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魔鬼砂夜花[イミテーション・ウエディング]魔鬼砂夜花[堕天使に微笑を]魔鬼砂夜花[バイトは家政夫]木原音瀬[プレイス]真瀬もと[スウィート・リベンジ 3]


魔鬼砂夜花イミテーション・ウエディング/桜桃書房 エクリプスロマンス(新書)/夢花李

[あらすじ]
清純派美少女の後藤椛は、実は理由あって戸籍まで女として届けられている男の子。椛の誕生日に、知り合いの三味線の師匠・貞子と事故を起こした母の櫻は、心配して駆けつけた椛に、とんでもないことを告げる。同じ学校で悪名をとどろかせている貞子の孫・橋爪春日と椛の婚姻届を出したというのだ。
その日から椛は、自分を男だと知らない春日と、同居することになって…。
雑誌掲載のタイトル作と「続 イミテーション・ウエディング」、書き下ろし「イミテーション・ハネムーン」収録。

[感想]
ずっと単行本になるのを待っていた本作、まずは嬉しい〜の一言です。もう雑誌に載ったときから大好きだったのです。
しかしこれ、一体BL好きの人にどう受け入れられているか、とっても興味がある作品でもあったり…。まずあらすじにも書いた通り、椛は女装が趣味とかじゃなくて、もうはなから女の子。長い髪も切りたくないな〜と思ったり、スカートもさらっとはいたり、学校の制服だってナチュラルに女物だし、なにより親友も事実を知らないから女だし。実際高校生くらいになるまでバレないって、修学旅行とかの風呂とかどうしてたのあんた、って感じなんですが、読んでてそういうことすら気にならなかったです。面白くて。
たとえば男同士だったら、片方が女の子になっても対して差しさわりのないような作品を読むのは嫌だな〜と思うわけです。じゃあ男女モノを読めばいいんじゃない?と私自身も思っているわけで。でも、もともと女の子として育った男の子はどうなの?と、考えれば考えるほどぐるぐる(笑)男同士の話を読む以上、それが無意味な作品を読みたくたいと常々思っているのですが、難しいことはとりあえず考えられず、作品としてすんなり楽しんで読みました。BL版、「奥様は16歳」って感じですかね。

椛の旦那の春日が、まずいい男なんですよ。ぶっきらぼうな口調と、伝統芸能の人なのもいいね!着物が似合って、粋にこだわる18歳。惚れました(笑)
さだまさしか、っていうほどの亭主関白ぶりなんですが、その裏でまだ16歳の椛が男であるというリスクや将来の可能性のこととか、しっかり考えてたりするんですよね。自分も18歳なのに(笑)特に最後の話は春日の視点で話が進むんですが、飄々としてて捕らえにくい心情がしっかり書かれてて、くーっって感じ。
椛と三味線を教えて暮らすという決められた将来への達観の裏に、自分の可能性にかけてみたいという年相応の情熱や、自分勝手な無謀さや若さがあったりするんですねぇ。でも最後には全て自分が責任をとらなければならないこともわかってて。そして結局は自分が好きだからこそ、全てを背負おうというところが、いいな〜と思うし惚れました。
魔鬼さんの書かれる男って、ほんとに男ですよね。相手に惚れているけど、それで自分の全てを変えようなんて思わないのがいいです。

椛もかわいいだけじゃなく、実は芯がしっかりしていていい子。自信がなくて泣き虫で弱いようでいて、春日を好きだという自分の気持ちにだけはいつも正直に行動しているので、知らず春日を惚れさせていたります。この子がもっと大人になったら、どっかへ行ってしまっても仕方ないと思う春日の気持ちもわかる気が…。16歳だから、将来どう化けるかわかんないものね〜。っていうか年をとったら、骨格とかからも男であることをごまかせないんじゃ…。いらぬ心配をしてみました(笑)

