【 雷鳴が聞こえる前に 】
【14】













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The day of the umpire

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無防備な寝姿を見て、しかもそれをネタにしてこっそりと一人で抜いてしまったという最悪な出来事の後で、彼の隣のベッドなんかでまともに眠れる筈もないとサムは自己嫌悪に陥っていた。だが、長いドライブと無駄に考え過ぎて頭を使ったことでやはり疲れていたのか、いつしか眠りに落ちたサムは、またあの夢を見ていた。

 

サムの夢の中に現れたのは、やはりディーンだった。

無意識のまま、ずっとそうではないかと思っていた。気付く事が怖かっただけだ。夢を理解する鍵は、いつでもサム自身の手のなかにあったというのに。

サムは、そうして、待ち焦がれたディーンを再び抱き締め、昨日の続きをしようとした。

手で触れると、引き寄せられる。熱く弾力のあるくちびるを押し付けられ、待ちかねたようにしがみ付いてくる。

ディーンは、まるで長い間引き裂かれていた恋人とようやく巡り会えた夜のように、ひたすらにサムを求めた。

胸板に顔を押し付け、匂いを嗅ぎ、唇を這わせてキスをする。懇願するように額を押し付けられて、たまらなくなってサムは体勢を入れ替え、彼を床に押し付ける。

どんなに乱暴にしても従順に受け止め、ディーンは拒むということを知らないかのようだった。

彼が欲しくて猛ってしかたない欲望を、ふっくらした唇に上から屈辱的な体勢で押しつける。必死にくちびるを開いて、ディーンはそれを含もうと努力するが、全ては入らない。無理に突っ込むわけにもいかず、仕方無く彼の美しいかたちの口と顔とを、それでべたべたにしてから、滑らかでしっとりと汗ばんだ体中を屹立したもので辿り、彼をサムの先走りのいろに染め上げた。

自分のゆびでうしろを解させて、その姿を鑑賞する。顔を赤くして何もかもサムの言う事を聞き、耐えて喘ぐ彼が愛しくてたまらなかった。

足を開かせて、上に乗らせる。きつさに苦しみながらもディーンはそれを必死に飲み込み、その後は喘ぎながらいやらしく腰を振る彼の前で揺れる、勃ち上がった欲望に触れることを禁じた。

ずっと長い間、彼を求めていた。

 求めて求めて、自戒して諦めてそれでも尚諦めきれず、そうしてやっと手を取ることをゆるされた相手だった。曖昧な暗闇の中で、彼だけがサムの世界で鮮やかな色を放っていた。サムがディーンを好きになるのは、当然の摂理だった。何一つ、疑問に思うことはなかった。

その時、この世で何よりも求めていたものを与えられて、サムの心は歓喜に湧いていた。それなのに、ディーンは今まで見たどれよりもたまらなく哀しそうな表情をしていた。

どうして?ディーン。泣かないで、大丈夫、僕はそばにいるよ?

サミィ、サム、サム…と、切なそうに繰り返す、彼の目から零れる涙を一粒残らず掬いとり。彼を求めて際限なく猛る欲望を一滴残らず彼の中に注ぎ込む。

本当は、夢の中の彼にたくさんの問いかけをしたかった。

けれど、夢の中の自分は何一つ言葉を発することができなかった。サムの名前だけしか発さなくなった彼の、何か言いたげな哀しそうな瞳の色だけが、欲に濡れたサムの目にも深く焼き付き、そして消えることはなかった。











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