時期はやつらの天下なのだから。
かたや、単独行動のほうは津別のキャンプ場に流れている河原で。座り込んだ目の前の流れが、ちょっとした滝のようになっていて、激流となっている。白い波しぶきに見え隠れして、キラリと光る魚影を発見。シャケである。体長60〜70センチほどあろうか。産卵という最後の儀式を終えるために、この難所を乗り越えようと上流めざし、必死にもがいている。しかし、すでにウロコはボロボロに傷つき、疲れ切っているようで余力がない。やがて哀れにも下流へと押し流されていく。ここで果ててしまうのだろうか。あの天敵テントウ虫に比べて、なんと切なく、神々しい姿であろうか。ガ・ン・バ・レ・・・と、心の中で両手を合わせる。


2003年10月18日

中国製の「ホルガ」というカメラを買ってしまった。ボディもレンズも「じえん〜ぶ」プラスチック。安っぽい。値段も安い。ピント合わせは、人と山のイラストで印があるが、これは気休め。レンズは実に暗くて、太陽が照っている時に限り、写る。現代のカメラの中にあって、アナーキーで、カヤの外でのみ生存しうる。どーしようもないカメラなのである。
ところが、上がってきた写真の中に「オー! コレワ!!」というぐらい面白い写真が何点かあったりするのだ。実に曲者なのですヨ、ホルガって。そんなワタクシに、チラッ、チラッと、無言のココ(カミさん)が送ってくる視線が胸を射す。

ランド壁面のマーク

やはり「ホルガ」の一枚。なんせ価格が4000〜5000円ぐらいのシロモノですから。


LAND TOP