※ご注意です※
以下はjajeの妄想小説です。
意味のわからない方、興味のない方は、
ご覧にならないようにお願い申し上げます。

【 歯医者の恋人 】
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 夢の中で、ジャレッドは、ジェンセンに必死に告白をしていた。


 毎週君に逢えるのが楽しみで、もうここのところその為だけに生きてる。

 予約の時間のちょっと前になると落ち付かなくて、寂しくなると君の歯のレントゲン写真見て心を落ち着かせてる。

 食事に誘ってくれて天にも昇る気持ちだった。

 ひとくち味見させてくれたリゾットは、今までの人生で食べた中で一番おいしかったと思う。

 ワイン飲むのは僕の前だけにして欲しい、だって頬がピンクに染まってて、なんだかとてもエッチな感じに見えるから。

 予約なんかなくてもいいから、毎日逢いたい。

 君に触りたくて、キスしたくて、服を脱がせて、それから、それから……



―つまり、一目逢った時から、もうどうしようもないほどに好きになっていたのだと。




 それを聞いていたジェンセンは、あーはいはい、とか、わかったわかった、とか、腕上げろよ、とか、靴を脱げ、とかよくわからないことを言いながらジャレッドの必死の告白を片手間に聞き流していたように思う。

 それが哀しくて、ジェンセンは僕のこと嫌いなの?と聞くと彼の動きがぴたりととまった。

 ねえ、答えてよ。僕のこと、どう思ってるの。

 そう問うと、夢の中の彼はふと顔を上げてじっとジャレッドの目を見つめた。
 酒が効いているのか、その頬は僅かに赤い。

 彼はピンク色のくちびるを開いて、小さな声で呟いた。

 










 ピピピピピピピ……という小さな電子音がどこかから響いてくる。

 ジャレッドの目覚ましではない。携帯でもない。いったい何処で、この音は鳴っているのだろう。

 重た過ぎる瞼をどうにか開けて、ジャレッドはずっしりと何かを乗せた如き頭の重さに息を吐いた。

 こんな状態になったのはいつ振りだろう。

 大学を卒業した後は馬鹿みたいに遊びまわる事も一緒に卒業したつもりだったのに。

 二日酔いにはなっていないようだが、かなり呑み過ぎだ。


 無意識に音の原因を探し求めて手を伸ばすと、何かあたたかいものにゆびさきが触れた。

 ぎゅっと掴むと、「ン……」とそれは声を発してうごめく。

 驚いて目を見開き、起き上がる。



 自分の部屋だった。

 だが、何故かベッドではなく、リビングルームのラグの上に寝ていたようだ。

 そして、目の前にある、あまりの座り心地の良さに値段も見ずに買ってしまったアイボリーの革張りのソファ。

 伸ばした掌で掴んだそれは。

 自分の上着を毛布代わりに羽織り、ソファの上で路地裏で眠る猫のように寒そうに身を丸めたジェンセンのシャツだった。


 あまりの驚きに、声を掛ける事も出来ない。

 延々鳴り続けているのは、彼のジャケットのポケットからはみ出ている携帯のアラームのようだ。

 だが、それに眉をひそめながらも余程眠いのか彼は起きる様子を見せない。

 恐る恐る携帯を引き抜くと、脇のボタンを押す。

 耳障りな電子音はようやく止まる。携帯の時計が8:16を差しているのがかろうじて見えた。

 音が止むと、すぅ…という彼の健やかな寝息が聞こえてくる。

 呆然と見入るジャレッドの目の前で、ソファに置いてあったフワフワのクッションを抱きまくら代わりに抱き締め、くるんと身を縮めて眠る様はあまりにも可愛らしく、動く事も出来ずにまじまじと眺めてしまう。

 舐めたのか、ピンク色のくちびるが僅かに濡れているのを見つけて、ジャレッドはようやく昨晩のワイン勝負を彼に持ちかけた出来事を思い出す。

 仕事で悩んでいた彼をどうにかして元気づけてやりたかった。

 だが、その後一体どうやって帰って来たのだろう。

 そしてどうして、彼はここで寝ているのだろうか。

 もしかして、と一瞬心臓が跳ね上がったが、自分の衣服も彼のものも多少寝乱れてはいるものの何一つ肌蹴てはいない。


 いつまでも眺めていたいが、この頭の重さをどうにかしたい。

 ジャレッドは極力音をたてないようにしてまずバスルームに向かった。



 ザッとシャワーを浴び、歯を磨いてTシャツとジーンズに着替える。

 幾分かすっきりした気分になって戻っても、まだジェンセンは眠っていた。

 シャワーを浴びる前に気付いて、今更だがとブランケットを持ってそっと彼の体に掛けたが、ジェンセンは身じろぎひとつしなかった。

 本当はちゃんとしたベッドで寝かせてあげたいけれど、ここまで熟睡されると起こす事は憚られる。

 ジャレッド気に入りの、フワフワの肌触りのブランケットと枕に包まれて、先程までしかめられていた眉は今はふわりと緩み、気持ちの良さそうな顔で眠っている。

 随分疲れていたんだなあと思う。

 それなのに、あんなやけのような勝負を持ち掛けて、自分は考え無しだったとジャレッドは反省した。


 とりあえず、髪を乾かして、コーヒーを淹れて、そして朝食を作ろう。

 そうしてジェンセンを起こして、昨日のお詫びをしなくては。

 決意をすると、ジャレッドは立ち上がり、そっとキッチンへ向かった。








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