【 雷鳴が聞こえる前に 】 【18】 |
ふと目覚めると、消灯後なのか、病室の電気は落ち、階段からの薄明かりだけがほんのりと視界を照らしていた。真っ先に、握っていたサムの手が消えている事に気付いて慌てる。
不自由な体でぐるりと見回すと、ベッドサイドに、スペアのベッドが出され、そこに窮屈そうにサムが毛布を被って横たわっているのが見えてほっとした。
狭くて寝づらいのか、サムは顔を顰めて長い手足を縮めている。
ぎしぎしと軋む身体をどうにか起こし、2本も刺さっている邪魔な点滴を引っこ抜いてベッドから降りる。
ふらつく身体でそのまま乗り上げるようにしてサムの上に覆い被さると、一瞬何が起きたのかわからなかったらしいサムは、ハッと身構えて、それからすぐに身体の力を抜いた。
「ディーン…!?だいじょう……ッ」
何か言おうとしたサムの口をくちびるで塞ぐ。
まだうまく動かない身体で、吸い付くようにして舌を絡めて貪った。
欲情と言うよりも強く、ただサムを確かめたかった。サムの身体を。サムの熱を。サムの命を。
慣れたサムの体臭を嗅ぎながら、震える手で必死に身体をまさぐる。
面食らったようなサムは、そんなディーンをどうにかして押し留めようとして宥めた。
「ちょっ、ちょっと待って、ディーン…!まだ身体が本調子じゃないんだ、そんなことは…」
「イヤだ…したいっ、…しろよ、サミー…ッ!」
そんな事はまだ無理だとどうにか柔らかく収めようとするサムと、必死にただ欲しがるディーンとの攻防はしばらく続いた。
「わかった!わかったから落ち着いて、ね、ディーン…ほら、ここじゃ無理だから、ベッドに上がろう…掴まって…」
折れたサムに抱き締めて宥められ、荒い息を抑えながら抱き抱えられてベッドに戻される。
お前も、というように手を伸ばすと、困ったように笑ってサムがベッドに上がってきた。
「わかってる?本当に、死ぬところだったんだからね…?ちょっとだけだよ…」
ぎゅうっと抱き竦められて、耳元で囁かれる。
たまらなくなって、サムの下腹に手を這わせた。
「ちょっ、ちょっと待って、ディーン!」
ジーンズの前だけ開けて下着の中に手を突っ込む。まだ柔らかくて温かいサムのものに愛しさを感じて、手で揉み込む。根元から擦り上げ、裏筋を引っ掻いて先端を弄り回しているうちに、どんどん硬さを増してきて濡れた感触に動かしやすくなる。
「ディーン、…ディーン、どうしたの…?」
荒い息で、それでも心配そうに覗き込む、サムの頬に、目元に口付ける。
くちびるを塞ぐと苦しいのがわかっているのか、サムも口にキスはしてこず、頬や額をくちびるで辿られる。
先端を指で強く擦ると、サムは額をくっ付ける様にしてディーンの手ごと包み込み、吐き出す動きと共に腰を押し付けられる。
血流と同じリズムで数度吐き出されるその灼熱を、サムの手に包まれた掌に、愛しさと共に受け止めた。
はぁ、…と息を整えながら、ベッドサイドのウェットタオルでゴメン、と手を丁寧に拭われる。
始末をして、再び抱き締められ、サムははじめてディーンの身体に熱が灯っていない事に気付いた。
「ディーン……?」
「いい、このまま…」
まだ本調子でない身体は、愛しさに熱を呼び起こすちからすらないらしかった。
心配そうなサムの背中に腕を回して、抱き込まれて目を閉じる。そうしてようやく、不安でいっぱいだった心が息をつける。疲れ切ったディーンの身体に、穏やかに吸い込まれるような眠りが訪れた。
翌朝、ディーンが目覚めると、病室のドアにこんなのが挟んであったんだ、とサムが苦い顔でぺらりと紙を持ってきた。
何かと思ってみると、『病室での性行為は厳禁です』と書かれたメモだった。
別に物凄い喘ぎ声をあげた訳でもホンバンした訳でもあるまいしにな、とディーンは全く気にせずに丸めてその紙をゴミ箱に投げる。
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