シゲチャン日誌・2003年3月

2003年3月3日

オスの鹿の頭がい骨を使った作品が完成する。頭を抱え込むほど難しかった。
頭部は脳・目・鼻・口という重要な器官が集中している。これらの各器官は絶妙な骨の厚みと曲線によって仕切られ、各器官に通じる空洞が迷路の地下トンネルのように続いて頭内部が構成されている。複雑そうでシンプル。もう、見事というしかない。このような物をいじくり回して作品にしようというのは、無謀な行為だろう。
だが物を作る者としてのエゴとサガが許さないのだ。二頭の頭がい骨をノコギリで脳の断層画像のように輪切りにしている時などは、まるで犯罪者のような気持ちにおちいってしまった。骨というのは硬そうに見えて、あっけないほど簡単に切れるし、もろくて薄い。人間の頭とほぼ同じくらいの大きさであるから「人の頭も、こんなものなのか・・・」と思ったら急に悲しくなってしまった。
こんなことがあっちゃならないが、もし人の顔や頭を殴るはめになった時は、くれぐれも手かげん、手かげん。みなさんも気をつけましょうネ。



2003年3月8日

朝食前に目の前を小さな蚊が力なく飛んでいる。部屋のどこか暖かいところを見つけてこの冬を越したのか、それとも生まれたばかりなのだろうか。
先日、息子から引き取って育てているサリンという名のカメの甲羅にテントウ虫が乗っていた。夜間、暖房用にヒヨコ電球を当てているので、甲羅はほどよい暖かさである。「こりゃ、いいや」とめざとく察知して安住の地と定めたつもりなのだろう。部屋の片隅にひそんでいた虫たちが姿を見せはじめ「春は近い」と虫が知らせる今日このごろである。

チケットハウス

5月1日の開館日からは、早起きしランド内の掃除をすませ、10時にはこのチケットハウスに座る日々がはじまる。


2003年3月18日

津別町立恩根小学校の三浦先生と生徒さんから手紙をもらう。同封されてきた写真には、カズヤ君が大きなワニの作品といっしょに得意気にVサインをしている。以前ランドに来てくれた時、アイハウスに展示してあるワニを見て「ボクも作りたいナ・・・作れるかナ・・・」といっていたのを思い出した。冬休みにお父さんといっしょに作ったのだという。カズヤ君のVサインをする気持ちが良く分かる。
自分と等身大ほどの大きな立体物を作ると、この等身大というのがポイントなのだが、誕生したばかりの生き物の生命や息づかいを感じ、その存在感に圧倒される。時間は止まり、身も心も地上から30センチは空に浮いているような不思議な感覚が生まれるものなのだ。この快感を一度味わったら病みつきとなり、もう、どうにも止まらない。もっと大きなもの、もっと大きなものへとエスカレートするしかないのだ。行けーカズヤ。


2003年3月31日

シゲチャンランドの開館日5月1日に向けて、いろいろ準備段階に入ってきた。さしあたって早起きするクセをつけなければならない。早起きといっても8時なのだが、これがツライ。若いころから、毎日決まった時間に起きるというのがどうもネ・・・。
20歳のころ憧れていた東京のデザイン会社に勤めたのはよいが、10時出勤が午後となり、やがて夕方へとずれ込んで、ついに上司に呼び出され厳しく注意を受ける。ところが「ボクには無理です」と答えて、クビになる。若気のいたりといえばそれまでだが、そんな自分が決して嫌いではない。困ったものだ。

オブジェ

左のカニヅメはもちろんボクが食べたものです。食べて楽しみ、そして作品にして楽しむ。つまり2度楽しむわけである。


LAND TOP