※ご注意です※
以下はjajeの妄想小説です。
意味のわからない方、興味のない方は、
ご覧にならないようにお願い申し上げます。

【 歯医者の恋人 】







 擦りガラスを入れた瀟洒なつくりのドアを開け、入ってきた彼を一目見た瞬間、うっかりジャレッドはぽかんと口を開けてしまった。

 痛そうに頬を抑え、僅かに細められた瞳は涙目で。

 コンディションはこんな時間に歯医者に来ざるを得ないくらいだから
最悪のようだが、彼はそこらでは簡単には見ないほどの美しい容貌をしていた。

遠慮がちに受付に近寄って来たすがたはすらりとしているが、
デニム地のシャツを着た躰は案外鍛え上げられている。
足が長い。何の職業なのだろうと一瞬興味がわいた。

 身長は、誰と接しても見上げられてしまうジャレッドと、面と向ってもそれほど差がないくらい高い。180cmは超えているだろう。

 精悍な男性の姿をしているのに、潤んだグリーンアイズが頼りなく
ジャレッドを見つめている。
 何も言う事が出来ず、ジャレッドはぼうっと彼に見入ってしまっていた。



「…すいません、仕事がどうしても抜けられなくて」

 ぼそぼそと言う彼にはっと我にかえって、

「いえ、お気になさらず」

と慌てて言う。

「えっと、ご紹介のご連絡をいただいていた、アクレスさんですよね」

 はい、という彼に簡単な問診票を手渡し、早速診察台へ促す。

ちらりと見た問診票には、「ジェンセン・アクレス 31才」というプロフィールが書かれていた。
 年上か、とジャレッドは何気なく思った。




 診察台で痛そうな顔のままライトに照らされ、開けた彼の口の中を見た瞬間、ジャレッドは本日二度目の驚きに目を見開いた。

 ―完璧だった。

 彼の歯並びは、完璧としか言いようのない物だった。

 寸分の狂いも無く、左右対称に両方の歯がそろっている。

 呆然としていると、まぶしそうに目を細めた彼が、不安そうに眼を上げてきた。

「これは、随分痛んだでしょうね」

 かわいそうに、といいながらジャレッドはあまりの残念さにマスクの下で溜息をついた。

 レントゲンを撮ってみなければわからないが、見る限りでは治療痕がひとつも見当たらない。

 そんな美しい彼の歯の、左奥上。

 #15。第二大臼歯。

 その歯の側面に、ぽっかりと大きな穴があいている。

 勿体無い。こんなに美しい歯に、ひとつだけあいた地獄の穴のような虫歯。

 ちょっと沁みるかもしれません、と言い置いてから軽くエアーを掛けると、途端に身を竦める。

「あぁ、神経までいってしまってますね…これは、神経をとらないとだめかも」
 言うと、彼はなんて恐ろしい事をいうんだというかのように、目を大きく開けてジャレッドを見つめた。

「神経を抜くの、怖いんですか?」

 聞くと、彼はしばし迷った後、目を潤ませて僅かに頷いた。
―可愛い。

怖いか、などとは普通本人が言わない限り、歯医者はきいてはいけない。

 恐怖感を助長させる可能性があるからだ。
 だが、今このクリニックには彼とジャレッドは二人きりで、口さがないスタッフ達は誰もいない。


「じゃあ、3Mix-MP法を試してみましょうか。成功するかどうかは場合によりますが、神経を抜かずに残せる可能性があります」

 とりあえず、今日は遅いので痛み止めと抗生物質を渡しますので、それでまた後日の予約をしましょう、と言うと、彼は縋る様にジャレッドを見た後、こくんとうなづいた。









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すきになったのは 歯 でした


ぶらうざもどるでおねがいしますー