※ご注意です※
以下はSPNのS×Dのパロディ小説です。
意味のわからない方、興味のない方は、
ご覧にならないようにお願い申し上げます。

※R-18要素を含みます※

【 愛をおしえて 】
【1】












 何を考えているのか、いつもディーンには良く分からないが、サムは怒っていた。

 十字架への呪いも解け、フックマンは消えてようやく解放された彼女は、確実にサムを求めていた。

 例えそれが寂しさからでも、男女の恋愛なんてのはそうやって安易なところから始まるべきもんじゃないのか、とディーンは思う。

 出会いは必然だし、お互いフリーだ。寂しさを紛らわすためだけに身体を合わせて、一体何が悪いと言うのだろう?
 
 流れていく景色は心地の良い晴天の下の郊外でたまに緑田園が広がり、窓を開けていると、とても気持ちがいい。
 そんな中で暗い雰囲気の車内に内心で溜息をつきながら、ディーンはちらりと助手席の様子を伺う。
 すると、車に乗り込んだ時のポーズのまま、サムはむっつりと難しい顔で前を向いていた。

 彼女を守りながらフックマンと格闘したせいで、腕には痛々しく包帯が巻かれ、逆の肩までもを軽く痛めている。

 今回は確実にサムのほうが重労働だったしな。そう思って、いい気分で風に吹かれながら運転していたディーンがなんとか労ってやろうと考えていると、唐突にサムが口を開いた。

「…そうやってさ、ディーン。僕を女の子とくっつけようとするの、やめてよ」

 どうやら、発ち際に言った「残るか?」という言葉がお気に触ったらしい。

「別に俺はくっつけようと思ったワケじゃないぜ。あの子がお前を…」

「だから、それが余計なお世話だって言ってる。僕は常に恋愛の相手を探してウロついてるディーンとは違うんだから」

 皮肉にも反論する事が出来ない。下手に言い返すと100倍になって返ってくることを身を持って実感しているからだ。

「―だけどお前、あの子の事、イイと思ってたんじゃなかったのか?」

 良さそうな子だったじゃないか、と茶化さずに真面目な気持ちで聞く。

 彼女は、牧師の娘で、華美でもなく真面目そうで―しかも美人だった。
サムの好みではないのだろうか。二人の雰囲気はなかなかお似合いだったのに。

 これ以上の何を求めるんだ――そんな気持ちで聞くと。

「…浮気者は嫌いなんだ」

 そっぽを向いて景色を眺めるようなポーズをとりながら、サムはぽつりとそんなことを洩らす。


ウワキモノって。



 ディーンは内心で呆然としながら平静を装って運転を続ける。

 確かに、彼女は数日前に彼を殺されたばかりだったけれど。

 そして更に数日後には友人を同じ部屋で殺されたばかりだったけど。

 その上、自分と父親も襲われたばかりだったけど。

―だけど、そんな状況だからといって恋に落ちてはいけないという決まりはないだろう。


「―僕のこと、堅物だと思ってるんだろう」

 むっつりとした声でサムが呟く。

 あぁ!思ってるさ!!そんな事言ってたら世界中から戦争がなくならない限り恋も結婚も子作りもできやしない!

 お前隣の部屋の物音が気になってセックスを途中で止めるタイプだろう!?


 思い切りそう答えてやりたかったけれど、勿論そんな事はいえない。

「―まあ、今回は縁がなかったんだな」

 俺がもっとイイ女を見つけてやるから!ははは!と
 乾いた笑いを浮かべてアクセルを踏み込む。

「…やっぱり全然わかってない…」

ほんの小声で溜息をつきながらサムが呟いた言葉は、このカタブツ野郎め!と内心でサムを罵っていたディーンには
聞こえてはいなかった。

**********

 昨日は寝てないからな。

 そう言って、隣町に入ってしばらく走り、手近なモーテルを探す。
飯はどうする?と聞くとサムは無言で首を振る。
 雰囲気的に一人で食事をしに行くわけにもいかず、仕方なくディーンは見つけたモーテルに車を入れ、サムがチェックインしている間に隣のガソリンスタンドでビールとチョコバーとスナックを買って後を追った。

 ビール飲んでシャワーを浴びて寝るか。
やっと部屋に落ち着き、そう思っていると上着を脱いだサムが近付いてきた。

 椅子に座ってビールをあおっていたディーンを、肘掛に手をついたサムが威圧的にじっと見下ろす。

―これはヤバい。

 危険な雰囲気にようやく気付いたディーンは、そ知らぬ顔をしてビールをあおり、
「さーて、シャワーでも浴びて一眠りするか。お前もビール飲めよ」
と何気なく立ち上がる振りをしようとするが、サムに退く気はないらしい。

「…サミィ、お前も疲れてるんだろ?今日はもう―」

休もうぜ?そう言いたかったのに、困ったようなディーンの顔の前に、ずいっとサムは怒ったままの顔を近づける。

「ディーンって、ホンっとうにわかってないよね。それでよく女の子引っ掛けられるよ…あぁ、一夜だけの関係が多いから、相手の気持ちなんてわからなくてもカラダだけ喜ばせられれば問題ないか」

