【 雷鳴が聞こえる前に 】
【2】















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『ディーン…ディーン?』

 大丈夫?と、サムが心配そうな顔で上から覗き込んでいる。

 自分がまたセックスの途中で意識を飛ばしてしまったのだと気付いて、羞恥と疲労に顔を歪めて舌打ちをした。

『水飲む?』

 頷くと、冷えたボトルが渡される。

 半分ほど飲み終えてサムに返すと、残りをぐびり、と飲み干す喉仏の動きが見えて戸惑った。

 こんなにも、服を着ている時と着ていない時の印象が違う奴って少ないんじゃないだろうかと、比較的真面目にディーンは頭の何処かで考える。

 自分も勿論鍛えてはいるが、兄弟でも体質が違うのか、サムの鋼のような逞しさとはどこか質が違う。

 童顔で一見真面目な好青年風に見えるくせに、服を脱ぐと驚く程野生的に見えるなんて―女性からしたら、たまらないだろう。 

その上、内面は本当に恐ろしいほど誠実で浮気知らずときたら、ケッコンなんかした日にはマイホームパパ一直線だ。

 きっとサムを好きになる女性は、男を見る目があるんだろう。

 大体、サムは自分から声をかけてまわる事なんてしない。

出会う女性達が、秋波をかけていくのを口だけ笑顔を作ってそつなくかわしていくだけなのだが―――

ふっとサムの怪訝そうな視線と絡み、まじまじと見つめていた自分に気付いて目を逸らすと、頬に触れられる。

『ディーン?…今、エッチなこと考えてたでしょ』

驚いてなっ、何言ってんだ!と、怒って手を振り払おうとする。すると、ぎゅっと大きな手に握り込まれる。

『誤魔化してもダメ。なに…?言ってよ。僕の身体見て…また、したくなった、とか?』

頬にチュ、チュッと何度も口付けながら、抱き込むようにしてサムの睦言は続く。

馬鹿言ってんじゃねえ、三回もヤッといて、俺を殺す気か!!と反論すると、サムはにっこりと笑って対抗する。

『違うよ、三回イったのはディーンだけ。一回目は、ゆびだけでイッちゃったから…だから僕は、二回しかイってない。OK?』

それはお前がだめだいっちまうヤメロって言ってるのに奥をぎゅうぎゅう押してめちゃくちゃ抜き差しするからだ!と思っていると、もう少し、したいな…、と囁いて口付けるサムに、反論する前にくちびるから言葉を飲み込まれる。

一枚皮膚を剥がされて全身が性感帯になったように、触れられ過ぎて敏感になった身体に、圧し掛かって擦り上げるように揺れながら、サムは深い口づけを繰り返す。

熱い身体で乗られて、物理的にでなく、身動きがとれなくなる。

抵抗しようとした手は、いつの間にか引き寄せるようにサムの背中を髪をかき回している。サムの熱いものが腿に触れて、下腹が震えた。

熱い舌で口腔をざらりと舐め上げられて、ふっとサムの熱いソレを含まされた時の事を思い出してぞくりと産毛が逆立つ。

最後にちゅっと口づけて、離れた濡れた唇を、指が辿る。それだけなのに、ビリっと体中に痺れが走った。

サムの手管に、こんなにも翻弄される自分が憎い。

コロコロ這っていた子供の頃から、この俺が貴重な青春を捧げて必死こいて育ててやったというのに。こんなこと、教えた覚えはなかったのに。

 

『ディーン、好きだよ』

 

くちびるにゆびで触れながら囁かれて、…bitch!と悪態をつきながら重い身体を起こす。なんてカンタンなんだ俺は、と思いながらも、ゆっくりとサムの望み通り、股間で待っているモノに顔を伏せる。

全部含むことなんて絶対にできやしない。先端に吸い付いて、必死に舐め回し、脈打つ幹の裏筋を手で擦り上げる。優しく後頭部を撫でられて、胸の奥がしめつけられる程愛しさが込み上げる。

気持ちいい、ディーン。そう言われて、行為の息苦しさとは裏腹に、頬が緩む。そんな自分の表情が、サムからは見えない事に心から安堵した。

 

サム、サミィ……

 

こんな事は、長く続かない筈だ。そうに決まってる。幸せはいつもすぐにディーンの元から去っていく。そうだ、こんな―微温湯の中で柔らかく甘やかし合うような優しい時間は、すぐにオシマイが来てしまう。

張り詰めたサムが口から引き摺りだされる。このあとは、きっといつものように好きだすきだと言いながら、サムが圧し掛かって、そして当たり前のようにディーンの中へ深く入ってくるのだろう。

疲れ切った身体でも、サムが望むことを罵りながらも悦ぶ自分がいる。サムのする事なら馬鹿みたいになんでもゆるしてしまう。  

兄貴失格だ。しっかりしろディーン。

そんな風に自分を叱咤する想いとは裏腹に、サムが欲しくて体と心に燻ぶる欲を感じながら、ディーンは湧き上がる愛しさと終わりの見えない幸福感を感じていた。












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