【 雷鳴が聞こえる前に 】 【21】 |
しがみついたまま、なあ、と耳元で呟く。
「サミー…、なあ、サム…?」
出来るだけ甘く聞こえる様に、耳に首にチュッと何度も柔らかく口付けながら名前を呼んでみる。
「ディーン、まだ…」
「もう、大丈夫だ。な?しよう」
拒否する言葉は聞きたくなくて、お前の…と言いながらボクサーパンツの中に手を滑り込ませようとすると、手首を掴まれてボスッと、それでも痛くないように枕に仰向けに押し付けられる。
「ディーンはさ…僕が、したくないとでも思ってるワケ?」
「だってどんなに頼んでも、お前、挿れてくれないじゃねえか」
怖い顔をしてサムはディーンを上から見下ろしてくる。
「久し振りだから、今ディーンのナカに入ったら…ディーンが、泣くまで、止められそうにない」
…初めての時みたいに、と顔を近づけて不敵に囁かれ、有り得ない位散々泣かされた初めの時の事を思い出して身震いしそうになる。確かにあのときサムは容赦なかった。だが、そんなことは忘れた振りをして笑い、泣かせてみろよ、と言ってみた。
サムは怒ったのか、ぐっと顔をしかめて睨んでくる。
苦しいからやめろって言われても、止められないんだよ?とコドモを諭すように言われて苦笑する。
「怒るなよ、サミィ…お前になら、俺は、…泣かされても、いいんだ」
手を押し付けられたまま、キスをする程近くにあるサムの顔に伸びあがって近付き、顎をちろりと舐める。びくっとしたサムにくちびるを捧げる様にして差し出せば、ようやく耐え切れなくなったように、熱く薄い唇にふさがれる。
腕を頭上で掴まれたまま、舌を引っこ抜かれそうに吸い上げられ、噛まれて唾液を飲ませられる。
身体を隠していた上掛けが落ち、何も着けていない身体にサムが割り込んでくる。むき出しの性器に、ボクサーパンツを着けたサムの腰が押し付けられて揺らされる。
「ンッ、…フ、ンッ、ム……ッ」
くちゅくちゅと音を立てながら絡ませる舌の音と、布越しに固くなったサムに擦られて痛いくらいのモノに痺れる程の快感を感じる。
やっとくちびると腕を離され、サムが心配そうな顔になって何か言うよりも前に、起き上がってサムの下着に手を掛けた。今だけは、どうしても止めて欲しくなかった。
「ディーン…待っ…!?」
擦り下ろすと既に上を向いている性器を掴んで顔を伏せる。張り出した先端を咥え込もうと口を目いっぱい開けて飲み込むが、うまく入れられずにまた咽そうになる。仕方なく、根元を掴んで扱きながら、舌を伸ばして全体を舐め回してやった。
必死にそれをするディーンに、諦めたのかサムは押し留めようとする動きをやめ、そっと頬に手を添える。
柔らかく頬を撫でられて、ぞくっと背筋に電流が走るのが分かった。先端を甘噛みして割れ目に舌を這わせ先走りを吸い上げる。
ちらりと見上げると、頬を赤らめて苦しそうなサムと目が合う。と、サムの下腹がひくっと震えるのを感じた。
―俺はただ、サムのを勃たせて、乗っかろうと思っていただけだったのに。
ディーン…ッ、と低く囁いて、サムは先を咥えたディーンの茎を掴む手ごと自分を数度強く擦ると、え?、と思ったディーンの顔に向かって、狙ったように思い切り吐き出した。
反射的に逃げようとすると、髪を掴まれて、数度、かけられる。
目に頬に胸元に、散った熱いそれがとろりと落ちる。ねっとりとした粘液の感触に、ぶるっと身体が震える。こんな不快なのが快感に感じるとしたら俺は相当ヘンタイだ、とディーンは思う。
「ゴ、ゴメン、ゴメンね、ディーン!」
我に返ってあわあわしながら、サムがタオルで汚れを拭いてくれる。謝りながら、でもすごくキモチ良かった、と呟かれれば、悪い気はしない。拭きとった唇にご褒美のようなキスを何度もされているうちに、ふと少しづつ眠気を感じ始めた。自分では大丈夫だと思っているが、やはりまだ身体は本調子ではないらしい。
「あれ…ディーン、これ…」
仰向けに寝かされたディーンに追い被さろうとしたサムが、ディーンのものにそっと触れる。
枕から頭を上げて、あれ、とディーンも思った。
先ほどまで勃ち上がっていたと思った性器は、いつの間にかくったりとして、何故かびしょびしょに濡れている。
まさか失禁をしてしまったのかと戦いていると、それに指を触れたサムがくん、と匂う。それに赤面した。
「おしっこかと思ったけど…違うみたい。でも精液でもなさそうだし、…先走りかな?」
