【 甘え上手 】 |
「ディーン」 ベッドに転がって新聞を広げ、ハンティングのネタを探していた ディーンの脇にサムが腰掛けた。 自分の名を呟いたサムの声音に、ぴくりと眉根を寄せる。 「ディーン」 もう一度呼ぶと、サムは重ねたクッションに頭を預け、 仰向けに転がっているディーンの腹の辺りに そっと頬を摺り寄せてきた。 やっぱり。 そう思ってためいきをつくと、新聞を脇に避けてくしゃくしゃと 柔らかなダークブロンドを撫でてやる。 もう何十年も彼の兄をしているキャリア上、 それがサムの甘えたい時の声なのだとすぐにわかった。 ディーンはその声には逆らえない。 撫でられると、サムは許しを得たかのように 嬉しそうにシャツ越しに鼻先をまだ柔らかいディーンの乳首に こすりつけてくる。 「…ッ、ナンだよ、おい、でっかい甘えんぼ」 易々と受け入れてしまうのが腹ただしく、 そういってぐりぐりと軽く頭を小突くと、怒ったのかサムは ぷくりと起き上がった小さな突起にTシャツ越しに噛み付く。 ぎゅっときつく噛まれて、擦れる感触と刺激に ディーンはヒッと躰をびくつかせる。 ちらりと見た顔は、甘えん坊な弟のものから、 すっかり男臭い雄のものへと変貌している。 Tシャツの両胸がべたべたになるまで噛みつかれた頃には、 既にふたりの立場は入れ替わっていた。 ***** 「ッ、サム、サミー、…ぅあ…ッ、あ、も、…っ」 ぶるぶると全身を痙攣するように震わせて、 ディーンが出したいと必死に願う。 腹の下にいくつもクッションを押し込み、うつぶせにさせた兄に 背後から覆い被さって穿つサムは、 ディーンの両手を拘束するように掴んで 彼の射精を阻んでいる。 サムが腰を深く押し付けるたび、 ディーンの濡れた前は乾いたクッションの粗い布地に 押し付けられる。 そのままきつく擦り付けて達してしまいたいのに、だが それだけでは刺激が足りず、なのにサムは ディーンの前に触れて彼の欲望を慰めることも、 自ら触れる事すらゆるさずにじわじわと 深みを犯して自分だけの快感を追っている。 「くそ、…、bitch…!」 ビッチ、ファック、と必死に悪態を吐きながら、 どうにか達したくて腰を蠢かせるディーンの動きは サムを悦ばせるものにしかならない。 「あぁ…も、頼む、サミィ……ッ」 どんなに文句をいってもじわじわとトロ火で炙るような 動きにとどめ、ディーンのなかを味わうような 律動をくりかえすサムに、最後には根負けしたのか ディーンは半泣きの声で喘ぐように懇願し始めた。 プリーズ、と甘く鼻にかかった普段より高めの声で 希うディーンに、サムが逆らえる筈もない。 汗と共に立ち昇る、興奮したディーンの香りに くらくらと眩暈がしそうになりながら、サムは 幸福感と快感と、そしていつも彼の願いに流されてしまう 自分に対する悔しさとを同時に噛み締める。 「…そうやってカワイイ声で甘えれば、いつでも 僕が言う事聞くとおもってるんだろ、兄貴…?」 うなじに噛み付きながら、律動を早めるサムに、 スプリングがギシギシと壊れそうな悲鳴をあげる。 サミィ、いやだ、手、離せ、…!と本気で 泣きじゃくり、もがいたディーンの声が サムを高みへと追い詰めた。 押し入り、更に奥へと目指しながら、 低く呻いてサムは熱を兄の中へ深く吐き出す。 手で自らを慰める事をゆるされないまま、ディーンは 叩きつけられた熱に耐え切れず 待ちかねた射精とは違う感覚に突き落とされる。 触れたこともない奥を焼けるようなサムで いっぱいに満たされながら、ディーンは自らを解放した。 ぐったりした躰のまま、泣いた事が恥ずかしかったのか 散々文句を言いながら一緒にシャワーを浴びて躰を流し、 倒れこむようにしてディーンは眠りについた。 「甘えん坊なのはどっちだよ……」 その彫刻のような横顔の、少し腫れた瞼に そっとくちびるを触れさせながら サムはためいき混じりに呟く。 眠っているのか怒っているのか、 一瞬眉を顰めたように見えた 兄からの応えはなかった。 END------------------------------------- 090616 |