※ご注意です※
以下はSPNのS×D SSです。
意味のわからない方、興味のない方は、
ご覧にならないようにお願い申し上げます。

※R-18
【 1231-0101 】
Brother's Porno番外



 その年の最後の日に行われたコンサートは、それぞれに家族や恋人を連れた人々で満員だった。

 メアリーの希望で再婚相手のジェフと、兄弟は少し早目のディナーを終えたあと、ウォルトディズニーホールに集まった。

「でも、マムがそんなにクラシックが好きだなんて知らなかったな」

 席についてプログラムを眺めながらディーンが呟くと、あら、とメアリーは身を乗り出した。

「私だけじゃなくてサムも彼のファンよね?」

 言われて、ディーンは、え?、ととなりのサムを見た。

「だって、サミーの携帯の着信メロディは、彼のバイオリンじゃない」

「そうなのか?」

「あ、うん、その、いい曲だったから」

 へえ、と思いつつ、そう言えばサムの着信はなんだかよく分からないがクラシックの曲だった。あれがそうなのか、とディーンは首を傾げる。

「きっとディーンもはまるわ。本当に、素晴らしいのよ」

 ね、とジェフリーに微笑むメアリーは、既に胸の前で手を組み、待ち切れないと言った風情で前を見ている。

「…お前も、ファンだったなら、言えよな」

「いや、ファンて言うか、単にいい曲なんだ。何度もテレビで流れてる曲だから、ディーンも聞いたことあると思うよ」

なんだか慌てたような面持ちでいうサムがちょっと怪しくて、まあいいけどさ、とディーンは肩を竦めた。



「もう、本当に夢みたいな時間だったわ…」

 会場を出るメアリーの頬は紅潮し、目は輝いている。

 コンサートは、初めから最後まで、バイオリン一本で、二時間。けれど、誰一人として退屈することなく、まったく興味のないディーンまで、初めから最後まで眠ることもなく聞き入っていた。
「まあ、すげー上手いし、なんか優しいっていうか、きれいな音だよな」

 でしょう!?というメアリーに対して、ディーンとジェフは苦笑するほかない。

 そういえばサムは、と思って振り返ると、よろよろと遅れてついてくる。

「サミー?」

「うん…」

「どうしたんだ、お前?」

 具合でも悪いのかと慌てて戻ると、ぼんやりした様子のサムはメアリーと同じように頬が赤くなり、なぜか目が潤んでいる。

「大丈夫か?」

「うん、あの、…演奏が、あんまり素晴らしくて」

「ほんとうよね!?」

 駆け寄ってきたメアリーとサムは手を掴み合って感動しあっている。

「特にさー、あの、なんか初めの笑顔とか可愛くてさ」

「そうそう、あれはね、きっと会場に彼のパートナーが来てたからよ」

「え?指揮者の?きてた?」

「出てきた時は緊張した顔してたじゃない?でも、ちょっと席を見回して、それからほっとしたみたいに笑顔を浮かべたでしょう?あれはパートナーの姿をみつけたからだと思うわ。真剣な顔も本当に綺麗だけど、ふにゃっと笑ったらもう可愛くて!」

 パートナーのジャレッドは、私たちの席のすぐそばだったわよー、というメアリーどころか、サムもバイオリニスト本人はおろか、パートナーについてまで知ってるらしい。

「…なんだよ、お前やっぱり大ファンだったんじゃねえのかよ」

 つつくと、サムは、そこまでじゃないけど、とどこか後ろめたそうにしている。

「もともと、マムがファンで、大人になったディーンはきっとこんな感じよ、とか言い出したんだ。彼は養子みたいなんだけど、ディーンとは年が違うし。でも、実際見つけてみたら、どことなくほんとにディーンに似てるだろ?だから、マムの勘はすごいなって」

