※ご注意です※
以下はRPS JaJeの妄想小説です。
意味のわからない方、興味のない方は、
ご覧にならないようにお願い申し上げます。

※女装ネタ?ぽいです※
【 J mania 】

※Jaさん×吸血鬼なJeさんネタ 続きです※










 




 ジェンセンと同居し始めてから、はじめての誕生日。


 覚えてくれているかな、と思っていたが、先週の休日に、ジェンセンがシャワーを浴びている間にベッドに転がっていると、枕元においてあるカレンダーに小さなマルが付いているのを見て、思わずジャレッドは頬をほころばせた。

 その日は残念なことに平日だったので、朝はジェンセンは勿論ぐっすりと熟睡していてドアの隙間からそっと覗くだけで、頬にキスだけしてジャレッドは出勤してきた。

 逸る心を抑えて業務をこなし、飲みに行こうと誘ってくれる同僚に謝って断ると、『彼女か?お熱いな!』と散々ひやかされた。

 また明日にでも話を聞かせろとつつかれながら、急いでケーキとちょっと高めのワインを選んで買って自宅へと向かう。


 自分でパーティの準備をするというのもバカみたいな話かもしれないが、ジェンセンはそもそも金を持っておらず、何かあった時の為にと小遣い程度の金額と、それからいちおうカードを渡してあるけれど使ったためしがない。

 時折、夜に24H営業のマーケットに一緒に行く時には、欲しいものがあれば、ジェイ、これ食べたい、といって子供のように指をさすから買ってやる。

 主には新製品のチョコレートか、たまに果物を食べるくらいだ。

 そのくらいで、あとは彼の好みのメーカーのミネラルウォーターさえ豊富に用意しておいてやれば、食費はほぼかからないといってもいい。

 ジャレッドの血を飲んではいるが、普段は夜に少し吸うだけだ。

 なんとも金のかからない同居人である。

 彼が来てから、ジャレッド自身が貧血になって供給できないという事態にならないように気をつけてはいるが、そのおかげで逆に食生活が健康的になり、顔色がよくなったと言われるくらいだ。

 他に必要なものも特になく、起きている時間は日没から夜明け前までで、働いているわけでもないので、彼は質素にジャレッドが買い与えた数本のジーンズとシャツを着回ししている。

 洗濯は好きなようでちょこちょこ自分で洗っては、ジャレッドの分も一緒に干しておいてくれるからとても有難い。

 つまりジャレッドは、ジェンセンと暮らし始めてからいいことずくめなのであった。



 いそいそと部屋に帰ると、窓越しに灯りがともっている。

 だが、起きている様子なのにほっとして、部屋のドアをノックすると、「今開ける」と返ってきた声は野太い男の声で仰天する。

 ジェンセンの部屋のドアの隙間からするりと出てきたのは、何故か大家のリチャードだった。

「り、リチャード!?なんで…」

「ちょっとジェンセンに呼ばれてな。
 大丈夫、お前のに悪さなんかしない。
 ジェンセンは確かに男にしてはビューティフルだがだいたい俺はゲイじゃないし、あと毎日うきうき喜んで血を吸われるほどマゾじゃない」

 事情を知っているリチャードにからかわれて一瞬ムッとすると、ジャレッドが反論する前に、

お前の血なんかいるか!

という怒った声が部屋の中から聞こえて来て苦笑した。

 肩を竦めたリチャードは、にやりと笑うと、

「どう考えてもお前は俺に感謝することになる。
 礼はフーターズ貸し切りでな!」

 それだけいうと、リチャードはぱんっ!とジャレッドの
肩を叩いて良い夜を!と叫んで部屋を出ていった。

 ―フーターズとは、セクシーなお姉ちゃん達がショートパンツにローラースケートでビールを運んで来てくれる、男性が目の保養をしながら愉しめる店の事である。

 なんだありゃ、と思いながらも気を取り直してジェンセン、開けるよ?と声をかけてそっとドアノブをまわす。

 すると、部屋の中はうす暗く、ベッドサイドの灯りしか点いていない。
 こんななかでリチャードと二人きりでいたのかと思って苛立つ間もなく、ベッドに腰掛けたジェンセンがゆっくりと振り向いたことで、ジャレッドはぽかんと口を開けて固まった。

 完全に光が入らないように遮断してある部屋には、ベッドと小さなサイドチェスト、それからクローゼットしかない。

 そのベッドの向こう側にちょこんとこしかけていたジェンセンは、シャワーでも浴びたのか白いバスローブ姿で、
そして―――何故か、ロングヘアの巻き毛のウィッグを被っていた。

 ためらうように振り向いた彼は、呆気にとられているジャレッドの視線に気付くと、身の置き所がないというようにしょんぼりと顔を伏せた。

「じぇ、じぇ、ジェン!?どうしたの、それ…」

 慌てて取り繕うように言うと、リチャードが、と悲しそうにいう。

「リチャードが、なに?」

問い質すと、彼は言い辛そうに口を開いた。

「…今日、お前の誕生日だから、って前からプレゼント何がいいか相談してたんだ。金は、これ、もらった、って出したらそんなんじゃたいしたもん買えないって言うから、あの、カードのほう出したら、これ買ってきて…」

「…僕のカードでウィッグを買ったのか…」

 リチャードめ、と思いつつも、うす暗い中で特大サイズのジャレッドのバスローブから指先だけを出し、ちょっとオールドタイプなブラウンの巻き毛を肩に垂らしたジェンセンは、実際が逞しく鍛えた男性のかたちであることなど全く分からない上に、ぷくんとしたくちびるのピンクが際立ってなんとも可愛らしい。