脇役で春日の音に惚れこんでいる木村も、性格は極悪だけど結構好き。なにか自分の好きなものに夢中になっている人が出てくる話は好きです。この人のろくでなしぶりは、「堕天使に微笑みを」で読めます。
春日の弾く三味線の描写やその時の心情に迫力があるのも、すごく興味深く読めました。春日の三味線を聴いてみたいと思いました。
しかしこの二人は、ほんの短編でいいので、将来の話も読んでみたいな〜と思いました。(2001.05.26)

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魔鬼砂夜花堕天使に微笑みを/桜桃書房 エクリプスロマンス(新書)/夢花李

[あらすじ]
親友のバンドが出演するライブハウスに付き合いで出かけた真也は、そこで小悪魔のような美少年・克充に声を掛けられる。その夜は誘いをやり過ごした真也だが、翌日サボりに出向いた学校の保健室で、数人の男に襲われそうになっている克充を助けて以来、気に掛けるようになる。露悪的に振舞う克充のかわいい一面を知って、真也も惹かれていくが…。
タイトル作と続編「至高の、黒」収録。

[感想]
はあ〜、いい話ですねこの作品。好きです。私のツボのけなげな受が出てくるんです。かわいいです、克充。
見てくれの良さに寄ってきても自分の都合で振り回すような男しか知らず、派手な噂もたくさんで嫌がらせを受けても、心のかわいさを失ってなくて、一人でなんとかしようと強がっている様が、もう全部可愛くて頭ぐりぐりなでたくなります。
今までの経験で自分が汚れていると思い込んでいる克充が、真也が自分と付き合っていると周囲がわかったら迷惑がかかると思って、一生懸命自分だけが言い寄っているんだという演技をするところがいじらしい。その他にも相手に迷惑を掛けないように、っていうことばっかり考えているのが、切なくて仕方ないです。

攻の真也はこれまたいい男です。外見もいいらしいんですが、そんなのは二の次だね。なにより内面がいいと素直に思わせてくれるのがいい。ぶっきらぼうで、不器用で、上手いことはなにひとついえないんだけど、言葉になるとすべて本心、嘘がない。まあ、あまりにもストレートすぎるところもありますが。そんなだからそっけないのかと思いきや、結構克充にはラブラブで、読んでて恥ずかしくなるのもいいです(笑)
「至高の、黒」で激しいセックスで感じる自分を汚いと思い込んで知られたくないと思っていた克充に、真也が言う言葉が、もうすんごくいいのです。うきゃ〜と思って大興奮。かっこいいじゃねぇか〜!!(笑)
この話は好きだってお互いの気持ちを確認しあって、それで終わるんじゃないところがよかったです。それ以降だって、色々あるもんね本当は。過去の自分と未来に向き合って行こうと思えるようになった克充に、よかったね。って思いました。最後のオパールに込められた意味のエピソードも素敵。しかし黒いオパールって見てみたいな〜。オパールは好きだ。

そういえば克充に無体なことをした木村は、「イミテーション・ウエディング」にも出てきます。しかしこの人、いいんだか悪いんだか、悪いんだろうけどなんか憎めなくて困りました。ひとつ決めたことがある人には、弱いんです。木村メインの話も読んでみたくなりました。(2001.05.31)

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魔鬼砂夜花バイトは家政夫メイド 俳優と家政婦 1/二見書房 シャレード文庫/暮越咲耶

[あらすじ]
父親の会社の倒産で高校に通うのも危なくなった緒方稔は、担任から住み込み家政夫の仕事を紹介される。男が家政婦?と訝りながらも、お金のよさにつられて決めた緒方だが、連れて行かれた仕事先は、ゴミ捨て場もびっくりの恐ろしい家で、しかも雇い主のゴミ男は、人気俳優・岳彰の江阪武彰で…。

[感想]
サブタイトルに1とあるとおり、シリーズものです。
簡潔に説明すると、顔しか取柄のない壊れた攻・江阪×気の強い受・緒方って、とこでしょうか。RPGゲーム好きにはたまらないであろう、途中にはさんであるお遊びも、なかなかいい感じで、とっても面白かったです。