「似てるかな?」

 首を傾げると、サムは
「うん、似てる。なんていうか、タイプの違うちょっと大人で上品なディーンって感じ」
と言うのでディーンは後ろ頭をはたいてやった。

「そうそう、ちょっと大人しい、大人のディーンって感じよね!」
とメアリーまで言い出すから、ディーンはちょっと面白くなくなった。

 いつまでも感動気味に語り合っている二人に、
「ジェフ、これからどうするんだ?」
 と聞くと、彼は「うちに帰ってゆっくりしようと思っているよ」と言う。

「あなた達も一緒に飲みながらみんなでカウントダウンしましょうよ」
メアリーに誘われ、だがサムは首を振った。

「ありがとう。でも今年は、ディーンとふたりでするよ」
あら、とメアリーはにっこりと笑った。

「そうね、邪魔しちゃ悪いものね」

 そう言ってふたりにそれぞれハグをし、頬にキスをしてメアリー夫妻は帰って行った。

「マムと、まだコンサートの感想を話したかったんじゃないのかよ」

ちょっと拗ねて言うと、手を振りながら、サムは
「いいんだよ、マムとはいつでも話せるし、ジェフとゆっくりしたいだろうしさ。これからはディーンとの時間」

 そう言われて、そっと手を繋がれる。

 夜で、人々は年の最後の日に浮かれていて、誰も見てはいない。

 それでも、ディーンは恥ずかしくてひじでサムを小突いたが、大きな弟は「誰も見てないよ」といってにこにこするばかりで全く動じない。

 大きくて温かいサムの手は、ディーンの手をすっぽりと包みこんでいる。

 結局、サムの手を自分から振り払う事は出来ず、兄弟は手を離すことはなく車までの道程を歩いた。




「あ、ホラ、ディーン、花火」

 サムが買った大型のプラズマTVは寝室に備え付けてある。

 寝転がったままゆっくりと見られるそれに、映画好きなディーンはとても喜び、給料がでる度にいそいそと気に入りの古い映画のディスクを買いそろえている。

 シャワーを浴びていつも通りのラブなTシャツとボクサーパンツ姿で戻ってきたディーンに、既にベッドヘッドに凭れて待っていたサムが画面を指差している。

 どこの国だかわからないが、カウントダウンに花火を打ち上げているらしい。

「綺麗だな、気が早いけど」と言いながら同じベッドによっと乗る。

「たぶん中東かな」

 飲もうよ、と言われて彼が冷蔵庫から出したビールに笑みを浮かべる。

 メアリー夫妻とのディナーも彼女好みの星の付いた有名店だったので、シャンパンやらワインをたくさん飲み、そろそろビールがいいなあと思っていたのだ。

 サム時折祝いのときなどに、やたら高級なワインを出してくることがあったが、最近になってようやくディーンがビールやウィスキーなどの安い酒のほうを好むという事を理解してくれたらしい。
 別に時々ならいいんだけど、と思いながらも、サムの気遣いは嬉しく、軽く瓶を合わせて飲む。

「髪、まだ濡れてるよ」

 ちゃんと拭かないと、とタオルをとって拭いてくれるサムに大人しく頭を項垂れる。

 しばらく優しくごしごしと擦って、こんなもんかな、と髪を撫でるサムからタオルを受け取ってサンキュ、と椅子に放る。

「なーサム」

「うん?」

ビールを飲むサムを移り変わる画面を眺めているサムを見る。

「お前、さっきのバイオリニスト、マジでファンなんじゃねーの」
え、とサムはビールから口を離した。

「うん、いや、ファンだけど、マジってほどじゃ」

「だって、ウチあいつのCD全部あるじゃん」

 サムが時折聞いているCDがコレクションのように部屋に飾ってあるのにディーンは気付いたらしい。

「あ、うん、それはまあ」

 もごもごと曖昧に肯定すると、ぽつりと責める様に言われる。

「そんな好きなのか」

「好きっていうか、本当にいい曲だからさ、」

「…俺より、好きなのか」

「え、…えぇっ!?何言ってんの、そんなわけないだろ!?」

 びっくりしてすぐさまビールを置いて、ディーンに向き合う。

 同じようにベッドヘッドに凭れたディーンは、なぜだか俯いて瓶を握り締めている。

「あれ、…ディーン、ちょっと酔ってる?」

「酔ってねえよ」

 赤い頬を膨らますディーンは、そういえばディナーの時に一人でワインを一本空けていた。

 サムが頼んだワインは一本500ドルちょっとするメドック1級の高級なボルドーだったのだが、値段を言うと気にするかと思い、サムはそれを内緒にしておこうと思っていた。

 ふいに顔を上げたディーンは、
「サム」
 と呼ぶと目を潤ませたまま顔を近づけてきた。

 え、え?と思っている間に首に手を掛けられ、くちびるが触れる。

 やわらかいくちびるで上唇を食まれ、下唇を舐められ、熱心に何度も口付けを繰り返される。

 たまらなくなって体勢を変え、覆い被さる。

 ころりと横になったディーンの手からビールの瓶が転がりそうになり、それを奪って半ば放るような勢いでサイドテーブルに置く。

 視線を戻せば、ベッドサイドのナイトランプだけを点けた薄暗い部屋の中で、仰向けに転がったディーンの目は泣きそうに潤んで見上げてくる。
 そのかなしげな様子に胸を突かれた。

