※ご注意です※ |
以下はSPNのS×Dのパロディ小説です。 意味のわからない方、興味のない方は、 ご覧にならないようにお願い申し上げます。 ※ネタバレを含まみます※ |
夜についての考察 |
サムが夜、殆ど眠れていないようなのには、すぐに気付いていた。 職業柄というか、生活上、どうしても物音や気配には敏感になる。 サムが物音を立てないように、音を絞ってテレビを見たり、窓の外を眺めたり、 そして時々、溜息をついて物思いに耽っているの気配を、ぐうすかと呑気に寝こけているマヌケな兄貴の振りで感じる。 サムの苦しみに、気付かない、間抜けな兄貴を演じる。 例えそれが、どんなに苦しい事でも。 ジェシカの凄惨な死に際に遭ってしまった、サムを救ってやりたい。 俺は心からそう希う。 それには、父さんを探し出して、母さんとジェシカをあんなめに遭わせた悪魔を祓わなければならない。 そうしたって、二人は戻ってきやしないけれど。 サムの心は、いくらかは救われるだろう。 いくつもの悪霊を祓い、手に余る数の人々を救って感謝されて初めて、俺が、母さんの死から少しだけ救われたように。 移動中のインパラのナビで、時折サムは悪夢に魘される事がある。 眠るサムの額に浮かぶ油汗を見て、またその時の事をを思い出しているのか、と思うと、泣きたくなる。 幼い頃の俺も、同じだった。 四歳から六歳ぐらいまでの間。何度も何度も同じ光景を夢に見た。 いつも助けられない。母さんの夢。時には、手に抱いたサムまでもを悪魔に奪われ、目覚めてサムが隣に居る事に安堵して泣いた。 まだ幼かったサムは、母さんの顔すらも覚えていなかった。 それでいい。そのほうが、サムのためにはいいんだと、そう思ってむずがる小さなぬくもりを抱き締めた。 悪夢をみる日々は、二年以上も続いた。 そして、そんな地獄から俺を助けてくれるのはいつも――小さなサミーの手だったんだ。 そんな時俺は、 「ヘイサミー、そろそろ昼食の時間だぜ?いい加減起きたらどうだ?」 と、これまた呑気な兄貴を装って、サムを悪夢から引き戻す。 サムを呼んでいるのかも知れない、ジェシカの元から。 ごめん、ジェシカ。サムは、―――――絶対に、渡さない。 これからも、サムは眠れずに、悪夢を見るかもしれない。 そしてその隣で、俺も同じ永さの眠れない夜を過ごす。 サムが早く救われますようにと祈る為にではなく。 確かに、サムをこの手で悪夢から引き戻すいつかの為に。 同じだけ、眠れなかったなんておくびにも出さずに。 サムがカフェから二人分の朝食を調達して帰ってきたら、 大あくびをして、よく休んだ振りをして、サムを諭すんだ。 「サム、夜はよく眠らないと、仕事に差し支えるぜ?」 睡眠不足でクラクラしそうな頭をコーヒーで誤魔化し、そしてニヤリと笑って。 【END】 -------------------------------- |