 わざと怒らせようとするようなサムの言い草に、眉を上げるが、とりあえず本当の事だから別に怒る気にもならない。

「…何がいいたいんだ、お前」

「ディーンには、僕の気持ちなんてどうでもいいんだなってこと。」

「そんなこと言った覚えないぞ」

 サムのことを何よりも優先してきたではないか、と思い、ディーンは軽く胸を張る。

「そういうんじゃなくて…僕の、想いってことだよ。」

わかる?と言われて、なんとなくわかりたくもないがわかってしまう。




 数週間前―――1度だけ、サムと寝た。

 苦しさの余り、縋るようにして手を伸ばしてきたサムを、拒むなんていう事など、ディーンには思いつかなかった。

 男同士だからオンナノコと寝るようには簡単には行かなかったけれど,痛みと共に、予想外の思いも寄らない壮絶な快感を覚えた。

 だが、翌日からすぐ次の狩りが待ち伏せをするように潜んでいて。

 気の迷い、というしるしをお互いに植え付けながら、無言でそのことは忘れた振りをしていた。

 サムもそうだ、と。そう思っていたのに―――。

 狩りの間は、ナンパはしても、シケこむことはしないとサムと約束している。
息抜きのナンパの為に、狩り中にサムの側を離れて互いが命を落とす事にでもなったらシャレにならないし、それはディーンも了承していた。

 だから、しばらく誰とも寝ていない。―お互いに。

 そのディーンに、キスをするような至近距離まで近付くと、サムはゆっくりと左頬を辿るように指先で撫でた。

 触れるか触れないかのタッチに、ぞくっと震えが走る。

「…どうして、わかってくれないのかな…」

 こんなに……と、辛そうに呟きながらくちびるをあわせようとするサムを顔を背ける事で拒む。

 その時、はっ、と皮肉そうに吐いた息に、サムのスイッチが切れる音を聞いた気がした。

「ディーンがそういうつもりなら、別にいいよ」

 にっこりと笑ういつものイイヒトそうな顔とは異質の、凍るような笑み。

 サムの、隠された昏い内側をほのめかす、それ。

 サムを苦しみの底から救い出したい、だけれども悪魔のようなサムは見たくない、そんなディーンを内心震え上がらせるような、みた事もない表情をサムはしていた。

 ぐい、と荒く顎を捕まれる。ぶつけるように口付けられて、顎を割られて無理に口を開けさせられる。

 ずるり、と熱い舌が口腔内を荒らし、舌同士を擦り合わされてキツク吸われる。

 「んっ…ん、ぐ…ッ」

 苦しさに顔をずらそうとしても顎をつかむサムの手は外れない。

 まるで犯されているかのように深く、ひとしきりディーンの柔らかい唇を貪った後、ようやくサムは顎から手を離した。

 「はぁっ、はぁ、…くそっ!」

 どさっと背もたれに体重を預けて、強くつかまれ過ぎてジンジンするあごと、互いの唾液でべたべたの口を手荒く拭う。

 何か言ってやろうと顔を上げる前に、目の前のサムに右手をぐっと捕まれて肘掛に戻される。

 何すんだ!と怒鳴る前に、カシャン、という小さな金属音と共にひやりとする間もなく。

 え、と思った次の瞬間には、もう一度カシャン、と言う音がして、右足首に、冷たい感触。

 椅子に座ったディーンの足の間に膝まづいたサムが手にしているのは、安っぽいピンクゴールドに光るわっかがハート型の、手錠、に見える。

 自分の右手を見ると、肘掛の縦棒に、同じ手錠で固定されている。

 慌てて足を見ると、右足も同じ。右前の足にしっかりとお揃いのそれははまっていた。

 なんだこれ、とみていると、ちゃり、と手の中のまだ何もはめられていないそれを揺らすと、にっこりと今度はいつものサムの笑みで口を開く。

 「聖バーナビス教会の倉庫にあったんだ。銀じゃないけど一応、と思ってて忘れてた。牧師さんが使うのにはあんまりにキュート過ぎる品だし、一体何の為に用意されてたんだろうね」

「サミィ……」

 おい、お前、と怒ったり怒鳴ったりするまもなく、再び強く引っ張られた左手を、右手と繋がれる。

 これで、ディーンが自分の意志で自由になるのは左足だけになった。

 何がしたいのか、何をされるのか、考えるのも恐ろしくて、呆然と手を揺らす。

 ぐい、と力を込めて強く引っ張っても、ガチッという金属音を出すだけで、手錠は簡単には外れそうになかった。

 目の前で立ち上がったサムを見上げて、ディーンは呆然と呟いた。

「…お前、一体何考えてるんだ?」

「わからない?きっと、ディーンには、言っても分からないよね」

 だって、僕に他の女の子を勧めるんだ、分かってる筈ないよね。

 哀しそうに笑って、サムは視線を落とす。

「…僕の方こそ聞きたいよ。“ディーン、何考えてる?”って」

見上げるディーンの顔には「冗談だろ?」という表情が浮かんでいて。
この期に及んで、全くサムの想いは理解されていないようだった。









【2へ】
**********

ぴんくのハート型手錠は、「ぴーちじょん」のお店でぼんてーーじなマネキンさんがはめていたものです。
即座におにいちゃんを思い出しました。

すっげーほしいいいいいいと思ったのだけど。
下着を買わずに手錠を買って帰る客って。客って。

そう自問自答して帰りました。。。。。可愛かった。。。。



ぶらうざもどるでおねがいしますー