 頬に手をやる。柔らかな頬を撫でながら、サムはどうしようか一瞬悩んだ。

 だが、ディーンの目を見ていたら、嘘がつけなくなった。

「こんなに可愛くなってくれるんなら、ディーンよりさっきのバイオリニストのほうが好きだって言ってみようかなって、思ったんだけど」 

 そう言っただけで、ディーンはくちびるをかみしめた。

「でも、やっぱり冗談でもそんなこと言えないや」

 ディーンのことが好き過ぎて、というと、疑うような目でじっと彼はサムを見上げてきた。

「全く、こんなにディーンひとすじの僕を疑うなんて、ディーンって天文学的なバカだよね」

「バカだと!?」

 むっとして起き上がろうとしたディーンの肩を押してベッドに戻す。

 両手を掴んで枕元に押し付け、まだ何か言おうとしたディーンの言葉をくちびるを押し付ける事で黙らせる。

 キスをされてもまだもごもご何か言おうとしていたが、舌を割り込ませて軽く吸うと、諦めたのか躰の力を抜いた。

「ん、んぅ、」

 だが、夢中で甘い咥内を貪っていると、押さえ付けている手がもぞもぞと動く。

 それが、逃げようとしているのではなく、手に触れたがるような動きだったので、サムは彼の手をそっと離した。やはり離されるとすぐにサムの手に触れてくる。

 絡めて繋ぐと、ほっとしたようにディーンが微笑むのが触れたくちびるから伝わった。

 口腔内を舐め回して、舌を絡め合い、ひとしきり吸ってから離す。

 ほんの僅かの距離で、鼻先をつん、とからかうようにくっつける。

 紅潮した頬で半ばうっとりしている様子のディーンが可愛くて鼻先を舐めると目を閉じて肩を竦めるのが可愛かった。

「…僕が、あのバイオリニストのファンなのは、音が素晴らしいのもあるけど、でも、一番は、ディーンに似てるからだよ」

 言うと、ディーンは長い睫毛を震わせた。ゆっくり目を開ける。
まだ疑うような瞳の色に、「ほんとだよ」とくちびるの端にくちづけながら笑って言う。

「だって、綺麗だなあとは思うけど、僕、彼とはしたいって思わないもん」

というと、ディーンは瞬きをしてサムを見上げた。

「僕、どうも本当にゲイじゃないみたいで、こんなふうに挿れたくてたまらないなんて思う相手は、ディーンだけなんだよ」

 そう言いながら割った彼の腿の狭間に膝を擦りつける様にすると、びくっとディーンが震える。

 サム、と囁いたディーンの顔が泣き笑いのような情けない笑みに変わり、あんまり可愛くて、サムは下腹部がずきんと痛む様に疼いた。

 頭を持ちあげてキスをしたディーンは、Tシャツの裾から差し入れた手でサムの背中をまさぐり、引き寄せてくる。

 そんな風に正直に求められて、サムが応えずにいられるはずもなく。

 嫉妬したせいなのか、酒のせいなのか、いつもより情熱的にサムを欲しがるディーンに、サムもまた夢中になった。

 いつもは痛がるほど深くまで繋がっても、ディーンは嫌がらず、躰の力を抜いて必死にサムを受け入れようとする。

 痛そうに顔をゆがめながら、それでも腰を揺らしてぜんぶを呑み込もうとするさまが愛しく、サムは躰以上に胸が熱くなった。

 ディーンが好きな場所を意識しながら動かす。ぴったりと繋がりながら躰を撫で回し、どれくらい大好きなのか、どんなに愛しているかを伝え続ける。いつもはからかわれるか、照れて逃げたがるかするディーンは、今日はまるでうっとりするようにサムを見上げ、そのひとつひとつに頷いて目を潤ませて喘いでいる。

 そうして、大して動かしてもいないのに、まるでサムの言葉に興奮したかのように、ディーンはあぁ、と身を捩らせながらサムを含んだまま自分の腹に射精した。

 その様に煽られたサムがディーンの中にぜんぶを注ぎ込む頃には、気付けば年は開けていた。

 抱き合っている間のカウントダウンに兄弟は苦笑しあい、そうして、
Happy new year と I love youを言い合いながら、ニューイヤー最初のキスを交わすのだった。






END★ 












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昨年一年よんでくださってありがとうございました!!の御礼SSですvv