そっちじゃないぞ、と引き留められるのは、これで何度目になるか。
「あの、ごめんなさい」
こんなことなら、最初からロディに地図を渡して自分がついて行った方が良い。
けれどロディは決してそうはしない。
「人について行くだけでは、自分で地図が見られるようにならない。間違えていたら言うから、思うとおりに進んでくれ」
「ええ・・・」
「せめて城内は歩けなければ、今後、仕事にならないだろう」
「そうね・・・」
地図とにらみ合って、眉を寄せる。
ええと、これがこっちで・・・あっちが行き止まりで・・・。
ぶつぶつと呟きながら難しい顔をしていると、しばらくそれを眺めていたロディが急に吹き出した。
「え?どうしたの?」
「いや、普段のは迷っていても、涼しい顔をしているからな」
珍しいものが見れたと笑う彼に、はそうかしら?と首を傾げた。
「ああ、そんな顔をしていれば、誰かが気付いて助けてくれるかもしれないな」
答えてロディは、地図をくるくると回転させ続ける彼女からそれを取り上げ、正しい方向に固定して見せた。
がそれを受け取って、地図と周囲を見比べる。
ここならこれが目印になる、と一点を指差して説明するロディの言葉を、彼女は神妙な面持ちで頷きながら聞いた。
とても分かりやすい、丁寧な説明。
「すごいわロディ。なんだか、出来る気がする」
笑顔でそう言って一歩踏み出すと、しかし彼は苦笑してその肩を引っ張った。
「。そっちは今来た方だ」
「あら?」
慌てて方向転換して、もう一度地図を見ると、もう既に地図の方向も分からなくなっている。
「あの、ロディ・・・ごめんなさい」
うなだれて、下からそっと彼を見上げると、責められることなど無く、ただポンポンと頭を撫でられた。
「大丈夫だ。少しずつ出来るようになればいい。頼れる時には私にも頼ってくれ」
戦えばあんなにも強いのに。
地図を見れば迷い、料理をすれば鋼の味。
・・・まったく、目が離せないな。
小さく笑ったロディはもう一度、彼女の地図をくるりと回して、目印を指差して見せた。