シゲチャン日誌・2003年11月

2003年11月1日

先月のことになるが、美術家・陶芸家・イラストレーターが参加するオリジナルの時計を制作販売する展覧会を企画中で、メンバーとして参加願えないかという依頼を受ける。千葉と東京のギャラリーを巡回するとのことだが、ファックスで送られてきた予定参加者の中に、赤瀬川原平さんの名前があったので、がぜんやる気になった。
赤瀬川原平さんは、美術家にして作家であり、数年前に「老人力」という本を出版して、より広く世間に名を知られるようになった異才の人である。「老人力」が出る以前からボクは彼の大ファンで、視点の面白さと文章力にはいつも舌を巻くばかりで、本屋に入ると、先ずは彼の本棚からというのが習慣となっているくらいである。2年ほど前から、ボクがカメラ・カメラと夢中になりだしたのも、実は彼の著書で「中古カメラウィルス図鑑」を手にしてしまったところから始まったのだ。つまり、本をめくった瞬間に中古カメラのウィルスが、ボクの体内に入り込み、あっという間に発病してしまったのだ。
今回の企画展で、赤瀬川さんとボクの作品が並び、会場でカメラの話ができるとなれば、時計をせっせと作るしかない。ところが、締め切りの日も近づき、ギャラリーから送られてきたファックスの参加者リストに、赤瀬川原平という名は、こつ然と消え去っているではないか。「ンー、何んてこった。」こうしてひそかに抱き続けた夢破れ、津軽海峡の海底深く散ってしまったのである。

垂れ幕のひょうたん野郎

この夏、駐車場に飾ったひょうたん野郎のタレ幕。来春この小型版がグッズとして販売されるかもしれない。


2003年11月2日

今年度のシゲチャンランドも閉館し、冬ごもりの準備をする。各展示館を血管のように張りめぐらした旗を降ろし、風で結び昆布状態になった旗を一本一本ほどく。この作業は、漁を終えた漁師が浜に網を広げて修繕している光景に似ているナーと思ったら、急に可笑しくなってきた。
夕日が山に沈みかけた時、突然「グァーッ・グァー!」とけたたましい鳴き声が響き渡った。作業の手を休めて、声がする上空を見上げると、ランドを横切るように白鳥がV字編隊で阿寒方向へ飛んでいく。「オー今年も飛んできたか」。しばらく直進を続け、右方向にそびえ立つイユダンヌプリという山の上で旋回しはじめる。行き先が分からなくなり、迷いだしたのだろうか。何度か旋回を繰り返していたが、先頭の白鳥が確信を持って、阿寒方向めざして飛びはじめると、他の白鳥たちも後に続き、ヒモが空中に浮いたように横一列の編隊となって飛んでいく。冬が来た。


2003年11月18日

明日、上京しアーティストとイラストレーター志望の生徒を対象に講義がある。今回はこの講義と来春に出版する作品集の打ち合わせがあり、一週間ほどの出張になる。
出発前にランドのようすを見に行く。ひょうたん野郎たちが住むイヤーハウスの換気をしようと、ガラス戸を開けたところ、突風が吹いて全員がプル・プルと小きざみに震るえだし、ヒゲまでなびいている。今年は、この大バカ野郎どもがランドの人気を独占し、イヤーハウスのまわりでは、たえず歓声と笑い声が沸き上がり、ランド中に響き渡っていた。
秋口のことになるが、若い女性が帰りぎわに「ひょうたん野郎の、くったくのない笑いって、今時には凄く貴重ですよ・・・」とつぶやくように言ってくれたのを思い出す。

ノーズハウス2階

ランド内、ノーズハウスの2階。中央に渡り板を張ってあるので、1階に展示してある作品を上からも鑑賞できるようになっている。



LAND TOP