こんなに濡らすぐらい、僕の美味しかったの?と笑顔で聞いてくるサムは本当にSな奴だとディーンは思う。
うるさい、黙れ、と言いながら、それを救い取るようにゆっくりと弄るサムの顔から眼を逸らす。サムは皆に優しくて親切だ。なのに、ディーンにだけは酷く意地悪なのだ。
解剖される動物みたいに足を大きく開かされて、サムがゆっくりと項垂れたそれを含むのを感じる。不思議と、同じ行為の筈なのに、サムにする行為は奉仕している感が強く、自分がされる時の行為は、ディーンを焦らして喘がせるための、サムの楽しみの一つのような気がして少し憎い。その差が大きさのせいだとは思いたくはない、考えないようにしようとディーンは気を紛らわす。
「アッ、あ、…くそっ……サ、ム…ッ」
初めから容赦なくディープスロートをされて、尻に手を回されて強く揉み込まれると、急激に限界がやってくる。先程の行為で一度達した性器を、痛いくらいに吸い上げられる。
ア、ア、と情けなく、堪え切れない喘ぎを漏らしているうちに、あっけなく沸点を超えてしまう。びくびく震える性器を最後の一滴まで絞り切るようにして吸い取られる。柔らかくなった敏感な弱弱しいソコを咥えられているのは動物としての急所を掴まれているも同然で、快感とは裏腹に何処か生殺与奪権を握られているようで恐ろしい。
それなのに、まだだというようにぴちゃぴちゃとサムが再びそこを舐め始める。
もういい、というように頭を押し戻そうとすると、サムが顔を上げた。すると尻の狭間にゆびを沿わされて思わずびくつく。
「もうこっちのほうがいいの?」
待てないの?後ろの方がイイなんて、やっぱりビッチだね、ディーンは、と清々しい笑顔で笑いながら言われて、もうなんとでも言え、と思う。
先程までの行為でサムのゆびをゆっくり含まされていたからまだ柔らかいとは思うが、サムのものが入るのかどうかは不明だ。サム自身を受け入れるのは本当に久し振りのことだった。
両手で腰を支えて、ぐり、とサムが猛って濡れたものを何度も押し付けてくる。何もしていないのに、サムのものはもう十分なほど猛っている。腰骨を掴むサムの手を、思わず上から握った。
お前だって俺のを舐めてこんなに濡らしてやがるくせに。―お前だって俺の事が好きなくせに。
そう思った瞬間、また涙が零れそうになってディーンはぐっと堪える。
強く腰を掴まれ、濡らしてぐぐっと深く押し入ってこようとするサムの熱。サムの鼓動。サムの命。
感じた瞬間に、何かが胸の奥で溢れた。
「…、と、」
「え?」
「もう…、二度と、忘れんじゃ、ねえぞ…ッ」
くそっと言いながら、ディーンは、目から零れる水を止められない。
…ウン、と涙声で言いながら、一度屈んで腕で顔を覆って震えているディーンに口付け。サムはキツ過ぎる久し振りの兄の中に、灼熱ごと深く押し入った。
ひくひくと泣きながら顔をしかめて喘ぐディーンは、サムを罵りながらも抱き締めようとする。その手をベッドに押し付けて骨が軋みそうな程に揺らす。苦しさに喘ごうとする唇を塞いで、全部をサムだけで一杯にしてやる。
「うッ、ウ、ンっ、サ、サムっ、サ、ミ、ッ」
必死に切れ切れに喘ぎながらもサムを呼ぶ、ディーンの真っ赤な頬を舐める。拘束していた手を離してやると、すぐに伸ばされた手に首を引き寄せられ、無理な体勢でそれでもくちびるを合わせる。きゅっとディーンの奥が締まり、歓喜を伝えてくる。熱くて焼き切れそうな中にくびり殺されそうなほどに握り締められ、サムは息を吐いて衝動をやり過ごす。
見栄も体裁もなく、ただディーンを感じる為に、ディーンを感じさせる為にサムは動いた。熱い汗に濡れた足を抱え上げ、深く埋めて小刻みに揺らすとディーンはあっ、あっ、く…っ、と仔犬のような苦しそうな声を漏らしてびくついた。
途端、奥でぎゅっと締めつけられ、腹に温かい濡れた感触が叩きつけられる。息を止めてもっていかれそうなのを堪え、ふっと弛緩していく身体を赦さずにイイところをめちゃくちゃに擦り上げてやると、達しながら、ひくひくと痙攣するようにして、快感と痛みの狭間でようやくディーンが泣き始める。誰も知らない、サムだけに見せるディーンの顔。
それを目にして、サムは激しい快感の極みに到達する。
誰よりも強くて、そしてサムの為に、誰よりも弱くなる。
そして、誰よりも美しいサムだけの兄の奥深くに。彼の為に溜め切った欲望の全てを解き放った。
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