受の緒方は、気が強くて責任感もあってでも可愛げもあって、なにより女の子みたいな美少年とかじゃなく、普通の高校生の男の子っていうのがいいです。まつげ長くて、髪さらさら色素薄い美少年、みたいな登場人物もいいんだけど、このジャンルだと食傷気味だからねー。地の文に稔じゃなくて緒方って書いてあるのも、男の子のことを書いてあるんだな〜と言う感じの印象で好きです。
そして一方のゴミ男の攻・江阪は、これがもうどうしようもなくて好きだな〜。自分が付き合うなら嫌だけど、なんかバカな子ほど可愛いという感じでたまらないです。顔しかないんだな〜というところがありありとわかる普段の生活も、ここまで行くと愛しいよね(笑)惜しむらくは江阪の顔がいいというエピソードが緒方視点でしか語られていないので、イマイチ実感できないのが残念。もっと仕事のこととかが書いてあると、見た目と中身のギャップが強調されたかな〜と思いました。しかし徐々に明かされていく江阪のゴミ部屋の描写は迫力ありました。想像して息苦しくなったもん(笑)
個人的には江阪のマネージャーの鳥羽が、腹の中でなにを考えているのかが気になります。江阪とやっちゃってるのかな〜(笑)

年齢、生活環境、価値観、金銭感覚、全て違うっていうのは、本の中で緒方が語っていることですが、そんなふたりがどうやって歩み寄っていくかが、この作品の読みどころなんでしょうか?勢いとテンポでこの1冊目は楽しく読んだのですが、最後まで行っても結局二人にたいした進展はなかったような気がするので、2冊目以降どうなるのかが一番気になります。もしこのまま勢いだけでばたばた進まれても、私はちょっと嫌かも…。というわけで2巻に期待。(2001.06.03)

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木原音瀬プレイス/オークラ出版 アイスノベルス/館野とお子

[あらすじ]
横山は、優秀な営業成績で本社に移ってきた後輩の加賀と、パートナーとして働くことに。顔は整っているが、性格はきつくて人を寄せ付けない加賀を最初は敬遠していたが、一緒に行動するうちに言葉の裏表のなさと意外に素直な性格に、好感をもつようになる。横山は背中には天使の羽と、会話した人の言葉が嘘か本当かわかる不思議な力という誰にも言えない秘密があったのだ。そんなある日酔った加賀に告白された横山は、その言葉に嘘がないことに戸惑いを覚えるが…。

[感想]
木原作品にしては、えぐられるような痛みがないストーリー展開で読みやすい感じがしました。しかし新書なのに文字ぎゅうぎゅうに詰まってます。思わず文庫を一冊開いて比べたら、こっちの方が字が小さかったです(笑)館野さんのイラストもぴったりで、全体の雰囲気を優しくしていました。

加賀はゲイで、横山は羽があることが障害になって、誰とも深く付き合うことなく生きてきた、ということなんですが、加賀はプラス性格もあると思いました(笑)いくら好きな人にはキツクなるって言われても、冒頭で上司に一緒に頭下げてくれた先輩に、暴言を吐いていたのは印象が強烈すぎる…。この作品を読んでて、木原さんの書く人間てボーイズラブ的な性格の味付けを恐ろしく無視した極端さだなぁと思いました。ちょっと意地っ張りで素直になれないけどはたから見るとそれが可愛い受って、結構よくある性格付けだし、私もそういうの大好きなんです。でも加賀までいくと、極端だし見てて呆れるし嫌悪感もある。香水もつけすぎると悪臭だっていうのと一緒だな〜と思いました。加賀の内面をメインに書いているから、まだ可愛げのあるように見えますが、じゃなかったら多分怒ってた。待ってるだけで自分からの努力もないし、それを言い訳するし、謙虚過ぎるのも傲慢なんだな、と色々な意味で学びました…(笑)。
でもそういう加賀の殻が横山と関わることで、ばらばらと壊されていくのは面白い。木原さんの書く内側から壊されていく人って、読んでいていつもドキドキするので。加賀の持つ臆病さとかって、決してないものだとは思えないし、嫌悪感と可愛さが微妙なバランスであるという感じです。

