※ご注意です※
以下はSPNのS×D SSです。
意味のわからない方、興味のない方は、
ご覧にならないようにお願い申し上げます。

※R-18要素を含みます※
【 I say I love you 】









 初めてポーカーでボロ負けをした、記念すべき屈辱的な夜。

 モーテルへ戻ると、サムはもう一本だけだよ、とまるで慰めるようにディーンにビールを手渡した。

 ここしばらく、ディーンにはずっと禁酒が言い渡されていて、普段から水代わりのように飲んでいたビールまで禁じられ、それも悩みのタネではあった。

 同情されているのは分かっていたが、情けなく引き際を誤ってボロ負けした挙句、インパラの中で悔し涙を見られた上弟に諭され、もう自分の安っぽいプライドなどどうでもいいような気もした。

 苦々しい思いを噛み締めながら薄いクアーズの懐かしい味を堪能していると、サムがバスルームから出てくる。

 ちらりとタオルを巻いた逞しい上半身に目をやる。何となくすぐに目をそらす。
 
 考えて見れば、昨日もサムはしなかった。

 だからまたあんな妙なヘビ女の夢を見て、その上、調子が出なくていくら久し振りとはいえ得意のポーカーで負けたりする。

 それもこれも全部、サムのせいだ。

 自棄になって考えながら、ディーンは、自分の我慢の限界が近いのを感じていた。




 サムがアルバイトを始めてから、自分がサムのバイト先の娘に感じている感情が、世間でいうところのいわゆる『嫉妬』という名前のものなのだということに気付いたディーンは我を疑った。

 今まで、数多くの女性達と一夜の恋を演じてはきたものの、嫉妬を感じるほど深く長く付き合った女性は皆無と言っていいほどいなかった。

 キャシーとでさえ、付き合ったのは狩りの合間の数週間。リサに至っては一週間にも満たない間だった。

 もし、再会した時に彼女達を支える誰か別の男がいたとしても、恐らくディーンは嫉妬の感情を抱く事はしないだろうと思う。

 彼女達とその住む街に残り、そこに根を張って共に生活をして一生を終える自分を、どうやってもディーンは想像することが出来なかった。

 想像できないものを実現することは不可能だろう。

 自分が彼女達に求めたものと、彼女達が自分に望んだものには余りにも距離があり過ぎて、その溝を埋める事は到底無理なように思えた。

 もし誰かと寄り添って幸せそうな彼女達を見たなら、あぁ幸せになったんだなと、少しだけ惜しく思いながら、昔の恋を思い出して懐かしく笑い幸福を祈る事が出来るだろう。

 だが、ヒルデと一緒のサムを見たときに感じた感情は、彼女達に感じる甘い感傷を含んだ穏やかなものとは程遠く。鈍くじめじめとしたどす黒い感情だった。



 その感情は、以前にも一度だけ感じた経験があった。

 隣に立った彼女を引き寄せたサムが、冷やかな視線をディーンに寄越した4年振りの再会の夜。

 あの時、ディーンは自分の居るべき場所を奪われたような、足元がガラガラと音を立てて崩れ落ちていくような、そんな得も言われぬ不安な感情に襲われた。

―思い出したくなかった。こんな状況で、こんな時に。

 こんな日には強いウィスキーを呷って眠ってしまえれば忘れられるのに。

 今の自分にはそんな自由すら無い。

 せめても得意のポーカーで金を稼ごうと盛り場へ繰り出せば、人生初のボロ負けでなけなしの自尊心は粉々だ。

 深くため息を吐いて、舌打ちをするとディーンは自分自身の感情を持て余したまま勢い良くベッドに潜り込んだ。




 シャワーを済ませると、ごそごそと片付けを済ませたサムは、しばらくしてディーンが既に眠っているいるキングサイズのベッドにそっと滑り込んできた。

 毎晩このベッドで、後ろからサムに抱き竦められて眠る。それは二人が―ある意味で初めて同意の上で躰を繋いでからの、今では習慣と化していた。

 いつもならば行為をしない日は、サムの暖かく大きな身体に抱き締められればとろりとした眠気に襲われて考える間もなく眠ってしまえる筈だった。

 でも、今日は違う。
 今夜は、どうしてもサムが欲しいとディーンは思った。

 腹を抱き抱える様にして腕を回し、ディーンの首筋に鼻先を埋めて目を閉じていたらしいサムは、身じろいで振り返ると細く目を開けた。

 灯りを落とした部屋の中で、サムの瞳の色だけが薄っすらと淡く青く煌めいている。

 澄んだそれはとても綺麗で、ディーンは一瞬動きを止めて見惚れた。

「ディーン……?」

 眠れないの…?と優しく囁かれて、隣に横になり、向かい合って額をくっつけると、あぁ、とディーンは応える。

 眠れる筈がない。―サムの熱を感じない限りは。

 くちびるをぎりぎりで触れ合わせないまま、鼻先を擦り合わせて熱い息を吐く。

 サムが欲しい。自分を欲しがるのを感じたい。どうしようもなく必要とされたい。

 何も持たない今のディーンには、それが唯一の存在意義であり、生きる為の糧ですらあった。

 だが今日の言い争いを気にしているのか、サムはベッドに入ってきても緩く手を回して撫でるだけで、それ以上の行為に及ぼうとはしない。

 サムの匂いと熱に曖昧なまま包まれ、生殺しの状態にたまらなくなって、ディーンは突き動かされるように口を開いた。

「Fack me,……」

求めに応えるように柔らかくディーンの後頭部を撫でていたサムの動きが止まった。耳を疑うように、目を見開く。

 その澄んだ清浄な青に射抜かれる。まるで自分だけが薄汚い欲に塗れているようで辛い。でももう今更止める事は出来ない。ディーンはもう一度、熱に浮かされたように必死に言い募った。

「Love me,…Please…Sammy…」

 恥ずかしいほど精一杯の言葉で懇願をするのに、自分から動く事は出来ず。ディーンは伏せていた目をゆっくり上げて、焦点が合わない程今は近くに居るサムを見つめた。

 視線が触れ合う。強請る瞳の色を隠しもせずにサムを見つめると、サムの目にもはっきりとした欲情が滾っている。

 ほっとしてくちびるを開くと、唐突に枕に押し付けられて荒々しく口付けられた。痛いほど唇を押し付けられ、引っこ抜かれる程の勢いできつく舌を吸い舐られる。

 自分から誘ったのだとはいえ、暴力的な勢いに悪態を吐きたい気持ちとは裏腹に。胸の中でディーンはほっと安堵の息を吐いていた。










(一部抜粋)







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全体的に激甘ご注意です。チョコレートの上にチョコレートをかけたチョコレートケーキに
チョコをトッピング。くらい甘いです半端ないです(笑
「甘いのはちょっと…」という辛党な方は御注意くださいませ。
ただ、甘いけど、さみーは軽くS入ってます、いつものことながらスイマセ…( ̄◇ ̄;