 怒りも忘れてごくんとつばを飲み込む。

「あと、これもリチャードが買って来たんだけど…」

 と、ベッドの足もとに置いてあった紙袋を渡してくる。

 恐る恐る覗くと、その中にはパールを帯びたスモ―キーピンクの
ちょっとしたパーティに着ていけそうなワンピースが入っている。

 ご丁寧に、その下にはラメの入った濃い目のベージュの網タイツと、それを腿の所で止める可愛らしいガーターベルトまで入っている。

 ぴら、と袋から取り出して見ると、明らかに女性サイズではない。
ジャレッドには入らないだろうが。

「…ちゃんと、俺のサイズ測ってから行ったんだ」

 しょげたまま言うのが可愛くて、思わず言ってしまう。

「で、これは?着てくれるんじゃないの?」

 え?とびっくりした顔でジェンセンが顔を上げる。

 そのとき、ジャレッドはバスローブをまとったジェンセンの首に、淡いピンク色のリボンが巻かれている事に気付いた。

 それ、というとあぁ、と今気付いたかのように首元を抑える。

「お前、こんなの好きかどうかわかんないしってごねたら、とりあえずジャレッドは絶対好きだと思うけど、とりあえずどうしても女物のワンピース着たくないんならこれだけは絶対外すなって言われて巻かれたんだ」

「なんで?」

 何故首にリボン?

 そう思って聞くと、ジェンセンは言い辛そうに答えた。

「…おれ、お前の好きなもの、よくわかんなくて…
 ビールと、あと甘いお菓子が好きなのはわかるんだけど、でも、そんなのいつも家にあるし…。
 だから、リチャードに、ジャレッドの好きなものなんだろうってきいたら、まああいつは普通に女好きだよな、って言うから…」

 それでこの女装騒ぎに繋がったというわけなのか。

 更に言い辛そうにジェンセンは続けた。

「でも、俺が、こんなの着たくないって言ったら…」

「―言ったら?」

 問い返すと、ふとジェンセンは顔を上げた。
 
 薄暗がりの中で、ジェンセンのヘイゼルが昏い光りを帯びて困惑気味にじっとジャレッドを見つめる。

 巻き毛にぶかぶかのバスローブで、頼りなげに見つめられると、まるでジェンセンなのにジェンセンではないかのようでジャレッドは居た堪れない気分に駆られた。

「おれだって、いうから…」

「え?」

 意味がわからなくて聞き返すと、ジェンセンはまた顔を伏せてぽつりと呟いた。

「ジャレッドの、一番好きなのは、おれだから、って。
 だから、おれにリボン巻いて渡せば、これ以上喜ぶものなんてないって言われたんだ」

 もぞもぞと居心地の悪そうに髪をいじりながら、言うジェンセンは照れているというより拗ねているような感じで、言われている言葉にも仕草にも、もうジャレッドは相当ノックアウトされていた。

 リチャードは妙な事ばかりジェンセンに吹きこんで、正直あまり気が合うとも思えないが、読みだけは確かだ。

 困ったようにみあげてくるジェンセンの傍によってそっとウィッグの毛先を手に取る。

 ひざまづいて髪に口づけると、驚いた顔で目を見開いた。

「…リチャードは、悪戯好きで勘弁してもらいたいけど、
 言ってる事は当たってる」

 ぱちぱち瞬きをするジェンセンの、バスローブの紐に手を掛ける。

 解くよ、と声を掛けながらベッドに横になる様に促すと、従順にこてりとジェンセンは仰向けになった。

「女装するジェンセンとするのも魅力的だけど、
 でも、これだけは言っておくよ。

 女装してても、男のままでも…」

 耳元で告げると、ジェンセンは困ったように一瞬視線を揺らめかせ、おずおずとジャレッドを見た後、それから両手で顔を覆ってしまった。

 耳元が赤くなっている。

「ごめん、美味しいチョコレートケーキと、あとオーガニックワイン買って来たんだけど、…
明日でいいかな?」

 言うと、顔を覆ったままこくりと頷く。

 苦笑して、バスローブをはだけて、さらけ出された淡雪のように白い胸元にキスをしようとしてあ、と思い出す。

大切な事を忘れていた。

「先に、食事、しとく?」


 聞くと、パッと手をのけたジェンセンの頬は喜びに染まり、こくこくと勢い良く頷いた。

 苦笑して、ジャレッドはジェンセンが飲みやすいように服を肌蹴る。

 嬉々として吸いついてくるジェンセンを受け止めながら、ジャレッドは思う。

 時の流れの違いで、永遠に一緒にいられない事はわかっている。

 ジャレッドが、何かの事情で―病気や、加齢や―血を供給できない状況になれば、ジェンセンが他の宿主を探さなければならないということも。

 けれど、今は出来る限り長く、ジェンセンのそばにいたい。

 来年も再来年も、こうしていられますように。



―あしたの晩は、あの服を着て乗ってもらうのもいいかもしれない。

 ウィッグを被っていることへの興奮の為か、ちゅうちゅうといつになく勢い良く吸い上げるジェンセンの背中を宥めながらジャレッドは足元のワンピースをちらりと見る。


28才の誕生日の夜ははじまったばかりだった。




END★







つづく?





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じゃれさんの血液代を躰ではらわされているじぇんさんのおはなしでした。

おめでとうございます★★>ォィ