横山の羽に関しての設定は、どうにも読んでて違和感がありました。最初の方で死んだ父親が天使だからって説明されてるんですが、はいそうですか、って私には言えないさ…。まあ羽のことを突っ込んでたらそれだけで一冊終わりそうだしいいのかもしれないんですが、ちょっと微妙。羽の秘密があるからこそ加賀との関係が進展した部分はあるんだろうけれど。どちらかというと加賀の心情を追っている部分が多かったので、横山の弱さや嫉妬や苛立ちの部分がいまいち物足りなかったです。もっと読みたかった。それがもっとわかると、最後に加賀が横山を抱きしめるシーンがもっと素敵だったのになぁと思いました。思いが通じ合った後も、加賀が横山に仕事で負けたくないと思う気持ちとかが男って感じで、よかったです。

加賀の友人さおりにはかなりドキドキさせられましたが、あんまり嫌いになれなかったです。ああいう女のズルさを書かれて不快に感じても、その心も理解できるような気がするので憎めないです。むしろさおりとの関係に甘えるような加賀に、一発お見舞いしたい感じでした。
色々突っ込んだり思いながらも、ラストは爽やかでよかったな〜と思いました。なにより木原さんの作品で、先に明るい広がりがあるところが衝撃と感激でした。(2001.06.07)

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真瀬もとスウィート・リベンジ 3巻(完結)/新書館 Dear+文庫/金ひかる

[あらすじ]
アルジーに愛している言葉で伝えたバート。アルジーからも同じ気持ちを感じるが、言葉で伝えてはもらえない。それでも傍にいたいという気持ちとは裏腹に、ある日アルジーから別れを告げられ失意のバートは、アルジーの祖父・オズボーン公爵の跡取問題で監禁されてしまうが…。
雑誌掲載の「プロブレム・キス」と書き下ろし「with you」を収録。

[感想]
2巻の感想はこちら
遂に最終巻。さようなら私の、バート(涙)。最近では稀に見る程、あなたは私の好きな受でした。優しくて可愛いくて強くて。
言葉はバートの方からしかなくてもすでにラブラブしいふたりですが、アルジーの最後の一歩を踏み出すまでにはさらにこれだけの事件がないといけなかったのね…。というわけで、アルジーの後継者問題、アルジーの娘クリスティナの気持ち、バートのアメリカ行きと色々あって、ただのアホ貴族なんじゃないかと思われていた(とうか私だけが勝手に思っていた)アルジーも、ようよう自分の気持ちを認め前向きに生きることができるようになりました。よかったね。

雑誌掲載の最終回「プロブレム・キス」の方は、この作品のなかで一番初めに読んだ話なので、すでに中身を知っており…(笑)その時は、はっきりと言葉にはしないけど傍にいてほしいんだということをバートに、伝えたアルジーに満足していましたが、やっぱりこの作品に関しては書下ろしまであって、最終回という感じがしました。最後、アルジーの言葉に涙を流したバートに、私も泣きました。

自分の過去の思いとバートへの思いを、0か100でしか持ち続けてはいられないんだと思い続けていたアルジーより、過去のアルジーまで受け入れ愛するバートの方が、大人だなぁとしみじみ思いました。愛は地球を救うじゃないけれど、バーとはアルジーを救っている。けど救っているなんて思いもしないし、なにか自分があるごとに成長しているし。なんかねぇ全て愛です。書いてて恥ずかしいけど(笑)そして救いと言う点では、この作品はJUNEなんだと思います。

この作品長いし、Hも少ないし、登場人物が横文字だし(それが苦手なのは私…笑)敬遠されることもあるかもしれませんが、とってもオススメです。全3巻で、主人公ふたりの気持ちをじっくり描いている良作だと思います。それにH少ないって言っても、なんかちょっとした描写に色気があって、そのまま書いてあるよりもなかなかHくさいシーンも多々ありましてよ。ってなぜかHシーンの説明で終わる(笑)(2001.06.11)


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